アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
私が思いついた新規事業のアイディアを企画っぽくまとめてみよう、という趣旨の記事です。第7回の今回は、ブライダル企業がウェディングプランナーを指名する転職サービス「ウェディングプランナードラフト」を企画してみました。はじめに、この企画はリブセンスさんが運営する転職ドラフトから着想を得ているので、ビジネスモデルやルール設計などはサイト内の情報をかなり参考にしています(この記事のサービスは実在するものではありません)。
目次
事業企画の概要・ビジネスモデル
ビジネスモデル図解
いつものように「ビジネスモデル2.0図鑑」を参考にして作成してみました。簡単に言うと、ウェディングプランナーのドラフト制度、です。プランナーのスキルや経験を見て、ブライダル企業がぜひうちの会社に来てほしい!とドラフトで指名する、といった企画ですね。
サービス利用の流れ
- プランナーが会員登録
- レジュメ入力
- 審査通過
- エントリー
- ドラフト開始
- (指名後)企業とメッセージでやり取り
- 面談スケジュール調整
- 面談の実施
- 内定・入社
基本的な流れはこのような感じです。
収益化の方法(お金の流れ)
売上はプランナーの転職が実現したときの手数料になります。一般的な人材紹介業と同じで、相場的には年収の25%~30%程度の手数料率になると思います(これ以上だと企業側がたぶん参加しないですね)。
一般的な人材紹介サービスだと、登録したエージェントのアドバイザーが求職者にマッチしそうな会社をピックアップしてアプローチしますが、ウェディングプランナードラフトだと参加しているすべての企業の採用担当者がレジュメを見ることができるので、思っていなかったような企業からオファーを受けることもあるかもしれません。
このサービスが解決できる課題
求職者(プランナーなど)の課題
- 実力に見合った適性なお給料がいくらくらいなのかわかる
- どのような企業が自分に興味を持ってくれるのか、バイアスなしでわかる
- 自分のスキルと働き方にあった会社が見るかる可能性が高まる
こういった課題が解決できると思います。ウェディングプランナーに限らずブライダル業界の平均給与は他業界や職種と比較して高いわけではありません。新規にしろ打合せにしろ、役職のついていないプランナーで600万円以上もらっている人は稀でしょう。
一方、提供している付加価値という観点では、月間10組以上成約している新規プランナーであれば期待売上3,500万円以上稼いでいることになりますし、担当7組以上持っている打合せプランナーであれば相当高いスキルを持っているはずです。
にもかかわらず、会社の評価制度、人事制度によっては相応な評価を得ているわけではないのが実情だと思います。
また、同じブライダル企業でも結婚式への考え方や、働き方は大きく違います。そのため、自分の思いや仕事へのスタンスと会社の方針がマッチしていないだけなのに、業界そのものが嫌になって辞めていっている人も一定数います。
- 自分のパフォーマンスを正当に評価してくれる会社で仕事をしたい(もちろん相応のスキルを持っている人が前提)
- 自分の考え方とマッチしている会社で働きたい
- 自分で探すのではなく、企業側からスカウト、指名されたい
こういった方にお勧めのサービスだと言えるでしょう。
また、書いていて思いましたが、フリーランスや業務委託で働きたい人にも使えそうだと思いました。最近ではプロデュースや結婚式場でもフリーランスプランナーの活用を始めている企業も増えてきているので、高いスキルを有していればありえそうです。
採用する企業側の課題
ブライダル業界に限らず、今の日本企業はどこも人材不足に悩まされています。まず単純に、人を採用できること(採用する1つのチャネルが増えること)がメリットだと思います。このドラフトに参加するプランナーが一定数いることが前提ですが。
次に、エージェントを使って採用する場合と比べて、プランナーの実績や結婚式のこだわりなどがわかりやすいこともメリットです。一般的にエージェントのキャリアアドバイザーは、業界特化型エージェントを除きブライダル業界については素人です。そのため、紹介されても正確に実績の定義の違いやニュアンスを採用企業側に伝えることは困難です。それに比べて、ブライダル業界を理解した人が作成した同じフォーマットで候補者を比較することができるので、自分たちの企業にマッチした候補者に対してだけアプローチ(指名)することができます。
事業のKPI・スケールさせるのに必要な施策
事業KPI
- 利益=売上-コスト
- 売上=入社数×年収×手数料率
- 入社数=面接数×内定率
- 面接数=参加者数×面接開催率
- コスト=人件費+広告費+開発費+その他固定費
ざっとこのようなロジックで表すことができます。
成長させるために必要な施策
この事業を成長させるためには、それぞれのKPIを伸ばしていくための施策を実行していくことが必要です。
「参加者数」を伸ばすための施策
基本導線は公式サイト来訪→アカウント登録→ドラフト参加、となるはずなので、基本戦術はサイト来訪者数を伸ばすことが必要です。ただ、サイト内コンテンツが豊富になることは想定しにくいため、SEO対策での流入対策は難しいでしょう。どちらかと言えば、ウェブ広告またはブライダル業界特化型メディアへの広告出稿などで参加者を獲得する、というのが基本戦術になると思います。
また、アカウント登録からドラフト参加への確率を高めるためには、現職に個人を特定されないための工夫、が必要です。エンジニアドラフトなど職種特化型のサービスと比べて、ブライダル業界、特にウェディングプランナーであれば業界が狭いので、現職の人は今の職場の人に見つかる可能性があります。
ビズリーチのように、特定の企業アカウントからは発見されないようにする、個人名をID化する、など個人を特定できないような仕組みを用意することはこのサービスを実行するうえで必須の機能になります。
「面接率」を伸ばすための施策
企業側からの指名→面接という流れなので、企業採用担当者がどれだけの人を指名するかがポイントです。
企業採用者にとって使いやすいサイト画面であること、指名を促すための開催期間中の主催者からのアプローチ、などももちろん必要ですが、一番は優秀な候補者を集客すること、この点に尽きるでしょう。高いパフォーマンスを発揮できるプランナーを1人でも多く集めること、これが達成できれば指名数も増えるはずです。
「手数料率」を伸ばすための施策
この事業では、事業者間の公平性を担保するために手数料率は固定で。
施策まとめ
- ウェディングプランナーを多く参加してもらうための集客施策
- 魅力的なプロダクトの開発
上記2つの施策を並行して実行していくことが重要になります。当たり前すぎる内容になってしまいましたが…。
事業リスク・詳細検討が必要な項目
ウェディングプランナードラフト事業を立ち上げ、拡大していくにあたり想定されるリスクとそれに対する打ち手も考えておきます。
①プランナー参加者の獲得、マーケティング戦略・施策
とにかくドラフトに参加するプランナーがいなければ始まりません。基本戦術は先ほども書いたようにウェブ広告で参加者を獲得する、というのがメインになると思いますが、どちらかと言えば閉鎖的な業界の中で新しいプレーヤー(例えば弊社)がいきなり立ち上げたとしても、ナニコレ?となる可能性が高いでしょう。
そのため、この事業単体でいきなり立ち上げるというよりは、すでに何かしらの事業を行っていて業界内の知名度も一定ある企業が始めたほうがよいと思います。または、人材紹介業をすでにやっている会社、とかですね。
単なるブライダル業界の知見だけでなく人材紹介に関するノウハウも持っていないとうまく進められないと思います。
②法人開拓
法人側には参加料やアカウント開拓料、指名料などを取らない限り、基本的にコストリスクはないので、プランナーに比べると開拓はしやすそうです。ただ、それでも採用担当者の工数がかかること、やはり何者かわからない会社の企画には乗ってきにくいこと、などいくつかの壁はありそうです。実績があれば…、というところですね。
③プロダクト開発
特定の企業に対して特定の個人を発見できないようにすること、現職の人のプライバシーを守ること、などの機能開発は必須です。その一方、登録したプランナー情報はできるだけ開示しないと企業側も指名できないので、そこのプロダクト設計が一番重要であり難易度も高いところだと思います。
ここでミスると事業自体の信用や運営企業の信用が一気になくなるので(現職にバレて不当な扱いを受けた、などの事例が起こるとダメ)、注意が必要なところでしょう。
起こりそうなリスクまとめ
プランナーが集められない、はかなりの確率が起こりそうが、このドラフトをきっかけにいい働き方を見つけた!という事例が出てくれば業界内の知名度はそれなりに獲得はできると思います。
「ウェディングプランナードラフト」の事業企画のまとめ
以上、新規事業企画をしてみました。事業計画は信ぴょう性がないうえに作るの大変なので載せないことにしています。
今回の企画は、プランナーの働き方改善、企業と求職者のミスマッチをどうやったら減らせるか、をいろいろ考えていた中で思いついたアイディアです(というか、転職ドラフトいけるんじゃない?って思った)。フリーランスプランナーの増加など、ブライダル業界の働き方も徐々にですが変わってきていますので、よりよい職場環境になっていくといいなと思います。