更新日 2019年09月24日

2019年10月期第3四半期のアイ・ケイ・ケイ(IKK)の決算について考察してみた

2019年10月期第3四半期のアイ・ケイ・ケイ(IKK)決算

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

企業のIR情報を見て会社の状況や方針を理解できるのは、社会人としての重要なスキルの1つです。そこで、今回の記事では、アイ・ケイ・ケイ(以下、IKK)の2019年10月期第3四半期の決算説明資料をもとに、その内容について考察してみようと思います。(注)本記事の内容はあくまで個人的な見解であり、投資向けに書いているわけではありません。この記事の内容をご覧になられて投資判断をされても一切の責任を負えませんのでご了承ください。

 

今回の第3四半期決算の概要

元となるIKKの2019年10月期第3四半期の決算説明資料は下記URLで見ることができます。
https://www.ikk-grp.jp/ir/library/presentationmaterials/main/0/teaserItems1/010/linkList/02/link/190830setsumei.pdf

決算概要

アイ・ケイ・ケイの2019年度第3四半期の決算分析_決算概要
アイ・ケイ・ケイの2019年度第3四半期の決算分析_決算概要2
数字がたくさんあるのでざっと見るべきポイントをまとめると

  • 売上高:前年比ほぼ同水準
  • 売上総利益:前年比ほぼ同水準
  • 営業利益:前年比1.1億円ダウン
  • 当期純利益:前年比0.6億円ダウン
  • → 売上、粗利はほぼ同水準ながら、総じてみれば減収減益

とみてよいと思います。ほぼ前年と同水準でここまで推移してきています。第3四半期まできてもここまで同じような数字になるのはある意味ですごいなと思います。例えば、売上の前期比は2,400万円減ではありますが、IKKの年間施行組数は約4,700件、平均組単価は400万円前後なので、組数で言えば6組の差、単価で言えば5,000円程度の差になります。これくらいの規模の会社にとっては誤差のような範囲のずれです。よくとらえれば業績は安定している、マイナスに見ると伸びていない、と言えます。

もう1つ気になった点が四半期ごとの施行組数の分布です。

アイ・ケイ・ケイの2019年度第3四半期の決算分析_四半期ごとの分布
こちらを見ていただくとわかるように、第4四半期の施行組数が一番多くなっています。また、これは強気の目標数値ではなく、2019年7月末時点の予定組数なので大幅に外すことはないでしょう。IKKは10月末決算なので第4四半期は8月・9月・10月です。この中で8月は1月と並ぶ結婚式の閑散期であり、ナチュラルにユーザー希望月通りに受注したらこのような分布にはならないと思うんですよね。

希望月分布通りなら四半期ごとの施行組数はもっと平均化されるはずです。少なくとも3か月で20%近い差が出ることはないと思います。

となると、営業の段階で受注する月をコントロールしているか、集客の段階で期末に寄せるようなプロモーションを展開しているのか、業績を作りに行っているのではないかと思います。だからどうだという話ではないですが、四半期別の受注数を公開している企業も珍しいですし、その中でもここまでの差が出ているのも珍しいなと思いました。

こちら以外にも、各KPIについて細かい資料が公開されていますので、ぜひ一度ご覧いただくとよいかと思います。

また、計画比についても触れておきます。

アイ・ケイ・ケイの2019年度第3四半期の決算分析_通期見通し
売上はほぼ前期と同じとなる見通しだが、営業利益、当期純利益は前期比マイナスとなる見込み、となっています。安定しているとも言えますが、営業利益率は年々下がってきています。
数字はこちらで書いた通りなので、次に今回の決算資料のトピックについても簡単に触れていきます。

東京に新規店舗を出店

アイ・ケイ・ケイの2019年度第3四半期の決算分析_東京に新店舗開業
これまで九州を中心に地方都市への出店がメインだったIKKが東京に出店します。近隣の会場だとアニヴェルセル豊洲が近いですね。他の上場企業でも新規出店ペースは落ちてきていますが(むしろ店舗閉鎖のリリースもよく見かける)、2019年7月にも神戸に新規店舗を出していますし、このタイミングでも新規出店を続ける戦略を取ることがどう出るか、今後に注目です。

既存店舗のリニューアル

アイ・ケイ・ケイの2019年度第3四半期の決算分析_店舗リニューアル
上記の2店舗でリニューアルを実施し、まだ半年弱しかたっていないので成果(施行組数)としてあらわれてくるのはこれからでしょう。すでに来館や成約率には影響は出ていると思いますが。。

一般的に、リニューアルは明確に集客や成約率を改善することを目的としているので会場修繕とは違います。また結婚式場はゲストを含めてもリピートすることはほぼないので「会場のデザインや装飾に特定のユーザーが飽きた」という状態になることもありません。となるとリニューアルをする際は特定のユーザーに対して行うものではなく、マーケットのトレンドにフィットしたものに会場を作り替えることが必要になります。イメージとしては新規オープンに近いかと。なので、思っている以上にリニューアルして業績を改善させるって難しいんですよね。

もし今回のリニューアルがうまくいき、今後のリニューアルも計画通りに進められてかつ再現性を持って改善できると、業績的にもかなり安定してくるのではないかと思います。

 

海外事業

アイ・ケイ・ケイの2019年度第3四半期の決算分析_海外事業
ただ自分が知らなかっただけですが、IKKって海外もやってたんですね…。しかもインドネシア。他のいわゆるリゾートウェディング企業とはあまり重ならないですがニーズがあるかどうかもわからないので、どこまで伸びるのか…、といったところでしょうか。ただ、単黒までは来ているようなのでこれから、という感じですね。

アイ・ケイ・ケイ(IKK)の2019年10月度第3四半期決算についてまとめ

ほんとに簡単にですが、決算説明資料をもとに考察を書いてみました。ブライダルの現場で働いていると企業のIR情報を見ることはほとんどないとは思いますが、他の会社でどんなことをやっているのか、起こっているか、ブライダルマーケット全体をどのように捉えて動いているのかなどがわかると意外と楽しいと思うので、この記事をきっかけにIR資料も見るきっかけになってくれればうれしいです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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