更新日 2021年08月17日

ブライダルビジネスの構造とKPIをわかりやすく解説

0001_ブライダルビジネスの特徴

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

この記事ではブライダルビジネスの構造とKPI、結婚式場運営で知っておくと役立つ知識をわかりやすく解説します。ウエディングプランナーだけでなく本社の方まで幅広く重要な内容なので、ぜひご覧ください。

 

結婚式までの一般的な基本的な流れ

01_結婚式までの流れと結婚式場の対応部門

1.情報収集

ゼクシィなどの結婚情報誌、みんなのウェディングやウェディングパークなどのウェブサイト、ゼクシィなびやハナユメ、マイナビウエディングなどの結婚式場紹介カウンターなどがメインで、最近ではInstagramも重要な情報収集源の1つになっています。

結婚式場では集客・マーケ部門がこの領域の業務を担当しており、ブライダル媒体広告の運用やHP改善、ウェブマーケティング施策、SNS運用などを日々行っています。規模の大きな会社であれば本社のマーケティングを管轄する部署が行っている場合も多いですが、少数会場を運営していたり会社の方針によっては会場のプランナーや支配人が直接各媒体とやり取りしている場合もあります。

2.問合せ

問合せ種類には「ブライダルフェア予約」「来館予約」「資料請求」「空き情報問合せ」などいくつかありますが、ブライダルフェア予約と来館予約は事実上同じです。また、問合せ方法も、電話、媒体やHPから予約、LINE相談、SNSのDMなど近年は多様化してきています。

式場の対応はコールセンター部門を持つ会社もありますが、多くは結婚式場ではプランナーが対応しています。

3.見学予約の確定

問合せ後にフェア内容や見学日時などを電話/メール/チャットで確認して見学予約が確定します。希望の見学日時が満席だった場合や、送付資料のイメージが違った場合などは予約につながりません。

式場側の対応としては、問合せ後の電話やメールでのやり取り、別日の提案などを丁寧に行うことが必要です。

4.式場見学(来館)

式場見学に来ることを意味し、式場側の目線で言えば来館と同議です。見学予約確定後でも、他式場での成約や予定の変更、無断の場合などキャンセルすることも少なくありません。

来館後は、ウェディングプランナーが新規接客を担当します(分業制なら新規プランナーが、一貫担当制ならウエディングプランナー)。一般的な初回来館時の接客フローは以下の通りです。

  1. アンケート記入
  2. ヒアリング
  3. 内覧
  4. 試食
  5. 見積り説明
  6. クロージング
  7. (成約の場合)契約書類記入/約款説明

所要時間は約3時間前後が一般的で、模擬挙式やウエディングドレス試着、フルコース試食など内容は様々です。最近では多くの会場が即決新規なので、初回来館日に成約まで案内することがほとんどですね。

5.式場決定(成約)

式場見学で気に入ってもらえたら無事決定です。このタイミングで決まるのは、申込日、挙式日時、挙式会場、披露宴会場、見積り、値引き、です。式場決定までの平均見学会場数は2.5~3と言われており、これを裏返すと、1/2.5~1/3(33%~40%)が業界全体の平均的な成約率となります。

6.打合せ

会場にもよりますが結婚式の約4ヶ月前から早くても半年前から打合せが始まります。分業制の式場の場合は、初回見学時に担当したプランナーとは別のプランナーが担当し、一貫担当の場合は変わりません。

またプランナー以外にも、ドレスやフラワー、司会者、音響の方など多くの担当者との打合せを行い結婚式の具体的な内容を決めていきます。

結婚式場の業績観点で考えると、いわゆる単価アップがメインとなるフェーズとなり、打合せを通じて、人数アップ、グレードアップ、オプション追加で組単価を上げます。

7.結婚式

当日です。これまで打合せを重ねてきたものが一つの形となる日です。ブライダルの現場に携わるすべてのスタッフが登場します。

 

ブライダルビジネス(結婚式場運営)のKPI

01_結婚式場経営のKPI_2

フェーズごとの数字、KPIの図です。特に業績や数字の話をする際はオペレーションとセットで覚えると覚えやすいと思います。

1.広告宣伝費

広告出稿にかかる費用です。雑誌やウェブ媒体への出稿は月額いくらといった固定金額の契約が多く、カウンターでは成約報酬型、来館報酬型の契約をしている場合が多いです。

2.反響数|CPA

会社によってKPIの表現は変わったり計測していない場合もありますが、「ユーザーから問合せがあった数」のことです。ブライダルフェア予約、来館予約、資料請求、空き状況問合せなど複数の問合せ種類があるのですべてを反響と定義しているかは式場によって異なりますが、問合せ以降のKPI数値に大きな差がある場合は合算で集計するのではなく別々で集計したほうがより精度の高い分析ができるでしょう。

CPAはCost Per Acquisionの頭文字で、1反響獲得するのにかかったコストを指します。

3.来館予約数|来館予約率

来館予約が確定した数です。
反響数×来館予約率=来館予約数、となります。反響定義にもよりますが、おおむね70%~80%程度のことが多いですね。

4.来館数|来館率

式場に来館した数です。
来館予約数×来館率=来館数、となります。平均的には80%程度だと思います。言い換えると予約したけどキャンセルまたは来館しない人が20%くらいはいます。

5.成約数|成約率

式場と契約した組数のことです。多くの式場の場合、申込金の受領と申込書・契約書の記入、約款の説明をもって成約と定義しています。
来館数×成約率=成約数、で業界平均は40%前後だと思います。

6.組単価

1組あたりの最終的な見積りの金額です。結婚式の見積りは申し込み時から平均して80万円程度上がるので、上がった後の金額のことです。
アイテムごとに細かく定義するなら、料理単価×数量+飲料単価×数量・・・となりますが、いったんここでは割愛します。

7.売上

成約数×組単価=売上、となります。

ここまでの各KPIをまとめると以下の通り。これらの数字の相関性は日常的に引き出せるようにしておくといいでしょう。

01_ブライダルビジネスのKPIの関係式

 

ブライダルビジネスのKPIツリーと改善の考え方

01_ブライダルビジネスのKPIツリー

先ほどのKPIをツリー構造で表現するとこうなります。

結婚式場を運営していく上で業績改善、つまりはKPI改善が必要になるわけですが、

  • 広告を改善して集客を増やそう、とか
  • 研修を実施して成約率を上げよう、とか
  • 社長からの闘魂注入しよう、とか

数値根拠のない場当たり的な施策をたくさん実施しても根本的な改善にはつながりません。

まず具体的に「いくら売上または利益を伸ばしたいか」を決め、そのために「どのKPI」を「何%伸ばせばいいのか」をきちんとシミュレートを行ってからそのための施策検討に入ることが大切であり、ブライダル業界ではこのロジックの積み上げが弱いと個人的には感じています。

例えば下記のような状況の式場が売上を10%伸ばしたいという目標を立てた場合について考えてみます。

KPI 現在
反響 100
来館予約率 80%
来館予約数 80
来館率 80%
来館数 80
成約率 40%
成約数 32
組単価 400万円
売上 1.28億円

この数値を元に、どの数値をどれくらい改善するといくらの目標売上に届くのかをシミュレートします(広告宣伝費を変えられず反響数は固定の前提とします)。

KPI 現在 シミュレート 差異
反響 100 100
来館予約率 80% +2% 82%
来館予約数 80 82
来館率 80% +2% 82%
来館数 64 67
成約率 40% +2% 42%
成約数 26 28
組単価 400万円 +2% 408万円
売上 1.04億円 1.15億円 +0.1億円

このように「組単価」「成約率」「来館率」「来館予約率」の4つの数値をそれぞれ2%ずつアップさせると、最終的な売上は10%上がることがわかります。ここまでが第一段階。

そして次に、じゃあ来館予約率を2%上げるためにはどうしたらいいだろうか?来館率を2%上げるためにどうしたらいいだろうか?というそれぞれのKPIをシミュレートした数値分、向上させる施策を検討していきます。

具体的な施策論やその有用性についてはこの記事では割愛しますが、このようなKPIごとの数値のシミュレートをきちんと行い、「どのKPI」を「どれくらい」伸ばせばいいのか、その前提認識を関係者でそろえておくことが重要です。

 

ブライダルビジネスの構造とKPIについてまとめ

  • 結婚式までの基本的な流れを理解する
  • 流れに沿った数値とそのKPIを理解する
  • KPIごとの関係性を理解する
  • 数値改善に取り組むときは「どのKPI」を「どれだけ」改善することが必要かを積み上げてシミュレートすることが大事

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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