更新日 2022年04月07日

ブライダル業界の市場縮小を見える化してみたらけっこう深刻だった話

0483_ブライダル業界の市場縮小を見える化してみたらけっこう深刻だった話

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

日本全体の人口が減少フェーズに入り、未婚率の上昇、結婚式実施率の減少(なし婚の増加)などいくつもの要因が重なり、ブライダル業界全体の市場規模は縮小傾向が続いています。このこと自体は特に目新しい情報ではないですし、多くの記事や調査レポートでも公開されています。ただ、数値は分かれど具体的にどれくらいのスピードで減っているのかイメージはつかみにくいんじゃないかなと思います。そこで、今回の記事では「bar chart race」を使って、市場規模の推移を見える化してみました。

 

都道府県別の婚姻件数推移

▼まずはこちらをご覧ください


これは、1950年から2017年までの都道府県別の婚姻件数の推移をグラフ化したものです(上位20都道府県)。Flourishというツールを使って作成していますが、詳しい作成方法などは今回は割愛します。興味ある方は調べてみてください。また、データ元はe-Statの人口動態調査です。

ブライダル(の中の結婚式)の市場規模は

  • 市場規模=婚姻件数×結婚式実施率×平均組単価

これで計算できるので、上記の婚姻件数グラフの推移はおおむねブライダルの市場規模と近い推移を表していると考えられます。

1950年~1979年の推移

都道府県によって多少の差はあれど、総じてみれば婚姻件数は伸びています。人口も増えていましたし、結婚すれば結婚式を挙げるものという考え方が一般的でしたから、戦後の人口増加に沿って増えていた時代です。

1980年代の推移

大都市圏(東京、大阪、神奈川、埼玉、千葉、愛知)の婚姻件数が伸び、そのほかの地域は横ばいの10年間です。人口動態と合わせてみる必要はありますが、結婚適齢期の人が大都市圏に移り始めたんじゃないかと思います。

1990年代の推移

1990年代前半は全国的に伸び、1990年代後半は東京以外は減少しています。婚姻件数の減少はすでにここから始まっていたんですね。現在の業界最大手テイクアンドギヴ・ニーズの創業が1998年ですから、ブライダル業界全体で減少が始まった!というよりはゲストハウスウェディングトレンドが始まった時期、という印象の方が強いと思います。

2000年~2009年の推移

東京は伸び、東京以外はほぼ全道府県で減少しています。しかも減少スピードが加速していて、この10年で約20%は減少しています。この頃はゼクシィ×ゲストハウス、ホテル、レストランがかなり浸透してきていて、組単価が大きく伸びた時期なので組数減少があっても体感的には市場規模が減ってきている実感はあまりなかったかもしれません。

2010年~2017年の推移

いよいよ東京も減少フェーズに入ります。この7年(おそらく2020年現在も続いていると想定される)は全国的に婚姻件数が減少しています。どこかで下げ止まるのかこのまま続くのかはわかりません。

ざっと年代ごとの推移をまとめるとこのようになります。ちなみに、47都道府県すべてのグラフを表示したものは下記になります。字が小さいので特にスマホだと見えないと思いますが、全体の推移イメージはつかみやすいと思うので載せておきますね(沖縄県は1972年以降のデータしかありません)。

これからの時代に生き残るためには?

人口減少、婚姻件数の減少はおそらく今後も続きます。国全体のマクロな課題なので正直一企業の力でその流れを食い止めるのは難しいと思います。その前提で、どのように考えてこれから企業経営・式場運営していけばよいか、私なりの考えを書いてみます。

企業として目指すところを明確にする

まず、こういった時代であるということを踏まえて目標をどこに設定するのか、それを定義することが大切だと思います。

  • 売上、利益、施行組数、新規成約数、など事業運営にかかる経営数値やKPIは多くありますが、どの数字をいくつにすることを目指すのか、こちらを決めることがまずスタートです。
  • 結婚式を増やすのか、結婚式場を使ったビジネスで稼ぐのか、これは似ているようで発想の幅が大きく変わるので、目標が決まったら次にその方法を決めます。

施行組数を増やすためにできることを実行する

このブログでも多く取り上げていますが、基本的なKPIは施行組数=来館数×成約率、なのでいずれかまたは両方を伸ばす必要があります。

まず来館数は、エリア内顧客数×自社シェアで計算できますが、冒頭の婚姻件数の推移でも紹介したように全国的にエリア内顧客数は年々減り、自社シェアを伸ばすにももう限界、という企業は多いと思います。となると、エリア外から顧客を持ってくることが必要です。

  1. 国内の他エリアから獲得する
  2. 海外から獲得する

のいずれかですね。以下、実現可能性を検証していないアイディアベースの話ですが、

  • 地元の観光施設や名所を回るツアーをパッケージ商品にして売る(日本人がハワイで挙式とハネムーンを兼ねるような感覚になれるような)
  • 接客オペレーションをオンラインにする(ウェブシステムなどを活用、遠方顧客の接客をする際の地理的なハードルを下げる)
  • SNSやSEOなど、拡散地域を拡大したときにコストが増えない手法で集客する

などが挙げられます。それ以外にも全国に販売網を持った法人と業務提携するなども考えられます。

次に成約率については、オペレーションを高い次元で効率化すれば今より上がりそうな余地がある会場は多い気は勝手ながらしていますが、これは現時点の会場でどのような運用がなされているか次第なので、一概には言えませんね。。

また、特に地方など商圏が狭いのであれば列席者まで含めた顧客情報をもとにしたCRM施策を地道に続ける、というのも方法です。ただ、これは成果が出始めるまで3年くらいはかかりるので根気よく取り組むことが必要になります。

結婚式場を使って結婚式以外でお金を稼ぐ

  • 平日の結婚式場を法人向けに販売する(一般宴会、など)
  • フォトウェディングなどの商品を企画する

などなど。ここは私個人でもいいアイディアを持っていないところですが、結婚式場の持つリソース(ハード、人、ノウハウ)を使って結婚式以外で収益をどうやって伸ばすか、これがキーになる気がします。東京以外はすでに減少が始まって10年以上たちますので、これから大規模な施設改修の投資をしても回収の難易度は高いでしょう。なので、仮に資金があってもオススメしません。

 

ブライダルの市場規模推移についてのまとめ

市場規模(=婚姻件数)は、地方は2000年代からすでに減少が始まり、東京も2010年からは減少が続いています。今後も同様の傾向は続くでしょう。

こういった予測に対し、結婚式場が考えることをまとめるとポイントは3つです。

  • 施行組数を増やすための基本的な施策と新規獲得の施策の両面で考える
  • 新規獲得は商圏を広げて捉えて何ができるかを考える
  • 結婚式だけにとらわれずに結婚式場でどうマネタイズするかを考える

正解のない大きな課題ですが、どういったことで貢献できるかはこれからも引き続き考えていきたいなと思います。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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