アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
結婚式場見学をするともらえる高額なギフト券、その理由と高額競争が招き得る業界の将来について考えてみます。
目次
結婚式場見学でもらえる高額な来館特典(ギフト券)
- ハナユメ:最大60,000円分の電子マネーギフト券がもらえる
- プラコレウェディング:最大111,500円の一休クーポンがもらえる
- ウェディングニュース:最大91,000円のAmazonギフト券がもらえる
これは2024年4月現在のブライダルメディア別の来館特典です。これらの媒体以外でも、来館や成約したら●●円分の△△をプレゼント、という来館促進キャンペーンをやっているところは多いですね。
私の記憶が確かならこうしたキャンペーンって2010年代前半くらいから始まっていて、当時は2000円とか高くても10,000円程度だったのに、ここ数年でどんどんインフレ化していて今となってはこんな金額です。
- これ誰も幸せにならないと思うんですよね。
- むしろ不幸になるだけじゃないかと。
- 今すぐやめたほうがいいのではないかと。
というのが本音でして、今回はこのテーマについて書いてみます。
ギフト券キャンペーンはなぜ高額になったのか?
具体的な内容を論じる前に、まず背景を理解しておく必要があります。私の理解は下記の通りです。
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- 結婚式場が支払う広告宣伝費がブライダルメディアの売上
- 結婚式場が広告費を支払うかどうかは、その媒体に支払った分だけ来館が取れるかどうかで判断する
- つまり、来館が取れる媒体には広告費を投資し、取れない媒体へは投資しなくなる
- 結婚式場側が「どの媒体から来館したか」を判断するときは「どの媒体から予約したか」で判断する
- つまり、何をきっかけで会場を知ったかはどうでもよく、最後の予約アクションをした媒体が効果の高い媒体であると判断されやすい
- 言い換えると、媒体側の視点では過程はどうであれ新郎新婦が最後に予約アクションする媒体になれれば広告宣伝費を投資してもらいやすくなる
- では、ユーザーに予約アクションをしてもらうためにはどんな施策が必要か…?
- 予約してくれたらギフト券をプレゼントをしよう!
- (来館キャンペーンの始まり)
- あちらの媒体が2,000円ならうちは5,000円だ!
- ぐぬぬ、なにを!それならうちは10,000円だ!
- (以下、繰り返し)
- …100,000円だ! ← 今ココ
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とまぁこんな感じかな、と。
もうちょっとマクロな背景としては、
- ブライダル業界の縮小は始まっており、媒体間の競争はすでに市場の開拓ではなくパイの奪い合いでしかない
- 結婚式場の業績が大きく伸びない以上、当然広告宣伝費も大きくは伸びないので、ひいてはブライダル媒体の市場規模も伸びないことを前提とした競争になる
というのもありますし、アフィリエイターが媒体を紹介するときに、キャンペーンが魅力です!っていうのが一番押しやすいポイントであることも一因かもしれません。
キャンペーンの財源と、高額化すると起こること
さて、先ほどの背景を簡単にまとめると、隣の店から顧客を奪うためにお金を払いまっせ、ということで、市場を広げたり付加価値を高めたりするための投資ではないと言えると思います。
そして次にこのキャンペーンの財源ですが、これは媒体側の広告宣伝費または販促費として計上されているはずです。
つまり媒体運営企業のコストになるので、当然コストが増加する分だけ利益を圧迫します。利益が圧迫された媒体社は利益を確保するために売上を伸ばすか他のコストを削減するかしなければいけません。
しかし成長が見込めない市場環境下で無理なコスト削減は縮小最適化を招くだけですから、となると売上をどうにか伸ばそうとします。
媒体社が売上を伸ばすためには、掲載会場数を増やすか1会場当たりから頂く広告費を増やすかしかありません。前者はただでさえ式場が減ってきている中、既にある程度の規模まで来ている各社にとって新エリアに進出する以外の方法のハードルはかなり高いでしょう。
となると後者の方法を取らざるを得ません。広告メニューの掲載単価を上げるか、オプションメニューなどを作って販売するしかないのです。
つまり媒体間のキャンペーンが高額化すると、いずれは結婚式場の広告宣伝費が増えるのです。そして、それはいずれ結婚式の単価に跳ね返ってきます。
ここまでをまとめます。
- 媒体の来館キャンペーンは付加価値を生まない、パイの奪い合いのためだけのコスト
- キャンペーンが高額化すると媒体側がそのコストを回収するために売上を伸ばそうとする
- そうなると結婚式場の広告宣伝費が増え、結果的に結婚式そのものが高くなる。
ブライダルメディアの今後
個人的な意見としては、この「うちの媒体から予約してくれたら金券プレゼントしますキャンペーン」は早々になくなればいいと思っているのですが、これは無関係の第三者だから言えることであって、日々競争にさらされている媒体社から取ってみれば「んなことは分かってるけど背に腹はかえられんのですよ」って感じでしょう。
結婚式場が値引き辞めたいけど、となりのゲストハウスが70万も引くから、うちは80万円引くのもやむを得ない…、うぅぅ。。。みたいのと近いかと。
でもやっぱりこれって誰も幸せになっていないので、長い目で見ればみんな倒れます。この状況を打破するためには「このキャンペーンに頼らない方法で」勝ち切る媒体が現れることが必要かなぁと思います。
今後はニーズの多様化に伴いバーティカルなメディアが増えていくんじゃないかと思っていて、そうなると、コンテンツや提供情報の専門性が差別化ポイントになっていくはずなので、その時は今のキャンペーンの金額競争は終わりを告げるんじゃないかなと思います。
結婚式場見学で高額ギフト券がもらえる理由と今後のメディアについてまとめ
いつかなくなるかな思いながら見続けてはや10年。
ただブライダルに限らず人口減少フェーズに入った日本では様々な産業でこのような顧客獲得競争が過熱してきており、致し方ない部分もあるかもしれません。
ただ結婚式を取り巻く環境全体で見ると使わない人が存するので無駄な気はするんだけどなぁ…。