アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
数値分析や改善施策、新規事業の企画など幅広い業務を担当することになるブライダル業界の「企画職」。プランナーと比べると人数も少なく、何をしているのか、どういうキャリアなのかなど、見えにくいところも多いのではないでしょうか。
今回の記事ではブライダル業界の営業企画や営業推進、経営企画など「企画職」としては働くために必要なスキルセットをまとめます。もちろん、会社によって業務範囲もシステム環境なども異なるので一概には言えませんが、これからブライダル業界を目指す人、プランナーやスタイリストからキャリアチェンジを考えている人にとって参考になればと思います。
ブライダル業界の企画職に求められる役割
企画職といっても営業や経理などとは違い明確な職種の定義はなく、会社によって求められる役割が異なっているのが実際のところです。また、部署名も
- 営業企画部
- 営業戦略部
- 営業推進部
- 事業推進部
- 事業戦略部
など様々で、ぱっと聞いてもどんな仕事をやっているのかイメージしにくいかもしれません。
一般的には、営業が売る商品・サービスを作り、その商品・サービスをどのように売るかを考え企画する職種の人たちとなりますが、今回の記事では「データを分析して施策をなど企画する仕事」について書いていきます。クリエイティブな発想から今までにない商品を作るような商品企画とは違いますので、その点はご了承ください。
企画職として働くのに必要なスキル
先ほどの役割を担うためには以下の5つのスキルが必要です。
- データの収集スキル
- データの集計スキル
- データの分析スキル
- 改善施策の企画スキル
- 改善施策の実行スキル
あと10年くらいしたら全部AIがやってくれているなど今と変わっているかも知れませんが、現在のテクノロジーをベースにするとこのようになると思います。
イメージとしては1から5までのスキルを順に身に着けていき、会社の状態把握から改善施策の実行(最終的には営業やマーケティングなど他部門の実行を促す役割となる)までをできるようになることが理想です。
1.データを収集スキル
事業単位にしろ施策単位にしろ、企画するときは思い付きではなくファクトに基づいて行わなければいけません。そのためにはまず「事実として何が起こっているのか」を正確に把握するためのデータを集めてくることが必要です。具体的に必要になるスキルは、以下のようなスキルです。
- 社内の顧客データベースの構造の把握
- データベース内の各項目の意味、定義
- データベースからのデータ抽出の方法(レポート機能の活用)
- エクセルやcsvファイルなどに関する基礎知識
- DBアクセス→データ抽出→必要分の抜き取り、までを正確に早くこなせるスピード
また、社内の業績管理環境によってはエクセルの日報を使っていたり、エクスポート機能のないデータベースを使っていたりすることもあると思うので、
- エクセル関数やピボットテーブルの知識、スキル
- SQLの知識、スキル
なども状況によっては必要になるでしょう。
上級者は「最終的なアウトプットから逆算した必要最低限のデータだけを抽出する」という必要データの定義スキルも求められますが、即戦力を期待される中途採用者以外は最初はそこは持ってなくても大丈夫かと思いますので、まずは欲しいデータを自分で集めてこれるようになりましょう。
2.集計スキル
集めてきたデータ(ローデータといいます)はそのままでは見てもぱっとわからないことが多いので、見てわかりやすいような表やグラフなどにデータを加工しなければいけません。ここで具体的に必要になるスキルは、以下のようなスキルです。
- エクセルの関数(SUMIF、COUNTIF、AVERAGEIF、IF、VLOOKUPなど)の知識、スキル
- ピボットテーブルの知識、スキル
- グラフや表の作成スキル
また、社内の業績管理環境や対象とする分析範囲によっては以下のようなスキルが必要になる場合もあります。
- Accessの知識、スキル
- TableauなどのBIツールの知識、スキル
- Google Analticsなどサイト分析ツールの知識、スキル
- スプレッドシートなどクラウド型のツールの知識、スキル
上級者になると見せるデータごとに、表なのかグラフなのか、グラフでも棒なのか折れ線なのか円なのかなど最適な選択だ出来るようになり、パッと見ただけで作りての意図が伝わるようなビジュアライズの精度が上がっていきます。まずはグラフや表、ピボットテーブルを作るところから慣れていき、どういう表現をすると伝わりやすいかを覚えていきましょう。
3.分析スキル
3つ目のステップは分析です。データを集計してキレイなグラフができても、そのグラフから何が読み取れるのかがわからなければ意味がありません。
今見えている数字がどうなっているのか、これはよいのか悪いのか、それを判断し、そのようになっている原因を自分で探れるようにならなければいけません。ここで具体的に必要になるスキルは、以下のようなスキルです。
- なぜこの結果になっているのかの仮説構築力
- 事業構造やビジネスモデルに関する知識、理解
- 営業、マーケティングなど事業に携わる部門の業務に関する基礎知識
- 営業やマーケティングの実際のオペレーションに関する理解
分析をするために必要な知識は範囲がグッと広がります。ウェディングプランナーやマーケティング担当者などから異動してきた人は得意かもしれませんが、異業種からの中途入社社員はここで苦戦する人が多いです。
数字は出せるけど「なぜこの数字になっているのか」がパッとイメージからなんですね。ただ、なんでこうなったのか?がわからないと、じゃあどうやって改善するのか?の企画につながらないので、もしここで躓いている企画職の人がいれば、短期間でも現場研修などを実施することがオススメです。理解がだいぶ深まると思います。
4.施策立案スキル
4つ目のステップは施策立案です。分析をしてどこか悪い点が見えてきたら、そこを改善していかなければいけません。改善するためには原因が分かった上で、どのようなことを行っていかなければいけないかを考える必要があります。ここで具体的に必要になるスキルは、以下のようなスキルです。
- 分析に必要な知識をより深く必要
- 相手が理解しやすい資料を作成するためのアウトプットスキル
- 施策を、いつ、どこで、誰が、いつまでに、どうやってやるかを決める企画力
施策立案のスキルで注意しなければいけないのは「施策を出す企画職と、その施策を実行する現場のスタッフは別の人」という点です。
そのため、施策を考えても、自分以外の人に伝わるように相手の言葉で表現しなければいけません。これまで見てきた企画職の人はここが苦手なことが多かった印象があります。考えている自分は理解しているのですが、周りにうまく伝わらない、だから結局実行されずに意味がない。
こうなると企画職の存在価値がないので、自分じゃなくて他人が実行するもの、そのためにスッと理解してもらえるような表現を心がける、ということを意識するようにしましょう。
5.施策の実行・浸透スキル
最後は施策の実行です。改善策は実行されて業績が改善されて初めて意味があります。どうやったら現場のスタッフに実行してもらえるか、規模の大きい会社では、企画職→支配人→マネージャ→プランナー、と複数の階層を経て実行に移されることも珍しくありませんので、伝言ゲームになってもちゃんと伝わるように意識しなければいけません。ここで具体的に必要になるスキルは、以下のようなスキルです。
- プレゼンテーションスキル(資料および説明)
- 周囲からの信頼(あの人が言っているなら、と思ってもらえるような人間力)
- 実績(過去に施策をきちんと当ててきたという実績)
しっかりと実行に移してもらうためのコツは、施策を実行した後のモニタリングフローまでセットで企画して現場に伝えることです。
最初はやらされている感のあるスタッフも、それで数字が改善して褒められた、という経験をすると次からは進んで取り組んでくれるようになるので、やりっぱなしではなくその後の成果の後追いまでできる環境は初めから整えておくことがポイントです
。ここまでの一連の流れを一人でできるようになれば、企画部門のマネージャとしてある程度はパフォーマンスを発揮できるんじゃないかなと思います。
6.その他に持っていると便利なスキル
もう一つ業務の効率化についても触れておきます。
データの収集から施策実行までをできるようになっても、会社の規模や見なければいけない範囲が広がってくると、どうしても一人で抱えきれる業務量の限界が来てしまいます。そうすると、人員を増やすことになるのですが、企画職は基本的に売上を生むことがない部門(コストセンター)なので、できるだけ固定費を抑えた運営としていきたいところです。そこで、重要になるのが以下のような業務効率化スキルです。
- エクセルのマクロ、VBAの知識、スキル
- Google Apps Scriptなどのプログラムのスキル
- Seleniumなど作業の自動化のスキル
数値集計やレポーティング業務は最初に形式を固めてしまえばあとの更新作業は代替同じなはずです。日次、または週次、月次の頻度で更新して繰り返す、このような定型化された作業をプログラムなどを使ってどんどん自動化していき、自分の工数を極力かけないようにすることを目指します。
もし、Slackなどのチャットツールを導入している会社であれば、botと連携して毎朝自動で業績が流れてくる、とかまで作れるといいかなと思います。そうすると、定型業務は自動で、新たな課題は自分で、というように、人員を増やさなくても課題解決に向けた業務遂行ができるので、企画職としての価値はより高くなるでしょう。
企画職のキャリアパス
ここまでのスキルを取得し、実務でも活躍できるようになってきたらその後どのようなキャリアを進んでいきたいかを考えてもいいころかと思います。今回はブライダル業界の~という前置きで書いているのでこのようなスキルになりますが、もし同じ業界にとどまるなら以下のようなキャリアがあるんじゃないかなと思います。
- 結婚式場の支配人:自分の力でPDCAをより高速に回していき、現場に近いところで働く
- 経営企画・戦略:会計系の知識、IRに関する知識、会社法・金融商品取引法、経営戦略などの知識を身に着け、経営に近いところで仕事をする
- 企画スペシャリスト:企画職としてより高いレベルまで自分のスキルを磨いていく、または部門をまとめる責任者となる
- マーケティング部門:マーケティングの知識を身に着け、マーケターとして仕事をする、企画職経験者は相性いいのではないかと思います
どのキャリアが正解ということはありませんし、ブライダル以外の業界に転職して新たにチャレンジする、というのもありでしょう(ただし、IT業界で働くデータサイエンティストに求められることはかなり異なるので気を付けてくださいね)。まずは、何を身に着けてどうなりたいか、をしっかりと見定めたうえで目の前の業務にあたることが大切だと思います。
ブライダル業界の企画職についてまとめ
ウェディングプランナーと比べて会社の中のスタッフ数が少なく、キャリアパスや求める要件を整備しきれていない会社も多いのではないかなと思いますが正しい数字が見られて100人が同じ方向を向いて進めるというのはとても意味のあることなので、この機会に職能定義について検討していただいたり、今企画職として働ている方はスキルの棚卸とこれからのキャリアを考えるきっかけになってもらえると嬉しいです。