更新日 2021年09月05日

新郎新婦の負担0円でも結婚式は可能?「協賛型ウェディング」のビジネスモデルを考える

0381_結婚式場の新しいビジネスモデル

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

70人近いゲストが3万円のご祝儀をわたし、祝福されるはずの新郎新婦がさらに自己負担で数十万円を支払い、にもかかわらず結婚式場側も儲かっているわけではなく、業界従事者は薄給で長時間労働を強いられている。

このようにお金の面では誰もハッピーになっていません。そしてこの原因は現在の結婚式場のビジネスモデルに起因しています。

そこで、今回はこの問題を解決すべく、こんな方法で考えてみたらどうだろう?というモデルを考えてみます。

※2019年10月30日公開、2021年9月5日に加筆修正。
記事内の紹介辞令は初回で書いたものは残しています。

 

ブライダル業界の一般的なビジネスモデル

381_一般的なブライダルのビジネスモデル(お金の流れ)
  • ゲストはご祝儀を払っている(平均3万円)
  • 新郎新婦は自己負担金がある(20万~100万ほど)
  • 結婚式場は原価に加え広告費や人件費、家賃などを支払うので実は薄利

もちろん、結婚式という代替の効かない貴重な体験を提供しているのでその付加価値に対してお金がかかるのは当然、とは思いますが、とはいえ新生活をこれから始めていこうという2人にとって金額の出費は痛いのも事実です。そして結婚式場も大して儲かってません。

そのため、ゲスト、新郎新婦以外の第三者にお金を払ってもらえないだろうか?他の産業ではどのような事例があるのか?を考えてみます。

 

既存業界なのに新しいビジネスモデルの事例

テクノロジーの発展が著しい昨今、既存の業界にも関わらず全く新しいビジネスモデルの事業やサービスが新たに生まれています(2019年時点の事例を残しています)。

DeNAの0円タクシー

これまでのタクシーは乗車した人が乗車料金を支払うというのが一般的でしたが、乗客から乗車料をもらうのではなく(無料)、タクシー車内のタブレットで動画広告を配信するサービスを開始し、その広告主が支払う広告料が売上となるというモデルです。

タクシーも成熟産業で動画広告の仕組み自体もすでにありましたが、タクシーのマネタイズのポイントをずらす、という意味でとても斬新な取り組みだと言えます。

(参考)

381_DeNAの「0円タクシー」のモデル_2

SHOWROOM

前田社長も有名ですし、いろいろ説明したいところではあるのですが、端的にモデルを説明すると「投げ銭ライブ」です。

これまでアーティストやアイドルなどを応援しようとするとライブに行ったりグッズを買ったりファンクラブに入ったり、というのが主流な方法でしたが、その場合の売上は所属している事務所やマネジメント会社に入ります。

そこで、その応援しようとする気持ち(という名のお金)を本人に直接オンラインで渡すことができる点が画期的なサービスです。

(参考)

ONE(現在はWED株式会社)

フィンテックスタートアップのONE FINANCIAL(現WED)が提供する、レシートをスマホ撮影するだけで現金がもらえるモバイルアプリです。

アプリでレシート写真を撮影すると10円が振り込まれ、月当たり3,000円まで現金化が可能です。このサービスは、レシートに含まれる個人の購買情報をマーケティングツールとして活用することで、広告主からの広告料でマネタイズするというモデル。

(参考)

381_ONEのビジネスモデル

とまぁ、3つ事例を見てきたわけですが、これらに共通しているのは次の3点。

  • 全く新しい市場やプロダクトを使っているではないこと
  • ただお金の流れ(お金を払ってくれる人)を変えていること
  • 個人へのアプローチ(特に広告配信先の精度が高いという点で)でマネタイズしていること

ブライダル業界では、結婚式を提供してそのお金をいただく、というのが基本モデルですが、結婚式を提供するというコアな部分を残しながら、マネタイズのポイントを変えてみるとどうなるかを考えてみます。

 

「協賛型ウェディング」のビジネスモデル

実現可能性とかが高いか低いかとか、具体的にどうやってやるんだ、みたいな話は一回置いておきますよ。これまで紹介したような新サービスが他の業界ですでに生まれているのだから、ブライダルでもこういう切り口で入っていけるんじゃない?という考え方です。

381_「協賛型ウェディング」のビジネスモデル

ポイントは下記の6つ。

  • 新郎新婦の支払いは0円
  • ゲストから新郎新婦へのいわゆる「ご祝儀は0円」
  • 結婚式場が結婚式で提供するコンテンツは企業からの試供品
  • 結婚式を挙げるカップル+ゲストの情報はDB保管してマーケティングに活用
  • サンプリング費、広告費が結婚式場の収益源となる
  • ゲストから新郎新婦へのお祝いの気持ちは別ルートでオンラインで投げ銭もあり

新郎新婦からもらう結婚式費用を収益源とするのではなく、コンテンツ提供する外部企業からのサンプリング費、広告宣伝費で成り立つ、いわば「協賛ウェディング」ですし「結婚式のプラットフォーム化」だと言えます。提供するアイテムをすべて外部企業の試供品にする代わりに、新郎新婦はもちろん、ゲストも参加費自体は基本無料です、というコンセプト。

そして、新郎新婦を純粋にお祝いしたいゲストの気持ちは別ルートの投げ銭でお祝いしましょう。そうすればそれはそのまま新郎新婦の財布に入ります(新生活ウィッシュリストとかでもいいと思います)

これを実現しようと思ったきっかけは、結婚式に出席する人(新郎新婦、ゲスト)情報はマーケティング的には情報の宝庫なんですよね。

  • ユーザー属性情報の精度が極めて高い(年齢や会社名、役職などは席次表に書くのでデータがありますし、好き嫌いや子育て中かどうかも聞きますよね)
  • 業界全体で見れば年間で40万組×60人×2,400万人分(重複込み)の情報が毎年追加されていくので規模もそれなりに大きい
  • 結婚式後のライフイベントが想定しやすく、他業界のターゲットになりやすい

など、文化的な要素や結婚式への想いといった点をまるっきり無視すると、この情報って他業界のCRM施策などの起点にかなりなりやすいんですね。なので、このリアルでのイベントやそこで得られるデータに対して、お金を払ってでも利用したい企業はあるのではないかと思っています。

もちろん、実現するためには相当いろいろハードルありますが、合理的な方法で(違うスポンサーからお金をもらっているから)結婚式料金を無料にしているので、

  • 果たしてそれにお金を出してもいいというスポンサーは開拓できるのか?
  • その結果、どの程度のクオリティの結婚式を新郎新婦に提供できるのか?
  • PLは成り立つのか?

このあたりを突破できると(超難しいと思うけど)、いけるんじゃないかなぁと思います。なお、そうなると結婚式場の選択基準は、ハード要素と協賛している企業の質と量に変わるはずです、もはや今とは全く別の世界になるでしょう。

 

「協賛型ウェディング」のビジネスモデルについてまとめ

このモデルが作りたい!というよりは、今のモデルはもう限界だと思うことが多いので、もし次のモデルができるならどういう感じかなといろいろ考えていてこの記事にたどり着いた、というのが背景です。こういったモデルになるのか、他のモデルが生まれるのか、このまま行くのか、今はわからないですが、また何か考えていこうと思います。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

CATEGORY同じカテゴリーの記事