アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
私が思いついた新規事業のアイディアを企画っぽくまとめてみよう、という趣旨の記事です。久しぶり第9回の今回は、結婚式のご祝儀をキャッシュレスで渡すことができるサービス「ご祝儀pay」を企画してみました。ビジネスモデルはチャーリーさんの記事をめちゃくちゃ参考にしています(※この記事は実在するサービスではありません)。
目次
事業企画の概要・ビジネスモデル
ビジネスモデル図解
いつものように「ビジネスモデル2.0図鑑」を参考にして作成してみました。が、決裁とか集金代行の具体的なフローや法律面は詳しくないので、今回は機能面でこんなサービスあったらいいな、というテンションで書いています。というかわざわざこの書き方をしなくてもよかったような気がする…。
サービス利用の流れ
- 新郎新婦がゲストへSNS等でURL送付
- 列席ゲストがアカウント会員登録
- 会費またはご祝儀で支払う金額を設定
- 決済
- 結婚式当日は清算無し
基本的な流れはこのような感じです。
収益化の方法(お金の流れ)
売上は「ゲスト→新郎新婦」の送金額の一部の手数料収入になります。
例えば手数料が3%だとした場合、ゲストがご祝儀として30,000円を新郎新婦に渡したとすると、その中の3%=900円が売上となり、新郎新婦が受け取るのが29,100円となります。
このサービスが解決できる課題と利用するメリット
新郎新婦の課題と利用するメリット
- 結婚式前にご祝儀や会費を受け取れるので新郎新婦の支払い負担がかなり小さくなること
- ご祝儀袋を開ける手間、(主に親族が)披露宴中に大金を管理しなくてよくなること
この2つです。
まず1つ目のメリットですが、一般的な結婚式場の支払いタイミングは、申込金→半金→残金→当日追加と計4回ありますが、今の当日にゲストがご祝儀を持ってくる方法だと、新郎新婦はご祝儀を受け取れるのが結婚式当日になるので、一時的にほぼ全額を前払いする必要があります。平均単価350万円と考えてもこれは結構大きな金額であり、一時的とはいえこれほどの金額を用意することが難しいカップルも多いでしょう。
もし「ご祝儀pay」を利用し、ご祝儀支払い期限を残金支払い前に設定すれば、残金を先に受け取ったご祝儀から支払うことができるので、一時的に新郎新婦が負担する金額が半分でよくなります。これはかなりの負担減になると思います。
2つ目のメリットは、現金管理の手間がなくなる、という部分です。一般的な挙式披露宴では、ゲスト来館後にまず受付で芳名帳への記入とご祝儀の受け渡しが発生します。仮に80名が3万円のご祝儀を渡した場合、240万円分の現金になります。受付から親族に渡り、披露宴中は親族が管理していることが多いですが(新郎新婦は忙しいので)、その間は誰かが常に見張っていなければいけないのがつらいところです。
また、結婚式後に80人分のご祝儀袋を開封して、誰がいくら包んでくれたのかをメモるのも地味に大変な作業だったりします。特に、当日支払いなどの場合は披露宴終了後にすぐにその作業をしなければいけないので、けっこう大変だったりします。こういった話はほとんど表には出てこないですが、実はストレスになったりするんですよね。
ゲストの課題と利用するメリット
- 当日またはそれまでのご祝儀を準備する手間が省ける
- いくら包めばいいかを悩まなくていい
この2つです。
まず1つ目のメリットですが、ご祝儀を用意するのは意外と面倒くさいと感じる方が多いと思います。銀行かATMに行ってピン札を用意して、ご祝儀袋を買って、お金を包んで、筆ペンを用意して、一筆書いて、袱紗につつんで…、と、特に初めての方や経験の少ない方はどうやってやるのかも含めて手こずることが多いと思います。あと、ご祝儀袋などを買うと数百円ですがお金もかかります。
それに対して「ご祝儀pay」を使えば、スマホから簡単にご祝儀を送金できるので、これらの手間が一切かからなくなります。また、当日もお金を持ち歩かなくてよくなりますし、家出てから「あれ?ご祝儀持ったっけ?」となることもありません。
2つ名のメリットは、振込のタイミングで金額を指定すればいくら包めばいいのか…、と悩む必要もありません。お祝いで支払うか支払わないかを決めればいいだけなのです。
事業のKPI・スケールさせるのに必要な施策
事業KPI
- 利益=売上-コスト
- 売上=総送金額×手数料率
- 総送金額=利用数×送金単価
- 利用数=婚礼組数×利用率
- コスト=人件費+広告費+開発費+その他固定費
ざっとこのようなロジックで表すことができます。
成長させるために必要な施策
この事業を成長させるためには、それぞれのKPIを伸ばしていくための施策を実行していくことが必要です。
「利用率」を伸ばすための施策
こういったサービスがあることを認知させ、メリットを理解してもらい、かつ文化的な壁(現金を渡さないと気持ちがこもっていない、のようなこと)を超えなければいけません。利用率を高めていくためには、オンラインで直接ユーザーにアプローチする方法と、結婚式場を開拓しプランナーからユーザーにアプローチしてもらう方法、この2つがあります。
まず、オンラインでユーザー獲得をしていくためには、サービスサイトを制作しサイト来訪→アカウント登録→利用、という流れとなるので、基本戦術はサイト来訪者数を伸ばすための正しいサイト設計、流入施策の企画実行、サイト内UI/UXの継続的改善、となります。ただ、業界内でのニーズが顕在化していないサービスなので、既存のブライダルサービスのようにリスティングやSNS広告、SEO施策を繰り出すだけでは初速はかなり苦労すると思います。なので最初はインフルエンサーを活用したりキャンペーンモデルを擁立したりなどマスを意識した施策も必要になると思います。
もう1つ、結婚式場のプランナーから紹介してもらうためには、結婚式場にとってのメリットも併せて伝えていく営業力が必要です。結婚式場のメリットは「残金のとりっぱぐれ率が下がること」と「結婚式当日の現金トラブルが減ること」この2つです。直接的に結婚式場とユーザーの間に入るサービスではないのでデメリットはほとんどなく、紹介のための人的コストがかかること、これを突破できればあとは営業力勝負になります。
これらの施策を忠実に実行していくことで、利用率を伸ばしていくことが必要です。物理的な制約を受けないので浸透し始めると早いでしょうが、初速の苦しい時期を耐えられるだけの体力があるかが求められると思います。
「送金単価」を伸ばすための施策
まぁ普通はご祝儀だと3万円が相場なので、ここが大幅に変わることはないと思います。あるとすれば会費制結婚式が主流になるくらいですね。ご祝儀payのいいところはご祝儀制でも会費制でも利用できることです。
「手数料率」を伸ばすための施策
この事業では、サービスの趣旨を実現するために手数料率は固定で。
施策まとめ
- 利用率を高めるためのユーザーへのオンライン/オフラインのアプローチ施策
- 使いやすいプロダクトの設計・開発
上記2つの施策を並行して実行していくことが重要になります。当たり前すぎる内容になってしまいました…。
また、将来的にマネタイズポイントを増やす方法として
- ウェブ招待状などとセットで販売し、出欠管理などもまとめてできる機能を持つ
- ゲスト側もログイン機能などを設け、ゲスト間のやり取りなどもできる機能を追加し(ゲスト→新郎新婦へのサプライズ企画など)、そこで物販。
- 安定してセッションを稼げるようになれば広告枠を設定して広告収入を得る
など、利用者数が増えることで期待できる方法もあると思います。
事業リスク・詳細検討が必要な項目
ご祝儀payの事業を立ち上げ、拡大していくにあたり想定されるリスクとそれに対する打ち手も考えておきます。
①文化の壁
ご祝儀は現金でなければ気持ちがこもっていない、などの思想は一定まだ根強いのではないかと思います。地域差や年代差はあると思うのですが、サービス導入してもこういった逆風が吹く可能性は高いと思います。具体的にどのようにしたらよいかの案はまだないのですが、強いハートは間違いなく必要にはなります。
②使いやすいプロダクトの開発と強固なセキュリティ
将来的な機能追加を見据えた使いやすいプロダクトは必須。また、個人情報や決済に関する情報を扱うサービスになるので、セキュリティ対策は超絶ちゃんとやる必要があります。
③法律
決済周りの法律全然詳しくないので軽く触れるにとどめておきますが、オンラインでお金を扱うサービスなので法律の知識は間違いなく必要になります。というかもしやるとしたら専門家の協力は必須だと言えます。
④利用率の向上
昨今のマーケット環境やキャッシュレス化への流れを考えると、時流的には追い風になる可能性が高そうです。ただ、そう簡単にはいかないと思うので、ここのリソースをどこまで張れるかどうか、まったくの無だと厳しいと思います。
起こりそうなリスクまとめ
サービス的には文化の壁、そこを超えて利用率をどこまで伸ばせるかがキーになるので、SNSへの拡散用の仕掛けとか、なんかいろいろ考えておかないとなと思います。あと、サービス開発はユーザビリティはもちろんのこと、法律の観点、セキュリティの観点では特に細心の注意を払った設計・開発が必要になります。
「ご祝儀pay」の事業企画のまとめ
以上、新規事業企画をしてみました。事業計画は信ぴょう性がないうえに作るの大変なので載せないことにしています。
結婚式が年間40万組、平均列席人数が70名、ご祝儀が3万円だとすると、年間のごしゅうぎそうがくは約8,400億円になります。もし利用率100%で手数料率3%だとすると240億円にもなります。もちろん、そこまでの規模になるのは不可能でしょうが、これまで当たり前だと思っていたことに対しアプローチをしてみるという観点では、可能性としてはあるんじゃないかなと思いました。10%でも24億円ですしね。
この事業のいいところは、すでにキャッシュレス化の事例かあるので完全にゼロから始めるわけではない点、直接ユーザーへのアプローチ出来れば既存プレーヤーとのかかわりを積極的に持つ必要がないので、異業界の企業がブライダル業界に入ろうとしたときの文化的な壁がない点、ですね。
これはどこかがやるんじゃないのかなと思いますし、もしかしたらすでにあるかもしれませんが、こういった新規事業も今後はどんどん増えていってより効率的になっていくといいなと思いました。