アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
企業のIR情報を見て会社の状況や方針を理解できるのは、社会人としての重要なスキルの1つです。そこで、今回の記事では、ワタベウェディングの2019年12月期の決算説明資料をもとに、その内容について考察してみようと思います。なお、ワタベウェディングは今期から12月期に変更したので変則決算となります。(注)本記事の内容はあくまで個人的な見解であり、投資向けに書いているわけではありません。この記事の内容をご覧になられて投資判断をされても一切の責任を負えませんのでご了承ください。
今回の決算の概要
元となるワタベウェディングの2019年12月期の決算説明資料は下記URLで見ることができます。
https://www.watabe-wedding.co.jp/library/pdf/corporate/ir/2001_f1.pdf
決算概要
数字がたくさんあるのでざっと見るべきポイントをまとめると
- 売上高:前年比21億円アップ
- 売上総利益:前年比12億円アップ
- 営業利益:前年比0.5億改善
- 当期純利益:前年比微減
となります。特に売上と売上総利益は大きく伸びていますね。9か月の変則決算なので売上高の絶対額は2018年度と比べると減っていますが、例年黒字になっている1月―3月期がないことを考えるとかなりの改善だと思います。
リゾート、国内とも売上は帯びていますが、特にリゾートの伸び幅が大きいですね。リゾ婚の単価は通常の国内婚礼の半分程度ですから、約18億円分の増収となると900組~1000組ほど前年よりも増えていることになります。また、9ヶ月でそれを達成したということはいヶ月当たり平均100組ほど増えていることになり、成約率50%だとしてサロン来店が200組ほど増えていると予想されます。販売管理費が前年比10億円ほど増えていましたが、広告宣伝費増加が主要因かな、と。
またリゾートの場合は一般的に国内婚礼よりも申込から施行までのリードタイムが短いので、投資回収期間が短くなりやすいのも1つ要因としてあるとは思います。具体的にどんな施策がどのようにヒットして業績が改善したのかまではわからないですが、この傾向が続けばまだ伸びていきそうですね。
リゾート部門の重点施策
同じ期の四半期決算時の発表から施策についての大きな変化はありません。もともとリゾートウェディング領域ではトップシェアの企業なので、奇をてらった施策を次々と打っていくよりも、基礎となる商品力強化施策と販売チャネル強化で足元を固め、成長戦略の各施策で伸ばしていくのが王道だと思います。
そう考えると、
- 主力商品であるドレスの強化
- それを販売していくためのウェブ戦略を強化
というのはその通りですよね。
ホテル・国内挙式部門の重点施策
あまり多くは触れられていませんが、売上は昨対で伸びています。メルパルクはtwitter炎上などもあったのですが、総じてみれば業績への大きな営業はなかったのかもしれませんね。
それ以外のトピック
新会場オープン、新エリア展開
- 『シギラミラージュ ベイサイドチャペル』2019年4月オープン
- 『アクアグレイス・チャペル』2020年1月リニューアル
- 『オーシャンクリフ チャペル』2020年7月オープン
- 主力エリアの施設内観リニューアル、ガーデン会場新設
- コオリナ アクア・マリーナ チャペルウェディング
- コオリナ アクア・マリーナ ガーデンウェディング
- ヒルトン ブルーホライズン ガーデンウェディング
- ザ・カハラ オーシャン フロント ガーデンウェディング
- ブルーアステール
- ルース・デ・アモール チャペル
- ベトナムのダナンへ初展開し、2019年1月より挙式スタート
- 韓国に現地法人4月設立
- 中国・北京市にリゾ婚専門サロンをオープン
資料内で紹介されているだけでもざっとこれだけの動きがあります。ワタベウェディングはプレスリリースの配信回数が多くこのブログでもすべてを取り上げられているわけではないのですが、かなりのスピードでリニューアルや新規オープンを続けている印象です。
部門強化施策
第2四半期決算で説明されていた内容とほぼ同じです。
衣裳強化
- 有名アイコンやブランドとコラボし、新規客層へアプローチ、『WATABEWEDDINGloves Barbie 』『BEAMS DESIGN』『ELLE MARIAGE』を展開
- リゾートの特性を考慮し、衣裳の美しさと快適さの両立を実現、衣裳新ブランド「ResollCollection(リソルコレクション)」発表
映像強化
- 主要エリアの全ムービー商品をプロペラUSAにて監修 2020年1月より取扱い開始し付帯率の向上及び売上に貢献
旅行強化
- 旅行会社のノウハウを活かしシナジー効果による旅行事業の強化、ワタベウェディング専用旅行商品を取扱い開始し付帯率向上を実現
オンラインチャネル・自社メディア展開
昨今の状況もありますが、今後はブライダルに限らずこれまでオフラインが当たり前だったこともオンライン化していくと思います。接客・集客、など。どちらかと言えばブライダル企業はウェブに弱いですからこういった取り組みをどこまで積極的にできるかが重要にはなっていきます。
- 結婚式の申し込みをオンラインで完結する
- 新規接客をオンラインでする
- ウェディングアイテムをECで販売する
などですね。今回の決算で発表されている具体的な取り組みは前回の決算資料をほぼ同じなので、詳細は割愛しますが興味ある方は見てみてください。
直営店舗の再編
サロンやラウンジの移転・リニューアルも積極的に行ったようです。リゾートウェディングの場合、サロンのきれいさが集客に貢献することはほとんど考えられません、重要なのは数とエリアです。今後、オンライン接客が主流になるとどう変わっていくかは不透明ですが、少なくともこれまではそのサロンに行ける人が対象ユーザーとなっていたのでどのエリアに何店舗出店するか、接客のキャパシティはどれくらい持てばいいのかを最適化することが重要でした。
その点で、ワタベは積極的な展開をしているように見えます。
フォトウェディング事業の強化施策
- 『ワタベウェディング 京都フォトスタジオ』4月オープン
- 『ワタベウェディング 東京・目黒フォトスタジオ』10月リニューアルオープン
- こだわりのウェディングフォトが叶うフォト専用WEBサイト 「Ushers-photo(アッシャーズ・フォト)」オープン
- 多様化するフォトニーズに対応する複合型スタジオ ホテルメルパルク10施設のフォト事業をワタベウェディングが運営受託
ワタベウェディングはリゾートウェディングだけでなく最近はフォトウェディングにも力を入れています。リリースの内容はこれまでの決算と同じような内容となっています。
余談ですが、もしコロナウイルスの影響が長引いたとしてもフォトウェディングの需要は底堅いんじゃないかなと思っています。3密ではない、記録に残せる、低価格、これらが理由ですが、さてどうなるんでしょうね。
間接部門業務のプラットフォーム化
こちらも同じ内容なので過去記事をご覧いただくか、決算説明資料をご覧ください。
CRMの取り組み
ワタベウェディングもCRMに取り組むようです。
- MA活用による来館促進
- 成約ごとのユーザービリティの向上
- 挙式後のLTV向上
大きく分けるとこの3点がポイントで、共通の顧客DBにユーザーデータをストックしていくことと、そのデータをもとにして様々な施策を実行していくのだと思います。似ているところだとT&GもCRMに力を入れていますが、年間組数が1万組を超える大手だからできるとも言えますね。
その他のトピック
- 「働き方」と「キャリア形成」の多様化を図る 新人事制度の導入により「働きがいのある会社」目指す
- 持続可能な社会達成を目指し、 SDGsに関連する取り組みをスタート
- 世界的なラグジュアリー・ツーリズム・コンソーシアム 『Traveller Made®(トラベラーメイド)』へ2019年9月加盟
などがありました。
2020年12月期の業績予想
黒字目標ではありますが、減益のようです。詳細は分からず。
ワタベウェディングの2019年12月度決算についてまとめ
ほんとに簡単にですが、決算説明資料をもとに考察を書いてみました。ブライダルの現場で働いていると企業のIR情報を見ることはほとんどないとは思いますが、他の会社でどんなことをやっているのか、起こっているか、ブライダルマーケット全体をどのように捉えて動いているのかなどがわかると意外と楽しいと思うので、この記事をきっかけにIR資料も見るきっかけになってくれればうれしいです。