更新日 2024年03月15日

もしも結婚式の持ち込み制限がすべてなくなったら何が起こるのか?

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

結婚式場の持込規制がもしもなくなったら何が起こるのかを考えてみます。

 

結婚式場の持込規制に対してのスタンス

最初に個人のスタンスを書いておくと、持ち込み規制はあってもいいと考えている派です。

規定の種類は「完全に持ち込み自由/部分的にOK/完全にNG」この3パターンで、制限する方法は「持ち込み料金を取る/禁止する」の2パターン。

商品ごとにどのような設定にするのかは会場側の意思で決めればよく、外野がとやかく言うことではないと思っています。

その理由は「結婚式場を持つ」という大きなリスクを取っているのは式場オーナーであり、そのリスクからどのようにリターンを取るかの意思決定はオーナーがすることが自然だと考えているからです。

なので、個人的なイメージとしては

  • 持ち込み自由で何でもOKの会場
  • 部分的には持ち込んでもOKだけど持ち込み料はいただきますねの会場
  • 絶対にNGなのでもし持ち込みたければ他行ってくださいの会場

このようにいろいろなスタンスの会場が混在しているのが理想的な状態かな、と。

この場合のメディアの役割は、会場ごとのスタンス・規定の違いを分かりやすく顧客(カップル)に紹介することであり、持ち込みOKの式場=良、持ち込みNGの会場=悪、のような印象操作をすることではないとも思ってます。

最終的には顧客が決めることであって、持ち込みが制限されていても支持される会場は支持されるし、自由にしていてもダメなところはダメだとなるとよいなと考えています。

もし本当に顧客の希望が持ち込み自由なら自由化した式場だけが生き残るでしょうし、あくまで1つの検討要素に過ぎないということであればいろいろなスタンスの会場が混在する未来になりそう。

これから先どうなるかはわからないですが、顧客ニーズにちゃんと応えた会場が勝てる業界内競争環境ができていれば、各会場がどのように設定しようがいいんじゃないかなと思います。

 

もしも持込規制が全撤廃されたら(1)

法令によって持込規制が全部禁止され完全自由化かつ持ち込み料を取ることも禁止になったら?という架空の設定で、ブライダル業界のビジネスモデルなどがどう変わるのか考えてみます。※料飲とサービスだけは衛星観点・オペレーション観点で会場に紐づく、それ以外は全自由化という設定です。

結婚式場運営は箱貸し産業&アイテム事業者送客モデルになる

提携企業(または内製部門)からのアイテムごとの利益を得られなくなるので、基本的に料飲と会場費で収益を上げていくことになりそう。会場運営に必要な利益をこの2つで稼がないといけないので、会場費は高くなりそうだし、時期や時間帯によって会場利用料が変わるという設定にする気がする。

ただ「式場から選ぶ」の文化は残りそうなので、最初に顧客接点を持った式場からドレスショップ等のアイテム事業者を紹介した際に都度手数料をもらうこともスタンダードになりそう。

「ドレス事業者→(仕入れ)→結婚式場→(仕入れ+利益)→顧客」これが、「顧客→(契約)→結婚式場⇔(送客/手数料)⇔ドレス事業者」こう変わる。

一方逆パターンの送客手数料モデルも増えそう。「顧客→(契約)→ドレス事業者⇔(送客/手数料)⇔結婚式場」これ。

ウェディングコンテンツプラットフォームの需要が上がる

強制的な縛りはできないものの式場⇔アイテム事業者の提携は残りそう。しかし基本的にはアイテムも自由競争になるので、その情報を探すための網羅的な情報ソースの需要は高まりそう。

式場、ドレスショップ、フォトグラファー、ヘアメイク、、、誰が顧客との初期接点を持ったとしてもお互いを探さなければいけないので、その情報を探すための仕組みのようなイメージ。

theknot、みたいな感じかなぁ。でもこれC向けだからちょっと違う気もするけど。

アイテム事業者の販売価格が上がる

現在提携先に卸している下代のままC向けに売ると手数料を支払う分だけ利益額が減ることになる。なので販売価格は高くなりそう。でも顧客から見た時の金額は変わらないかやや下がる程度にとどまる。

内製化するメリットがなくなる

内製化したところでそこに優先的に送客することが難しくなるので、内製化メリットを発揮しにくくなる。

そうなるとアイテム部門は顧客直販前提で事業構築しないと事業PLが成り立たなさそうで、分社化するところも増えそう。

プランナーの役割が変わる

営業・オペレーターの役割からディレクター・コーディネーターの役割に変わる。

1つの結婚式場のパッケージ化された結婚式(商品)を営業・提案するのではなく、数多ある会場と商品の中から最適な組み合わせを顧客ごとに提案して成約を取ることが必要になる。

今のフリープランナーに近い能力が求められるようになりそう。

式場に直接雇用が減る

となると、「式場に所属するプランナー」は減るんじゃないかなって気はする。施設管理責任者としての支配人と、施行を安定して提供するためのスタッフは雇用必要だけど、それ以外は雇用しなければいけないってこともなさそう。

ただフリーランスが増えるとも考えにくく、法人化された小規模プロデュースチームがたくさんできて、そこがまず顧客接点を作りに行くアクションを積極的にするんじゃないかなと。

 

もしも持込規制が全撤廃されたら(2)

さて、こんな変化が起こるとして、どうでしょう?
まぁ他にもいろいろ変わるかもしれませんが…。

まず、今の式場の多くはPLを維持できないんじゃないかと思いますね。専業の式場は特に。結婚式以外でマネタイズできる施設は大丈夫そう、会場使用料も今のままでOKですし。ただそうじゃないところは固定費を支えきれなくなりそう。

となると固定費を抑えたビジネスモデルまたは結婚式以外のマネタイズへの転換対応は必須で、「結婚式をするために施設を作る」のではなく「他の目的で作られた施設で結婚式を行う」のが一般的になっていくのかなぁって気はする。ホテルやレストランはすでにそうですし。

一方、個人も含めたアイテム事業者側はC向けのマーケティングやブランディングは必須になりますよね。というかすでにその流れは始まっていますが、これができないと相当厳しくなりそう。BtoBtoC一本だと難しい。

顧客が結婚式を考え始めるときに「好きなものから決めていく」ことになり、今のように式場から探すだけではなく選択ルートが多様化するので、プランナーから探す、ドレスから探す、フォトグラファーから探す、などいろいろなアイテム事業者や個人が、自分で集客することを求められるようになります。

なので、プランナーやクリエイター、アイテム事業者から支持される式場は生き残りそうだし、式場から支持される個人やアイテム事業者は生き残りそう。

そうなった場合にゼクシィはどうなるんだろうな…。それ次第かなって気もするけど。。

 

今後の流れを考えてみる

もしこのまま持ち込み規制撤廃・アイテムの自由化が進むと、ここまで書いてきたようなことになっていくんじゃないかなぁと考えています。

個人的にはどっちに転んでもいい気はしてます。今のままでも規制開放の流れに向かっても。どちらになってほしいとかの希望も特にないですね。強いて言うなら顧客が望む形に進むといいなと。

「ウェディングの民主化」って全自由化を目指してるんじゃないのかって言われそうですが、顧客主体で選べる仕組みを作ることが目的なので

  • 持ち込み制限がある結婚式場の結婚式も
  • 自分でプランナーやクリエイター、会場を選んでカスタムして創る結婚式も

それを事前に納得して顧客が決められればそれでいいし、働き手側もどういう働き方になるのか違いがわかった上で自分で決められればそれでいいと思ってます。

で、どっちに流れていきそうかは、個人的には自由化が進んだとしても7:3くらいで規制有会場が多い状態で留まるんじゃないかなって気はします。

ホテルやレストランならまだしも、ゲストハウスや専門式場など結婚式の売上が事業収益の大部分を占める事業モデルだと、アイテムからの利益を喪失するとそもそも経営が耐えられないので、自由化しようにも選択肢として取ることができないと思うんですよね。

なので時期限定とか日程限定など部分的な開放はあるかもしれないですが、常時OKになるのは難しそう。

***

持込に関しては立場によってとらえ方が変わりそうです。

現状だと弊社は持ち込む側でも持ち込まれる側でもないので当事者ではありません。なので比較的好きなこと書けるし、フラットに書いているつもりではいます。

2021年~2023年はフリーランスのプランナーやクリエイターに開放した式場もけっこう多かったと思うんですよね。でも結局今ではいろいろあってやっぱり門戸を閉じています、というところも少なくない。

  • フリープランナーに会場を貸したけど施行時間を守らなかったので午後式が押した、新規内覧ができなかった
  • 打合せ段階でのコミュニケーションがうまく取れず会場側の負担が大きかった
  • 事前の確認もなく当日にイレギュラーな要望をされて対応せざるを得なかった

↑ 実際に会場の方から聞いた言葉の一部です。

持込規制に関しては「お客様の希望を叶えるために」のような大義で議論されることが多いように思いますが、実態としてはそれ以前の社会人としての基礎的なコミュニケーション力や交渉力が不足してうまくいっていないケースの方が多い気がします。

なんかなぁ、惜しい気はするんだけども。今すぐは難しいのかな。

 

結婚式場の持込規制に関する見解のまとめ

もしも持込規制がなくなったら?を考えてみたけど、現実には難しそうです。

もちろん個別の式場で見れば全OKにしているところもありますが、それがマジョリティになるかといわれると微妙、くらいのニュアンス。

あ、一個だけ可能性があるとしたら、ゼクシィが「結婚式場情報誌」から「結婚式情報誌」に変わったら一発で業界全体が動くと思いますけどね。ただその場合に誰からお金取るの?ってなるのでリクルートはやらないでしょうけど笑

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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