更新日 2019年05月14日

CRAZYの事業展開に見る、今後ブライダル業界でシェアを取るため戦略とは?

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アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

ブライダル業界はトップシェアの企業でもシェアは10%に満たず、市場規模がそれなりに大きい割には数多くの会社がシェアを奪い合っているという構図です。会場を建設するのに初期投資がかかる、会場を作っても土日祝日しか基本的に稼働しない、などいくつか理由があるのですが、同規模の他の業界と違い圧倒的なシェアを持つ会社が現時点でいないことは事実です(ゼクシィは除く)。

ただ、CRAZY(プロデュース)がIWAI OMTESANDO(結婚式場)を出店したのをきっかけに、今後これまでの戦い方から大きな変化が起こるのではないかと思っています。そこで、今回の記事ではブライダル業界で今後シェアを取っていくために必要な戦略についてまとめます。

 

CRAZYのブライダル関連の運営事業

CRAZY WEDDING

オリジナルウエディングを提供するプロデュースサービスです。プロデューサー、アートディレクターをはじめ6名からなる専任のクリエイティブチームを編成し、コンセプトメイキングからそれを余すことなく表現した空間装飾、演出プログラムなどが特徴で、2012年創業以来これまで累計1,000組以上の結婚式をプロデュースしてきたサービスとして有名です。

UNION HARBORのプロデュース

横浜の山下公園近くにある結婚式場「UNION HARBOR」のプロデュースをしています。「Total produced by CRAZY WEDDING」と明記しているように、CRAZY WEDDINGブランドを前面に押し出したサービスです。会場の運営会社は株式会社エー・ピーカンパニーと別の会社です(すみません、開始時期忘れました)。

IWAI OMOTESANDO

2019年春にオープンした表参道の結婚式場です。建築、内装、プロデュースから施工までをCRAZYが行っており、文字通りCRAZYが出店した初めての結婚式場です。

それ以外の事業

過去にはフォトウェディングの特設ページや、結婚紹介所のような企画(事業?)もやっていましたが、サイトを探しても見当たらないので今は実施していないのだと思います。

このように、これまで「プロデュース専門で知名度やブランドを作り上げる」→「既存の結婚式場のプロデュースに入る」→「自分たちの結婚式場を持つ」という流れで事業展開をしてきています。もちろんここまで内部ではいろいろあったのではないかと思いますが、一般的な事業展開スキームと異なる方法で進めてきたこの動きを見て、今後シェアを取っていくためにどんな戦略がとれそうかが個人的に気になったので、それをテーマに考えてみたいと思う。

 

これまでのブライダル企業の事業展開の方法とは?

ゼクシィ登場以降に限って話を進めますが、ブライダル企業の事業拡大戦略は「新規出店を繰り返して取り扱い婚礼組数を増やし、売上を伸ばし、その利益を原資に次の新規出店を行う、これを続けていくことでシェアを拡大していく」が一般的でした。

T&G、ベストブライダル、ノバレーゼ、エスクリ、ディアズブレイン、ポジティブドリームパーソンズ、などハードやスタイル、担当形式に差はあれど、結婚式場を作りゼクシィを中心としたブライダル媒体を使って集客して施行枠を埋める、というのは同じです。

ただ近年では、若年層の減少、婚姻組数の低下、披露宴実施率の低下、セレモニーの多様化(フォトウェディング、少人数婚、リゾ婚、など)など、ブライダル関連市場の全体の縮小は続いており、これまでと同じ方法で会場を新規で建設しても集客できず施行枠を埋めきれない会場も増えてきています。特に、ゼクシィなど画一的な媒体や情報メディアを見て判断するということをユーザーがしなくなってきており、ハードの差別化はもとより、会場から選ぶというスタイルも徐々に取られなくなりつつあります。その影響もあり、近年では以前ほど新規出店の勢いも落ちてきています。

また、1つの会場を立てるには大規模な初期投資が必要であり、かつ結婚式場は基本的に土日しか稼働させられないので、ビジネスモデルの観点からもどんなに流行する会場を作れたとしても1つの結婚式場での投資回収スピードや回収率には限界があるのも事実です。

このように、これまでの事業拡大・シェア拡大戦略は、とにかくたくさん会場を作り、集客して枠を埋め、またつくる、でしたが、業界全体でその方法で拡大することの上限に達してきてしまった状態であると言えるでしょう。

 

これからのブライダル企業の事業展開戦略

では、そのような状態から今後シェアNo.1を取るためにはどうしたらよいでしょうか?念のため、ここでいうシェアは「売上のシェア」を言うこととします。施行組数で考えると格安婚や少人数婚などで取扱数が多いサービスなどが入ってきてしまうので、今回はそのようにします。

  • さて、これまでのように会場をバンバン作るのはもう難しい
  • というかそもそも供給過多状態の国内ブライダル市場なので、出店する時点で他社からシェアを奪うことが前提となる
  • さらに、当たり前だが初期投資がかさむし、土地の選定から会場のデザイン、そして建設となると少なくとも1年~2年は時間もかかる
  • 投資した分を回収できるかもそもそも怪しい

となるので、新規に出店でシェアを取っていくことは至難の業です。例えば会場の名称で有名なのは「アニヴェルセル」やT&Gの「TRUNK」ブランドなどになりますが、もし今から同ブランドの会場を新規展開してシェア1位(売上1,000億規模)になろうとすると少なくとも今からさらに20会場ほど、1,000億円程度の設備投資が必要になる計算になります。いずれはできるかもしれませんが、相当な時間がかかるので市場の縮小に間に合わないと思います。あまり現実的ではありません。
そのため、これからシェアを取っていくためには、

  • 初期投資がかからない
  • ブライダル媒体に頼らない集客ができる
  • マネタイズ(投資回収期間)のスピードが早い

これらの条件を満たして事業展開していけること(ユーザー側の認知・支持を獲得して売上を上げていくこと)が大切なのです。

となると、私が最も有効だと思う戦略は「プロデュースブランドのフランチャイズ」です。

有名なプロデュースブランドが結婚式場に対して名称を使うことやノウハウを提供し、その対価として売上の何%かを支払う(または売上をプロデュース側が持ち、販売手数料として結婚式場に何%かを支払う)方法ですね。

フランチャイズとは?
フランチャイズ(FC)とは、加盟店が事業本部とフランチャイズ契約を結ぶことで、商標・チェーン名称、商品、ビジネス・経営ノウハウ、技術サポート・研修が全て一体となった「パッケージ」を得ることができるビジネスです。
加盟店はパッケージを利用する権利を得る代わりに、その対価としてロイヤリティと呼ばれる代金を本部に支払っているのです。

(出典)https://tenpohacks.com/611

なぜプロデュースブランドなのか?

これまではどの企業もハードに紐づくブランド展開をしてきているので(T&G→白の一軒家、など)、そのブランドを活かした事業展開をする=ハードの要素を実現することが必要となってしまいます。ただ、先ほども書いたように、今の時代から大量に会場を作り続けるのは相当困難です。

一方、オリジナル系、格安系など方向性の違いはあれど、プロデュースブランドは会場の特徴を持っていないことがほとんどなので、それぞれのサービスのコアとなる部分を維持できればハードの要素を考えずに事業拡大をしていくことができるはずです。そうすると、事業拡大に初期投資がいらなくなり、かつブランド認知力を活かした集客ができるようになるためです。

なぜフランチャイズなのか?

それなら、プロデュースブランドが独自で成長していけばいいじゃないかとなりそうなのですが、今の結婚式場探しの状況ではオンライン/オフライン問わずブライダル媒体大手がほぼすべての面を押さえてしまっており、集客で勝ち切ることが極めて困難です(唯一、instagramなどSNSなら可能性はありますが…)。なので、その集客面をうまく取り入れつつ、自社のブランドを広げていくためにはフランチャイズの方法が最も適していると思います。また、競争激化の流れから業績の厳しい会場も今後は増えてくることが予想されるので、そういった会場をまずはターゲットにしながら、〇〇迎賓館/produced by XXXX WEDDINGといった感じで増やしていく感じですね(ただし、その場合にゼクシィの出稿レギュレーションに引っかかるかどうかはわかりません)。

特に場所に依存しないのであれば、スペースマーケットとかと組んでも面白そうなんですけど、いかんせん「ブライダル」と区切ったときの一般ユーザーへの知名度がほとんどないので集客面が厳しいかなと思います。

CRAZYが本気でブライダル業界のシェアを取りに行くなら?

さて、ここまで書いたように、知名度のあるプロデュースブランドがそのブランド名を使って結婚式場増やしていく、というのがいいと思っていますが、その中でもCRAZY WEDDINGの認知度はかなり高いかついわゆる格安ではないという点で最も可能性が高いブランドではないかと思っています。
CRAZYWEDDINGのgoogleトレンド
googleトレンドを見てもわかるように、英名検索、日本語名検索を合わせるとスマ婚と同じくらいのボリュームがありますし、ユーザーからも好意的に捉えられていますし。

これから経営が厳しくなり、撤退やMAの道を模索する結婚式場は増えるでしょうから、もしCRAZYブランドでフランチャイズ契約を結べますよとなったら、引き合いは多いでしょう。現時点で業績の厳しい式場が「CRAZY WEDDING」の看板を付けられることで集客復活→業績回復、CRAZYは大きな新規投資をせずに売上(事業)規模を拡大、となるのが理想、かと。あとは、CRAZY WEDDINGの手掛ける結婚式を実現するのにどの程度ハードの要素が必要なのか、ノウハウを提供するだけのリソースを確保できるか次第だと思います。

ただ、シェアNo.1を目指す!みたいな事業拡大戦略を公表しているわけでもないので、そもそもそんなことを狙っているのかどうかもわかりませんが…。というかあんまりやらなさそうだけど…。
その他懸念があるとすれば、

  • 多店舗に名称を使うことになってもブランド力は維持できるのか
  • 結婚式場側にどこまでのクオリティを求めるのか
  • 結婚式場への「CRAZY WEDDING」のインストールをどのように行うのか

など、たくさんあるとは思いますが、こんな戦略を取った会社は見たことがないですし、ここまでブランドを育てた会社もなく他の会社だとできないと思うので、可能性はあるんじゃないかなと思いました。

 

ブライダル事業者の事業展開戦略についてまとめ

同業界の他社の名前を借りる、貸す、というのはこれまでほぼなかったことですし、実務面以外にも心理的にも抵抗のある方は多いと思いますし、実務面で細かい契約とか詰めていくと、いろいろ課題は出てくるとは思います。ただ、これ以上これまでと同じ方法で競っていてもみんな沈んでいくだけですし、事業展開スピードと業界縮小のスピードを照らし合わせてこれから数年で業界全体を動かしていくのであればこういう方法も1つの戦略として考えてみてもいいのかなと思いました。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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