更新日 2021年08月25日

結婚式場のコールセンター導入について、メリットと期待効果を考えてみた

0024_結婚式場のコールセンター導入はメリットと期待効果について考えてみた

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

反響問合せ~来館までのフェーズは業績観点でも顧客満足度の観点でも非常に重要度の高いプロセスにもかかわらず、来館予約対応は特に何もしていないという会社も少なくありません。

今回の記事では、ブライダル専門のコールセンターの責任者をしていたときの経験をもとに、来館予約業務を最適化し、業績改善するための「コールセンターの導入」について解説します。

 

コールセンターの担当業務と位置づけ

24_コールセンターの担当範囲

「来店予約業務」の対象範囲と責任について

コールセンターは問合せが入ってからお客様が実際に来館するまでの対応がメインで、「アポ数(来館予約確定数)」「来館数」「アポ率(来館予約確定率)」「来館率(来館キャンセル率も同義)」などの数値責任を負うことが一般的です。

もし行動量評価を取り入れている会社であれば「架電数」や「受電数」、「資料発送数」なども評価項目に含まれるでしょう。

コールセンターの来店予約業務の概要

24_コールセンターの来店予約業務の概要

▼お客様対応業務

  • インバウンド対応:会場の電話番号にかかってきた電話の対応(結婚式場検討者だけではなく列席者なども含む)
  • 来館予約対応:ウェブ媒体や会場ホームページから入った来館予約に対してお客様に架電する対応
  • お問合せ対応:会場ホームページからのお問合せの対応
  • 資料請求対応:資料の発送業務
  • 来館予約確定後のフォロー:来館日の前日または数日前にリマインドの架電
  • 再来や打合せの予約対応:架電またはメール・受電での対応(会社・会場によっては会場のプランナーが担っている場合もあり)

▼内部処理や情報共有

  • 顧客データベースへの情報入力
  • 来店予約情報のスケジューラ・台帳への登録
  • 会場のプランナーへの情報共有(メールまたは電話、チャットツールなど)
  • エージェントとの情報共有・打合せ

コールセンターを設けていない会社では式場のプランナーが上記業務を行うことが多いですが、基本的に問合せは忙しい土日の方がいいので、これらの業務に集中して精度高く取り組めている式場は多くはありません。

 

コールセンター導入のメリット

24_コールセンター導入のメリット

①アポ率・来館率の向上

オペレーションをしっかり組めればまず間違いなくアポ率・来館率は向上するので、この業績改善が導入の一番のメリットだと思います。

  • 来館予約や問合せが来てから架電までの時間や対応までのスピードが上がるので通電率(電話がかかる率)が上がる→アポ率が上がる
  • 資料請求の送付までの時間が早くなるので最初に届く→第一候補会場になりやすい→アポ率が上がる
  • 中間フォローでリマインドの架電をするのでうっかり忘れてこない可能性が減る→来館率が上がる(キャンセル率が下がる)
  • 来館確認電話をするのでもしキャンセルの場合は早い時点でわかる→接客枠を再活用することができるので受け入れ可能接客枠が増える→アポ率が上がる
  • 細かく上げれば他にもたくさんいいこと起こりやすくなる

②業務負荷分散、接客業務に集中

来館予約業務を式場プランナーから切り離すことができるので、その分の工数を確保することができます。

来館予約や資料請求は土日祝日のほうが多く、ただでさえ忙しい日にさらに来館予約対応業務まで、となりやすい。そのためバタバタした週末の中での優先順位は低くなりがち。

この業務がなくなることでプランナーは新規や施行に集中することができますし、事務スタッフや手が空いているスタッフでチャペル見学後のフラワーシャワーや拍手体験を演出することもできるようになったりするので、全体での成約率や顧客満足にもいい影響を与えることもできます。

③成約率の向上

事前のオペレーション設計とヒアリング項目が精査されていることが前提ですが、来館予約時、中間フォロー時、来店日前日にお客様ときちんとコミュニケーションが取れると、他会場の検討状況や予算感などを来館前に把握することができるので、新規の接客シナリオをより精緻に事前に立てることができます。

新規の成約率は事前のシナリオ組みが非常に重要ですから、来館前に得ることができるお客様情報が質・量ともに上がって成約率も上がる、いうのも大きなメリットの1つと言えます。

 

コールセンター導入のデメリット

  1. 24_コールセンター導入のデメリット・懸念点

①費用が掛かる

導入の検討をする際にこれが一番のネックになると思います。

内部で組織化する場合、導入時にシステム導入・構築費とメンバーの採用費(異動の場合でも補填人員を採用しなければいけません)がかかります、少なくても数百万~1千数百万円くらいはかかるでしょう(すでに相応のシステムが入っている場合はもう少し抑えられます)。

さらに、導入後もコールセンターメンバーの人件費、地代家賃が固定費として乗ってくるので、規模にもよりますが毎月百万円~数百万円が増えることになります。

外注する場合は、外注先によりますが初期費用と固定費がかかります(ほんとにピンキリなので一概には言えませんが、固定金額の場合と従量課金制の場合があります)。

②コミュニケーションロスが起きやすい

基本的にコールセンターとプランナーは勤務する場所が別々になります。

これまではお客様の来館予約対応を電話しながら隣のマネージャに聞く、といったこともできましたが、コールセンター導入後はそれができません。都度電話またはメール・チャットツールで確認しながら進めていくので、どうしても社内コミュニケーションにかかるコストは大きくなります。そうすると情報の伝達ミスの可能性はどうしても増えてしまいます。

また、組織が大きくなってくるとお互いに会ったことがないメンバーがいる、会場を見たことがないスタッフが電話を受ける、というケースも増えてくるので、そこをギャップを埋めるための取り組みは必須であると言えるでしょう。

③1人のお客様に対する対応車の人数が増える

1人のお客様が初めて問合せをしてから挙式を迎えるまで、コールセンターの担当者、新規プランナー、打合せプランナーと3人のリレーになります。特に来館するまでと来館時に対応するスタッフが別になるので、来館予約時に話した内容が新規プランナーにしっかり伝わっていないと不信感につながってしまうリスクが増えます。

また、お客様がどこに連絡すればいいのかわからなくなってしまわないように、何を聞きたいときは誰に連絡をすればいいのかをしっかりお客様に伝えることも重要になります。

 

コールセンター導入の業績的期待効果

業績観点では、会場が来館予約対応業務を行うよりもコールセンターがあることによってアポ率と来館率が向上すること、が付加価値となります。

24_コールセンターでKPI改善した場合の業績の期待効果

例えば上記のようなシミュレートの場合、同じ成約率・単価でも約1.7億円(18%)も業績を伸ばすことができます。ちなみに、これは単店でのシミュレートなので、複数店舗を運営している会社は上記×運営店舗分の業績改善につながります。大きいですよね。

 

社内で組織化 or 外注の判断基準

コールセンター内製化(社内で組織化する)のメリット

  • 同じ会社のメンバーなので比較的情報連携がしやすい
  • メンバーが社員なので固定費のコントロールがしやすい
  • ノウハウが蓄積していくので改善サイクルを回りやすい
  • ブライダルに詳しい人が多い

コールセンター外注のメリット

  • コストを変動費化できる
  • コールセンターのオペレーションのプロなのでノウハウに期待できる
  • コールセンター人員の採用や育成、マネジメントコストが掛からない

デメリットはそれぞれの裏返し、という感じです。どちらもいいところもあれば悪いところもあるので一概にどちらがオススメということはないですが、個人的な意見としては、ある程度の規模がある(5店舗以上が目安)会社なら内製、そうでない会社は外注、という事業規模基準で判断するのがいいかなと思います。

規模を基準としている理由は、組織化するためにはある程度の人数でコールセンターを構成する必要があるためです。少なくとも4~5名程度はコールセンタースタッフがいたほうがいいと思います。そうすると、この人数で1店舗を対応するとなる非効率すぎるので、店舗数が5店舗くらい(1名1店舗くらいの計算でしょうか)あったほうがうまく回ると思います。

コールセンターを最大限活用するために必要なこと

コールセンターを導入したのはいいが期待した成果が得られないので撤退した、というケースも少なくありません。ここまでメリットについて主に書いてきましたが、このメリットと最大限生かすためには「徹底したオペレーション管理」と「顧客DBやスケジューラなどのインフラ整備」を行うことが絶対に必要です。

24_コールセンターを最大限活用するために必要なこと

徹底したオペレーション管理とは?

問合せケースごとに、誰が、いつまでに、どんな対応を行うのかが全て決められている状態、かつそれ通りに動いているかを確認できる状態になっていることです。

●●迎賓館の来店予約が入ってきたらどうするのか、資料請求と同時の場合の業務の割り振りの優先順位は、会場までの道順を聞かれた場合にどう伝えるのか、などなど、本当に細かいことまでマニュアル化してあり、困ったらそれを見れば大丈夫という状態を作り切れるまで徹底しましょう。

顧客DBやスケジューラなどのインフラ整備とは?

コールセンター導入のメリットを得るためには、関係部署間のシステムを介した情報連携が必須で、顧客情報を蓄積していてスタッフがアクセスできるDB、会場ごとのスケジュールを確認できるスケジューラ・台帳、などはなければいけないものでしょう。

外注の場合はすでにコールセンター側で持っていることもありますが、会場スタッフ側もそれを使えるようになるまで訓練が必要ですし、業務オペレーションに組み込むことになるので、できれば内部で持っておいたほうがいいでしょう。

 

結婚式場のコールセンター導入についてまとめ

ブライダル業界でのコールセンター導入のメリットは「業績改善」と「業務工数の最適化」です。ただ、このメリットを受けるためにはそれなりにコストもかかるので、掛かる想定コストに対してリターンがどれだけ得られそうかをできだけ精緻に分析・予測をした上で検討、判断されてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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