アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
今回はブライダル業界の人ならみんな大好き(?)ゼクシィの今後の戦略について予想してみます。
「メディア」ゼクシィの今後の戦略
ブライダル業界で働く人ならみんな知っているゼクシィ。ゼクシィの役割は結婚式を検討している顧客を結婚式場へ送客するメディア機能です。
雑誌とネットの売上は以下の式で計算できます。
・売上=掲載企業数×掲載単価
で、ブライダル業界での売上今後緩やかに落ちていくでしょう。
掲載企業数=国内結婚式場数×掲載率、で考えられるものの、国内の式場数はもうほぼ増えないでしょうし(むしろ減る)、既にほぼどの式場もカバーしているので掲載率が今より上がることも期待できません。なのでこのKPIの伸びしろはもうない。
また、掲載単価は既に高止まりしており、今以上のアップは難しいでしょう。
そもそも既に他媒体と比較して来館費用対効果が極悪なのでこれ以上の掲載単価アップは許容できない式場の方が多そうですし、もししたとしても掲載単価アップ効果以上に掲載企業数減少の方が影響は大きくなりそうです。
ギリギリ可能性があるとすればネットのオプション商品を増やすなどですが、これもクラスター細分化させるとかネット上に新しくページを作るとかしないといけないのでリスクも大きく、あまり現実的ではない気がします。
まとめると、メディア機能としてのゼクシィは大きな変化はせずに少しずつ落ちていくと思います。
今後のゼクシィの事業展開はどう考える?
それならこのまま天下のリクルートが事業規模縮小を素直に受け入れるか?というとそんなことはないと思っています。
メディアの売上の伸びしろがないのであれば、ここまでの事業運営で培ってきたリソースやノウハウを活用して事業領域を広げるんじゃないかと思います。
ゼクシィからの事業展開を考える際にポイントになりそうだなと思うのは次の3つ。
- 基幹売上に影響するのでメディアの公平性に反することはやらない
- リクルート全体の方針に合うことを行う
- これまでの無形資産を活用する
まず①について
これは簡単に書くとリクルートが結婚式場やプロデュースサービスを運営することはないでしょうってことです。
自社でリアルのオペレーションを持ちその式場やプロデュースにゼクシィから送客してしまうと、メディアの公平性・信頼が揺らぐのでやらないと思います。
次に②について
リクルートが運営する他領域サービスと異なる展開をすることはなさそうで、Air系サービスのようにデジタル化による業務・経営支援をブライダルでも実行するんじゃないかと思います。
リクルートが目指すエコシステムの中に組み込んでいくイメージ。
そして③について
これまでのゼクシィ運営で培ってきた無形資産としては以下のような点が挙げられます。
- 顧客への認知、接点
- ゼクシィなび契約を含めた結婚式場とのネットワーク
- 全国に張り巡らされた対法人営業組織
- 新規投資を行うだけのキャッシュ、企業体力
これらを無視した全くの新規事業を立ち上げるとは考えにくいので(というかそれはもはやゼクシィとは関係ない)、どうやってこれらを活用するかという視点で考えていきそうです。
ゼクシィが今後やりそうなことを考える
個人的にやるんじゃないかなぁと思っているのは下記の2つ+やったら面白そうだなぁというアイディアが2つ。
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①ウェブ招待状、Webご祝儀
最近利用が広がっているウェブ招待状やwebご祝儀はリクルートの他サービスとのCRMの観点で相性いいんじゃないのかな、と。
1年間の結婚式組数は約30万組、そのうちゼクシィに接触しているのは約20万組、利用は約15万組程度じゃないかなと予想していますが、もしウェブ招待状やWebご祝儀サービスを展開してゲストへもアプローチできるチャネルを構築できると、×60名で年間約1,000万人とゼクシィを通じて接点持てるようになります。
これはリクルートポイントをはじめ、結婚式の後ろ側や生活関連サービスが充実しているリクルートだからこそ大きなインパクトあるんじゃないかなと。
これ単体でマネタイズを目指すかどうかはわからないですが、Web招待状の認知もだいぶ広まり業界知見も溜まってきた今からなら始めそうです。
②結婚式場側の裏側のシステム提供
イメージ的には現在提供しているAMSの機能拡張で、結婚式場運営において使うシステムをリクルートが提供するようになるんじゃないかと思います。
今時点の同様のサービスだとPhorbsやキャックルとか、ストラテジーサプリ、ONE-Wなどがありますが、それと同じようなシステムをリクルートが提供するようになる。
もしかしたら①とセットにして顧客情報管理基盤をより強固にするかもなぁとも思います。細かなサービス設計は1つに集約するのか個別にするのかは微妙、わからんです。
Airゼクシィ、略してエアゼク、みたいなね。知らんけど。
展開方法はおそらくAir形式で既存の取引先企業にまずは無償かそれに近い金額で機能提供し、ある程度のシェアを取ってから有料化、じゃないかな。
どこまでをカバーするシステムにするのかはわからないですが、もしリクルートが本気出したらウェディングパークやエニマリのそれとは規模感は全然違うものになりそうです。
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ここから先はアイディア、というか個人的な願望。
③「海外の人→日本での結婚式」用のメディア
日本人がハワイなど海外で結婚式挙げるいわゆるリゾ婚の逆バージョンのメディア。
海外の人が日本での結婚式をするときに使う情報メディアをもしリクルートがやってくれると市場規模の概念が一気に変わり広くなると思うので、ぜひやってほしい。
でも、たぶんやらなそう。
④ゼクシィなびの機能拡張
送客までではなくて成約までやるようになる。
今の結婚式場はプランナーの人材不足なので、送客までではなく式場案内(新規接客)・契約までをゼクシィなびでやってくれるようになるとありがたい式場は一定数ありそう。手数料は今の倍くらい払っていいと思うし。
でも、これもやるイメージはない。
結婚式場は何を考えたらよいのか?
ゼクシィの今後の展開を予想すると個人的にはここまで書いた通りです。
では、こうなると予想したときに式場側はどう考えたらいいのでしょうか?ということを書いて今回は最後にします。
極端な言い方をすれば、すべてを捧げるか、決別するかの2択を迫られることになると思います。
もしほんとにウェブ招待状や式場運営システムまで提供するようになれば、結婚式場の集客からオペレーションの裏側までを握られることになるので、リアルオペレーション以外のほぼすべてを捧げている状態と言ってもいいでしょう。
たぶん集客も安定するし業務も効率化すると思いますが、その形態である限り相当のコストが固定費としてかかり続けることになりますし、ゼクシィがルール変更するたびに従わなければいけないことになります。それを受け入れるかどうか。
もし受け入れない、決別するのであれば、自分たちで自由に意思決定できる反面、「メディア」ゼクシィなしでどうやって集客するのかをまず考えなければいけないことになるでしょう。
それさえ乗り越えられればコストや規制の点でメリットは大きいのですが、そこが難しいんですよねぇ。。
どっちが正解とかあるわけではないですし、というかそもそもほんとにそんなことやるのか?ってこともわかりませんが、いずれこの判断をしなければいけない日は来るかもしれませんね。
ゼクシィの今後の戦略についてのまとめ
数年前からの婚活市場への進出やAirの展開とかを見てても思いましたが、最近のリクルートは
- 市場のポテンシャルやノウハウがある程度分かった後にリソースをフル活用したパワープレーで突入する
- 初期はフリー(無料)で機能提供してシェア取ってからマネタイズする
というが得意なように見えるので、ウェブ招待状やシステム辺りはやってくんじゃないかなと思いますね。
念のためですが個人の勝手な予想で当たるかどうかはわかりませんので、今回の記事をもとに何か意思決定される場合は自己責任でお願いいたします。