アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
最近アイテムベンダーさんやクリエイターさんと話す機会が多かったので私見を述べてみようかなと。
目次
結婚式場へのドレスやアイテムの持込みは自由になるのか?
持込の自由化は長らく業界課題テーマの1つとして叫ばれていますが、解決に向けて大きく前進している印象はありません。
- 持込が自由になることを強みとするメディアが登場した
- 中小式場や単店式場は持ち込みを自由にOKにする会場も増えた
- 式場ではなくプロデュースサービスへ申し込む人が増加したので自由にできる人が増えた
変化で言えばこれくらい?
大手企業の持込に関する規約はほとんど変わってないし、ゼクシィへの掲載で「持ち込みオールフリー」を謳ったからと言って集客に絶大な効果が得られるわけでもない。というわけであんまり進んでいる印象はないなぁと思ってます。
ちなみに私の個人的なスタンスは、以前から「リスクを持っている人や企業が決めればいい」で、これは今でも変わってません。
ただそれと同時に、
- 自由競争化することで商品力を高めやすい環境を作ること
- 顧客にとっての選択肢の解放すること(より多くのアイテムから選ぶことができること)
この2つはできた方がいいよなぁとも思っているので、じゃあどうしたら実現できるのかは考えていきたいところ。
ではそもそもなぜ持込が不可だったり持ち込み料がかかるのかで言えば、
- ①式場業績の観点
- ②オペレーションと責任の所在の観点
- ③クリエイティブの観点
主にこの3つの理由であり、顧客/事業者/従事者の3者にとってメリットがある仕組みであれば持ち込みを規制する必要性がなくなると思っています。
では、それにはどうしたらいいんだろう?をテーマに考えてみます。
①式場業績の観点で持ち込み禁止
一番よく言われるのがこれ。
持ち込まれると単価が下がる(利益が下がる)から持込はできるだけブロック!ってやつです。
例えば衣裳単価70万円の式場が衣裳全持込されるとその分の売上と利益がなくなるので、そりゃ止めたくなります。二次会1組分くらいに相当しますから。
ただこれは、見積りの作り方を変えれば解決できると思ってるんですよね。具体的には、
- 料飲や会場費など式場固有のアイテムの単価を高くする
- プロデュース料の明細を入れる(すでにある会場は単価を上げる)
- その他アイテム下代と上代を同額にする(=仕入れ品に利益を乗せない)
- ※持ち込まれなかった場合の単価が今と変わらないように1と2を調整する。
こうするともし持ち込みがあったとしても(理論上は)利益は変わらなくなります。
現実問題としては、式場⇔ベンダー間の契約で歩率を固定していたり、見積り明細単価を変えることでの成約率への影響が出たり、内製化している企業の場合は固定費扱いになるので上記だとPL調整しきれない、など考えなければいけないことはたくさんあるのですが、どこかのタイミングで変えるきっかけを作れないかなぁとは思っています。
②オペレーションと責任の所在の観点で持ち込み禁止
アイテムやクリエイターを持ち込む場合、普段とは異なるオペレーションになるので、その分の負担が増えますし一般的にトラブルリスクも高まります。
個人のスキルが高かったとしても初めての会場、初めてのチームとの連携だとうまく機能しないところもあるよね、というイメージ。
余談ですが、持込料の解釈としては稼働や場所貸しにかかるコスト分だけではなくこのリスク分も含まれると思っています。
持ち込みアイテムやクリエイターさんが原因でその施行自体に何かトラブルが起こった場合は相談のうえで対応とかでもまだいいのですが、その施行が押したことで午後施行のお客様からもクレーム・返金要求をもらったなどになると、それは誰の責任なのかの判断も難しくなる、などが具体的な事例。
これが2つ目の理由。
で、これを解決するためには、これは主に持ち込まれる側の知識・経験とマインドが大事になると思っていて、
- 様々なタイプの会場やウェディングスタイルの知識を持っていること
- 式場側の担当者と事前の情報共有をしっかり行うこと
- 式場と対等なスタンスで同じチームとして顧客に向き合えること
これらのような観点で定義された認定バッジみたいなのがあるといいのかなと思ってます。
実際問題としては、そんなの誰が作るの?基準は?認定されているのにトラブルになったら発行事業者は責任取るの?とかいろいろ課題もありそうですが、顧客がこのクリエイターさんにお願いしたい→バッジ確認→この人なら大丈夫そうだね、って会場側が判断できたらいいのかなぁと。
③クリエイティブの観点
非提携アイテムやクリエイターが入ることで式場が提供する世界観を損なうリスク。
提携ショップやアイテム業者選定時は式場の世界観との相性も考慮して決定しています。なので、顧客が好きなものであっても、全体の世界観の中に1アイテムだけ異なる雰囲気のものが混ざると違和感のある状態になってしまうこともあります。
感覚的な話なので言語化するのが難しいですが、例えば、
- フレンチフルコースの中にいくら好きだからって突然酢豚が出てきたらおかしいよね?
- オーケストラの中に1人だけいくらファンだからと言ってもロックバンドのベースの人が入ったら違和感あるよね?
みたいなイメージ。だからこうならないように規制している。
これが3つ目の理由。会場側のブランドの親和性、とも言えます。
これはねぇ、先に会場決めるとかなり難しいよなぁと思ってます。現行のまず式場を決めようの流れを前提として組まれている。
なので会場を決める前に好きな雰囲気やコンセプトを決める、持ち込み対アイテムやドレス、装飾をピックアップする、それを着たり飾ったりしたときに最適な会場に決める、という流れがいいのかなと。
この方法の具体的なアイディアはまだないのだけど、可能性は模索していきたい。
個人指名トレンドとの組み合わせ
ラヴィファクトリーでカメラマンが指名できたり、日比谷花壇のフラワークリエーションルームでフローリストが指名できたり、ミラーミラーでスタイリストを指名できたり、など、フリーランスに限らず個人指名できる流れが進んできているなぁと感じています。
これってブライダルに限った話ではなく、美容師を指名したり、ネイリストを指名したり、など自分たちが顧客側に立つ時でも「個人指名する」という機会は増えていると言えるでしょう。
上記ブライダル各社も顧客側からのニーズがあってこのような制度を作っているのかなと思っていますが、全体的なトレンドとして何をするか?だけでなく誰に頼むか?の重要度も高まっていると思います。
顧客側のインサイトとしては
- ○○をしたいからこの人に依頼したい!というポジティブな理由と
- 誰が出てくるかわからなくて失敗したくない!というネガティブな理由
の両面があるので一概に個人ブランディングが効いているとも言い切れるわけでもないのですが、ただいずれにせよ今後も様々な領域で店舗やサロンなど「箱のブランディング」と並行して、その中にいる「人のブランディング」も重要になっていくでしょう。
このように仮定した場合に、クリエイターを指名したのにまず最初の質問が「お客様が契約している式場では持ち込み可能でしょうか…?」になってしまうのはちょっと悲しい。
なのでこうした世の中の流れにうまく乗れるような仕組みをつくっていきたいなと思います。
結婚式場のドレス・アイテム込み個に関する所感まとめ
持込に関してはどの立場で見るかによって見方が変わるので、様々な業界テーマの中でも取り扱いと最適解の設定がかなり難しいことの1つだと思っています。
集客を担保に規制開放するのも1つの方法ではあるんだけど、できれば合理的に解決できるといいなぁとは思いますね。