更新日 2023年12月27日

結婚式の独自性と再現性のバランスをどこでとるか?

1015_結婚式の独自性と再現性のバランスをどこでとるか?

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

結婚式の独自性と再現性のバランスをどこで保とうとするかって意外と難しいよね、っていう話です。

 

独自性と再現性

  • 独自性:他と違い、その人またはその事物だけに備わっている固有の性質。独特の個性。
  • 再現性:異なる場所、異なる測定者および異なる測定系といった一まとまりの条件のなかでの測定の精密さ。

※出典:コトバンク

言葉の定義はこんな感じですが、結婚式における独自性と再現性は、私は以下のように定義しています。

  • 結婚式の独自性:その人やそのサービス、式場だからこそ創ることができる結婚式の価値
  • 結婚式の再現性:誰が担当してもどの式場においても同じ結婚式を創れることの価値

さて、再現度は高いが独自性の低いいわゆるテンプレ型の結婚式が批判されて久しい昨今ですが、では全部が全部オリジナルになればいいのか?というとそういうわけでもない。

ブライダルビジネスにおいては独自性もありつつ再現性も高いとベストなのですが、それはそんな簡単に成し遂げられることではないですし、そのバランスのとり方は組織や人、ビジョンによっても様々です。

変化が求められるこれからの時代において、このバランスをどのように考えてどのような環境に身を置くか、自分の意思を持つか。今回はこんな話をテーマにお送りします。

 

独自性と再現性の関係性とバランス

一般的に、独自性が高いと再現性が低く、逆に再現性が高いと独自性は低くなります。独自性の再現性が高い、という離れ業をやる人もいますが、その人は異次元なので神とでもしておきます。

レストランを例に考えてみましょう。

  • A.シェフの気まぐれコースのみ、その日仕入れた最高の食材でその日の気分でコース内容を決める、同じコースが作られることは二度とない→独自性が高い
  • B.メニューは固定、同じ業者から食材を仕入れマニュアルとレシピに沿ってどのキッチンスタッフが作っても同じ料理ができあがる→再現性が高い

この2つはそれぞれ、Aはオーナーシェフがやっているようなお店、Bはファミレスのイメージです。

Aのお店はそのシェフの経験と技術があるからこそ成り立つので全国多店舗展開などは不可能に近く、逆にBはびっくりする感動は生まれにくいですがどこに行ってもいつでも同じ味を楽しむことができます。

AとBは同じレストランカテゴリであっても提供価値が違うんですよね。

Aでは、そのレストランが今日はあのシェフがどんな料理を作ってくれるんだろうという期待感を持って行くわけで、その期待感に対してその期待を超えるような料理や空間を提供することが付加価値になります。

Bでは、いつ行っても同じ料理を提供してもらえる、仕入れロットを大きくする・仕組化するなどによるコストカットで安価で提供してくれる、という安心感があるから行くわけで、その期待に対して安定して商品やサービスを提供することが付加価値になります。

このように、顧客のどのようなニーズに応えようとするかによって、商品・サービスの独自性/再現性をどのように構築するかは異なるのです。

 

結婚式の独自性と再現性のバランス

では結婚式でも考えてみましょう。

  • X.完全オーダーメイドでお客様ごとにゼロベースで企画して結婚式をプロデュースする、同じ場所・同じコンテンツでつくられる結婚式は2つとない→独自性が高い
  • Y.会場は固定、特定業者と提携してアイテムをセレクトし、誰がシフトで入ってもマニュアルに沿った適切なオペレーションを完璧に提供する→再現性が高い

こんな感じですね。Xはフリープランナーやオーダーメイド系のプロデュースやフリープランナーで、Yは多店舗展開する大手系のゲストハウスやホテル、専門式場などが該当します。もちろん厳密に言えば1組1組で異なる部分はありますけども…。

結婚式の場合でも先ほどのレスト連の例と同様に提供価値が違うと思っていて、X系サービスとY系サービスに求める顧客のニーズも違うのです。

完全オーダーメイドは顧客ごとの生い立ちや出会いなどの情報から1組ごとに場所、コンセプト、デザイン、アイテムを創り上げていくため高い技術を必要とします。なので、その技術を持つ人を大量に集めサービスを拡大するのは極めて困難です。

一方、プロデュースノウハウをマニュアル化し、素質のある人材を採用して教えていくことで事業拡大が比較的しやすいと言えます。

 

独自性と再現性をどのように捉えるかの視点の違い

独自性と再現性のバランスを考えるうえで、どの視点でとらえるかは重要です。一般的に、独自性は人に依存しやすく、再現性は環境に依存しやすいと言えます。

●会社としての視点

独自性が高いと他社との差別化につながります。会社が運営する式場やプロデュースサービスだからこそ提供できる結婚式があるとそれを求める顧客に対して強く訴求できるからですね。

一方、再現性が高いと経営は安定します。同じ結婚式を安定したクオリティで提供できるから同じようなニーズを持つ顧客を継続して集客、成約することができるので、業績が安定し企業としてスケールさせやすくなるのです。

ただ、この2つって矛盾してますよね。独自性が高いものほど再現しにくく、誰でも再現できるものの独自性は低い。

結婚式の独自性なんてそんな簡単に出せるものではないですしハードやアイテムでの独自性はすぐに模倣されます。また独自性の抽象度が高まるほど今度は顧客への訴求難易度が飛躍的に高くなります。

なので、会社の経営方針として、どんな結婚式をどのように顧客に提供できる企業なのかを明確にし発信や施策も統一させることが重要だと思います。ここに矛盾があると(よくあるのはやってることは再現性重視なのに言っていることは独自性重視のパターン)、社員も顧客も離れていきます。

●従事者としての視点

なぜこの業界、この職種で仕事ているんですか?の理由は人それぞれですが、ある程度仕事ができるようになってきた後にどう考えるのかは人によってかなり差があるように思います。

企業に所属している人は安定したクオリティでの結婚式の提供が求められるので、究極的に言えば私が担当しても隣のあの人が担当しても同じ結婚式を創れなければいけません。なので、「会社(や式場)が提供する結婚式を忠実に表現できるようになりたい」と思う人や「この会社の創る結婚式が大好き!」という人があっています。

一方、私だから創ることができる結婚式を提供したい=独自性の高い結婚式を創りたい、という人はあまり企業所属には向いていません。もちろん、独自性の程度にもよりますが、会社から求められる仕事に違和感がある人は独立したり専門系プロデュース会社に転職したほうがあっていると思います。

●利用者としての視点

結婚式の内容は既にありふれていて違うのは会場とアイテムだけ、というのはまぁそこそこ多くの顧客も感じているんじゃないかと思います。3-4回くらい参列すると「あぁだいたいこんなもんか」というのはわかりますからね。

ただ、それに対して違和感を持つか、どう感じるかは人によって様々です。

  • 私はこんな同じような結婚式は嫌だ
  • だいたいこういう感じなら自分の時も大丈夫そう

など。割合どんなもんさ?と言われるとわからんのですけど。。

 

結婚式の選択肢が増える今後は何が大切になるのか?

でまぁ、長々と書いてきて何が言いたいかというと「このバランスに正解はないから会社の考えを理解して自分の意思を持つことが大事と思うんだよね」ってことです。

会社経営においては企業の安定と継続が最大のミッションなわけですから当然に再現性の高さを社員に要求することになるでしょう。勝手なことするなよ、と。

一方で従事者側からすると、会社から同じことを求められ続けるというのはある意味で独自性を制限されるわけなので、仕事に慣れてくると飽きが生じます。いわゆる作業ゲー化で、3年目くらいで一通り一人で仕事ができるようになってきたときに急にマンネリを感じ始める理由がこれです。

で、そんな状態で仕事をするのって会社にとっても働き手にとってもお客様にとってもよくないと思うんですよ。

  • 私は/僕はもっとこうしたいのに会社がダメだと言うんだよなぁ
  • お客様にもっと寄り添いたいけど提携アイテムしか案内できないしなぁ

など、こういった気持ちで客前に立っても最高のパフォーマンスなんて出ないじゃないですか。

以前であればこう陥っても取り得る選択肢は少なくそのまま仕事でも続けるケースが多かったんですが、今では転職もできるし独立もできる。大企業でも中途採用は行っているし小規模プロデュースチームもあるし、人気のあるフリープランナーはアシスタントも募集してたりもする。

自分でどんな仕事や働き方をしたいかの意思を持ち、適切な情報収集をしてアクションを取り続ければ環境は自分で変えられる。

なので、会社はなぜこういったことを社員に求めるのか?をまず理解し(会社側も社員が理解できるように説明しなければいけない)、その上で自分は何がしたいからどの環境で仕事をするのかを考える。そして然るべきアクションを取る。

このように自分で考えて行動できる人が1人でも増えていくといいなと思ってます。

 

結婚式の独自性と再現性についての考察まとめ

独自性と再現性の最適なバランスって個人単位、事業単位、会社単位で異なるので、会社の規模やフェーズ、立場などによって感じ方ってほんと様々だと思うんですよね。

理想論を言うのは簡単なんですが、それをどうやって実現より多くの人に届けていくのかを地に足つけて考えていかなければいけないので、こういったバランス感覚が近い人同士で仕事ができるといいのかなぁと思ってます。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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