アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
企業のIR情報を見て会社の状況や方針を理解できるのは、社会人としての重要なスキルの1つです。そこで、今回の記事では、ツカダ・グローバルホールディング(以下、ツカダ)の2020年12月期第2四半期の決算説明資料をもとに、その内容について考察してみようと思います。(注)本記事の内容はあくまで個人的な見解であり、投資向けに書いているわけではありません。この記事の内容をご覧になられて投資判断をされても一切の責任を負えませんのでご了承ください。あと、そもそものPLなどの読み方については過去の記事をご覧ください。
今回の決算の概要
元となるツカダ・グローバルホールディングの2021年12月期第2四半期の決算説明資料は下記URLで見ることができます。
https://www.tsukada-global.holdings/data/pdf/jWb1.pdf
決算概要
売上は昨対で約60%減少で営業利益以下は赤字に。もともとの事業規模が大きいので赤字額も相当な数字になっていますが、決算期の違いもあるため売上の前年比で見ると他の企業と比べて下げ幅は小さくなっています。
これだけ見るとかなり厳しそうに見えます。
ツカダGHは決算期が1月~12月なので、今回の2Q決算はまだコロナが感染拡大する前の1月~2月分も含まれています。婚礼事業はやはり組数減少がそのまま売上・利益に影響していると言えます。この期間の具体的な対応策などは書かれていないのでわからないですが、組数が戻らないと利益の回復は難しそうです。
BS(貸借対照表)
流動資産が多い!前年比で100億円以上減らしていますが、同業の上場企業と比較してもかなり多い方だと思います。
その一方負債も多いです。また、緊急資金調達額が約60億円とありますが、固定負債なので返済期間は長めで借りられたのかなと思います。何年かはわかりませんが…。
あと、決算予想は現時点では未定とありました。
今後の事業戦略
書いてある戦略のうち、1~3はまぁそうかという内容ですね。
これからの時代に求められる様々なスタイルの婚礼を提供し、かつ安全安心を訴求していくこと。また固定費を抑制するために本社部門を改革する。その通りだと思います。
個人的に「お?」と思ったのが4の自社化(内製化)拡大。内製化をする(ドレスなどのアイテム部門を自社で持つこと)とその分の人件費や採用費、ドレスサロン、倉庫、アトリエなどの地代家賃が固定費になり、外注すると変動費になります。
ツカダはかなりこの辺り合理的に判断する会社だと思っていたので、今後の経営を効率化する、固定費を軽くして景気変動や需要変動に対しての経営の柔軟性を高めるのであればむしろ外注化を進めるのかと思っていたので意外でした。それ以上のコストメリットなどを見込んで、ということかもしれませんね。
決算資料を見るたびに思いますが、婚礼層別にサービスラインナップを用意し、それぞれのチャネルで獲得しようという戦略は見事だなぁと思います。かなり面を押さえられると思いますし、規模の大きい会社はこういう事業展開をしていくとトレンドの移り変わりにも強いですよね。
最近の各事業の実績がどうなっているのか、運営体制がどうなのか(リスティング広告の同一KW出稿などサービス間のカニバリなどは多少見かける)、などわからない点はあるものの、それぞれのサービスブランドが独立して採算取れるレベルであれば安定度は増すと思います。
あとは、これだけ様々な顧客層を持っているのだから、裏側の顧客データとかを統合管理してCRM施策とかを回していけば別のマネタイズを作ることができてLTVは向上するんじゃないかなと思います。すでにやっているのかも知れませんが…。
その他のトピック
他にも資料内に書かれていた気になる内容だけピックアップしていきます。
COVID-19対策①
- 感染症対策のガイドライン設定(HP掲載/館内アナウンス/招待状同送)
- ソーシャルディスタンスレイアウトのご提案
- 新プラン4種の設定
COVID-19対策②
- 「NEW NORMAL for HAPPY WEDDING」宣言
この宣言は他社もたくさん入っていましたけど、これから具体的に何か活動していくんでしょうか?
コスト削減の取り組み
- オンラインでの新規営業及び打合せ導⼊によるリソースの最適化・効率化の実現
- 打合せ改革(結婚式当日までの一気通貫体制の構築) 「ビューティ」 「空間装飾」 「おもてなし」
このあたりのBPRはコロナがきっかけではあるものの、遅かれ早かれやる予定だった内容だと思います。
婚礼事業の新たなる展開
- 『 明治神宮での神前挙式×TGHグループ会場での披露宴 』 を6会場にて期間限定販売開始
- 内祝い商品の開発
- テイクアウト商品の販売
- 既存リソースを活⽤した最小限の投資による、新たな事業ドメインへの展開(成⻑ドライバーへ)
- ウエディングスタイル、ターゲットをセグメントした商品開発及び新たな売上の創出
- 新たな ウエディングスタイル・事業領域への積極的な進出
このあたりどのくらいのスピードで実現していくかはわからないですが、実装したら強そうだなぁ…。オペレーション強そうだし。
ツカダ・グローバルホールディングの2020年12月度第2四半期決算についてまとめ
ほんとに簡単にですが、決算説明資料をもとに考察を書いてみました。ブライダルの現場で働いていると企業のIR情報を見ることはほとんどないとは思いますが、他の会社でどんなことをやっているのか、起こっているか、ブライダルマーケット全体をどのように捉えて動いているのかなどがわかると意外と楽しいと思うので、この記事をきっかけにIR資料も見るきっかけになってくれればうれしいです。