更新日 2021年09月26日

結婚式場運営の業務マニュアルはどこまで必要?

0103_結婚式場の業務マニュアルはどこまで必要?

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

営業マニュアルやトークスクリプトを運用している結婚式場は多いですが、お客様がリピートしない&契約時点で最終的なイメージがわからない商材である結婚式の販売において、マニュアルを整えて運用することにメリットはあるのでしょうか?

今回の記事では結婚式場の業務マニュアル運用についてメリットとデメリット、必要性についてまとめます。

 

結婚式場でよくある業務マニュアル

結婚式場に限らず、会社や企業では業務オペレーションを円滑に回していくために「オペレーションマニュアル」を作っていることが多いと思います。結婚式場であれば、

  • 電話対応マニュアル
  • 新規接客マニュアル
  • お出迎えマニュアル
  • 会場内覧トークスクリプト
  • 見積り説明トークスクリプト
  • 約款説明トークスクリプト
  • 顧客管理システムマニュアル
  • などなど

などなど。会場によって種類や内容は様々だと思いますが、多かれ少なかれ業務マニュアルは存在することがほとんどでしょう。こういったマニュアルを運用するうえで重要なのは、次の3つです。

  • 更新性:常に最新にアップデートされる仕組みが整っているか
  • 情報へのアクセスのしやすさ:見ようと思ったときにすぐに見れる環境になっているか
  • 徹底度:どこまでマニュアルの運用が浸透しているか

マニュアルは存在するだけでは意味がなく、スタッフがそれに基づいて業務を行うことで業務精度が高まり、生産性が高くなり、最終的にユーザーに対して質の高いサービスを安定して提供できるようになった始めて効果を発揮するものです。

 

徹底したマニュアル運用の事例

具体的な営業マニュアルに入る前に、キーエンスという会社について少し紹介します。

株式会社キーエンス:https://www.keyence.co.jp/

ブライダル業界の人にはあまりなじみがないと思いますが、キーエンスは大阪に本社を置く自動制御機器を中心とした製造販売会社で、社員の平均年収が1,752万円(DODA)と日本で最も高い会社として有名です。経常利益率は驚異の50%超えという超高利益体質の企業です。

キーエンスは「営業のオペレーション」がすさまじいレベルでとにかく徹底されているのですが、

  • 外勤の日の外出報告書はこれに1分単位で客先到着時間や面談終了時間について記載、虚偽記載は降格
  • 内勤の日はひたすら電話、1日60件ほどは発信し受電も含めると100件以上
  • 利益目標を達成できないとなぜ売れないのかを繰り返し上司に詰められる

というような、超合理主義のオペレーションが徹底されています。その結果、どの営業マンも高い営業成績を挙げることでき、会社としても高収益、働く人の年収も日本一、となっているのです。

ブライダルとは業界も違えばビジネスモデルも違うし規模も違うので比較すること自体がナンセンスかもしれませんが、このくらいオペレーションを徹底的に合理化してやり切って、圧倒的な利益を出している企業もあるよ、という紹介でした。

 

結婚式場の業務マニュアルを作成・運用するメリット

さて、話を戻しまして、結婚式場運営で業務マニュアルと作成しオペレーションまで徹底して運用するとどういうメリットがあるのかについて考えてみます。

必要なマニュアル 運用オペレーション
来店予約 来店予約が入ってからの電話対応のスピード、回数、話す内容、想定通話時間、予約を取るべき曜日・時間帯、また資料送付の対応手順などを記載 想定されるケースごとの担当とオペレーションを徹底して運用。通話内容はすべて録音し、セントラルで管理部門がチェック
新規接客 アサインの序列、来店時の接客フロー、トークスクリプト、内覧ルート、接客時間、案内するツール、見積りの作り方、などを記載 マニュアルやトークスクリプトの内容を忠実に再現できるまでロープレ、接客は録音してチェック
顧客管理 顧客管理システムへの入力方法、入力項目、入力にかかる想定時間、引継ぎに必要な事項、トーク内容など、顧客管理に必要な事項を記載 入力にかかった時間、入力漏れがないかを個人単位でログイン履歴などをもとに管理
業務報告 接客時間(分単位)、トークの内容、接客結果、ロープレ等事前準備の進捗、提示した見積り・成約した見積り内容、事務処理の時間などを記載 接客単位で上司やマネージャと振り返りを行い、なぜ成約になったのか/ならなかったのかを突き詰める

例えば上記のようなマニュアルを用意し、オペレーションまで運用できたとすると、

  • 新規営業のオペレーションが安定するので営業成果が上がる。
  • 誰が出ても同じ接客ができるので、お客様に提供するサービスの質が安定する。
  • 何をすれば成果が出るのかがわかっているのでスタッフの成長の道筋を立てることができる。

というメリットがあります(ただし、一般的なBtoBモデルの事業と比べて、営業が自分で集客することができないので「集客ができている会場であること」が前提となります)。

そこまでやりたいかどうかはさておき、このようなオペレーションを徹底し、

  • お客様の来店の時間は決まった時間に固定で1日3回転できるようにアポを取り、
  • 新規プランナーは必ず1日3回転の接客をし、
  • 接客は毎回3時間で終わり、
  • 1人が月間で40回接客出て、
  • 成約率50%を維持できる。

ここまでの成果を実現できれば、新規プランナーの年収を800万円(業界平均の倍)くらいにしても、経営的に余裕で大丈夫だと思います。

年収800万円のプレーヤーは業界にはほとんどいないと思いますので、相当な高給取りになれます。本当に、徹底的に浸透させれば売上は伸びると思います。これがメリットです。

 

マニュアル運用を徹底することで生じるデメリット

では逆に、デメリットは何でしょうか。

まず、辞める人が続出すると思います。長時間労働がきついと言うより、徹底管理されるプレッシャーが半端じゃないですし、重圧に耐えられないことの方が多いと思います。先ほど紹介したキーエンスも「30歳で家が建ち、40歳で墓が立つ」と言われているくらいですから、営業のマニュアルやオペレーションを徹底することは相当厳しい環境なのだと思います。

次に、採用方針や企業文化とのアンマッチが起こると思います。ブライダル業界での仕事を志す人は、どちらかと言えば仕事への憧れや想いの強い人が多い印象なので、クリエイティブでハートフルな仕事への希望と、ガチガチのオペレーションを強いられる現実の間で悩むことも多いでしょう。

また、企業ブランドや採用方針でも業績最優先で給料が高いことを謳っている会社はないので、もともとそういった環境を志望しては入社してくる人もいないはずです。

最後に、徹底したマニュアルとオペレーションを構築する、誰が担当しても質の高いサービスを安定して提供できるようになりますが、これは裏を返すと誰がやっても同じ結果になる、とも言えます。

働いている人からすると「自分でなくても同じ結果が出る」と思ってしまうので、長く働くモチベーションがわかずやはり人材の定着につながらないこともデメリットになると思います。

 

結婚式場の業務マニュアル運用についてまとめ

マニュアルは業務品質を安定させられるという面で必要ですが、どこまで徹底するか(できるか)は会社の文化や風土にもよってくるので、マニュアルや業務オペレーションを整えること自体を目的とするのではなく、自社の環境や文化にマッチしたものをしっかり設計し、根付かせていく努力をするようにしましょう。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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