アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
以前に比べればだいぶ緩和されてきている印象はあるものの、まだまだ根深い結婚式場の持込規制の問題について考えてみます。
目次
結婚式のオリジナル化を善とする風潮
- いつも通りの挙式
- 決まった料理メニュー
- 提携先からしか選べないドレス
- 毎回同じような進行とタイムスケジュール
- バームクーヘンとカタログギフトの引出物
- お決まりのエンドロール
など、いわゆる「一般的な結婚式(挙式・披露宴)」に対して、それを悪としてお客様1組1組ごとに自由であるべき論みたいなものが増えてきたなと感じています。
ブライダル業界で働き始めた10数年前は結婚式はこういうものという価値観が当たり前だったように思いますが、結婚式のオリジナル化、もっと自由にあるべきという考え方が顧客側からも提供者側からも聞くようになってきました。
一方、最近はHPを見ても媒体を見てもSNSを見てもどこもかしこもオリジナルウェディングだらけで、実態はさておきオリジナルウェディングとは何ぞや?みたいな感じになっています。普通のマンションとデザイナーズマンションの違いって何?かのように。
個人的な意見としては一般的な挙式披露宴の流れや商品構成の結婚式が悪いとは思っておらず、むしろ結婚式という商材の特徴を考えると顧客にとってメリットも大きいとも思っています。
このように諸説あるパッケージ対オリジナル論争ですが、今回は最近なんとなく思っている業界の現状否定への違和感について書いてみます。
パッケージ化された結婚式ってそんなに悪いですか?
パッケージ化された結婚式の対顧客メリットは「結婚式のような無形商品を売るときに最終成果物(施行当日のイメージ)が先にわかっていたほうが安心できる」という点です。どれくらいの割合の人がそう感じるのかはわからないですが。
結婚式を申し込むことは基本的に初めてで、式場は目に見えるものの当日の進行や雰囲気だけでなくプロセスも含めて全体像が見えない状態で契約することがほとんどです。
オーダーメイドでウェディングプロデュースをする場合、契約後に場所やアイテムを探し、クリエイターキャスティングをするので、何も決まっていない状態で契約することに不安に感じる人もいるでしょう。本当にそのサービスを信頼しないと依頼できません。
なのである程度、どのような場所で、どのようなアイテムで、どのような進行で執り行われるものなのかをイメージできることは、そこまでこだわりがない人にとってはかなりのメリットだと思います。
で、個人的にはそういった層の方もけっこういるんじゃないかなと思うんですよね。こだわりがある(オリジナル色の強い結婚式を求める)人の方が発信力が強いことが多いのでSNSや花嫁ブログでは目立ちやすいですが、そうでない方もけっこういるはず。でないとこんなにゼクシィ使われないですからね。
もちろん、結婚式のオリジナルさはグラデーションなので大なり小なりこだわりはあると思いますが、それでもパッケージ化された結婚式が一方的に悪いものだとは思えないんですよね。
パッケージ化された結婚式の問題点は?
とはいえ、そうした結婚式を全面的に支持しているわけではなく、そういった結婚式を提供している事業者側に対してこれはなぁ…と感じる部分もあります。
●実態はテンプレ結婚式を提供しているのにプロモーションではオリジナルを謳っている
これはありがちかなぁ。式場のすべての結婚式を見ていたり知っているわけではないのであくまで噂で聞きましたレベルですけど、けっこうありそう。
プロモーションとプロダクトで矛盾があると当然ながら顧客は混乱しますし、契約時の期待値を超えることはありません。というかマイナスです。
特に最近はプロモーションをハックするために各社あの手この手で情報発信していますから、この辺りの問題点は起こりやすくなっているのかもしれません。
●商材の魅力にあぐらをかいている
そもそも結婚式は魅力の高い商材なので、パッケージでもオリジナルでもそれを求める顧客は一定数きます。わかりやすさという点ではパッケージに分があるかもしれません。
ただその状態を当たり前だと思って商品改善を怠っていると、時代の変化とともに劣化品を量産しているだけになってしまいます。
式場の魅力を最大限生かせるコンセプトや進行、アイテムは、例えそれが顧客ごとにカスタマイズされずに式場固有のものであったとしても、常に改善を繰り返し、よりクオリティの高いものに洗練させていくことは必要だと思います。
小手先のプロモーションを頑張るだけでなく、商品力のブラッシュアップもやらなければいけない、と。
ウエディングコンセプトの軸をどこに置くか
このように、パッケージウェディングのメリットとそれに紐づく問題点を整理したうえで、事業者として今後意識したほうがいいと思うのは、「ウェディングコンセプトを顧客側と提供者側のどこに置くか」という点。
- 顧客側に置く:お客様1組1組に合わせて最適な結婚式を提供します
- 提供者側に置く:私たちが考える最高の結婚式を提供します
こんな違い。
例えるなら、プロポーズの時に、
- あなたの求める完璧な夫(妻)になります!結婚してください
- 私はこういう人間ですあなたを幸せにします!結婚してください
このどちらで言うかの違い、みたいなもの(あってるかわかんないけど)。
そしてこれも二者択一でどちらがいいかという優劣の話ではなく、バランスをどこに置くかが重要だよって話です。
自分はこういう人間だけど、あなたが求めるならここは自分を変えてみようとか、ここは譲れないとかあるじゃないですか。従順か頑固一徹かあなたはどっち?ではなくてあくまでバランス大事よね、と。
結婚式も似ていると思っていて、○○迎賓館の結婚式はこういうものです、会場はこうですなぜなら~アイテムはこれですなぜなら~、進行はこれですなぜなら~、…、みたいな固有のコンセプトとその理由は明確にありつつ、対応できるところは可能な限りする、と。
で、最近思うのは顧客側に軸を寄せすぎている事業者が多いんじゃないかなぁということ。
もちろん顧客の要望を聞くことは大事なんですが、この式場やこのプランナーにお願いするから叶うことって何?みたいな事業者側のこだわりと言うかプライドみたいなものがもっとあってもいいと感じています。
オリジナルさを謳っていたり、お客様の想いに寄り添いますをコンセプトとするサービスがこれだけ増えてくると、私たちの考える最高の結婚式はこれ!だからこういう人には絶対にオススメ!みたいな提供者側の主張が強いサービスの方が逆に強くなるんじゃないかなくらいに思いますね。
列席したことはないけど、#パレス花嫁 とかそんな感じな気はします
どちらか一方を否定することに意味はない
式場運営企業で働いていたときは今でいうパッケージ化された結婚式の提供もしていましたし、独立後はフリープランナーの方のお話を聞く機会もたくさんいただけているので、かなり幅広く携わらせている方だと思っています。
両極端な思想を触れているというか、今回のテーマの「オリジナルさの振れ幅」はある程度理解しているつもりです。
繰り返しになりますが、パッケージ対オリジナルでどちらがいいという対立の話ではなく、両方あっていいと思っていますし、それを求める客層も違うので異なる思想で作られた結婚式が業界内に存在することが顧客にとって不都合だとも思いません。あるとすれば提供される結婚式の実態と発信される情報にズレがあることでしょう。
ただ一つ、自分の思想と反するものを批判する発信はやめた方がいいのになぁと思っています。どちらかと言えばオリジナル傾倒者のパッケージディスりの方がよく見かけます。直接否定するわけではなく、こんなありきたりな結婚式なんて私は悲しい、みたいな感じで書くのはブライダルっぽいなと思いますけど。まぁ言ってることは同じですよね。
批判されるのは、行き過ぎた煽りプロモーションと低い商品クオリティであってスタイルではないはずです。たまたま自分がひねくれていてそう受け取ってしまっているだけかもしれませんが、多様性って様々なスタイルが存在することを認めることだと思いますしそれを求める顧客もいるので、批判している時間を己を磨くことに費やしてほしいなと思っています。
パッケージ化された結婚式についてまとめ
ここ数年叩かれがちなテンプレ結婚式についてのテーマでお送りしました。
ちなみに、市川個人は提供者側に軸を置く考え方が強いので、弊社のサービス設計も基本的にそうしています。特にコンサルティングサービスでは弊社はこういう理由でこういったことができます的な話をまずしますし、そこで合わなければ仕事として受けないことも結構あります。できないことはできないですから。
ただその話をした上で、柔軟に対応できるところは合わせていくので、今回の話は結婚式に限ったことではないのかもなぁとは、書いてみて思いました。
式場勤務の方、フリーランスの方、業界外の方、それぞれで受け取り方は異なりそうですが、何か考え方の参考かきっかけになると嬉しいです。