※寄稿記事です。
新規時も打合せの段階でも見積りについてお客様へ説明する機会は必ずありますが、見積りについてはお客様も特に分館な部分なので「見積りが上がると聞いていない」「こんなに上がると聞いていない」「この金額でこの演出が出来ると思っていた」といったクレームが発生することも多いのではないでしょうか?
こういったケースの対応を誤ると会場への不信感が大きくなり、最悪のケースだとキャンセルにつながる可能性も大きくなりので、しっかりとした対応をしたいところです。そこで今回の記事では、見積りクレームについて起こる原因と対応策、予防策についてまとめました。現役プランナーの方や会場管理職の方にとって参考になればと思います。
目次
よく起こる「見積りアップに関するクレーム」とは?
結婚式の打合せでは、料理や演出、空間コーディネートといった華やかなで楽しいイメージの打ち合わせを想像しますが、毎回の打ち合わせで必ず行うのが見積り提示。定額プランを打ち出している会場も増えてきていますが、参列するゲスト人数によって変動するアイテム項目も多く含まれているのて、プランのまま1円も見積りが変動しないということはまずないと思います。
一方、新郎新婦目線では結婚式も打合せも見積りも初めてのことであることがほとんどなので、
- 「プラン」と聞けばすべてをプラン内に行える
- 「●●円分、特別特典で安くなります」と言われれば、自然と頭の中には、元の価格、値引きされている価格、値引き後の価格=結婚式の価格で行える
- 「定額」と書かれていれば〇〇万円ぽっきりで結婚式を挙げることができる
と思う人が多いでしょう。見積りが上がることが常識と思っているブライダル従事者と、そんなことなど知っているわけもない新郎新婦の間で認識の齟齬が生まれるので
- プランって書いているのにプランの金額より高いじゃないか!
- 申し込んだときにこの金額でできるって言っていたのに嘘じゃないか!
- 100万円も見積りが上がるなんて聞いていない!もっと安くしろ!
などなど、このような見積りについてのクレームが発生するのです。
見積りアップのクレームはなぜ起こるのか?
そもそも見積りが上がるんだから発生は防げないのではないか?と言ってしまえばそれまでですが、よく起こす人(会場)とそうでない人(会場)があるのも事実です。こういった見積りクレームが発生するには、いくつかの原因があります。
プランナーのスキル不足
担当しているプランナーのコミュニケーション力(リスク察知力)、暗算力、提案力、マネーコントロール力が不足していると見積りクレームは発生します。見積りの話をする段階では、新郎新婦の金銭感覚や貯蓄、この先のお金の動きについても把握しておく必要があります。
その上で家族・親族との関係性を聞いておけるとよりいいのですが、初対面の人を相手に、そうした込み入った話を出来る人は、結婚式の接客でなくともなかなかいないでしょう。これらの新郎新婦の価値観や取り巻く環境を聞き出すことが出来ていれば、見積り部分に関する不安・不満を相談ベースで話をしてもらえることが多いので、いきなりクレームになる、という事態にはほとんどならないと思います。
その上で、ゲスト人数、商品、商品単価の掛け算と足し算を頭で計算をしながら、おおよその総額を想定しながら打合せを行うことも大切です。もし途中で大幅に上がってしまうことが明確になったのであれば「当初の想定より人数様が多いのでお見積り金額も高くなりそうですね」「ここの部分で30万円かかってしまいそうですが、大丈夫ですか?」と1つ1つ確認やフォローを行いながら打合せが出来るので、見積提示時にいきなりクレームになってしまう可能性を減らすことができます。
オペレーションの問題
結婚式準備で打合せするアイテムは、料理・衣装・装花・写真・映像・演出・ペーパーアイテムと多岐に渡ります。すべてのアイテムの打合せはプランナーが行っていることはフリープランナーを除きほとんどなく、スタイリストやフローリスト、司会者などそれぞれの専門スタッフが行うことがほとんどです。パートナー企業と提携している場合は専門業者の担当者が入って新郎新婦と打合せを行うケースもあります。
アイテムごと打合せを行う専門スタッフ(内部、外部問わず)は、見積り総額を把握しながらではなく自分の担当アイテムの説明・営業をしますので、どのアイテムを受注したから総額がいくらになってしまう、高くなりすぎると意識することはほとんどありません。担当者の立場であればそのアイテムでしか売上を作ることが出来ないので、各担当者・担当業者毎に高単価商品を積極的に受注していきたいところでしょう。
打合せの順番と日程調整のルールがあいまいで、アイテム毎の打合せにプランナーが同席をすることもなくかつ情報を集約する機会もないようなオペレーションだと、全アイテムの打合せ終了後に初めて、見積りの総額がわかることになります。担当プランナーも「あーこんなに上がったんだ・・・」と初めてそのタイミングで把握することになりますが、その時点ではもうどうしようもないし時間もない、このまま説明するしかない、となってしまいます。このようなことが原因で起こる場合は、打合せオペレーションが問題であると言えるでしょう。
成約の取り方・新規時の説明の課題がある
大前提として「成約時(申込時)と打合せ段階(最終着地)で見積りが変わる」ということを、会場見学時にで新郎新婦へ伝えることが、見積りクレームを減らす最も有効な方法といえます。いきなり100万円も追加で請求されるより、事前に分かっている方が準備もできるし当たり前ですよね。
それにも関わらず、そのような説明ができていない、行っていない会場が多いのはなぜなのか、少し深く説明します。
結婚式場の施行組数を伸ばすためには、来館数を伸ばす、成約率を向上させる、のいずれかまたは両方が必要です。結婚式は高額なので費用は来館数にも成約率にも大きな影響を与えます。集客視点では他社よりも少しでも安いプランや見積り、特典を掲載すれば来館数は伸びますし、新規では価格が他社会場より安く抑えられると伝えてしまえば成約率も上がるでしょう。
新郎新婦が価格も安く、総合的に他会場よりもいい、とほぼ心に決めている中で、「でもここから150万近く上がります」と言われてしまっては、申込を止めてしまう可能性が高いですからね。
究極的には会場や個人のポリシーの話、ともいえるのですが、来館数が厳しい、成約率が厳しいほど、目先の成約を取りに行くために新規時点で見積りが上がる、●●円近く上がる可能性がある、などといったアナウンスを出来ていないことが多いと言えるでしょう。
見積りアップクレームが起こったときの適切な対応法は?
1.初期対応
初期対応は担当の打合せプランナーが行うことがオススメです。既にお客様とコミュニケーションが取れていて、性格・金銭感覚・価値観が分かっているので、新郎新婦の本音を聞き出しやすいです(ただし、プランナーのスキル不足が原因ではない場合に限る)。
クレーム対応で最も重要なことは、見積りクレームなどに限らず、新郎新婦が【何に対して】クレームを言っていて、【どのような対応を求めているか】を明確にキャッチアップすることです。そのためにも、初期対応はこのポイントを聞き出せる担当プランナーがいいでしょう。
2.クレーム対応の事前準備
次に具体的なクレーム対応に入る前の事前準備です。この事前準備を行うか行わないかで、クレームをケースクローズできるかできないかが決まるといっても過言ではありません。事前準備は、担当プランナー、管理職、可能であればクレーム発生段階での担当者(衣装・装花などの各担当者)で行うことがいいでしょう。
管理職を中心に、新郎新婦の時系列(来館予約~打合せ日時の確認、会場とのメール・電話のやり取り、選んでいるアイテム、意思決定をしている理由)、新郎新婦のパーソナルを理解・把握(コミュニケーションの中でプランナーが把握できている、性格・価値観・金銭感覚)のすべてを確認します。
特に、新郎新婦のパーソナル理解・把握部分では、出身地や血液型・家族構成・職業・出会いといった担当プランナーだけでは気づくことにできなかった視点も持っておくことが重要です。
3.具体的なクレーム対応
具体的なクレーム対応の方法としては、謝罪、返金、担当プランナーの変更が挙げられます。
具体的なクレーム対応時のポイントになるのが、【何に対して】クレームを言っているかを、関係者間で明確にしておくことです。
- 現実的に支払いが難しいから、キャンセルしよう
- 詐欺のように感じて気持ち良く準備ができないから、キャンセルしよう
- 現実的に支払いが難しいから、安くする方法はないだろうか
- 詐欺のように感じて気持ち良く準備ができないから、何か対応してもらえないだろうか
- なんで正しい情報を教えてくれないんだろう
- この先も信頼していい会場なのだろうか
表向きはクレーム同じような見積りアップクレームであったとしても、実はこのように思っていた、というパターンは上記のように様々です。
それを踏まえたうえで謝罪で大丈夫そうであればまずは謝罪から、というのもありでしょう。謝罪のみの場合は、会場側のコストは対応者の時間だけですので、クレーム対応としてはもっともいい形を言えます(結婚式場目線で)。ただ、「この度は、お二人が想定なさっていたよりも見積りが上がってしまって申し訳ございませんでした」と謝罪をされて納得をしてくれるケースはそんなに多くないですが…。
ちなみに、謝罪をする場合は、
- 会場の担当者または責任者として「どの段階」で「どのように対応すべきだった」と考えているか
- 今後は同じようなことが起こらないようにどうしていくか
- お二人に対して、これから先または結婚式当日にこのようなことをすることをお約束します
このような流れで謝罪を結べるとベストでしょう。
返金の場合も基本的な考え方はやお客様にお伝えしていく流れは謝罪の場合とほぼ同じですが、
- どの観点でこちら側に不手際は至らない点があったのか
- その点に関してはこちら側で金銭的な負担をさせていただく
この2つのポイントを押さえた上で、対応すべきだった事象と返金金額(返金アイテム)を明確に結び付けて謝罪・返金を行いことが大切です。
そして最後に「こんな当日にすることをお約束します」と結ぶといいでしょう。この先も信頼していい会場なんだろうか?と思っている新郎新婦に、「今回ご意見をいただきましたので、ドレス1着分●●円をプレゼントさせていただきます」とだけただ言われても、なんだか気持ちが晴れ晴れとしないですし、逆に不信感につながります。
最後に、担当プランナーの変更も基本的な考え方やお客様にお伝えしていく流れは謝罪の場合とほぼ同じですが、
- どの観点でこちら側に不手際は至らない点があったのか
- その点に関しては担当プランナーを変更させていただくことで、今後のお打合せを安心して行っていただく
この2つのポイントを押さえた上で、対応すべきだった事象と今後は担当プランナーが変わることでそこが払しょくされることを明確に結び付けて謝罪することが大切です。そして最後に「こんな当日にすることをお約束します」と結ぶといいでしょう。
ただし、担当プランナーを変更する場合、”どの観点で不手際があったか”の内容を、新郎新婦と会場側で明確にしていく際に、担当プランナーの発言・行動がこうであったら安心して相談することが出来ていた、というポジティブな解決策を提案していく、最終手段として使った方がいいでしょう。
新郎新婦の性格・金銭感覚・価値観が分かっている状態の担当プランナーを打合せ途中で変更することは、もう一度別のスタッフが理解・把握をし直すという意味で、新郎新婦、会場側にとっても有意義な時間とは言えません。可能であれば、その課題点を抽出した上で、「今後のお打合せの中で改善をして参ります」と結べることがベストだと思います。
ただ、結婚式の打合せという幸せなイメージを持つ時間の中で、不審・不安に感じた原因が、担当プランナーの発言・言動にあるという場合には、担当プランナーを変更することで、1度打合せを仕切りなおしましょう、という結び方も必要だと思います。 その場合は、クレーム対応に入る事前準備と同じ流れで、後任プランナーへの情報共有(引継ぎ)が必須となります。
同じ見積りクレームを起こさないためにすべきこと
プランナーのスキルアップ
プランナーのコミュニケーション力をアップさせるには、
- 初めての打合せでカウンセリングを実施させる
- ケウンセリングシートは共通ツールを活用する
- カウンセリングに関しては、プランナー基礎の最重要ポイントとし、卒業検定などを実施する
これらのトレーニングを実施するのがよいでしょう。クレームが発生するということは、新郎新婦の本音を聞き出すことが出来ていないプランナー可能性が高いので、何度も何度もこの部分はフォローアップを実施した方がよさそうです。
また、暗算力を向上させるには、「日頃から●名●万値引きだと最終着地どれくらいになるか?その場合は装花いくらくらい?」といった質問を投げかけたり、社内MTGなどで見積り報告を行わせることで、見積り総額の肌感覚を身に着けさせることができます。
これに加えて、「その演出を諦めた場合の代替え案は?」などと、座学よりも日常的な会話や業務の中で常に意識し続けなければいけない環境を作ることも1つの方法でしょう。
オペレーションの改善
先ほど記載のオペレーションが見積りクレームの主たる原因の場合、担当プランナーが、各アイテム担当者へ新郎新婦の価値観・予算感・現在の見積り状況や新郎新婦の中での該当アイテムの優位性といった情報共有をきちんと行うことと、各アイテムでの打合せで出てきたアイテム決定理由を、各アイテム担当からプランナーが情報共有を受けるということがポイントとなります。それを実現するための情報共有フローの再構築や、会議体の設定、もう少し大きい話だとパートナー企業との情報共有システムの導入などが具体的な再発防止策といえます。
各アイテムを選んでいくには理由が必ずあり、その理由が見積りが上がっていく根拠になるので、例えば「装花担当より、ご新婦様のご意向でかすみ草をお使いになると伺っています。なので装花は想定よりも高いお見積りになっていますね」などと補足説明をいれながら丁寧な見積り提示を行うことで、「なんでこんなに上がっているの?」とう疑問を持たれる可能性は抑えられると思います。
成約の取り方・新規時の説明の改善
集客に関しては、競合優位性の問題もあるので、最終見積りを掲載するという解決策はないと思いますが、会場見学時の案内で、「打合せ時に見積りは上がることがほとんどです」ということを伝えた上で、成約率を確保する接客方法を検討することが必須です。
やや抽象的ですが、価格に頼ることなく、会場の優位性を見出し、きちんと新郎新婦に伝えることができる接客をし、婚礼業界での事実もお伝えをしていくしか、方法としてはないのではないかと思います。
嘘や過度な営業はよくないですね、やっぱり。
見積りアップクレームについてのまとめ
業界課題として、集客のための価格提示と最終見積り金額に差がある以上、このクレームが完全に消滅することはありませんが、会場見学段階から最終見積りを提示をしているサービスも増えてきています。また、クレームが発生の前から、新郎新婦のことをどこまで理解し、共感をもって接客を出来るかという点が、クレームをなくしていく重要なポイントだと思います。