アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
結婚式場やフリーランスの集客相談の際に、よく「差別化」について相談を受けるのですが、差別化以前に考えなければいけないことについて書きます。
目次
集客における差別化とは?
ブライダル業界のマーケット環境が大きく変わってしまった昨今、ブライダル事業者の新規事業立ち上げや個人の独立・起業は以前と比べて明らかに増えてきました。
新しく事業を立ち上げる、自分のプロデュースブランドを作る、などの場合、
- サービス名称の決定
- ビジネスモデルの決定
- 事業計画の策定
- マーケティング戦略の策定
- オペレーションの設計
- 実行計画の策定
これらのタスクを1つずつ進めていき最終的にリリース→運用→成長と続いていくわけですが、なぜかその過程で「差別化ポイント」を必要以上に意識している(意識し過ぎている)人が多いなと感じています。
職業柄、新規事業立案の相談を受ける機会も多いのですが、
- うちのサービスは他社とはここが違うから売れるはずだ、とか
- 今こんな企画を考えているんですが他にも同じようなサービスが多くて差別化できない…、とか
- この新サービスの強みは「○○が差別化されているので…」、とか
こういった話をよく聞くんですよね。
そもそも差別化とは、簡単に言うと「類似サービスと自社サービスの違い」のことを指すのですが、僕個人の意見としては差別化の前に必要なこと、もっと重要で考えなければいけないことがあると思ってまして、今回はその話を書いてみます。
そもそも差別化は本当に必要なのか?
商品やサービス提供者が唯一無二でない限り必ず競合は存在し、特にブライダルのような歴史が長く供給過多の市場においては競合がいないなんてことはあり得ません。
なので、まずはどのように競合に勝たなければいけないかを考えることが必要であり、そのようなサービスとの違い=差別化要素を考えなければいけない。
新規事業担当者の思考としてはおおよそこんな流れだと思います。
しかし、極めて重要なポイントとして、「そもそも顧客がそのサービスを選ぶ理由がなければ、いくら差別化したところで意味はない」ということが頭の中から抜けていることが多いと感じています。
既存サービス、競合サービスとの違いを作ることに夢中になっていて、顧客そのものを見ていないというか。
例を挙げると、スティーブ・ジョブズがiMacの開発をしていた当時に周囲に語った以下の言葉が当てはまります(興味ある方はググったら記事出てくるので見てみてください)。
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『美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルがバラを10本贈ったら、君は15本贈るかい?そう思った時点で君の負けだ。その女性が何を望んでいるのか、見極めることが重要なんだ』
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最近はさすがにあまり聞かなくなりましたが、ブライダル業界でもよく聞いていた話だと
- 隣の会場のチャペルは13mだからうちは15mだ、とか
- 隣の会場のバンケットは90人だけどうちは100人だ、とか
- 隣の会場の当日特典は30万円だけどうちは50万円だ、とか
こういう比較で考えている事業者は少なくなかったなと思います。
しかし、顧客は条件比較の前に商品・サービスを選ぶ基準がまずあり、その選ぶ理由に該当しうるサービスが複数あった場合に、初めて比較要素を勘案して決めることになります。
つまり、事業者側が初めから差別化することを前提に事業やサービスを考えても当然うまくいきません。そのポイントが選ぶ基準を満たしているかがはっきりしていないからです。
まとめると、根本的な選ばれる理由が必要であり、差別化はその次なのです(言い換えれば必要条件ではなく十分条件)。
考える対象・領域が変わってきている
もう少しブライダル業界について深く考えてみると、上図の通りここ数年で顧客側の選択肢は大幅に増えました。
以前は、結婚したら結婚式はするものでまず式場を決めることが当たり前、という価値観だったので式場間の比較がスタートラインだったと言えます。だからハードの主要素比較から検討を始めても何とかなっていた。
しかし現在は、そもそも何かしらのセレモニーをするかどうか?の検討が入り口にあり、式場探すかフリーランスに頼むかフォトウェディングかの選択があり、さらにその中で式場を選択した人の中で始めて式場間の比較がされるという状態になっており、顧客の検討階層が2つくらい増えている印象です。
こう考えると、選ばれる理由=式場の中で選ばれる理由、を前提として検討を始めてしまう時点で5割くらいの顧客を最初から捨てる判断をしているのと同義になりますよね。
それならそれでもいいのですが、もったいないなと思います。自社の対象顧客領域を自ら狭く設定してしまっている。なので、
- 自分たちの式場やサービスは、どこの領域で勝負をするのか?
- その人たちがサービスや式場を選ぶ理由は何なのか?
- 選ばれるであろうサービスが複数ある場合に最終的に何が決め手になるのか?
このあたりを深堀り整理し、関係者間で共通認識を持つことがまず大事になるのだと思います。
なぜ顧客に選ばれるのか?を考える
顧客がなぜそのサービスや式場を選ぶのか?を事業者側の目線で書き換えると、「そのサービスは顧客の何の課題を解決するのか?」だと言えます。他社の類似サービスと比較して○○の点が秀でているから、が直接の理由になることはほぼありません。
ブライダル業界の大きな潮流の変化事例で言えば、2010年あたりはゼクシィ全盛期で、チャペルの大きさやデザインだ、バンケットの広さや装飾だと式場間で競っている間に、顧客の中の自分らしく挙げたいというニーズを突いたオリジナルウェディングトレンドにごっそり流れを持っていかれた、といった感じと似ているでしょう。
繰り返しですが
・顧客に選ばれる理由=顧客の何のニーズを解決できるのか?
であり、その解像度をいかに精度高くアップデートし続けられるかが重要なのです。
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では、顧客のニーズはどうやったら把握できるのでしょうか?
これについては諸説あるのであくまで一例となりますが、顧客の声をとにかく聴くことが一番大事だと思っています。アンケート調査や市場調査なども手段としてはありますが、顧客の口からふと発された一言の中にヒントがあるというか。
顧客も自分の中で課題や希望が明確になっていることは意外と少なく、ぼんやりとこんな感じ、あんなイメージ、といった具合であることがむしろ多いです。BtoCだと特に。
そのため、とにかく様々な角度から話を聞く、話の中に出てきたキーワードや表情から潜在的なニーズはどこかを探る、そのニーズを解決できそうなアイディアや企画を作る、世の中に出して反応を見てみる、このサイクルを早く回し続ける、これが必要になるだろうと。
結婚式場やプロデュースの新規接客って、営業の場であると同時にヒアリングの場でもあると思うんですよね。成約になればもちろん嬉しいですが、そうでなくても今の顧客は何を考えているのかを知る機会としては非常に価値が高いと思います。
また、この視点で捉えると、ゼクシィフェスタ等のウェディングイベントでの接客は普段来館される方とは異なる層の方との接点にもなるので貴重ですよね。あんまりそういう観点で捉えている方に会ったことはないですけども…。
まとめると、ニーズ把握のための顧客の声を聴く機会を積極的に設けることは重要であり、接客の中からそういった情報を引き出せるマーケティング思考、ブランディング思考を持ったBtoC営業メンバーはかなり最強だと思いますって話です。
結婚式場・フリーランス集客で差別化の前に必要なことまとめ
- 他社との差別化を考える前に、顧客に選ばれる理由を明確にすることが必要
- 顧客に選ばれる理由を知るためには、顧客の声を精緻に聞くことが必要
- 新規接客やイベント接客はそのいい機会、存分に活用するという視点を持とう
今日の話をまとめるとこんな感じです。
新規事業や企画、アイディアって
- 10000人が思いつき
- 1000人が深く考え
- 100人が実行し
- 10人が継続し
- 1人が成果を出せる
だいたいこんな感じなので、思いついたり考えたりすることに価値はありません。みんな思いついてます。大事なのは成果が出るまで実行し続けること。
特に顧客ニーズも問合せルートも分散してきている現代においては、表面的な要素の差別化を考えるだけではなく、潜在的なニーズの探索をできるスキルを持っているかどうかこそが強豪との差別化とも言えると思いますので、今回の記事が少しでも参考になるといいなと思います。