※寄稿記事です。
日本のほとんどの式場で新規接客時に会場内覧を行っていると思いますが、言葉通りにただチャペルや披露宴会場を案内・説明するだけでは、お客様にとっても成約率の観点でも物足りません。会場内覧と書くと簡単そうに見えるものの実はとても奥が深く、この出来によって成約率が決まると言っても過言ではありません。今回の記事では、成約率が上がるための会場内覧のポイントを紐解いて解説します。全ての新規接客をするプランナーにとって、少しでも参考になれば幸いです。
新規内覧トークスクリプトが必要な理由
まず始めに、よい新規内覧をするためにはトークスクリプトを準備することが必要です。トークスクリプトとは、内覧中のどのタイミングで、どんなワードを話すかをまとめた台本のようなもので、まずこれを用意しそれを何度も繰り返し実践して身に着けていくことで、質の高い内覧をできるようになります。
トークリストを作成する際のポイントは、下記の2点です。
- ベストビューを見つける
- ベストタイミング&キーワードを見つける
内覧は、見たものを説明するだけなのでトークスクリプトは必要ないと思っているプランナーもいると思いますが、自分の感覚に頼った内覧をするのとトークスクリプトを用意して内覧をするのとでは成約率にも大きく影響しますし、内覧後のお客様のモチベーションも変わってきます。
ベストビューを見つける
新規内覧時のベストビューとは、チャペル・披露宴会場を一番素敵に見せるための一番良い立ち位置(場所)のことをいいます。
例えばチャペルを案内する際であれば、そのチャペルが一番素敵に見える立ち位置があるでしょうし(バージンロードの入り口、祭壇前、など。開放感のあるチャペルなら時間や天候によって違うこともあるでしょう)逆に、この確度やポジションからは見せたくないという箇所もあるはずです。
ベストビューを内覧中に探しているようでは全然遅いので、接客以外の空いた時間に色々と試行錯誤して探してみて、立ち位置だけではなく向く角度、天候、時間、季節までこだわって探してみましょう。同じ言葉でもどこのどの角度で話すかによって、お客様が受ける印象は大きく変わってきます。
特にマイナス部分はしっかりと計算した上で案内をしないと、最終的にお客様の中でそこがネックになるケースが大いにありますので、そうならないためにも内覧時にお客様を立たせる位置をしっかりと計算して事前に考えてトークスクリプトに組み込みましょう。
ベストタイミング&キーワードを決める
内覧時に言葉の伝えるタイミング・その言葉の選び方は、とても重要です。単に何のセリフを言ったか、ではなく、「何のセリフを、どこで、どんなタイミングで、どのように」言ったか、まで徹底的にこだわってきましょう。いくらベストな立ち位置を見つけても、キーワードを話すタイミングを間違うと全然効果的に伝わらないので、ベストビューを見つけたら次はタイミングとキーワードを練りこんでいきます。
この作業は1人でやっているとなかなかうまく進まないことが多いので、
- まず、できればプランナー間で意見を出し合って施設ごとのカテゴリーに分ける
- 次に、その施設の魅せたい場所とベストな立ち位置・そこでの素敵な伝える言葉ピックアップする
- みんなで洗い出したキーワードをブラッシュアップしていく
このような手順で進めていくことがオススメです。この時に付箋やホワイトボードを使ってワークショップのように進めるとあとでまとめやすいのいいと思います。ベストな立ち位置 × その場所が一番魅力的に伝わる言葉(お客様へ響く言葉)をセットで組み合わせて羅列していくと分かりやすいでしょう。
ここまででで、「ベストビュー」と「ベストタイミング&キーワード」がある程度見えてきました。これを元にトークスクリプトを作成することで、どのプランナーが内覧をしても大きな差がなくなり、お客様に同じレベルで案内をできるようになりますし、人によって内覧の違いが原因で成約率が下がる可能性は少なくなります。
成約率を上げるための内覧のコツ
トークスクリプトの準備ができたら、次は実際の内覧時のコツです。繰り返しですが、内覧の出来次第で成約率が大きく変わるという事をしっかりと理解した上で、お客様を案内するようにしましょう。
以前書いた記事「新規成約率を高めるためにウェディングプランナーとして必要なヒアリングのコツとは?」でも触れていますが、人が何か物事を決断するまでに、心理的プロセス「購買心理の7段階」が働きます。
(1)注意→(2)興味→(3)連想→(4)欲望→(5)比較→(6)確信→(7)決断
このうち新規接客序盤のヒアリングまでに、(1)注意・(2)興味までをクリアにしておく必要があります。そして内覧では、主に(3)連想・(4)欲望 の部分を会話の中に盛り込んでいきます。トークスクリプト作成と同様に、内覧も事前にどれだけ準備をして臨めるか次第でお客様に与える会場の印象は全く違うものと言えます。プランナー自身の新規接客における心構えもそうですし、内覧の重要性をどれぐらいの温度感で捉えているか、がとても重要になります。
お客様に「連想」させるためのポイント
内覧時の連想とは、会場を案内しながらいかに自分たちの結婚式をお客様の頭の中にイメージをさせるかというポイントのことで、ここがきちんとできると内覧後にお客様へ感想を伺った際にこちらのシナリオと乖離がない状態にできます。ここでしっかり基本ができていると、最後の見積もり提示後のクロージングがとても楽になります。
まず内覧に出る前は、事前に‘‘コンセプト‘‘を3つ決めていきましょう。なんでも構いませんが、自会場のネックとなる部分を逆手に取りコンセプトとしてお客様に伝えるのはいいと思います。例えば、古くて各所に劣化した箇所がある場合の会場であれば「クラシカル」「伝統」「アンティーク」などを館内案内をする際にトークの中に盛り込むのがいいでしょう。そうすることで、お客様にとってのマイナスポイントがプラスになり、決断をする際のネックとなることを回避できます。
また、そのお客様が好きそうなワードをコンセプトに取り入れてみるのもオススメです。より一層会場が魅力的に伝わると思います。コンセプトを決めたら、内覧の際にそのワードをできる限り沢山使用し会話の中に盛り込んでいきましょう。そうすることで、お客様の中でイメージが沸きやすくなりプランナーの提案がより心に響きやすくなるので、常に意識をした上で内覧をするといいと思います。
お客様の「欲望」を引き出すためのポイント
次に、内覧時の欲望とは「この会場で自分たちの結婚式を挙げたい!」と思わせることで、どんなお客様にも内覧後イメージ通りだ、と思わせるスキルが必要となります。
結婚式を挙げたいと思ってもらうためには次の3点です。
- 内覧前に、お客様の好み・希望や要望を把握すること
- お客様のイメージに近い情景を思い浮かべられる内覧をすること
- 仮にハード面で実現が難しくてもさらに良い提案をできるように組み立てて内覧すること
この中でも特に意識をしてもらいたいポイントは、そもそもの根底にあるお客様の結婚式がどのようなイメージなのか?という点です。だからといって、安易にお客様に「どんな結婚式がイメージですか?」という質問をするのはNGです。お客様の中でまだ見学の段階ではその質問が抽象的でかつ言葉が見つからず答えにくいから、というのが理由です。
もちろん、内覧後にお客様にイメージ通りだったと感じてもらえればよいのですが、もしそうではない場合はその価値観を変えるということが重要です。内覧の際にプランナーが一番陥りやすい心理が、無理やりにでもお客様に気に入ってもらおうとする気持ちが働いてしまい、お客様にとって少し強引に押し売りのような感じの印象を与えてしまうということです。
‘‘元々あるモノにお客様の希望をはめ込む‘‘というのではなく、‘‘お客様の希望にはめ込む為に元々あるモノの形を変える‘‘という意識を持つことが重要なのです。
- 元々ある=会場
- はめ込む=お客様
- 形を変える=価値観を変える
例えば、自会場がステンドグラスではないナチュラルな木目が基調のチャペルだとして、お客様が「チャペルは絶対にステンドグラスが良い!」と思っているお客様に対して、どのように切り返すか・・そこで諦めてしまって相槌だけで終わってしまうでしょう(そもそも来館しないだろうというツッコミは置いておいて)。
このような場合、まずプランナーとして「なぜステンドグラスがいいのか?」という理由を掘り下げて聞き、そして「今まで考えてなかったけど、ナチュラルな雰囲気のチャペルも素敵!」と思ってもらえるために、どのような言葉を投げかけるかと発想を変えていくことがとても大切です。
これは私の感覚ですが、掘り下げて聞いてみるとお客様はハードに対して明確な希望理由がないことがほとんどなので、見た目が希望と違うからとあきらめるのではなく、まずは理由を聞いてみるところから始めて見ましょう。
先ほどの例であれば、もちろんお客様の希望を重視することも重要なのでですが、「当会場はステンドグラスのチャペルではないので、今のお客様のイメージとは違うと思いますが、一度ご覧になられてはいかがですか?」とお伝えし、チャペルでしっかりと魅力を語ることでお客様の価値観を変えられる可能性も出てくるのです。
現代はインターネットやSNSでの情報収集が容易なので、多くのお客様は事前に会場のフォトギャラリーを見てから来館します。それにもかかわらず、なぜ自会場へ来館をしたか?を考えてみて、きっとステンドグラス以外のチャペルも見てみたいという想いが少しはあったと想定すると可能性が広がるのではないでしょうか。
極端ですが、もしそこにステンドグラスなければ‘‘結婚式に重要なのはステンドグラスではない‘‘と感じてもらえれば新しい価値観が生まれることもあります。新しい価値観を感じてもらうことにより、「このプランナーなら自分たちにとって最高の結婚式を一緒に創ってくれるかも」という期待・信頼に繋がるのです。価値観と共に、プランナーとしての人間力も同時にアピールすることが可能となり、自分で自分を一生懸命売り込まなくても自然と無意識にプランナーとしての価値も上がります。
新規接客の内覧時に本当に必要なスキルとは?
最後に内覧のコツとは少しずれますが、新規接客時に意識をしてほしいポイントも紹介しておきます。
基本的に質問をする時は、二者択一法もしくは三社択一法でお客様が答えやすい選択肢を常に提示していきながら、お客様の根底にある要望を引き出すことを意識しましょう。
よく内覧後に「結局お客様の希望・要望がよく分からなかった・・・」という状態になってしまうこともあると思いますが、それはプランナーの質問の仕方が悪いからです。もしかしたら、お客様によっては結婚式に対して特に拘りがないと言う場合もあるかもしれませんが、拘りがないことが拘りかもしれないですし、なんとなくあるイメージを上手く表現できていないだけかもしれません。または、潜在的にある自分たちの気持ちに気づいていないということも有り得ます。
そこを引き出す・または創り出すことが、本当にお客様がプランナーに求めていることだと私は考えています。自分の先入観は捨てて、いつもお客様に寄り添いながら本音を引き出すことを忘れずに真摯に向き合っていくということが何よりも重要なことだと思います。
プランナーの新規接客内覧のポイントまとめ
新規接客の内覧におけるポイントをまとめました。これまで新規接客を経験してきている方にとっては ‘‘何かを変える‘‘ ということはとても勇気と体力のいることなので、なかなか難しいことだと思います。
ただ、今の自分の成約率をより高めていきたいと思っているならば、何かを変える勇気を自分自身や周りにも挑戦をするという思考が必然的に必要だと思います。トレンドも自身の年齢も変わっていく中、‘常に自分自身のスタイルも変わり続けていくこと‘‘が新規プランナーとして大切です。今回の記事をきっかけに一人でも多くのプランナーが、今よりほんの少しだけ変わる勇気を見出してもらえるとうれしいです。