更新日 2024年02月14日

結婚式場のオンライン販売は可能?は新規メンバーなしで運営できるか?

1022_結婚式場のオンライン販売は可能?は新規メンバーなしで運営できるか?

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

人材不足やブライダル業界への不信感が喫緊の課題ですが、それらを払しょくするための新しい仕組みを作れないかを考えてみます。

 

結婚式の価格の透明性

「結婚式の価格は不透明だ」と言われて久しいですが、この言葉の背景を考えるといくつかの課題に分けて考えることができます。

  1. 契約時からモリモリ上がる
  2. 町の花屋だと3,000円なのに結婚式だと30,000円(=そもそも高い)
  3. 同じ内容の結婚式なのに時期や日柄によって金額が異なる
  4. 同じ内容、同じ条件の結婚式なのに式場側の営業戦略によって金額が異なる

これらの課題については多くの方と日々お話しさせてもらったりSNS投稿を見たりしていますが、なかなかに解決が難しいテーマではあります。

  • 結婚式場の利益を確保できること
  • 顧客ごとに有利不利なく納得できること

この2つを満たす新しい仕組みが必要だと考えていて、今回はそんなお話。

 

結婚式場は施行枠を売るビジネス

本題に入る前に、まずは前提となるビジネスの話。

結婚式場ビジネスって実は結婚式を売っているのではなく、結婚式ができる時間(以下、施行枠)を売っていると考えるのが基本です。バンケットAの土曜日の午前枠、日曜日の午後枠、みたいな感じ。

一般的によく見かけるKPIツリーはこういったものが多いでしょう。

これはオペレーションに沿った考え方をすると正しいのですが、B/S(貸借対照表)観点でとらえると次のようなツリーを書くことができます。

結婚式場ビジネスのKPIツリー②_2

 

結婚式場ごとに施行枠は限られており、どの程度の割合でそれを売ることができるか(=施行枠稼働率)によって売上が決まりますよね、という考え方です。

例えば、1チャペル1バンケットの会場で1日2回転のオペレーションを組んでいて月間休日数が10日の月の場合、施行枠数は10日×2枠=20枠、となります。

これが上限販売枠数であり、この20枠をどのようにいくらで売っていくら儲けるかを考えるのが営業・マーケティング戦略となるのです。

他の業界と比較すると、あらかじめ販売できる部屋数や座席数が決まっているホテルや飛行機と同じモデルと言えます。

ホテルの部屋数や飛行機の座席数はあらかじめ決まっている一方、ホテル運営にかかる家賃や人件費、飛行機を飛ばすのにかかるお金は固定なので、できるだけ稼働率を上げた方が儲かるよねと考えて値付けしているのです。

で、この決まった商品数をどのタイミングでいくらで売るかを考え利益を最大化するために調整していくことをイールドマネジメントと呼び、ホテルや飛行機の金額が予約するタイミングによって変わるのはこのためです。

 

結婚式場営業の新しい仕組みを企画する

概要

結婚式場の施行枠をオンラインで販売するサービス。

ポイント

  • 施行枠ごとに価格を決めてオンラインで販売する。
  • 20XX年M月D日(土)の10時挙式開始の枠は200万円、みたいな感じ。
  • もちろん、申込時に全額支払う必要はなし。
  • 申込後に打合せ開始し、結婚式場または提携パートナー商品分は施行枠購入金額から充当できる
  • 非提携のアイテムを入れる場合は自腹でどうぞ。ただし持込み料などは一切なし。
  • ゲストが何人でも、どんな内容でも、持込みしてもOK。

顧客にとってのサービスのメリット

  • 人数●名以上縛り、値引き交渉、持込み不可(持込料)などの価格の不透明なところがない
  • オンラインで簡単に申し込むことができる、式場見学したら8時間拘束営業された的な不快な体験がない
  • (長い目で見ると)式場側の人件費抑制分だけ販売価格が安くなる。

式場にとってのサービスのメリット

  • 契約時点で売上額がほぼ正確に予測できる、利益を確保できる価格で販売できる。
  • オンライン完結なので新規プランナーが不要になり人件費を抑制できる(営業という意味での新規プランナーね、会場案内をする機能はあった方がいいと思うよ)
  • 施行枠ごとのプライシングを個人の営業スキルに依存せずに最適化できる

***

どうでしょう?伝わります?

結婚式の見積りを作るのではなくて、結婚式場の時間枠に価格を付けて販売する、というのが一番のポイントです。

これであれば、価格の透明性を高めつつ結婚式の選択肢の自由度を取れると思うんですよね。

 

もし実際にサービスリリースしようと思ったら

とはいえ、実際にやるとなるといくつか壁が出てくると思います。

①まず、わかりにくい(笑)

施行枠の権利を買うという発想がないので、どんなサービスかを理解してもらう、認知を広めるところがまず最初のハードルになりそうです。機能押しのマーケティングでは無理だと思う。

イメージ的には「ブライダル業界のAirbnbが新登場!」とかって打ち出すのかなぁ。万人受けするサービスではないので、エッジきかせてUIを洗練させるのは必須。

②次に施行枠データとサイト表示の連携開発が必要で工数が重たい。

リアルタイムで販売価格を決めてサイトに表示させなければいけないので、施行枠の稼働状況がデータベース化されていることがまず必須。そしてその枠ごとに価格を決めて常に調整しなければいけないので、その運用オペレーションを組むことが大変。

表示は旅行代理店の色付きカレンダーの結婚式場版というイメージですが、裏側を組むのが大変そうです。

③そして、誰がやるの…?

メディアが複数式場のデータを統合して販売するは可能性がありそうだけど、手数料ビジネスだとするとリターンが小さすぎて大規模開発への投資はできなさそう。

結婚式場が単独でやるには工数負担と投資リスクが大きく、今の状況でできるところは少なさそう。お金を持っている会社ならできそうだけど、そんな会社はこんなサービスなしでも儲かっているのでそもそも開発の必要がない。

***

と、まぁ空想企画のような感じだけど、何かのきっかけで実現できそう!とかってなったときのために日頃から考えておくことが大切だと思うのです。

 

今の結婚式価格の課題とこれから

結婚式の価格についての課題の中にも様々あるのですが、今回の企画で解決したいのは「同条件、同内容の結婚式にもかかわらず営業のやり方1つで数十万の価格差が出ること」です。一番顕在化しにくいやつで課題認識している人すら少なそうですけど。

個人的には金額と顧客満足度に相関はないと思っているので、高くてもお客様が納得して満足していればいいんじゃない?という考えもあるとは思います。

ただ、SNS等でこれだけ広がり横のつながりが簡単に作れる時代に、裏側のゆがみはいつかは表面化することになり、企業の信用や業界の信用の失墜につながっていくんじゃないかなぁとも思っています。

今のブライダルは(というか情報の非対称性が大きい業界はどこもそうなんですけど)、超嫌な感じで書けば「情弱顧客をファンにすることでいかに搾取できるか」的な発想が根本にある競争慣習も多いので、

  • いいサービスを提供している人がきちんと儲かり
  • それでいて顧客にもサービスに対する対価がフェアに求められる

ような世界にしていけたらなぁと思ってます。

 

結婚式場のオンライン販売企画についてまとめ

営業戦略と販売価格の関係における課題感からのそれを解決する企画案を考えてみたよ、っていう話でした。

これは課題だなぁと感じることも、こんなサービスだったら解決できそうだなと考えることも、それをSNSなどで発信することも、そんなに難しいことじゃないです。

ただ、本当に新規事業をやるとなったときには思考したレべルでもこれまでどれだけ考えてきたことがあるかはパフォーマンスに大きく影響すると思います。

今回のようなサービスを自分の会社でやる予定は今のところないですが、日々のトレーニングとして企画を考えてみるということの参考にしてもらえたらうれしいです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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