アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
このブログではこれまで多くのブライダル系サービスのビジネスモデルを図解してきました。代表的なブライダル媒体についても書きましたが、基本的な収益モデルは同じだけれども媒体ごとの特徴で異なる点など、書いていたらわかったことがありましたので、今回の記事では、ブライダル媒体のビジネスモデルのポイントについてまとめました。結婚式場の集客担当者の方や、これからブライダル集客系の新規事業の立上げを検討している方にとって参考になればと思います。
目次
このブログでこれまで書いたビジネスモデル
このブログでこれまで書いたブライダル媒体のビジネスモデル図解記事は以下の通りです。
それぞれリンクつけておきますので、もし気になるサービスがあればご覧ください。これらのサービスのビジネスモデルをたくさん書いたら共通点を見つけたので、簡単にまとめてみます。
ブライダル媒体のビジネスモデルを一般化してみる
ブライダル媒体には地方特化の小さなサービスまで含めるとたくさんありますが、共通点を見つけていくとおおむね上記のような図となります。
まず主体は言うまでもなく媒体、そしてターゲットは結婚式を検討している新郎新婦、媒体ごとの差別化ポイントは2つあり「媒体ごとの特徴」と「掲載している会場数とバリエーション」です。最後にマネタイズポイントは結婚式場運営企業からもらう掲載費(広告宣伝費)です。
ざっとまとめるとこのようになりますが、それぞれの観点についてもう少し細かく見てみましょう。
ブライダル媒体のターゲット
幅広く定義すると結婚式場を探している新郎新婦すべてになります。冒頭で紹介したような大手サイトは様々なニーズの新郎新婦を網羅的にターゲットとしており、それ以外の媒体だとエリアに特化した内容になっていることが多いですね(東京ウェディングコレクションやこまちウエディング、など)。会場タイプ特化型だとレストラン&ゲストハウスウエディングなどがありますが、そんなに媒体の数は多くないです。
ブライダル媒体の差別化ポイント①:媒体の特徴(ユーザーメリット)
ブライダル媒体の特徴で、簡単に言うと「その媒体を使って結婚式場を探すと新郎新婦にとってどんなメリットがあるか」です。
各サービスのサイトや雑誌には様々な結婚式場の情報が書いてありますが、大まかに「安くなる・インセンティブがもらえるなどの金銭的メリット」か「ここにしかない口コミや費用明細が見られるという情報的メリット」のどちらかに分類することができます。
金銭的なメリットで言えばハナユメのハナユメ割やマイナビウェディングの来館キャンペーン、情報的メリットで言えばみんなのウェディングやウエディングパークの口コミ、費用明細などが該当します。
金銭的なメリットはユーザにとってもわかりやすく、それによって来館会場選択の意思決定要因にもなりうるので、媒体運営者としてはできるだけメリットを創出するための企画を考えますし、結婚式場側ではそのルール上で効果を最大限発揮させるための施策を企画実行していくことが必要になるでしょう。
一方、情報的なメリットは口コミや費用明細ですが、媒体上にはコンテンツの置き場所があるだけなので、ユーザーがそれを投稿してくれなければ意味を成しません。例えばみんなのウェディングに会場を掲載しているけれども口コミ投稿数が0件だと、媒体特性を生かした集客活動ができていないと言えます。
数年前にゼクシィでも口コミ投稿を解放したように、会場が発信する一方的な情報だけでなく、参考になる第三者の意見の重要度は増してきています。そういった情報を見られるというのは媒体にとってユーザー獲得の強みになりますし、結婚式場にとってはそれをいかに活用するかで媒体の運用効率が変わってきます。
ブライダル媒体の差別化ポイント②:掲載会場の数(と質)
結婚式場を探している新郎新婦は、地域にもよりますができるだけ多くの選択肢の中から自分帯に最適な結婚式場を選びたいと考える人がほとんどです。最初から限られた選択肢で判断したくないですからね。
となると、できるだけ多くの会場を掲載し(かつ、できるだけ偏りがなく)、使いやすく探しやすいサイトであることが媒体のユーザー獲得には非常に重要だと言えます。この記事を書いている時点での掲載会場数は
- みんなのウェディング、ウエディングパーク:5,000会場以上
- ぐるなびウェディング;4,500会場~
- ゼクシィ:2.500会場~
- マイナビウェディング:1,000会場~
- ハナユメ:600会場~
※目視確認なのでずれていたらすみません。
となっているので、掲載会場数比較でみるとみんなのウェディングとウエディングパークに分があります。また、会場ページが多いとウェブサイト上のコンテンツのボリュームも増やすことができるので、SEOの観点でも好影響があります。
ただし、会場名とアクセスだけが書いてあるような内容の薄いページだとほとんど意味がないのでその点は注意が必要です。掲載会場数のうちどれくらいが有料掲載かは不明ですが、掲載会場数が多ければSEOに好影響→媒体のメディアパワーが上がる→結婚式場への送客数が増える→有料掲載数が増える→売上が伸びる、の好循環に入るので、媒体の集客力と法人営業力は事業成長の重要なKPIになります。
ブライダル媒体のマネタイズポイント
ブライダル媒体の売上は結婚式場から支払われる掲載費(広告宣伝費)で、雑誌、ウェブ、エージェントによって支払いスキームが異なります。
- 雑誌:ページ当たりの単価×出稿ページ数
- ウェブ媒体:基本出稿料+オプション(バナーやリスティングなど)
- エージェント:成約時のFB10%の販売手数料
一般的には上記のスキームで契約されることが多いでしょう。いずれにせよ、媒体側からすると結婚式場への送客数を担保できないと出稿を落とされてしまいますし、エージェントフィーも稼げなくなっていきます。
結婚式場集客でブライダル媒体をうまく使いこなすためには何が必要か
さて、ここまで一般的なブライダル媒体の特徴を書いてきましたが、これを踏まえて結婚式場の集客担当者がブライダル媒体をうまく使いこなすために何が必要かもまとめます。
結婚式場運営事業の基本的な収益構造およびKPIは以下のようになっています。
- 売上=施行組数×組単価
- 施行組数=集客数×成約率
- 集客数=SUM({媒体からの集客数})
- 費用対効果=広告宣伝費/集客数(=来館数)
そのため、売上を伸ばすためには施行組数を増やすか組単価を上げることが必要、施行組数を伸ばすためには集客数か成約率を伸ばすことが必要、集客数を伸ばすためには費用対効果を高めることが必要、売上と媒体効果のつながりはこのようになります。
媒体上で表現できるクリエイティブは雑誌かウェブによっても違いますし、媒体ごとのレギュレーションによっても異なりますが、媒体効果を最大化するためには以下のコンテンツを最適化することが重要になります。
- ブライダルフェア
- プラン
- フォトギャラリー(施設、アイテム)
- ウェディングレポート
- 口コミ返信(機能がある媒体の場合)
基本的なフェアやプランなどの集客機能はほとんど変わらないですが、口コミ返信など媒体によってあるなしが変わるコンテンツは注意が必要です。また、これをやったから絶対に上がる!という裏技もないので、1つ1つの媒体上のコンテンツを地道に更新していきながら改善していくことが重要です(もちろん、こうやったほうが集客効率は上がりやすい、という基礎的な考え方はあります)。
ブライダル媒体のビジネスモデルまとめ
ブライダル媒体の特徴や戦略・戦術について、ビジネスモデルの観点からまとめました。ブライダル媒体の勢力図はここ数年でハナユメが伸びてきた以外はあまり変わっておらず、相変わらずゼクシィ一強状態が続いています。
マクロトレンドとしては緩やかな縮小傾向が続いていますが、まだまだ規模としては大きいですしブライダル媒体からの集客がメインの会場がほとんどだと思いますので、概念や仕組みについての理解を土台に最適化していってもらえるといいなと思います。