アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
結婚式の価格はいくらで売るのが顧客、企業、従事者にとって最適なのかを考えていきます。
結婚式の平均単価
結婚式はぼったくりだとよく言われます。
しかし実際はそんなことはなく、運営企業は薄利、従事者は低収入、仕事環境も洗練されているとは言い難くどちらかと言えば時代遅れです。
つまり、全くぼったくれていないのにぼったくりと言われている状態であり、もしブライダル業界全体が1つの法人だとしたら、いやいや勘弁してくれよって感じでしょう。
この現実と認識の歪みの原因はビジネスモデルと業界構造にあるのですが、今回はその中の一つの要素である「結婚式価格の最適解」についてをテーマに書いていきます。
結婚式価格の最適解は、
- 顧客
- 企業
- 従事者
この3者が総じて最もハッピーになるための価格設定だと定義できるわけですが、では果たして今が最適なんだろうか?と考えてみます。
ちなみに、過去のメルマガでも「結婚式の高額化」の内容で書いたことがあるので、参考にリンク置いておきます。もしお時間あればご覧ください。
・結婚式が富裕層の娯楽になる日(2020/3/12配信)
https://note.com/bridalchiebukuro/n/n13c6f5cd3042
結婚式の価格決定ロジック
商品やサービスの価格は様々な要素で決まります。
- ①需要と供給のバランスによって決まる
- ②コストを基準に利益を乗せることで決まる
どちらか一方の方法で決まるというよりは上記2つを含めた様々な要素を総合的に決まっていくわけですが、結婚式の場合だと需要がほぼ決まっているのでこれまでは②の考え方をベースに供給量によって多少変動する、というイメージだと言えます。
- パートナーからの仕入れ値(下代)に利益を乗せて販売金額(上代)を決める
- 同商圏内の会場数や会場タイプによって値引きが決まり、最終的な単価が決まる
こんな感じですね。
結婚式価格の推移と今後市場規模の関係性
結婚式の平均単価は過去15年で以下のように推移してきています。
※ゼクシィ結婚トレンド調査から、首都圏のみの金額の推移をグラフ化
だいぶ高くなってきてますよね。
この間の列席人数は増えていないので、単純にアイテム単価が上がってきているのだと思います(15年前はまだ自分はこの業界にいなかったので見積明細レベルで何がどう変化したのかまでは把握できていないですが…)。
ちなみに、同じデータからゲスト1人当たり単価と新郎新婦の自己負担額の推移をグラフにするとこんな感じです。
自己負担額、15年前から2倍以上になってますね。
こうやって見てみるとブライダル産業はぼったくりやないか、と言われるのも少しわかる気がします。
そして今後の流れを予測すると、個人的には今よりもさらに高くなることはもうないと思っていて、低価格化と価格のバリエーションが増える方向に進むのではないかと思っています。
なぜなら、この間の披露宴実施率は年々下がってきており、事業者側の利益観点(仕入れ+利益)での価格設定がすでに限界を迎えているからです。
つまり、これまでの仕入れ+利益での単価設定の考え方から、顧客の需要に基づく販売価格が先にあり、そこにコストを合わせていって利益を残すという考え方に変わっていくんじゃないかなと。
このように「1組当たりの単価」と「結婚式実施率」には負の相関関係があるので、単価が高くなると実施率は下がり、安くなると実施率は上がります。
業界全体で見れば、10年くらい前にスマ婚や楽婚ブーム、ここ数年のフォトウェディングブームもこの流れの中の1つで、低単価商品だから実施率が高まったと言えるわけですね。
ちなみに、先ほどの「単価×婚姻組数×実施率=市場規模」の掛け算をグラフにするとこんな感じになります。
面積(=市場規模)が最大化されるポイントはどこ?という問いと同じです。
結婚式価格の最適解を考える
ここまでの話から今後の結婚式価格の最適解を考えたときの私の意見は次の通り。
- ①コスト基準ではなく需要基準での価格設定の考え方も取り入れる必要がありそう
- ②その実現のためには既存サービスのプライシングを変えるのではなく、別サービスとした方がよさそう
- ③そして業界で働く一人一人が「なぜこの価格で販売しているのか」についてもっと深く考えた方がよいと思う
①需要基準で価格を決める
これは冒頭の過去メルマガの後半でも書いていますが、同じ販売単価であっても顧客の年収や価値観・考え方によってその金額に対する感じ方が全く異なります。
例えば15,000円のコース料理から18,000円へ変更すると、年収1,000万円の人にとっては1週間分の給与相当なのに対し、年収300万円の人にとっての1ヶ月分の給与相当なので、重さが全然違いますよね?というのと同じです。
まず、その視点を持とう。
②サービスラインナップの拡充
- 結婚式場
- 低価格系プロデュース
- オーダーメイド系プロデュース(フリーランス含む)
- フォトウェディング
これらのサービスで同じ価格にする必要はなく、このような価格帯の異なる顧客需要に応じたサービスを揃えることに意味はあると思います。軽自動車からレクサスまで幅があるように。
今でもあることはあるんですが、結局訴求している内容や方法が同じような感じになっているので、手軽にできる!とかQBハウスやサイゼリヤみたいなウェディングサービスもありだと思うんですけどね、どうなんでしょう。
③意識の変革
「なぜこの単価なのか」の意味あいを明確にする、それを結婚式に関わる人全員が共有する、その意識を持つことが大事になってくると思います。
特に式場勤務の方の場合、自分の意思はなく式場や会社から言われた金額で顧客に提案していることがほとんどでしょう。最初は疑問を持っても少しずつ考えることもなくなっていきます。
なぜなのか?を考えるのって結構大変だし、考えたところで結論が出ないことの方が多いんですけど、考えることの習慣がつくとほんとに視野が広がるし課題の解像度も高くなっていく僕は思います。
大きな課題解決もまずは考えることから。ということでまずは試しに、なんで自分の式場やサービスが提供しているコース料理は17000円なのか?を自分なりに考えてみてください。
結婚式価格の最適化についてまとめ
今回は結婚式の価格設定について考えました。
いくらが最適であるという結論があるわけではないですが、なぜその価格で販売しているのかの意味を持つことが企業には必要であり、従事者はそれを理解することがまず重要。そしてそれを顧客に誠実に伝えることが必要かなと思います。
価格そのものではなく価格設定のプロセスにフォーカスした回になりましたが、この記事が価格について改めて考えるきっかけになると嬉しいです。