アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
ブライダル業界で数字が好きな人はあんまりいない印象なんですけど、なぜ大切なのかについて書いてみます。
目次
悪しき業界慣習を変える?
現役最前線世代で今の業界慣習が最高だ!変える必要はない!って思っている人はいないでしょう。もっとこうしたらいいのに、ここを変えていきたいと感じている人は多そうです。
- 現実と乖離した会場写真や見積り情報を媒体に掲載
- 一時期よりは減ったとはいえ強引な営業
- 契約後の大幅な単価アップ
- 持込制限、進行の制限
- 高額なキャンセル料、延期料
などなど。
このような公開/暗黙かを問わずブライダル業界において一般常識とも言える慣習は、自分が業界に入った10数年前から存在しており、これらは時代に合わせて変化していくことが求められていると思います。
一方で、なぜこういった慣習となっているのか?なぜこのような規約がモデルとされているのか?変化させなければいけないとしたら何を解決してどのようなルールを設定すればいいのか?を正しく理解している人はほどんどいないと思っています。
いやいや私/俺はできているよ!っていう人はここで読むのを止めていただいて構いません(笑)。
背景や原因がわからなければ適切な改善策を講じることはできません。医者が病気の根源を分からずに処置・処方するようなものです。業界ルールを変えたいのになぜそのルールに今なっているのかを知らないと変えることはできないでしょう。
多くの業界人が大なり小なり業界変革・所属する会社の変革について考えているにもかかわらず、その根本を理解しようとしないのは何故なのか?
今回はこのテーマで書いてみます。
背景を知ることは実は普段からやっている
よく言われる理由が「背景を知るっていう発想はなかった」的なこと。
現状の課題点と未来しか見ていないパターン。
でもよく思い出してほしいんですが、お客様の話を一切聞かずにいきなり提案するプランナーっていないですよね?
まず、どんな二人で、どのように出会いから今までの時間を過ごして、今どんな気持ちで、結婚式ではどんなことをしたくて、とか二人のことを知ってから提案しますよね?
それと同じだと思うのです。
- なんでこれが当たり前なのか?
- なんで今はこれがルールなのか?
- なんで会社はそれを変えようとしないのか?
これを知って初めて、じゃあこういうことができそうとかこれをやってみようか、とか発想が広がっていくと思うんです。
現状についてただ課題になることをあげる、文句を言うのって簡単なんですよね。誰でもできる。問題提起そのものに価値はありません。改善策を企画して実行して初めて前に進むわけで、そのためには背景理解が重要である、と。
そして「背景を知る」という行動自体は別に経営やビジネスのプロフェッショナルではない方も日常的にやっています。初回ヒアリングってただお客様に話させることが目的ではなく、その後の提案に結び付けることが目的でしょ?
こう考えると、そんなに難しいことではないと思うんですよね。
個人に必要なスキルセット
もう1つよく言われる理由が「数字とかよくわからない」です。
むしろこちらの方が多いかもしれません。
おそらく学生時代に経営学を勉強した人・起業したことある人は少ないでしょうし、入社後の研修でビジネスモデルや経営論について教えている企業も聞いたことないので、知る機会がなかったのも1つの要因だとは思います。
でも個人的には、規約の背景を理解していないとお客様から質問されたときにちゃんと答えられないのでは?と思うんですよね。
- なんでまだ実費なんて何もかかってないのに3か月前だからっていうだけでキャンセル料がこんなに高いんですか?って聞かれて、過去の判例(ベストブライダル・PlanDoSee)と施行枠をブロックすることによる逸失利益の概念を正確に説明できます?(実際にお客様に話すかはさておき)
- なんで自分たちで持ち込むだけなのにこんなに持込料かかるんですか?って聞かれたときに、会社の利益確保するためです、みたいな安直な回答してない?っていうか本気でそう思っている人いない?
など。
誰しもが情報発信者になれる今の時代、顧客にとって不都合なことを隠しきることはできません。事業者にとって想定外の形で表に出されることもあります。
であれば最初からやましいことをなくしてフルオープンにした方がいいよねという風潮に変わっていきそうで、だからその理由を知ることの重要性も高まると思うんですよ。
そう考えると、数字とかビジネス理解ってこれからの時代は一般教養になっていくでしょうから、避けて通れない道になっていくと思うんですよね。都合の悪い質問に対してごまかしたりはぐらかしたりすると、消費者側にばれますし、ちゃんと説明する力が求められる。
これまでは営業力やコミュニケーション力が重視されてきましたが、その土台になるビジネスリテラシーの重要度も増していきそうです。
働き手の意識を変える
- そういう難しい数字の話はえらい人たちやっといてください
- 数学嫌いだったから数字とか苦手なんで無理なんですよね
- それを知ったところで何も変わらないですよね?
- 数字のために結婚式やっているわけじゃないんで、お客様のためなんで
- 数字が分かるといい結婚式作れるようになるんですか?何か関係あります?
これは結婚式場運営会社で働いていた時や起業後にクライアントの方と話したときに、これまで僕が言われてきた言葉です。
冗談とかではなくて全部真顔で言われたことは今でもけっこう鮮明に覚えてますね。もちろん業界全員がこういう思考であるわけではないのですが、それなりの割合で言われてきたなぁと思っています。
数字が苦手だから避けている人もいますし、結婚式の仕事の価値を数字で測ること自体を悪として捉えている人もいます。顕在的/潜在的な意識の中で数字やビジネスを知ることに対して価値を感じていないことも少なくない気がします。
これは個人的な考えですが、今知らないこと、今できないこと、これまで考えたことがなかったこと、それ自体は悪いことではないと思っています。だって過去の話ですし、機会がなかったんだからしょうがない。
でも、重要であるという話を聞いたところで、自分は理解することができないとあきらめている、謎な価値観に基づいて重要ではないと切り捨てる、こういった捉え方をするのは闇が深いなと思います。
繰り返しですが全員そうだってわけではありませんし、想いと建設的な話をセットでちゃんとできる方もいます。でもそうじゃない人もいます。
そこの意識が広く変わっていくことで、業界全体がボトムアップで変わっていくと思っています。
想いだけで通用する世界ではない
ブライダル業界の特徴として、ビジネス的な側面よりも作り手の想いで論じられることが多く、これは他の業界にはあまりないことだと思っています。
この背景は、
- 業界のビジネスモデル自体が確立してしまっている
- なので新しい枠組みを作ろうという教育をしていない
- さらにそういった気概のある人を採用していない
- よって業界内にビジネス的な素養や思考を持つ人材が少ない
- 結果として想いのような抽象的な概念でマネジメントをすることが増える
こんな感じかなと。
別に想いがいらないと言っているわけではないですよ。両方大事だよって話です。
結婚するのに愛は大事。でも年収とかだって大事でしょ?お金のために結婚するわけじゃないけど、現実的には両方大事だよね、っていうのと似てる。
ブライダル業界で数字の話をすると「数字か想いか」みたいな二元論になることが多いですがそういうことじゃないし、数字やビジネスをちゃんと理解した土台がしっかりしている人が、その上で想いを語れるようになると説得力も出るし本当の意味で変わっていくんじゃないかなと思います。
ブライダル業界で数字が必要な理由まとめ
かれこれ10年くらいブライダル業界で数字回りの仕事をして感じてきたことを書いてみました。
数字=自分が測られるための道具、という認識があって苦手意識を持っている人が多い気がします。
でも、ビジネスとして結婚式を提供している以上は数字の話は避けられないわけですから、であればいかに早く自分のものにするかを考えた方がいいのになって思います。