更新日 2021年10月19日

家族挙式の特徴とは?ビジネスモデルを図解してみた

163_家族挙式のビジネスモデル図解

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

事業のビジネスモデルを理解することは、その事業やサービスがなぜつくられたのか、どんなことを強みとしているのかを体系的に理解でき、事業開発や個人の知識習得でとても勉強になります。ブライダル業界の中でも様々な特徴的なサービスがあり、その仕組みや違いを知ることで見えてくることも多いと思います。

今回は「チャペル挙式が97,200円から叶う、格安ウェディングプロデュースサービス」の家族挙式のビジネスモデルを図解してみました。

 

家族挙式とは?

Best-Anniversaryが運営する、格安ウェディングのプロデュースサービスです。挙式プランの最適価格は97,200円と圧倒的な安さでありながら、全国のチャペルを利用でき、神社や沖縄などのリゾートウェディングの商品もあります。さらに会食付きのプランもあり、こちらも数十万円程度と低価格のプランとなっています。

kazokukyosiki
Webサイト https://kazoku-wedding.jp/
運営会社 Best-Anniversary

では、このサービスのビジネスモデルを図解してみます。

 

家族挙式のビジネスモデル

家族挙式のビジネスモデル図解v2.0
サービス開始当時はまだ珍しかった少人数結婚式を希望するユーザーをターゲットとした低価格結婚式サービスで、TVCMや山手線広告などのマス広告も多用しここまで成長を続けてきました。グループ会社(Best Bridal)の運営チャペルも含めた全国のチャペルが利用可能で、挙式のみを扱うサービスの中では最上級のハードクオリティと圧倒的な低価格さで人気を呼び、小さな結婚式などと同じく少人数婚カテゴリではかなり有名なサービスです。

結婚式場運営において、会場の維持費は結婚式を受注していようとしていなかろうと等しくかかりますし、人件費も変わりません。そのため、人気のない日取りや時間帯の施行枠が受注できず固定費だけかかるので非常にもったいない、という状態になります。特に半年以内の直近の空き枠や仏滅、日曜日の午後の施行枠は人気がないので、どうやってその枠を埋めるのかが課題でした。

一方、新郎新婦側の動きとして、結婚式の単価は年々上昇傾向にあり、かつ前払いが一般的だったので(ご祝儀を支払いに充てることができない)、予算が理由で結婚式を挙げないという「なし婚層」も増えてきていました。

そこで家族挙式は(というよりツカダは、が正確ですかね)、各会場の空いている施行枠を別ブランド化した低価格ウェディングサービスとして販売するという方法で、

  • 結婚式場側の、空き枠を埋めて資産効率をよくしたいというニーズ
  • 新郎新婦側の、簡単に低価格で挙式だけ挙げたいというニーズ

この2つのニーズを解決する、低価格でクオリティの高いチャペル挙式を提供することを実現しました。土日祝日はプラス金額が設定されていたり、人気のあるセントグレースなどはプレミアム料金となっていたりするので、そのあたりの金額設定で事業収益上の抑えどころとユーザーニーズのバランスを取っているのだと思います。

小さな結婚式が伸びてきて少人数結婚式のニーズが大きくなってきたころに始まったサービスで、もともとは、Best Bridalの運営する会場の施行枠稼働率を上げるための集客施策の1つとして始まったんじゃないかなと思います。平日にチャペルだけを利用する、という施行オペレーションであれば法人宴会などの受注機会損失にもならないですし、結婚式場の資産運用効率を上げるため役立つサービスとなっているのでしょう。

ということで、事業立上げ当時の背景はわかりませんが、ここまでの規模のサービスに成長してきていますし、今後どのような展開をしていくのか楽しみです。

 

今後の展開の予想

最後に、これから先に家族挙式がどのようになっていくのかについて予想してみます。

これから先の結婚式ニーズは年々縮小していきますが(参考記事)、挙式のみや少人数会食などの脱披露宴化のトレンドは今後大きくなっていくのではないかと思いますので、家族挙式がターゲットとするユーザー層は一定割合で残り続けると思います。

家族挙式は自社会場はあるけど固定費は持たなくていい変則的なウェディングプロデュース事業なので、基本的にお客様から頂く代金から提携先の会場やアイテム業者へフィーを支払った差額が利益になります。そのため、KPIの計算式は以下のようになります。

  • 売上=施行組数×組単価
  • 施行組数=集客数×成約率
  • 利益=売上-原価(外部会場を利用する場合)

事業としての売上を伸ばすためには施行組数を増やすか、組単価を上げることが必要、施行組数を伸ばすためには集客数か成約率を伸ばすことが必要となります。

まず組単価ですが、挙式のみで10万円を切るというプライシングは集客力に大きく寄与しているはずなので、このベースの金額を上げていくことは今後もしないでしょう。そうなると、会食付きプランの受注率を上げる、申し込み後(または新規接客時)の人数アップをどれだけ図れるか、が組単価アップのカギになりそうです。営業力勝負の側面が強いですが、Best Bridalはもともとそのあたり強いので得意問題はないと思います。

次に成約率ですが、低単価系の商品は比較的成約率が高くなりやすいので(意思決定のハードルが高くないため)、今からさらに高い数値を目指していくのは非現実的だと思います。営業のオペレーションはすでに最適化されていると思いますし。

となると、最後は集客です。家族挙式はプロデュースなので媒体出稿はできません、そのため基本的な集客導線は

  • WEB上で集客→サイト来訪→来店予約/資料請求/LINE@登録→サロン来店→成約

となっているはずです。入り口である「WEB上で集客」の主な手法は

  • マス広告→指名検索を増やす
  • SEO→流入を増やす
  • ウェブ広告(リスティングやSNS広告)→CVを獲得する
  • SNS運用→ファンを増やす→流入を増やす
  • 記事広告など→認知を広げる

などが挙げられます。私の記憶が確かであれば、サービス開始からこれまでの間に一通り対策してきていると思いますし、特に東京では電車広告もよく見かけます。今後はそれぞれの施策をより最適化していくフェーズとなるでしょうし、すでにやっているとは思います。

また、SEO対策も「家族挙式のウエディング知恵袋」でコンテンツ制作を継続して行っているので、テールワードからの流入数は一定取り続けていると思います。会場数やプラン、口コミなどが増えないと低価格系ビッグワードを狙うのはちょっと厳しいですが、何もしてないわけではない、といったところでしょうか。

サービス開始時と比べて少人数や会費制、挙式のみのプラン、フォト婚など、同じ価格帯のサービスもかなり増えてきているので、単に安い!だけではなく他のサービスとは異なるブランディングもしていけると、またもうひと伸びするんじゃないかなと思います。

 

家族挙式のビジネスモデルについてまとめ

家族挙式のビジネスモデルについて、簡単にまとめました。グループ企業間で事業PLをどのように見ているのかわかりませんが、会場費を持たないプロデュース系サービスとして見るのであれば、固定の人件費を抱えて広告費をどれだけ回収しきれるかが勝負になるでしょう。どこまで伸びるのか、期待したいところです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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