アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
私が思いついた新規事業のアイディアを企画っぽくまとめてみよう、という趣旨の記事です。第3回の今回は、結婚式場のCRM施策を簡単に実施することができる新サービス「ウエコミ(wedding communication)」を企画してみました。(※この記事は実在するサービスではありません)。
目次
事業企画の概要・ビジネスモデル
ビジネスモデル図解
いつものように「ビジネスモデル2.0図鑑」を参考にして作成してみました。
ビジネスモデル2.0図鑑
サービス利用の流れ
- ユーザー(結婚式場がサービス申込)
- アカウント登録
- 初期設定(DB接続、シナリオ選択、カスタマイズ)
- 運用開始
- ダッシュボードで数値確認
- シナリオ改善
- 初期導入費、月額使用料の支払い
基本的な流れはこのような感じで、ブライダル特化型のHubSpot(ハブスポット)のようなイメージで、対象フェーズが、
- リード獲得~成約まで
- 成約~結婚式まで
- 結婚式後
この3つのフェーズごとに利用する機能が異なる、というのに近いイメージです。
例えば上のフローは、リード獲得から来館までのコミュニケーションを最適化させるためのフェーズでの活用で、ウエコミを使うことで問合せから来館までの確率を高めることが目的になります。
収益化の方法(お金の流れ)
売上は「結婚式場→ウエコミ」で新郎新婦は出てきません。基本的には初期導入費とサービス利用の月額料金と考えていますが、このサービスを使うことで改善されるKPIの想定インパクトから、月間問合せ数の従量課金制にするプランや、シナリオ内で配信できるメール本数、シナリオ本数などによってプランの金額差をつけてもいいかなと思います。
ざっと、サービスの概要としてはこんな感じです。
このサービスが解決できる課題
結婚式場の課題
- 問合せ~来館までのKPI改善
- 結婚式後のマネタイズ
集客力アップや成約率アップ、組単価アップの取り組みはどこもやっているのですが、この2つのKPIは結婚式場運営にとって取り組みたくても本腰を入れて取り組めない領域だと思います。結婚式売上のKPIを分解すると、成約率を10%改善するのも来館率を10%改善するのもインパクトは同じはずなのに、
- データを正確にとっていないので数値を可視化しにくい
- 来館率を改善するためのノウハウがない
- 単独式場でCRMツールを導入しようとすると、莫大なコストとリソースがかかる
という理由から対策が後回しになってしまったり、取り組むことをあきらめてしまっている会社が多いようです。こういった課題に対し、ウエコミを利用すれば
- 式場単独では取り組みにくい、来館率改善、結婚式後のマネタイズに着手できる。
- 自社で顧客管理システムやMAツールをスクラッチ導入しなくていいので初期コストを抑えられる
- 自社のリソースを多大に使うことなく、来館予約改善ノウハウを活用することができる
というメリットがあります。
結婚式後のマネタイズについて、テイクアンドギヴ・ニーズの取り組みが上手だなぁと思っているので、以下の記事を参考にご覧ください。
【プレスリリース考察】大好評につき初の大阪開催決定!結婚式場でママのための体験型イベント「ママ・マルシェ」
新郎新婦側の課題
少し遠いメリットになりますが、結婚式場のKPIが改善し利益率が向上したり、結婚式以外でのマネタイズができるようになると単価(=結婚式費用)を下げても事業運営が可能になります。そうすると「結婚式高すぎる問題」を結婚式場側の体力勝負ではなく合理的に解決できるようになります。
また、定期的にお得なクーポンやキャンペーン情報が届くようになると、これまでよりも費用を抑えて実施できるようになったりするのでこれも新郎新婦のメリットですね。
ウエコミの特徴・競合・差別化要素
結婚式場にとってのサービスの特徴をざっと挙げると以下の通りです。
- 問合せ~来館までの新郎新婦とのコミュニケーションを設計、実行できる
- 多大な導入コストが不要
- ブライダル業界全体のノウハウを利用することができる
競合は、HubSpotやSalesforceなどのCRM、MAツールあたりになりますが、すでに世に出てからかなり立っているにもかかわらず、そこまで実行しているところがないとなると、あんまり直接の競合はないかなと思います。どちらかというと、このKPI改善が本当に業績にインパクトあるの?という疑念にきちんと回答できるような実績を最初に作ることが大事かなと思います。
事業KPI・スケールさせるのに必要な施策
事業KPI
- 利益=売上-コスト
- 売上=契約結婚式場数×プラン単価
- 契約結婚式場数=獲得リード数×契約率
- 月額利用料=プラン単価×選択率
- プラン単価・選択率=このサービスを利用することで結婚式場がどれくらいの業績改善できるか次第
- コスト=人件費+開発費+その他固定コスト
ざっとこのようなロジックで表すことができます(ほんとは継続率とか、プラン単価ごとに詳細設計とか必要なのですが、今回は簡略化しています)。
成長させるために必要な施策
この事業を成長させるためには、それぞれのKPIを伸ばしていくための施策を実行していくことが必要です。
「契約結婚式場数」を伸ばすための施策
リードの獲得と、リードからの契約率を高めなければいけません。
リード獲得はウェブ上でのコンテンツマーケ(個人的にはAIアナリストのブログからのリード獲得、導入が最近だと一番上手じゃないかなと思っています)、オフラインのイベント出展(ブライダル産業フェアなど)や業界紙への出稿などが戦術として挙げられます。これらの施策を駆使して伸ばしていくことが必要です。
契約率は、営業力ももちろんですが、プロダクトのイケてる度、利用料金など複合的な要素が絡んできます。最初はフリー期間をもうけるなどプランも柔軟にしつつ、ある程度実績が出てきたらしっかり稼ぐフェーズに乗せていく計画を組むといいかと思います。
「月額利用料」を伸ばすための施策
このサービスを使うことでどれだけ結婚式場のKPIを改善できるのか次第だと思います。媒体の来館単価型成功報酬の単価が年々上がってきているのと同じですね(1来館の獲得難易度が上がってきていることも背景の1つ)。
仮に10%改善できればかなり大きいと思いますし、明確に改善できることが分かってくれば問合せ数従量課金制にして売上を伸ばしに行くことも必要になると思います。
「コスト」を抑えるための施策
一番コストが掛かるのは開発費と人件費になるでしょう。開発コストは削りすぎるとプロダクトの質が落ちるのであんまりここのコストカットに注力しないほうがいいと思いますが(もちろん無駄な開発費はかけないように注意すべき)、法人営業は方法によっては最適化は可能だと思うので、オンライン施策とオフライン施策を上手に設計して実行していくことが大切です。
施策まとめ
- 提携結婚式場を増やすための法人開拓(オンライン施策、オフライン施策)
- 結婚式場の担当者が使いやすいシステム設計・開発・運用
- ユーザーメリットと比例した料金設計
上記3つの施策を並行して実行していくことが重要になります。
事業リスク・詳細検討が必要な項目
ウエコミ事業を立ち上げ、拡大していくにあたり想定されるリスクとそれに対する打ち手も考えておきます。
①結婚式場を開拓できない(利用会場が増えない)
このサービスを立ち上げるにあたり、最初の10~20会場くらいの法人営業パワーが一番かかると思います。理屈とコンセプトは伝わっても実績がないものへの投資ほど怖いものはないですから。。なので、最初はできれば複数会場を運営している大手を戦略的に攻めていくことが重要でしょう、でないと営業リソースが足らなくなります(そんなにうまくいくとも限りませんが…)。
それかサイト開発中にブログやオウンドメディアを作るリソースとノウハウがあるのであれば、初期営業はZoomやベルフェイスなどを使ってオンライン営業にするなど、営業効率化のための施策を打っていくことも重要でしょう。
②契約した結婚式場が継続しない
サービス利用企業が継続しない原因は、
- メリットがない(KPIが改善しない)
- 利用料金が高い(効果に見合わない)
- 使いにくい(利用者側のリソースが大きくかかる)
のいずれかが要因になるはずです。プロダクトの質による要素が大きいですが、結婚式場ユーザーのサポートチームを用意すること、意見や要望をプロダクトに素早く反映できる開発体制の構築などがキーになるので、営業スピードに合わせてここも同時に検討していくことが大切になると思います。
起こりそうなリスクまとめ
結婚式場が集められない、はかなりの確率が起こりそうです。その場合、「CRM施策を実行したから業績が改善した」という事例が何よりも強いので、とにかく事例作りに最大のリソースを割くこと、また、サイト開発の開始と同時にリード獲得を見据えて「結婚式場 集客」「結婚式 来館率」などをニッチですが来館に関わるKWをターゲットにした記事系コンテンツの制作は早いタイミングから開始し、検索面への対策も実行していった方がいいでしょう。
「ウエコミ」の事業企画のまとめ
以上、新規事業企画をしてみました。前回の記事同様、事業計画は信ぴょう性がないうえに作るの大変なので載せないことにしました。
今回の企画は、初期の開発・営業コストが大きくかかり、提携会場が増えていくにつれて徐々に回収期に入っていくというモデルになるので、少なくとも3年くらいは見て事業開始をした方がいいでしょう。その間のキャッシュ計画なども併せて考えるか、これ以外の本業がありそこできちんと稼げる会社であればなおよいかと思います。