更新日 2024年02月03日

ブライダル業界で分析結果をうまく事業改善に活かすためのポイント

1020_ブライダル業界で分析結果をうまく事業改善に活かすためのポイント

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

結婚式場集客におけるウェブマーケティングの重要性は増してきており、その担当者をどのように採用、育成していくかが課題になってきています、という話。

 

日常的に行っている分析業務

ブライダル業界で日々仕事をする中で数字を見る機会は増えました。定例MTG、経営への報告、業績・営業数値確認、集客数値確認…などなど。

特に近年では

  • デジタルマーケティングが広がり、集客に関する詳細なデータも手軽に見れるようになった
  • 業務システムを活用する企業が増え、ローデータの取得が容易になった
  • エクセルやGoogleスプレッドシートを使える人が増えたので分析工数が下がった
  • このように、業務オペレーションの実績値がデータ化、可視化されるようになってきたので、
  • 過去と比べて見れる数字が増えた

このような背景から、多くのブライダル事業者で数字を見る機会も種類も増えたと思います。

現場メンバー自作のエクセル日報にコツコツと打ち込んでいた時代や上司の経験や勘を頼りにマネジメントしていた時代と比較すると、システムからデータ出力→関数を用いて一発集計することで多くの数字を見ることができるようになり、事実に基づいたPDCAサイクルを回せるようになりました。

しかし、数字の可視化は進んでも”活用”はまだうまくできていない企業が多いように感じています。

当たり前ですが、事業や業務に関する数字を見ることは手段であって目的ではありません。

  • 数字を見ること自体が目的になってしまっていたり
  • 数字を上げるためだけに仕事をしていたり

こうなってしまっては本末転倒です。

例えばダイエットであれば体重を減らすことが目的ではなく

  • 痩せることでモテたい
  • 痩せることで健康になりたい
  • 痩せることでゴルフがうまくなりたい

などが本来の目的になりますよね。

仕事でも理屈は同じはずなのですが、どうも見ることそのものが目的化してしまっている現場が多い気がします。

重要なポイントは3つ。

  • 分析における大切な意識を理解すること
  • KPIには2つの種類があることを知ること
  • 事業フェーズごとの最適なKPIは変わること

ということで今回は事業運営における分析についてをテーマにお送りします。

 

1.分析における大切な意識を持つ

「アクションにつながらない数字は見るな」

数値分析において一番大切なのはこの意識だと思います。ちなみにここでいうアクションとは、改善施策のことを指します。

事業において数字を見る目的は、その数字をもとに意思決定をすることです。

・分析数値を見る→何かしらの判断をする→その意思決定が事業運営を改善に導く

このようになっていなければいけません。なので、ある指標数値を見てもそれによって何も判断しないのであればそもそも見る必要がありません。これは数値結果がいい場合でも悪い場合でも同様です。

これが大事だと思うのは、企業の担当の方とお話ししていると分析しようとしている数字が多すぎるだろ!って感じることがかなりあるからなんですよね。

すごい精緻でたくさんの数値が並んでいるエクセルレポートで定例会議やってるんです!とよく言われるんですけど、この数値を見て何を判断してるんですか?って聞くと、いや数字を報告して会議は終了していますね…、といった具合で。

例えばブライダルではおなじみの成約率という指標も

  • 個人別の成約率
  • 接客曜日×時間帯別の成約率
  • 見学会場数別の成約率
  • 競合会場別の成約率
  • 新郎新婦の年齢別の成約率
  • フェア予約した媒体別の成約率
  • 予約したフェア別の成約率

など、業務システムやAMSのデータをうまく使えば無限に詳細分析ができます。

しかし、この数値がいくつだったらどうなるのか?の対応施策がないと、細かな数字を見たところで何も判断ができません。

血液検査の結果をもらっても適正値が書かれていなかったらそれがいいのか悪いのかわからないでしょ?しかも異常値だった場合にどうやったらそれを正常に戻せるのかわからないと何もできないでしょ?っていうのと同じです。

見ることで満足する/怒る/悲しむだけの指標ならむしろ見ない方がよく、余計な数値を見るとその分析にかかる時間や読み合わせをしている会議の時間がとてももったいないのです。

なので、先にどうなった場合にどのような対策をしたいのか?から逆算してモニタリング指標を決めることが重要で、

  • 測定する数値の定義を決める
  • 測定する数値の適正値を決める
  • 適正値を外れた場合のアクションを洗い出しておく
  • アクションの効果期待期間から測定頻度を決める

こうやってみる数字を絞ることが大切だと思います。

普段の会議で読み合わせしている数字が多すぎないか?本当にそれって意味あるの?
ぜひチェックしてみてください。

 

2.2種類のKPIを理解する

次に、何の数字を見るのか/目標とするのかについて。

目標として設定する数値には業績観点KPIと行動観点KPIの2つがあると考えています(いずれも造語です)。

1.業績観点KPI

業績に直結する数値のことで、事業のKPIツリーでよく見るやつです。

結婚式場運営だと以下のような数値を指しますが、このあたりはよく聞いている言葉だと思います。

  • CPA
  • 来館予約確定率
  • 来館率(来館キャンセル率)
  • 成約率
  • 施行実施率(成約キャンセル率)
  • 組単価

これらの数値は目標は決めるものの、「やってみないとどういう結果が出るかわからない数値」だと言えます。

野球で言えば、打率、出塁率、長打率、防御率、奪三振率みないなもので「3割打つぞ!」と目標を決めても結果としてそれを達成できるかはわからないですよね。

結婚式場でも、「成約率50%を目指すぞ!」と決めたとしても、絶対にできるかどうかは接客してみないとわかりません。

2.行動観点KPI

それに対し、行動量に対するKPIもあると思っていて(僕個人はアクションKPIと呼んでいます)、これはメンバーの行動量に対する目標数値を指します。

結婚式場運営だと以下のような数値です。

  • ブログ執筆数(集客)
  • SNS投稿数(集客)
  • アウトバウンド数(コールセンター)
  • ロープレ実施回数(営業)
  • 台本作成回数(営業)

同じく野球で言えば、素振りを100回する、腕立て伏せを50回する、投球練習を100球するといったもので、やると決めたらやるだけなので、意志の強さが強く影響します。

 

3.事業ごとの最適なKPIを知る

ここまでの内容をざっとまとめると以下の通りです。

  1. 数値分析は大事
  2. でもアクションにつながらない分析は無意味
  3. さらに、分析対象は業績数値と行動数値がある

この前提で、どんな事業をしている場合にどのように分析対象とするKPIを設定したらよいのでしょうか?

結論は「新規事業の立ち上げ期は行動観点KPIメイン、既存事業の安定運用・成長期は業績観点KPIメイン」とするのがベターだと考えています。

その理由は、新規事業の評価を業績観点KPIメインでやってしまうと、既存事業に対して明らかに非効率な結果となりやっても意味ないよねという結論になりやすいからです。

最近は結婚式場がフォトウェディング事業を始める、ドレスショップが自社集客や式場紹介事業を始めるなど、既存事業のリソースを活かしつつ隣接する領域の新規事業を始めるケースがブライダル業界でも増えてきました。

このような場合に既存事業を同じようなテンプレートで業績評価してしまうと、なかなかそこに注力するという意思決定につながりません。

なので新規事業の立ち上げ期は行動をメインに業務モニタリングを行いそれによって評価していく方が、結果的に立ち上げが早くなることが多いと思います。

今後は業務のデジタル化、分析の容易化・高度化は今後進んでいくでしょうし、ユーザーニーズの多様化に伴いブライダル業界でも様々な新規事業も生まれていくと思います。

その際に適切なKPI設計と分析フローを実現することで、1つでも多くの新規事業が立ち上げがうまくいくと嬉しいですね。

 

分析結果を事業改善に活かすためのポイントまとめ

いろいろな企業の方とお話ししているとみんな自社の数字は把握されているんですよね。でも、それを活かせているかと言うとそうでもない。

これは僕個人の感覚ですが、不健全な組織だと

  • 経営は意思決定よりもメンバーを詰めるために使う傾向がある(ここがダメ、あれがダメ、みたいな)
  • 担当者は改善施策よりも言い訳のために使う傾向がある(こうだからできない、ああだからできない、みたいな)

こんな感じで、お互いが自分たちの都合のいいように解釈して使っていることが多い気がするんですよね。これだと事業付加価値創造にはつながっていきません。

なので、どんな数字をどのように分析するかを適切に設計して建設的な業務改善を実現することで、事業の付加価値創造につながってほしいなと思います。

今回言いたかったことをはるかに上手に言語化してくれている記事があったので興味ある方はこちらもご覧ください。

https://comemo.nikkei.com/n/n17b2fa051e52

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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