アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
ブライダル業界に携わる方にとって、今さら何を?というタイトルですが、結婚式場の商品は何でしょうか?特に新規営業をされている方にとって重要な内容になるわけですが、新規プランナーはお客様に対していったい何を売っているのでしょうか?この問いに対し、実は非常に多くの人が間違った認識を持っていると感じています。そこで、今回の記事では結婚式場の商品とは何か?について、あらためてまとめてみました。
結婚式場の商品とは?
- 料理や衣装などのアイテム
- 挙式
- 披露宴
- 挙式と披露宴
- かけがえのない思い出
さて、この中でどれでしょうか?いずれでもない!という方はその答えを決めてから次へお進みください。
答えは決まりましたか?
正解は「時間」です。正確には、結婚式場の時間を使える権利、です。
結婚式場がお客様と契約をするとき、見積りを提示はするもののその時点で内容は決まっていません。確実に決まっているのは「日取りと時間」です。結婚式場は「その日取り、時間で結婚式場を使える権利」を販売し、ユーザーはその権利の中でどんな結婚式をするかを決める。つまり結婚式の中で何をするかはすべてオプション、という考え方が正しいのです。
結婚式場の商品が時間だと理解していないと起こること
業績予測や業績管理について深く考えていったときに、この認識の違いは如実に表れてきます。結婚式場の商品を「結婚式」だと思っている人と、結婚式場の商品を「時間」だと思っている人は会話がかみ合いません。
結婚式場運営のKPIツリー
改めて、基礎的なKPIツリーをまずは説明します。
このKPIツリー自体は特に違和感はないと思います。では、結婚式場では結婚式を成約を無限に取っていけるでしょうか?
そんなことはないですよね?一般的な結婚式場のオペレーションでは、挙式30分、披露宴2時間30分+待機時間、送賓、どんでんなどがあるので、多くの会場で1披露宴会場当たり2回転/日、多くても3回転/日で設定していることが多いでしょう。
また、結婚式の9割以上は土日祝日に行われるので、基本的には土日しか稼働しません。となると、例えば月間の休日数が10日、チャペル1つ、披露宴会場数が2つで2回転/日のオペレーションを組んでいる会場であれば
- 2組/日×2会場=4組:1日当たりの上限受注結婚式組数
- 4組×10日=40組:1か月間の上限受注結婚式組数
となります。
結婚式場の商品は「時間」であると理解している人は、商品数が有限であると理解しているので、成約を受注していくときに「何月の商品をどのように販売していくのか?」という思考が働くのですが、その視点が抜け落ちてしまっている人は「とにかく毎月成約目標を達成できるように頑張ろう!」で思考が止まってしまうので、業績を理論的につくっていくことができません。
結婚式場の業績管理の難しいところではあるのですが、「施行ベース」の時間軸の計算と、成約ベースでの時間軸とずれるので話がややこしくなってしまうんですね。
業績管理を考えるときのもう1つのKPIツリー
あまりなじみがないかもしれませんが、予算を立てたり業績管理をするときはもう1つこのKPIツリーも頭の中で描いておかなければいけません。この中で、施行枠稼働率の上限値は100%なのですが、世の中の結婚式場の計画を見ると「あれ?これ100%超えてるから無理じゃない?」というのをたまに見かけます。
また逆に、業績を伸ばそうとするときに
- どうやって成約率を上げようか?
- 来館数をどうやって増やそうか?
これらしか考えていないケースも多いです。これらを考えることはもちろん大事なのですが、結婚式場の商品は時間(施行枠)なので、もっと視点を広げて「どうやって施行枠の稼働率を高めようか?」を考えることが必要です。
結婚式以外を販売してもいいのです、法人宴会や入社式、記念パーティの受注でもいいですし、スペースマーケットなどに出品してもいいでしょう。結婚式場運営は「時間」という見えない在庫を常に抱えている状態なので、このKPIツリーの分解視点がないと選択肢が狭まり行き詰まりやすいと思います。
実は似ている他業界の事例
個人的に似ていると思っているのが飛行機の座席予約とホテルの宿泊予約です。
飛行機の座席は路線と便数はあらかじめ決まっているので、販売数量は出航が決まった時点で決まっています。これをいくらで売るかを調整することで売上を最大化することを目指しますよね。この場合も、販売商品は「座席数」とプライシングが重要になります。
またホテルの宿泊予約も、部屋数は決まっているので、どの部屋をいついくらで売るのかを調整することで売上の最大化を目指します。人気のある日取りや部屋は高く、そうでない日や部屋は安くすることで稼働率と売上のバランスを保ちます。稼働率は100%以上にはならないので安売りしすぎてもダメ、というのが結婚式場と似ているところです。
結婚式場の商品についての考え方まとめ
販売しているのは施行枠である、という概念の人とそうでない人が議論をしても会話はかみ合いません。まずは議論する土台となる認識を揃えるところが大事です。もし、なんか議論がかみ合わないなぁと思う方は、ここから会話を始めてみてはいかがでしょうか。