アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
AIが仕事を奪う、といった話を耳にしたことがある人は多いと思います。プランナーをはじめ人の要素が多いブライダル業界でも同じくAIが活用される未来は予測があるのか?今の自分たちの仕事は将来も大丈夫なにか?など不安に感じている人もいるでしょう。
今回の記事では、ブライダル業界で働く人向けにAIについてできるだけわかりやすくまとめます。
目次
AI(人工知能)とは何か?
AIとは「Artificial Intelligence」の頭文字を取ったもので、日本語に直訳すれば人工知能です(Artificial=人工の、Intelligence=知能)。そして、この人工知能は「特化型人工知能」と「汎用人工知能」の2つに分けられます。
特化型人工知能は何か1つのことに特化した機能を持つ人工知能のことで、チェスや将棋、囲碁などのAIソフトのように1つのことに対してのみ使える人工知能のこと。一方汎用人工知能とは人と同じような振る舞いをする究極的にはドラえもんのような人工知能のようなことです。
これまでの人工知能の歴史などの説明はここでは省きますが、現在(と言っても最近はブームも落ち着いていますが)トレンドになっている背景には「ディープラーニング(深層学習)」技術の発展とビッグデータの浸透が挙げられます。
ディープラーニング(深層学習)とは?
これまでのAIでは、与えられた知識や情報を取り出してくることしかできませんでしたが、ディープラーニング技術が発展したことによって、人工知能が「自ら学習し、推測する」ことが可能になってきていると言えます。
例えば、あるAIに対して猫の画像を認識させ「これは猫か?」という問いを出した場合に、これまで学習してきた画像処理のデータをもとに、猫の確率が●%、犬の確率が△%、人の確率が□%、という答えを返すことができ、さらにそのデータ量と学習回数が多いほどその回答精度が高くなっていく、ということです。
人は生まれてから今までの間、「これは猫」「これは犬」「これは猫」…、と何万回も人に教えてもらったり図鑑を読んだりしてきているから今パッと猫を見たときに「これは猫である」と認識することができているはずです。イメージとしてはそれと同じで、それをAIも可能になってきているということです。
つまり、INPUTの情報から問いに対してのOUTPUTを「AI自らが考えて」出すことができる、こういった技術がすでに実用化されつつある、ということです。
そういう背景から、
- 過去の膨大な判例を超速で解析して今回の裁判事例だとどのよう判決が妥当かを回答してくれる法律AIができるから弁護士の仕事はなくなるだろう
- 過去の上場企業の決算データを超速で解析して決算業務を行える会計AIができるから税理士の仕事はなくなるだろう
みたいな話が出てくるんですね。
AIと他の技術の違い
ここまでAIの定義と技術について触れました。
企業のリリースなどを見ていても、全然違う技術のことを指してAI~~と発信している人、捉えている人が結構いるので、ちょっと難しいですが基本的なことについては知っておくとよいでしょう。特に業務システムを使った業務効率化などとAIを混同してしまっている人が多いですが、これは全く別の話です。業務システムに学習は必要ありません。
- そろばんで出納帳記入→電卓で計算が楽に→エクセルでもっと早くデータ化→業務システム入力するだけで簡単
経理業務ではこういった変化が起こってきていますが、この過程を経て経理で昔活躍していた超速そろばんおじさんの仕事がAIに奪われてしまった!みたいな話は、AIとは全く関係なくただの業務のシステム化です(細かな話で言えば明細と仕訳をAIが学習してシステム入力工数を削減することができる、みたいなのもありますが…)
ブライダル業界でも、結婚式準備における結婚式場⇔パートナー間の受発注処理の方法が、
- 電話と郵送でやり取り→FAXで即やり取り→メールで発注書添付でデータ化→システム発注で業務効率アップ
となってきて営業事務の仕事が効率化されて人を置かなくてよくなったみたいなのも同じく業務システム化の話でAIとは関係ありません。
ブライダル業界のAIの事例
ハナユメAI
LINEで「ハナユメAI」の簡単な質問に答えるだけで、ぴったりな式場やフェア検索などが出来るサービス。
- INPUT:ハナユメからの質問に対する新郎新婦の回答
- DATA:ハナユメの持つ式場やフェアのデータ
- OUTPUT:式場やフェアの情報
これまではハナユメやゼクなびなどブライダルエージェントのカウンター接客担当者がヒアリングし、その内容を加味して提案を行っていましたが、これをやってくれるAI、というサービスですね。
※すでにサービス終了したみたい。
AI Planner(プラコレ)
プラコレで蓄積したビックデータを基に、AIがカップルの要望を叶えてくれるウェディングプランナー見つけ、代わりに最適な提案を代行してくれるサービス。
- INPUT:ウェディング診断の「診断データ」と、サイト内での閲覧保存などの「行動データ」、アドバイザーとのチャット相談による「会話データ」
- DATA:過去の直近利用2万組のユーザーデータ
- OUTPUT:「ウェディングプランナー」「結婚式場/場所」「条件に適した見積」の順番で選択し、全ての情報をセットにしてオリジナルプラン
さすがIT企業だけあって、リリースにちゃんとすべて書いてありました(笑)。ユーザーの対象フェーズもコンセプトもハナユメとほぼ同じです。ただ、ログイン機能を持つプラコレの方が保持できているデータ量がハナユメよりも多く精緻だと思うので、学習の元になるデータ量はプラコレに分がありそうです。
ブライダル業界とAIのこれから
最後に、私の将来予測です。
なぜ今結婚式場でAIが取り組まれていないのか?
現状ではハナユメとプラコレの「結婚式場探しフェーズのユーザーを対象にしたサービスを運営している会社」しか取り組んでおらず(私が知らないだけだったらすみません)、結婚式場運営会社はまだ公に取り組んでいる会社はいません。この理由は3つあると思っていて、
- そもそもAI技術を持っていない(それに投資するつもりもない)
- 学習に必要なビッグデータを持っていない
- AIが何かしら精度の高いアウトプットを出しても売上につながるビジネスモデルが組めない
こういった背景から、AIに積極的に投資していこうという会社がないのだと思います。
もしブライダル業界でAIが活躍するとしたらどういうモデルになるのか?
くどいのですが、今のAI技術を発揮するために必要なのは下記の3つ。
- INPUTデータ
- 精度の高いOUTPUTを返すためのビッグデータ
- INPUT→OUTPUTの膨大な学習回数
この条件を担保出来てかつ、ユーザーにとってもAIサービスを利用するメリットがあり、さらにサービス提供者(およびそのステークホルダー)の利益につながること、この条件がそろわないとAIが積極的に取り入れられていくことはないと思います。
結婚式場探しフェーズのユーザーに対してのサービスであればギリギリ可能性はあるかなぁとは思いますが(とはいえ、投資コストに対してのリターンが小さすぎること、学習に必要なサンプルを確保するのにもコストが掛かること、から実験的立ち位置の事業として捉えないと厳しいはず)、結婚式場が取り入れるには難しいと思います。
これからAIはトレンドになるのか?
可能性としてあると思っているのは、
- 業界内でシェアを取れる業務システムが登場し日本中の結婚式場のデータを商品マスタと顧客別の商品選択のレベルで得られるようになる。
- そこで得られるビッグデータと、フロント側(結婚式場探しのフェーズ)のユーザーデータと突合できる環境が整う
- 結婚式場探しのフェーズからどのような行動をしたか、最終的にどこの式場のどういうアイテムを選択したかまでのINPUTデータを学習したAIができる
- そのAIがユーザーに対して自分で自分の最適なウェディングをプロデュースできる方法をOUTPUTとして返す、というサービスができる
- 結婚式場はプランナー人件費と広告宣伝費を削減できるのでそこからの流入(会場利用者)を受け入れるメリットがある
こんなことが実現するとAIが使われてるなぁって感じになると思います。20年後とかですかね…。
- リクルートのAMSが受発注までできる業務システム機能を持ってより幅広く浸透する
- tascutとPhorbsが組んで集客から施行までのデータを突合できる状況になる
既存プレーヤーからの展開だとこれくらいしか思いつかないですが、技術は想像を絶するスピードで進化しているのでいつ何が起こっても不思議ではないですね。
ブライダル業界とAIについてまとめ
わかりやすくまとめようと思いましたが、難しい感じになってしまってすみません。言いたいことは
- AIはINPUTデータをもとに、ユーザーに価値あるOUTPUTを返す技術で、学習できるビッグデータの量と質・学習回数を重ねるほどその精度が増していく技術のこと
- ブライダルで現状取り入れられているサービスはハナユメAIとAI Plannerの2つで、いずれも結婚式場探しフェーズのユーザーをターゲットにしたサービス
- 将来的にAIがプランナーの仕事を奪う可能性はあるとは思うものの、現時点での実現可能性は低く、またかなり時間もかかりそう
この3点です。今回も読んでいただいてありがとうございました。