※寄稿記事です。
結婚式場の新規接客では必ず見積りを提示しますよね。見積りはどのプランナーが提示しても、あまり差がないと感じている方も多いと感じますが、顧客目線で考えると見せ方や伝え方でお客様の印象は大きく変わりますし、それ次第で魅力的に見えたりそうでなかったりします。見積りからどのように付加価値を感じてもらうかは接客するプランナー次第です。今回の記事では、少しでも成約率が上がるための見積提示のポイントを紐解いていきます。全ての新規接客時にプランナーにとって、少しでも役に立ててもらえると幸いです。
新規接客時の見積提示に必要なスキルとは?
まず始めに、よい見積り提示をするためには基礎的なプランナーのスキルが前提として必要です。以前書いた記事
でも書いていますが、人が何か物事を決断するまでに、心理的プロセス「購買心理の7段階」が働きます。
- (1)注意→(2)興味→(3)連想→(4)欲望→(5)比較→(6)確信→(7)決断
この7つの段階のうち、見積り提示では (5) 比較・(6) 確信の部分を会話の中に盛り込むことがポイントになります。お客様の心理状態に沿ったトークスクリプトを作成し、内覧後の心理状態を高めることで決断(=成約)へのステップへお客様を誘導します。
このステップは、クロージング前に成約率を高めることができるラストチャンスと言え、見積り提示の仕方次第でプラスにもマイナスにも触れるため、とても重要度が高いと言えます。
お客様に「比較」をしてもらうためのポイント
『欲望』については別記事で詳しく書いていますが、単にほしいという感情だけでは簡単に『成約』までは結びつきません。
他の選択肢と『比較』をし自分自身が納得をしてから決断しようとする心理が働きます。見積り提示がこの『比較』という部分を担います。
もちろん、見積り提示だけが突出して良ければ成約になるということではなく、ここに至るまでのヒアリング~内覧でしっかりとお客様のマインドを持ってきている、というのが大前提となります。
見積り提示の際は、お客様が何件目の会場見学でも初見の気持ちで見積りを説明することがポイントになります。例え2会場目の見学だからといって、前の会場にて聞いているだろうからとプランナー判断で概要説明を省略してしまうと、お客様の理解が追い付かないのでマイナスの印象を与えてしまう可能性があるからです。
重複しているかな?と気になった場合は「既に伺われているかもしれないですが・・」と前置きをした上で、話し始めると双方にとって良い心理状態で本題に入れるので、上手く枕言葉を使用し会話の中に織り交ぜるといいと思います。
また、お客様は次の3点を主に比較するので、見積り提示の際には特に意識するとよいでしょう。
- チャペル・会場の雰囲気・設備的なこと(場所・利便性に含め)
- プランナーの人柄
- お客様が重視しているポイントやこだわり
上記3点がクリアになる(=お客様の中の基準を合格している)と初めて見積りを比較しようとなるので、プランナーは見積り提示前に、ここまでお客様の中で比較会場とどういう関係性になっているかを確認する癖をつけましょう。
もちろん価格もとても重要ですが、お客様は一番安いからという理由だけで成約することはほぼないということを念頭に置いておくようにしましょう。
お客様が「確信」 をするためのポイント
お客様が『比較』をすることで見積りの良さを理解してもらえたら、次はその見積りに対して安心・信頼してもらうことで、確信に変えていきます。見積りを説明しながら‘‘自分たちの結婚式‘‘ を具体的にイメージしてもらうのです。ハードやソフト面の骨組みの部分を理解してもらって、見積り提示で肉付けをしていうイメージです。
新規プランナーの中には、ヒアリング・内覧がうまくいかなくても「見積りに勝負を賭ける!」という考え方のも中にはいますが、そもそも気に入っていない商品をお金払って買うことはなくどんな天才でも不可能といえるので、成約率を上げるためにはその考え方は早い段階で見直すことをお勧めします。
『確信』をすると次の段階では、最終的な決断が待っていますので、ここでしっかりとお客様をグリップできていると、クロージングが楽になると感じています。
成約率を上げるための見積り提示の仕方
では次に、見積り提示の際の、具体的なポイントについて書いていきます。
会場ごとに見積りの構成や商品マスタの違いはありますが、ここでは一般的に使えそうなノウハウを紹介します。
- A4ではなくA3で見えやすく明確に印刷する
- 特典欄は色を使用し、割引額を分かりやすくお得に見えるように記載する
- お二人の希望がしっかりと取り入れられていること ⇒ 詳細は後述
- お二人のオリジナル感を特典名で工夫(フォーマット感をなくす) ⇒ 詳細は後述
上記のような点を工夫することで見積り内容を魅力的に見えるように意識することが必要です。ちょっとしたことですが、やるかやらないかでお客様の印象が変わってきます。
見積り提示前にヒアリングしておくべきこと
見積り提示前の内覧後に、まずは約3~5分程プランナーは席を外すことをお勧めします。なぜかというと、この段階で新郎新婦がお互いに本音を話す間をつくることが大切です。本音を話すタイミングを作らないと、お互いにどう思っているのかが分からず、クロージングの際に「一度帰って検討します」断られることがあるからです。
その後、約10分前後ヒアリングを行い内覧の感想を伺うと同時に、見積りについての希望・要望を聞き、どのような形で提示するのがベストなのかをすり合わせていきます。
まず、マストで伺っておきたいことは「挙式スタイル・人数・時期・衣装・その他オプションなど・・」で、ポイントは聞きすぎても聞かなすぎてもいけないということです。聞きすぎると見積りに組み込むアイテムが増えるので料金がアップし、お客様の希望予算を超える可能性が高まります。
逆に聞かなすぎるとお客様に希望を聞いてくれているのか?と不安を感じてしまい不信感へ繋がるのでこれも避けなければいけません。
どちらのパターンもあると思いますが、結論どちらでもよくないので‘‘ほどよく聞く‘‘ということがベストといえるでしょう。
割引をするアイテムの選択方法
最近の新規接客では、見積りを提示する際に割引を入れることが殆どです。
もちろん会場のルールで初見のお客様には、割引の見積りは提示しないなどのルールは存在すると思いますが、だいたいの場合はその場で提示することが多いと思います。
会場によってプランナーに与えられた割引権限は制限されることがありますが、その中で「どのアイテムからいくら割引するか」を工夫することでお客様に『どれだけお得に・魅力的に・価値を感じてもらう』かが重要になります。
同じ見積りの金額でもどのような明細をどのように説明するか次第、成約前の確信に変わるかどうかが決まると言っても過言ではありません。
割引アイテムを決める際のポイントは、お客様の欲しいものを3つほど伺った上で『2番目に欲しいもの』を特典としてつけるということをしてみて下さい。
その理由は、人は一番欲しいものは優先順位が高いので自分でお金を払ってでも購入するからです。例えば、「あなたの今一番欲しいものは?」と聞かれ、靴と答えたとします。「その次の二番目に欲しいものは?」と聞かれ、バッグと答えたと仮定します。でも、靴とバッグ両方買うと経済的に苦しくなるので、買えるのは一つだったら、一番欲しい優先度が高い靴を買うでしょう。バッグはまたの機会にしようと後回しにした時に、思いがけず恋人からバッグをプレゼントされると喜びも二倍になることと思います。
よく勘違いしがちなのは、二番目のアイテムは、一番目よりは優先度が低いので、お客様の一番欲しいものを割引すると喜んでもらえるという安易な考えです。
また逆に、お客様が心理的な不信感へと繋がることは、欲しいアイテムを全て特典としてプレゼントするという行為です。その行為は、安売りという言葉があるように会場やプランナー自身の価値をも自ら下げてしまっているということにも繋がります。
お客様に結婚式のアイテムの中で、二番目に欲しいもの・やりたいことを伺った上で、特別感を演出できるような特典名をつけるといいと思います。
どんなお客様にもイメージ通りと思わせるスキル
最後に一番重要なポイントは、お客様の言う見積り予算限度額には「見栄」が含まれていると知ることです。最初の来館アンケートから読み取る際に注意してほしいですが、見積りの提示をする際に一番気を付けてほしいところが、ココです。
そこで、どんなお客様にも「イメージ通り!」と見積りを魅力的に感じてもらうためには、作成前に次の2点を聞いておく必要があります。
- 見積り作成のスタンスを選んでもらう
- 予算の本音を伺う
まず1.見積り作成のスタンスを選んでもらう、とは、二つのパターンを伝えた上でお客様に見積りの内容をどのように作成するかというスタンスを選んでもらうということです。どのように伺いどのような見積りを作るかということを意識してみましょう。
≪トーク例≫
プ) 「今からお二人の見積りを作ってきます」
客) 「はい、分かりました」
プ) 「まず二通りあります。ざっくりとした内容のベーシックなお見積りか、
お二人のご希望を取り入れたオリジナルのお見積りかどちらが宜しいですか?」
客) 「オリジナルでお願いします」
プ) 「畏まりました。それでは、お二人のオリジナルのお見積りを作る為にご希望を
お伺いさせて頂いても宜しいでしょうか?」
以上のように、二者択一法を取り入れながらあくまでもお客様に選んでもらうということで、自分で選んだという印象を与えることが重要となります。また、ここまでの段階でご希望を聞き取れてなかったとしても、挽回することができます。
次に、2.予算の本音を伺うについてですが、最初のヒアリング際に予算感を聞いていたとしても再度伺うことが大事となってきますし、最初から本音を話すお客様はまずいない方がほとんどなのであまり鵜呑みにしない方がいいでしょう。
内覧時や見積り作成前に具体的な予算を確認することなく、最初に記入をしてもらったアンケートのチェックだけで作成してしまっている方もいるのではないでしょうか。お金の話は聞きにくいことではありますが、マストで聞く項目だと意識付けして聞き方を工夫して伺うようにするといいと思います。
1). ●●●万円に対して、上下動かせる金額をヒアリングする。最初のアンケートに書いた金額を「見栄」として考えて、動かせる範囲内の金額を聞き出す。
≪トーク例≫
Ex) ●●●万円 = 300万円
プ) 「お二人のご予算をお伺いしたのですが、アンケートにご記入頂いている●●円を 基準とした際に、正直なところプラスマイナスどれぐらいが許容範囲でしょうか?」
客) 「20~30万円です」
―――
例えばこのようなやり取りをした場合
①大きい数字を選ぶ ⇒ 30万円
②マイナスの方を選ぶ ⇒ 30万円
という潜在意識であることが多く、この場合のお客様の予算限度は、270万円だと考えて見積り作成を進めていくとよい、ということになります。
露骨に「本当はいくら出せますか?」と聞くよりも、直接的に聞くことより本音を引き出すという手法です。もし、「分からないです・・」という返事の際は、「ざっくりで構いません」や「仮に~」など聞き方を少し角度を変えて再度聞いてみると案外すんなり話してくれるので、一回で答えてくれない時は再度チャレンジするようにしましょう。
この場合、300万を基準とした時に許容範囲がプラスマイナス30万ぐらいなので、お客様の初期見積りの本音は270万以内です。なので、見積り提示額を割引をした状態で270万以内に収まるように調整することで、お客様にとってのイメージ通りの見積りになります。
できる限り確実な方法で、見積り提示をすることでプランナー自身の「断られたらどうしよう・・」「どんな反応かな・・」という恐怖心がない状態で、安心して自信を持ってお客様へ見積りを案内できるようになります。
見積り提示後に一番避けたいのは、お客様に「イメージとは違ったな・・」と思われることです。イメージと違うというのは、料金面が大半を占めますがそれだけではなく内容についても同様の意味が使われるので、決して価格だけではないと常に頭の片隅に意識するようにしましょう。
新規接客の見積り提示のポイントまとめ
見積り提示はヒアリングや内覧と比べると一見シンプルなことだと思われがちですが、とても奥が深いですし、少し工夫をしたり意識をするだけで大きな違いになるポイントだと思います。ただあくまでも見積り提示単体で頑張るものではなく、そこまでの接客の成果を最大化するものでありプランナーとしての基本ができているからこそ成り立つもの、と意識を忘れずにいてほしいと思います。
今回の記事が見積り提示について考えてみるきっかけになり、全ての新規接客をするプランナーにとって 少しでも参考になればうれしいです。