更新日 2020年06月24日

2020年3月期のテイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)の決算について考察してみた

2020年3月期のテイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)決算

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

企業のIR情報を見て会社の状況や方針を理解できるのは、社会人としての重要なスキルの1つです。そこで、今回の記事では、テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)の2020年3月期の決算説明資料をもとに、その内容について考察してみようと思います。(注)本記事の内容はあくまで個人的な見解であり、投資家向けに書いているわけではありません。この記事の内容をご覧になられて投資判断をされても一切の責任を負えませんのでご了承ください。

 

今回の2020年度3月期決算の概要

元となるテイクアンドギヴ・ニーズの2020年3月期の決算説明資料は下記URLで見ることができます。

https://pdf.irpocket.com/C4331/gAJe/Ye5v/YjmF.pdf

決算概要

1_決算サマリ
数字がたくさんあるのでざっと見るべきポイントをまとめると下記のようになっています。

  • 売上高:前年比下振れ、ほぼ計画通り
  • 営業利益:前年比下振れ、ほぼ計画通り
  • 当期純利益:前年比下振れ、ほぼ計画通り

売上、営業利益、当期純利益とも前年を下回っていますが、ほぼ通期予想通りの金額となっています。おそらくコロナ自粛の影響で第4四半期の売上は大幅に下落していますが、期初から下回る計画だったので計画ほぼとんとんとなっています。

思ったより(と言ったら失礼ですが)売上も利益も残っており、2020年度内の業績への影響は抑えられたのかなという印象です。

2_コロナウイルスの影響

こちらのスライドにもコロナウイルスによる婚礼延期の影響は約25~26億円程度。3月が繁忙期であることを踏まえても、約4%ほどの影響だと言えます。2020年4月と5月の施行もほぼ延期になっていることを考えると、2021年度のコロナ影響は40億円~50億円くらいにはなりそうですね(ただしそれが2021年度内への延期であれば年間業績への影響は少ないですが…)。

大まかな決算数値のまとめとしては、コロナの影響で3月の施行(=売上)に大きな影響は出たものの、もともと計画比で上回って進捗していた分がなくなり当初の計画通りの数値をして収まった、として読むのがよさそうです。

その他の業績トピックとしては

  • 単価向上、内製化、不採算店舗閉鎖により、営業利益率改善→店舗閉鎖は今後の業界トレンドの1つになりそう
  • 招待客1人あたり単価向上、直営店の平均単価は 3,947千円(前期比+79千円)→高い
  • 海外リゾートウェディング事業は営業損失2.5億円(前年同期 営業利益3.8億円)→海外は国内に比べる渡航制限解除がネックになりそう

などがありました。

 

新型コロナウイルスへの対応

3_コロナウイルスへの対応

こちらのスライドに時系列でまとまっていますが、緊急事態宣言が発令したのが4/7なのでその前の対応はかなり早かったと思います。その結果として「各種経営判断と、現場の丁寧な顧客対応により受注維持95%」とあり、2020年度の業績は落ちてはいるものの、純減が5%に収まっているのはさすがだと思います。

2021年度1Qの売上は厳しいと思いますが、3Q以降はかなり盛り返してくるのではないでしょうか。懸念があるとすれば基本的に単バンケの会場が多いので施行枠が足りるのかなぁ…という点ですかね。

 

2021年3月期 見通しと施策

業績予想

4_業績予想

具体的な業績予想数値はなく、大まかな想定と取り組む施策の概要が並んでいます。まぁまだこの状況で年間の数値を出すのは難しいですよね。

この中で重要なのは次の3点。

  1. 営業利益は赤字予想
  2. 当面の手元流動資金は確保
  3. 収束後は少人数化、オンライン接客などの施策を実行

少なくとも1年で業績は戻らないと予想しているものの、企業の運営資金は確保したよ、という点です。この資金を確保したよ、という点が顧客、社員に対して実は重要で、式場はつぶれないかな…、自分の会社はつぶれないかな…という不安を払しょくすることができます(ある程度ですけどね)。

具体的な数値は施行が行われるようになって初めて出せると思うので、第一四半期決算の報告時か、遅ければ第二四半期となる可能性もありそうです。

受注残組数

5_受注残

受注残組数は当該期間発表時点の「受注済みかつ未施行」の組数のことを指すので、5月2週時点での未施行組数が前年同期比で約30%減である、ということです。

これだけでも厳しいのにさらに内訳が致命的で、上期施行はこれから前年並みに受注することは不可能です(上期の施行を希望する顧客がほぼいないから)。

一方、下期に巻き返せるじゃないかと思われがちですが、結婚式場は結婚式を受注できる組数の上限があるので(施行枠数と言います)、今から受注しても枠数の上限ヒットしてしまいます。特にT&Gは1バンケ(披露宴会場が1つだけの式場のこと)が多いので、1会場当たり通年で200組程度が上限だとすると、下半期のMAXは100組~120組程度と予想されます。

となると、仮に新規来館や成約率が元通りの数字になったとしても、先ほどの業績予想の予測値通り、2021年度が営業赤字になることは避けられないのかなと。2022年度は外的環境を含めてまだわからないですね。

新規・来館

6_新規の影響

前年80%減、これはT&Gに限った話ではなく業界全体でこれくらいなのでしょう。厳しい。

また更にこれまでと同様の新規接客ができていれば成約率は維持できるかもしれないですが、内覧なし、試食無し、となると成約率も平時よりは低くなりやすいですよね。

6月に緊急事態宣言が解除されて各会場で来館が戻ってきているという話も聞いていますが、2021年度はもとより2022年度の業績に直結してくる数値がここになります。

その他

7_国内マーケット

個人的に一番衝撃だったのはこのスライド(の特に左側)。こんなにプレーヤー減ってたんですね。ソースが当社作成なので情報の真偽や定義は分からないですが、減ってはいるなぁと思ってはいたものの、ここまで加速度的になくなっているとは思っていませんでした。

上記以外にもいくつかスライドはありますが、特に取り上げはしないのでもし気になる方はこの記事冒頭のリンクから詳細ご覧ください。

 

テイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)の2020年3月度決算についてまとめ

ほんとに簡単にですが、決算説明資料をもとに考察を書いてみました。ブライダルの現場で働いていると企業のIR情報を見ることはほとんどないとは思いますが、他の会社でどんなことをやっているのか、起こっているか、ブライダルマーケット全体をどのように捉えて動いているのかなどがわかると意外と楽しいと思うので、この記事をきっかけにIR資料も見るきっかけになってくれればうれしいです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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