アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
最近ではプロデュースサービスが増えてきていますし、今ウェディングプランナーとして働いていて将来的に独立をして自分のサービスを立ち上げたい!と思っている方も多いでしょう。しかし、結婚式を挙げる人数は年々減ってきている、でもプロデュースサービスは増えてきている、という状況だと競争環境はどんどん厳しくなっていきますし、業界内の自分のポジション・差別化ポイントを明確にしないと生き残っていくことさえ難しくなってしまいます。
今回の記事ではウェディングプロデュースサービスの差別化ポイントは実はウェブマーケティング力ではないか?というテーマについて書いていきます。
目次
ウェディングプロデュースサービスとは?
サービス概要
自社では結婚式場を保有せず、結婚式のプロデュースを専門で行うサービスのことです。
結婚式場運営企業もプロデュースを行っていますが、今の日本のブライダル業界では、結婚式場・プランナー・プロデュースをすべて同じ会場(企業)で行っていることがプロデュースサービスとの違いです。
プロデュースサービスは結婚式場という大きな固定資産を保有しなくていいので固定費や在庫を持たずに事業展開できること、プランナーから独立しやすいことなどから、近年では大手企業の新規事業としてや個人が独立してなど、その数は少しずつ増えてきています。
主要なサービス・事業者
- Crazy Wedding
- スマ婚
- 楽婚
- 得ナビウェディング
- 会費婚
- 小さな結婚式
- 家族挙式
- HAKU
- 花の結婚式屋
フリープランナーを含めれば他にもたくさんあるのですが、ざっと上記のようなプロデュースサービスがあります。大企業から最近立ち上げたばかりの企業まで、本当にたくさんあります。
収益モデル
プロデュースサービスのビジネスモデル、収益モデルを簡単にまとめると上記のようになります。
- 売上=施行組数×組単価
- 施行組数=集客数×成約率
サービスによっては組単価のところがプロデュースフィーになったりしますが、基本的には結婚式場の収益モデルと大きく変わりません。また、利益ベースで見ると売上から提携している会場やアイテム業者への手数料の支払いがあるのでそれを差し引いた金額で見る必要があります。
ウェディングプロデュースの一番の差別化ポイントが集客力だと考える理由
私は現在のプロデュースサービスの比較においては「集客力=ウェブマーケティング力」が一番の差別化ポイントだと考えています。
まず先ほどの収益ロジックに当てはめると、売上を伸ばすためには、集客力を上げるか成約率を上げるか単価を上げることが必要になりますが、ターゲットが新郎新婦(法人ではなく個人ということ)なのでオートクチュールデザインのような極端な富裕層を狙ったプロデュースサービス以外は組単価をどんどん高くしていくのは現実的ではありません。
また、成約率はどのプロデュースも50%前後、高くても80%程度であることがほとんどなので、差がついたとしても1.2倍~1.5倍程度となり、よほど規模の大きなサービスでもない限り成約率(営業力)の差が一番の差別化ポイントとなることもないでしょう。となると集客力の違いがサービス成長の一番のキーになるというのが私の考えです。
いやいやいや、ちょっと待て。そんなことよりもっと本質的な部分があるだろう!と思われる方もいらっしゃると思うので、一般的に言われている差別化ポイントについても考えてみます。
価格は差別化ポイントにならない?
結婚式は個人が購入する商材の中では家に次いで高額商品なので、価格に対しては敏感になりやすい部分です。また、価格は数字として表現できるので分かりやすいので、他社よりも圧倒的に低価格であることが実現できれば十分差別化ポイントにもなりそうです。
しかし、現実問題として低価格であることをウリにして勝ち抜いていくためには、相当な資本力が必要になります。低価格系のプロデュースでも楽婚や得ナビウェディングは自社の運営式場への集客チャネルの1つとして機能させているので純粋なプロデュースとは収益モデルが異なりますし、それ以外の低価格系プロデュースである程度の規模になっているのはスマ婚くらいしかありません。これから個人で始めるまたは現在で規模が小さくそこまで資本力がないという場合は、かなり難易度が高いと言えるでしょう。
つまり、価格は差別化ポイントになりうるが、現実的には誰もができることではない。資本力が大きい会社じゃないと差別化できるまでの低価格の実現は難しい、と思います。
対象エリアや会場は差別化ポイントにならない?
対象エリアやプロデュース可能な会場、場所の広さは今の時代ではそこまで差別化ポイントにならないと思います。というのも、以前に比べてプロデュース会社やフリープランナーが増えてきて、この人じゃなきゃできない!という場所が限りなく少なくなってきているからです。
結婚式場以外の事例もかなりインターネット上に出回っていますし、やろうと思えばどこでもできる、というサービスも多いでしょう。よほどの特殊性または独占性などがあればそれで差別化できそうですが、あまり現実的ではないと思います。
なので、今からだとプロデュースサービスの差別化ポイントにはならない、もしなるとしたら「普通だったら絶対にできない場所」を「独占してできる」までいくことが必要かと思います。
プロデュースサービスの特徴は差別化ポイントにならない?
どのプロデュース会社も最も力を入れているのはここじゃないかと思いますし、実際はここが差別化ポイントになってほしいところです。しかしながら、
- テキストにするとだいたい同じようなワードになる:二人だけの~、オリジナルウェディングを~、ストーリーやコンセプトから作る~、常識にとらわれない自由な結婚式~、など。
- 事例紹介だけでは本当の特徴を伝えにくい:基本的にサイトに掲載する事例はいいところだけの切り取りなので、そこに至った背景や想い、自分たちだからできた理由などを書きにくく、ビジュアルの違いだけになってしまいやすい
- ユーザー側の明確な結婚式の定義がない:何がオリジナルで何がそうじゃないのか、自分たちらしいってこういうこと!、などを明確に定義できているユーザーはほぼいない
これらの理由から、サービスの特徴だけで選ばれるというのは相当難しいと思います。最もうまくいっているのはCRAZY WEDDINGですが、創業当初のオリジナルスタイルから、CRAZYとしてのブランディングに舵を切って数年かけて今のポジションを確立しているので、やはりかなり難易度は高そうです。
このように、プロデュースとしての特徴はもちろん必要な要件なのですが、それが特徴的であることだけでは不十分で、その特徴をどういうチャネルで誰にどのように伝えるかとセットで考えて実行していかないと足りないという意味で、優位な差別化ポイントとはなりえないと考えています。
集客力が差別化ポイントになる理由
- SNSが浸透してきたので、資本力がなくても共感が得られるストーリーがあれば情報を拡散できる
- SEOでもニッチなワードならきちんとした対策をしていけば勝てる
- ウェブマーケに精通したプロデュース会社がほとんどない
先ほども書いたように、集客力だけを磨けいていけばOKというわけではなく、基礎となるサービス設計や自社でしかできなプロデュース力・特徴はきちんと行うことが必要ですし、それがないとたとえ一時的にマーケティング力で勝てても長くは続きません。
ただ、やはりここがきちんと取り組めている会社が少ないので、違いを伝えにくいサービス設計だけに全リソースを注ぐよりも、競合が少ないマーケティングの領域に早くからリソースを割いたほうがトータルでの差別化は図りやすかろうと思います。どんなに想いを持って事業を運営していてもそれが伝わらないと意味がないのです。
ウェディングプロデュースが集客で差別化するためのポイントとは?
上の図は基本的な集客フローと、KPIを分解した図です。
プロデュースサービスはゼクシィなどの媒体には広告出稿できないので、基本的な集客導線は、ウェブサイト来訪→予約、となります。そのためウェブサイトへの来訪者数をどう増やすか、CVR(予約完了率)をどのように高めるか、この2点を改善していくことが必要になります。
サイト来訪者数を増やすためには?
ユーザーがサイトに来訪するためには以下のようなのルートと、それを増やすための対策をまとめると以下のようになります。
流入経路 | 経路詳細 | 対策 |
自然検索 | googleやYahoo!などの検索エンジンからの来訪 | SEO対策 |
リスティング広告 | googleやYahoo!などの検索エンジンに出稿する広告 | 広告運用の最適化 |
SNS | Facebook、Instagram、twitterなどのSNSからのリンククリック | SNS運用の最適化、フォロワーの獲得 |
ディスプレイ広告 | GDN、YDNなどの広告 | 広告運用の最適化 |
外部サイトからのリンク | 花嫁ブログや口コミ投稿サイトからのリンク | 知名度の獲得、口コミの獲得 |
このように、いくつか来訪方法はありますが、メインだと自然検索かSNSか広告からの来訪となるでしょう。例えば、「ウェディングプロデュース」と検索したときに1位表示されていれば優良顧客の来訪が期待できますし、Instagramのフォロワーが1万人以上いればそこからも来訪が期待できます。また、あまり多くはないですが広告運用を最適化すればそこからの流入や問合せ・予約が期待できます。
サイト来訪者を増やすためこれらの各施策を徹底的に突き詰めて実施できているプロデュース会社は大手を除きほとんどない(と思うしいろいろなサイトを見てもされているとは思わなかった)ので、ここができると集客力の面では十分な差別化ポイントとなりうるのです。
CVRを高めるためには?
次に、CVRにかかわる要素と対策をまとめると以下のようになります。
ポイント | 詳細 | 具体的な対策 |
サイトの見易さ | 来訪ユーザーが見たい情報にたどり着きやすいこと | サイトデザイン、A/Bテスト |
フォーム・LPの使いやすさ | 予約や問合せフォームの入力や確認がしやすいこと、広告から来訪してくるときのページがわかりやすいこと | EFO、LPO |
プロデュースの特徴 | どんなプロデュースをするのか、自分たちだったらどんな結婚式になるのかをイメージしやすいこと | サービス企画、コンセプト企画 |
掲載事例・提携会場 | 自分たちの結婚式イメージやプロデュースの特徴をビジュアルでイメージしやすいこと | 法人営業力の強化、事例の公開 |
価格 | プロデュースにかかる費用や総額がいくらかわかりやすいこと | 事例やケース別の平均金額を開示する、プライス設定の改善 |
上記のような内容がサイトに掲載されていて、それを他の気になるサービスと比較して決めていく、というのが一般的な検討フローになります。第三者の口コミやSNS上の評価などを見ることも最近は増えてきていますが、現実問題としてそこまでは自社で対応しきれないので、いったん今回の記事では自社サイト上のコンテンツに絞って書いています。
ウェディングプロデュースの差別化ポイントまとめ
ウエディングプロデュースサービスの競争力で一番差がつくのはウェブマーケティング力じゃないかという話をまとめました。繰り返しになりますが、ウェブマーケティング力だけを磨けばいいというわけではなく、
- 基礎的なサービスフローやプロデュースの特徴はきちんと設計して付加価値の創造に取り組むべきだが、それだけで差別化されていると言い切ることはできない
- 意外とマーケティングに力を入れて取り組んでいる会社が少ないので、今の時代ならそこにしっかり取り組んで特徴を伝えていければそれが一番の差別化ポイントになりうる
ということなので、サービスには自信があるのにどうしてかお客様に選ばれない、と感じている会社やサービスの担当者の方は、少し発想を切り替えて問題解決に取り組んでみてはいかがでしょうか。