アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
企業のIR情報を見て会社の状況や方針を理解できるのは、社会人としての重要なスキルの1つです。そこで、今回の記事では、AOKIホールディングス(以下、AOKI)の2020年3月期第2四半期の決算説明資料をもとに、その内容について考察してみようと思います。(注)本記事の内容はあくまで個人的な見解であり、投資家向けに書いているわけではありません。この記事の内容をご覧になられて投資判断をされても一切の責任を負えませんのでご了承ください。
今回の第2四半期決算の概要
元となるAOKIホールディングスの2020年3月期第2四半期の決算説明資料は下記URLで見ることができます。
今回はこの決算説明資料の中のブライダル部門(アニヴェルセル)についてのところのみをピックアップして書いていきます。
決算概要
こちらの数字の「アニヴェルセル・ブライダル」の数字をご覧ください、ポイントをまとめると
- 売上高:前年比12億円ダウン
- 営業利益:前年比6.8億円ダウン(赤字)
1Q決算に引き続き減収減益で、さらに落ち込み幅が大きくなってきています。主要因が「施行組数の減少」とあり店舗数が減ったということはあるものの、それ以上に既存店の施行数も落ち込んでいるのでしょう。
施行組数が減るをさらに深ぼって考えると、集客数が落ちるor/and成約率が落ちる、が要因となるわけですが、
- アニヴェルセルのようなどの店舗も同じようなデザインでの出店戦略の場合、マーケットのトレンドとハードの強みがずれ始めると集客数が大幅に落ちていく可能性がある
- 成約率は結婚式場内の組織とオペレーション設計に起因していることが多いので、ここが崩壊すると一気に落ちる可能性がある
この2つのいずれかまたは両方が起こっているんじゃないかと思います。
通期見通し
国内結婚式場運営企業の場合結婚式の繁忙期が3Qと4Qにあるので、3月末決算の会社は売上や利益が3Q~4Qが大きく伸びる傾向があります。アニヴェルセルの現時点での通期予測は黒字となっているので3Qと4Qの受注残はそれなりにあるのだと予想されます。
ただ、営業利益の予測では2Q時点の実績と昨対でほぼ同じ増減幅となっているので、これから読むに3Qと4Qの業績は昨年対比トントンと予測していることになります。となると1Qと2Qの新規受注が昨年とほぼ同数でないと個の予測は成り立たなくなるのですが(それか昨年と比較して大きく施行時期が後ろに偏ったか)、先ほどの集客と成約率で苦戦していそう、という仮説と照らし合わせるとこの数字も意外と厳しいのではないかと思います。
アニヴェルセル・ブライダル事業の詳細
思ったことはいくつかあるのですが…
- 組単価高っ(人数比で見てもかなり高い、6万円超えてるし…)
- 稼働率高っ(アニヴェルセルは複数バンケットの会場がほとんどなので、それでいてこの稼働率はかなり高い)
- これで利益出ないとかきつっ
この3つが最初に思ったことですね。結婚式場運営企業のPLって損益分岐点を超えてからの利益のアップサイドっですごく大きい一方、今回のアニヴェルセルのように損益分岐付近まで売上が落ちると一気に赤字になりかねないハイリスクハイリターンなビジネスモデルです。
それが顕著に出た決算内容だと思います。にしてもここまで精緻な数字を出している決算資料も珍しいですが…。
- なんで利益落ちたの?→施行組数が減ったから
- なんで施行組数減ったの?→成約率と来館が落ちたから
- ではどうやって回復するの?→普通のことしか書いてない
というのが見たところの率直な感想ですね。WEBと紙面の最適化や装飾修繕の強化は今までもやっていたはずですし、今まで以上に何かするならトピックとして書かれるはずなので、特に具体的な施策はまだ見えていないのでしょう。大丈夫なんですかね…?
主要経費の内訳
これを見ると人件費と広告宣伝費は前年より減っているんですよね。1店舗締めた分がそのまま減っていると考えると既存店は横ばいかもしれません。先ほどの改善施策で「集客拡大に向けた販売施策の実施」とあったのですが、その予算ってどれくらいかけるんでしょうね…。
私はブライダルのマーケティングをやって長いですしけっこうバリエーションに富んだ施策の実行経験がありますが、既存施策を強化しただけでこの数字を埋められるほど甘くないと思うんですよね…。このままだとジリ貧になっていく可能性も少なくはないのでは?と思う決算内容でした。
AOKIホールディングスの2020年3月度第2四半期決算についてまとめ
ほんとに簡単にですが、決算説明資料をもとに考察を書いてみました。ブライダルの現場で働いていると企業のIR情報を見ることはほとんどないとは思いますが、他の会社でどんなことをやっているのか、起こっているか、ブライダルマーケット全体をどのように捉えて動いているのかなどがわかると意外と楽しいと思うので、この記事をきっかけにIR資料も見るきっかけになってくれればうれしいです。