アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
結婚式場で適切なマーケティングを進めていくためには、最適なCPA(反響単価・来館単価)目標を設定することが第一歩です。獲得したい来館予約数とCPAのバランスはどこが最適なのか、広告投資のアクセルを踏む余力はどのくらいあるのかなどを正確に把握するために、その考え方を今回の記事では書いていきます。
結婚式場のビジネスモデルを理解しよう
CPAについての具体的な話に入る前に、結婚式場ビジネスの構造理解が必要です。もう知っているよ!という方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。
一般的には上記のような流れになっていて、情報収集→問合せ→見学予約→式場見学→式場決定→打合せ→結婚式、と進みます。この各フェーズごとのKPIはそれぞれ、広告投資額/反響数/来館予約数/来館数/成約数/組単価であり、次のような関係になっています。
- 広告投資/CPA=反響数
- 反響数×来館予約率=来館予約数
- 来館予約数×来館率=来館数
- 来館数×成約率=成約数
- 成約数×(1-成約キャンセル率)=施行数
- 施行数×組単価=売上
この構造について詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてご覧ください。
1反響から得られる売上と利益の期待値を考えてみよう
ではこの流れを踏まえて、1件の反響が最終的にどれくらいの売上、利益になるのかを考えてみましょう。
この図は1反響が最終的にいくらの売上・利益の期待値になるかを図式化したものです。
- 1(反響)×80%(来館予約率)=0.8(来館予約)
- 0.8(来館予約)×80%(来館率)=0.64(来館)
- 0.64(来館)×40%(成約率)=0.26(成約)
- 0.26(成約)×(1-10%)(成約キャンセル率)=0.25(施行)
- 0.25(施行)×400万円(組単価)=100万円(売上)
- 100万円(売上)×(1-40%)(原価率)=60万円(粗利)
実際に現場で働いているプランナーの方などの感覚であれば普段そんなに意識することは無いと思いますが、もし来館予約の電話を1本取れなかったら100万円の売り上げをロスしていますよ、というのと同じ意味です。痺れますね。
ちなみに、反響数(フェア予約数、来館予約数など)をデータとして取っていない会社の場合は、来館からスタートすれば大丈夫です。
この場合だと1来館の売上期待値は150万円、粗利期待値は90万円ですね。なんか今日決める気なさそうだから~とか言いながら気の抜けた新規接客をする新規プランナーに対して「150万円を捨ててるのと同じやぞ」とパワーマネジメントされる際にお使いください。
利益の残る上限CPAを計算してみよう
ここまでで、オペレーションフローに沿って1CVから得られる売上/利益の期待値を算出できました。次のポイントでは、この粗利を稼ぐために広告費はいくらまで使っていいのかをどう判断するかです。
粗利から販売管理費を引いたものが営業利益になり、販売管理費には人件費、減価償却費・地代家賃、水道光熱費、旅費交通費などと広告宣伝費が含まれます。
1反響あたりの広告宣伝費を除いた販売管理費は、販売管理費の総額を総反響数で割ることで計算することができます。会社ごとに違いはあるでしょうが、ここではわかりやすく30万円だとして話を進めます。
- 1反響の粗利期待値は60万円
- 広告宣伝費を除く1反響あたりの販売管理費は30万円
- 60万円-40万円=30万円
- 20万円から1反響あたりの広告宣伝費を引いた残りが営業利益
つまり、
- CPA<30万円:黒字
- CPA=30万円:利益0
- CPA>30万円:赤字
となります。この場合の上限CPAは30万円ですね、となるわけです。これ以上だと利益は残りません。
目標CPAを決めよう
赤字にならなければいいという式場はないでしょうから、上限CPAを下回っていればOKというわけではありません。会社もしくは式場での営業利益目標額と、それを達成するために必要な反響数の計画数値から計算することが必要です。
例えば営業利益目標が1億円、反響数が1,000組だった場合、1反響あたりで稼がなければいけない営業利益は1億円/1,000組=10万円となり、10万円稼ぐために達成しなければいけないCPAラインは、30万円-10万円=20万円、となる、といった具合いですね。
このように、どこまでCPAが悪化するとそもそも赤字なのでむしろやらないほうがいいのか、というラインと、営業利益目標を達成するために必要なCPAのラインは、集客担当者は必ず把握しておくようにしましょう。
マーケティングや集客を専門としている組織では、CV数(反響数)とCPAだけを見て一喜一憂していることも多いように思いますが、事業運営全体の目標数値は、あくまで利益なので事業全体の数字のつながりを把握していくことはとても大切です。
結婚式場のCPAについてまとめ
細かな数値を取得・分析できるウェブマーケであれば、これまでの実績の平均CPCとCVRから、”目指せる”CPAを算出し目標として設定することもできます。ただ、そのCPAがそもそも事業PLで許容できるのか、CPAが1万円変わることが事業にどれだけインパクトを与えるのか、正確に把握できていなければそれはマーケ担当者の自己満足のになってしまいます。
CPAを設定する際は前年実績などから実現可能性を考慮して設定する方法もありますが、それと同時に事業としての目標を達成するためにどのラインが最適なのかも考えて設定することを心がけましょう。