アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
近年注目を浴びている「サブスクリプション」と呼ばれるビジネスモデルについてご存知でしょうか?モノからコトへという消費行動の変化に伴い、商品購入やサービスの利用ごとにお金を支払うのではなく、それを一定期間利用できる権利についてお金を支払うというモデルです。音楽配信サービスのSpotifyやNetflixなどがそうですね。サブスクリプションはもともと「予約購読」という意味があり顧客との関係性が長期に及ぶことが特徴ですが、結婚式はリピートしない1度きりの商材(サービス)です。さて、このモデルの採用は可能なのでしょうか?ということで、今回の記事では今話題の「サブスクリプション」で結婚式は売れるのかを考えてみました。
目次
サブスクリプションとは?
サブスクリプションはビジネスモデルの1つで、ユーザーはモノを買い取るのではなく、モノの利用権を借りて利用した期間に応じて料金を支払う方式です。Salseforceなどコンピュータのソフトウェアの利用形態として採用されることも多いですね。システム丸ごと導入していくら、というのではなく、毎月の利用料金でいくら、という形式です。
一般的にサブスクリプション方式で提供されているサービスの場合、月ごとや年ごとといった期間で契約してその利用料金を支払うことになるのですが、そのサービスを利用するための全ての費用がランニングコスト(月額で支払う金額)に含まれているので、イニシャルコスト(最初にかかる費用)が不要であることがほとんどです。
ソフトウェアではアドビシステムズが2013年にサブスクリプション方式での販売に転換するなど、近年では多くのサービスがこのモデルを採用しています。また、ソフトウェアだけでなく、新規出店と新規顧客の獲得を繰り返す従来型ビジネスモデルに業績拡大の限界を感じる業態(例えば飲食、自動車、洋服、コスメ、シェーバーなど)も、サブスクリプションへの転換が計画されています。
サブスクリプションのメリット
顧客側のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- モノを持つ必要がないので管理する手間がかからない
- 購入ではなく契約開始なので、初期コストを大幅に抑えることができる
- 期間中は利用し放題のため、利用すればするほどお得になる
一方、企業側のメリットとしては以下のような点が挙げられます。
- ユーザーの初期コストが掛からない分、新規利用者獲得に期待できる
- 継続的な売上が見込める
- デジタル、アナログ問わずさまざまな業界や業種で導入できる
サブスクリプションのデメリット
次に顧客側のデメリットについても触れておきます。
- 使わなくても料金が発生してしまう
- 利用開始のハードルが低いので、とりあえずやってみようとなってしまいがち(結局費用がかさみやすい)
企業側のデメリットとしては以下のような点が挙げられます。
- サービス開始直後はユーザー数が少ないので、利益を得るまでに時間がかかる(というか利益が出るかどうかわからない)
- 継続してサービスのメンテナンスや新規コンテンツを追加し続ける必要がある(コストが掛かる)
サブスクリプションの事例
- Spotify:約4000万曲の楽曲が、月額980円で聴き放題になる定額音楽配信サービス。
- Hulu:50,000本の作品が視聴し放題の定額動画サービス
- NETFLIX:月額800円~と比較的安めなのにオリジナルコンテンツも豊富なVODサービス
- Kindle Unlimited:和書12万冊以上、洋書120万冊以上、コミック3万冊以上の電子書籍を定額読み放題サービス
- PlayStation Now:月額税込み2,500円で、PS4&PS3の作品を対応デバイスからストリーミング経由でプレイし放題
- BLOOM BOX:ビューティーアドバイザーが500以上のブランドから、自分にピッタリのコスメをセレクトし、ブランドコスメをBOXに詰めて届けてくれるサービス
- Laxus:ヴィトン、エルメス、グッチなど……名だたる有名ブランドのバッグを、月額6,800円でレンタルできるサービス
- SparkleBox:アクセサリーを好感し放題の定額サービス
- 野郎ラーメン:ラーメンのサブスクリプションサービス。月額8,600円で、ラーメンを1日一杯無料で食べられる。
などなど。音楽や動画だけではなく、最近はコスメやアクセサリー、さらには飲食でもサブスクリプションが取り入れられていますね。
結婚式の一般的な価格・原価設定とタイミング
サブスクリプションで結婚式が売れるのかを考えるわけですは、ちょっとその前に、結婚式のビジネスモデルや価格設定、マネタイズの方法についても整理しておきます。これが前提だとしたときに、果たして可能なのか?を考えてみます。
顧客からお金をもらうタイミング
基本的には「結婚式にかかる費用を一度だけ」もらいます。細かく言うと申込金、半金、残金、当日請求など何回かに分けて支払いのタイミングがあったり、会場によっては当日払い、後払いも可能なのですが「結婚式にかかる費用を一度だけもらう」という点では共通していますね。また、当たり前なのですが新郎新婦はリピートしません。なのでそういった意味でも一度きりです。
売上(単価)はアイテムごとの単価の合計
結婚式費用の平均は約350万円程度と言われていますが、明細まで深掘っていくとアイテムごとの金額の合計になっています。
- 【料理】コース料理:100万円
- 【料理】デザートビュッフェ:10万円
- 【飲料】フリードリンク:18万円
- 【挙式】キリスト教式:18万円
- …
こんな感じです。
アイテムごとに仕入れ先があり、販売価格と原価が異なる
結婚式場の目線で見ると、内製か外注かを問わず、アイテムごとの原価率が異なります。例えば、
- 【料理】コース料理:100万円 → 食材原価率20%=原価20万円
- 【料理】デザートビュッフェ:10万円 → 食材原価率30%=原価3万円
- 【飲料】フリードリンク:18万円 → 飲料原価率10%=原価1.8万円
- 【挙式】キリスト教式:18万円 →牧師・聖歌隊仕入れ原価率60%=原価10万円
- …
このような感じですね。
さて、これをもとにサブスクリプションが適用できるのかを考えてみます。
結婚式をサブスクリプションで売るならどうなるか?
まず、サブスクにするためにはユーザーと事業者の課題をモデルを変えることによって解決しなくてはいけません。
ユーザーの課題
- コストが掛かりすぎる
- しかも明細が不透明
- そして、準備の手間(負担)が大きい
事業者側の課題
- 施行枠が埋まらない
- 業績予測が難しい
- 単価が高すぎてユーザーが減る
ざっとこんな課題ですね。これまで紹介したようなモデルをそのまま結婚式でも当てはめようとすると
- 結婚式を挙げるときの初期費用がなく
- 結婚式後も継続的に何かしらを提供することで継続的にお金をお支払いいただく
こんなモデルになるのですが、どう考えても役務提供のタイミングが一度きりでしか考えられず、もしやるなら前に何かしら加入や申込をしてもらい(初期費用は無料で)、前から積み立てをしてもらい(その間も何らかのサービスを提供する)いざ結婚式をするときの支払いを大幅に減らす、という方法しか思いつきませんでした。。支払いタイミングを振り分けることになるのですが、よく考えるとそれは互助会の仕組みと同じでは…?となってしまいました。
むむ、困った。書きながら内容を考えていることがバレてしまうこと以上に、このままだとただの内容の薄いサブスク解説記事になってしまう。。
なので、サブスクリプションとはずれてしまいますが、一般的な結婚式の販売方法と異なる方法で結婚式を販売することで、ユーザーと事業者の課題を解決できる方法がないかを考えてみました。
題して「アイテム選び放題の完全定額ウェディング」です。次のセクションで説明します。長くてすみません。
アイテム選び放題の完全定額ウェディングとは?
特徴①:何を選んでも金額は変わらない!申込時点で完全固定金額制度
普通の結婚式は見積りの内容(ユーザーが選ぶアイテム)によって金額が変わると思います。15,000円のコース料理選んだ時と17,000円のコース料理を選んだ時で見積り金額が変わりますよね。当たり前です。
この企画は「何を選んでも完全定額」で申し込んだ時から一切変わらないことが特徴です。300万円なら300万円、何を選んでも変わらない!です。
特徴②:ただし、申し込む時期、人数別に販売価格は異なる
ここは設定しておかないと難しいかなと思います(利益出ない)。例えば、今日が8月だとして
- 3か月後の11月で40名:200万円
- 3か月後の11月で80名:320万円
- 10か月後の翌6月で40名:280万円
- 10か月後の翌6月で80名:440万円
こんな感じのバランスになるかと(会場の定価によって異なりますよ、もちろん)。「申し込みの条件次第ではさらに安く!」とか言えばいいんじゃないですかね。
こんな方法で儲かるのか?
と思いますよね?赤字になってしまうのでは…と。
結論から言うと、いきなりすべての施行枠をこの方法で売るとリスクデカすぎだと思うが、一部の売れなそうな施行枠に限定して販売するなら利益額は増やすことができると思う、です。
原価率の観点
まず原価率について整理します。
各アイテムごとの原価率は会場や仕入れ先によって異なると思いますが、業界全体で総じてみれば40%~45%前後だと思います。高くても50%を超える会場はないのではないかなと。一般的に、アイテムを内製している会社は原価率が低く、外注している会社ほど高くなります(その分人件費など販管費の比率は逆転しますが)。
1組の結婚式を実行するのにかかる原価以外の変動費は社員の稼働時間増加に伴う残業代の追加くらいなので(新規採用するとかになるともう少しかかる)、実はあまりかかません。
となると、今販売している結婚式の組単価の倍くらいまでの内容なら、今と同じ単価で販売して原価分差し引いてもギリギリ粗利が出るラインであると言えます。
施行枠稼働率の観点
次に施行枠稼働率についても整理します。
今の日本の結婚式場で施行枠がほぼ埋まっていてこれ以上受け付けられないよ、という会場は多くないと思います。むしろ埋まってない枠の方が多い会場もあるでしょう。
となると、必ずどの会場にも「売れ残りの施行枠」が存在するはずです。いわゆる施行の入っていない休日ですね。施行の入らない施行枠は売上を1円も生み出しませんが、会場固定の販売管理費(家賃や減価償却、水道光熱費などのコスト)はかかります。つまり、わずかでも粗利が出るのであれば、未施行より受注をした方がよいと言えます。
ここまでをまとめると、アイテム選び放題の完全定額ウェディングを売ったとしても
- 今の結婚式の2倍程度の内容までしかユーザーが選ばなければ粗利は出る
- 通常の受注状況では埋まらない施行枠に限定して販売すれば、通常受注に影響を与えるなく利益を伸ばすことができる
となります。
閑散期の日曜日の仏滅、飛び石の祝日、お盆期間や新年1週目の週末など、「この枠を売るのはかなりハードル高いな…」という枠を先にピックアップしておいて、定額で売ってしまえば枠は埋まるしギリでも粗利は出るからいいよね、という考え方です。
この場合、ミソになるのが単価設定ですね。実際、フリーにしたときにユーザーがどれくらいのアイテムを選ぶのかが想像つかないので、その実績がある程度見えたらギリギリ利益が残りそうなラインに設定するように調整していくことが必要になるでしょう。
うまく事業化やサービス化できれば、俺のフレンチのように、販管費を合理的に圧縮して超高原価率の結婚式を作るユーザーファーストなサービス、しかも結婚式場側としても資産稼働率(会場の施行枠回転率)が上がり経営効率が改善するのでWin-Winな事業になりますね。
もしほんとにやるとしたらどうやって売るのか?
マーケティングのストーリーはこんな感じになるでしょうか。
- 結婚式の見積りが上がる問題やお金の悩みを解決したい
- その思いを持って、すべての結婚式を完全定額にして、アイテム選び放題をコンセプトにしたサービスを立ち上げた
- ただ、それだと結婚式場の原価率は当然高くなるので、サービスの質が下がりそうで不安だと思います。
- そこで、①販売方法をオンライン限定にし、②打合せもサポートセンターでサポートし、販売管理費も圧縮しました
- また、結婚式場の枠稼働率の実態を考えても、実はそこまで無謀なサービスではないのです
- だから、安かろう悪かろうのサービスではなく、合理的な方法でこのサービスを実現しました
具体的にどういう手法で売るかどうかとかはまた別途考えるとして、単独の結婚式場じゃなくて地域の結婚式場の空き枠まとめて掲載したサイトとか作ったほうがユーザーには訴求しやすそうです。結婚式場空き枠の集約サイトですね。それはそれでまたいつか別で記事化します。
とまぁいろいろ書いてきましたがどうですかね、行けそうですかね?利益が出るかは詳細な計算しないとわからないですが、コンセプトとしてはプチ受けくらいはするんじゃないかなと思います。
結婚式のサブスクリプションモデルの考察まとめ
書いてて疲れてきてしまって何かもともと考えていたサブスクリプションとは違う内容の記事になってしまいました。申し訳ありません。ただ個人的には完全定額ウェディングはあり得るんじゃないなかぁと思っています。単独会場で日数限定でやっても集客が自社会場HP内での訴求に限定されるので難しそうなので、できれば同エリア内で集約したほうがいいでしょう。ハナユメさんとかヒマリの延長で作ったりしないですかね。