更新日 2019年08月19日

もしもブライダル版のトリバゴを作るとしたら

0297_もしもブライダル版のトリバゴを作るとしたら

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

突然ですが、トリバゴというサービスをご存知ですか?トリバゴとは、さまざまなオンライン予約サイトが提供する宿泊施設の料金プランの料金比較検索サイトで、どのサイトから予約をすると一番お得になるのかが一目でわかる便利なサービスです。ちょっと前に独特なCMで話題にもなったこのサービスですが、実はブライダルでも同じような仕組みがあると便利なのでは?と思ったので、今回の記事ではもしブライダル業界でトリバゴのようなサービスを実現するとしたらどのようなモデルになるのか?ユーザーにとってどんなメリットがあるのかを考えてみました。

 

トリバゴとは?

トリバゴ_トップページ
トリバゴ:https://www.trivago.jp/

トリバゴとは、複数のホテル予約サイトのプランを網羅的に掲載し、最安値のプランを見つけられるサイトです。トリバゴから直接ホテルに予約ができるわけではなく、エクスペディア、ホテルズドットコム、アゴダ、ブッキングドットコム、じゃらん、一休.comなどの各サイトからホテルの予約をします。以前は特徴的なCMで話題にもなりましたね。

トリバゴのビジネスモデル

297_トリバゴのビジネスモデル
  1. ホテルが予約サイトにプランを掲載
  2. 各予約サイトに掲載されたプランをトリバゴで掲載
  3. ユーザーはトリバゴで最安値のプランを検索
  4. 各サイトに遷移して予約

ここまでがユーザーの流れで、トリバゴの収益源はホテルからの紹介手数料とサイト内広告の広告費になります。

ユーザーメリット

ユーザーが様々な予約サイトではなくトリバゴを使うメリットには、以下のような点が挙げられます。

  • 予約サイトごとのプラン料金を簡単に比較することができる
  • 最安値の予約サイトを簡単に探すことができる
  • トリバゴ経由で予約するとさらに安くなる

旅行業界では予約サイトごとにプラン金額が違う状態だったため、いくつものサイトを行ったり来たりしながら一番安いプランを探すのはユーザーにとってかなり難易度の高いことでした。その点で、最安値を簡単に探すことができるというのは大きなユーザーメリットだと言えますね。

一般的な結婚式場探しとプロデュース

さて、ざっとトリバゴについて説明しました。

今回の記事は旅行業界とブライダル業界では似ている点も多いので同じようなサービスを作れるのでは?という内容なので、次にこれを踏まえての今のブライダル業界についても整理しておきます。

結婚式に携わるプレイヤーマップ

297_ブライダル業界のプレーヤーマップ

上図のように、大きくは以下の5つのプレーヤーに分けられます。

  • ユーザー:結婚式を検討している新郎新婦。
  • 媒体:ゼクシィなどの結婚式場を紹介しているメディア、wecoやプラコレなどプランナーやプロデュースサービスを紹介しているメディア等すべて含む。
  • 結婚式場:定期的に結婚式を実施している場所。
  • プロデュース:結婚式場から決める場合は結婚式場に所属するプランナーが担当することが一般的、プロデュース会社から決める場合はプロデュース会社やフリープランナーが担当する。
  • アイテムベンダー:ドレスやフォト、映像、フラワーなど結婚式に必要なアイテムを提供しているベンダー。企業によっては内製していることもある。

一般的な結婚式場探しのフロー

結婚式場から探すパターン

  1. ゼクシィやハナユメなどの媒体で自分の好きな結婚式場を探す
  2. 結婚式場に見学に行って気に入ったところで申し込む
  3. 結婚式場に所属するプランナーがプロデュースを担当し打合せをする
  4. 提携しているアイテムベンダーと打合せをして結婚式の内容を決定する
  5. 結婚式当日を迎える

プロデュースから探すパターン

  1. CrazyWeddingやスマ婚など、自分の好きなプロデュース会社に相談に行く
  2. プロデュース会社に申し込む(プロデュースはプロデュース会社が担当する)
  3. コンセプトやデザインイメージ、希望予算に近い結婚式場を決定する
  4. アイテムベンダーを紹介または自分で探し、打合せをして結婚式の内容を決定する
  5. 結婚式当日を迎える

最終的に結婚式場で結婚式を挙げる、ということは同じですが、決まっていく順番が違うのと、同じ会場でもプロデュースする人や会社によって内容や価格に違いが出ます。

では次に、今の結婚式場探しの課題についても簡単にまとめておきます。このような業界構図で課題があるから新しいサービスが必要になる、という考え方であるためです。

 

今の結婚式場探しにおけるユーザーの課題

1.前提として事業者側とユーザーの情報格差が非常に大きい

多くの新郎新婦にとって結婚式は初めてのことなので、事前情報がほとんどない状態で結婚式場探しがスタートします。また両親に聞いても時代が違いますし、友人知人に聞いても個人の体験でしかないので体系的な構造や仕組みの理解が難しいのです。

2.情報量が多すぎて自分たちに必要な情報だけを探すのが難しい

旅行ほどではないにしろ、結婚式場を探すための情報はかなり多いです。ゼクシィやみんなのウェディングなどの媒体も複数ありますし、最近ではWeddingNewsやプラコレ、Chooleなど新しいモデルのサービスも出てきています。さらに、卒花のコミュニティやSNSでの情報など、提供者も情報の精度のバリエーションも非常に多いので、その中から自分たちに役立つものだけをピックアップすることが非常に難しいのです。

3.どの会場で誰にプロデュースを依頼すると最適な結婚式を最安値でできるのかがわからない

「結婚式場からまずは探してブライダルフェアに参加して申し込む」一択だった時代から、近年ではプレイヤーカテゴリもサービスのバリエーションも増えてきたことでユーザーの選択肢もかなり増えてきました。これ自体はいいことだと思いますが、申し込み前にそれを最適に比較することは現状ほぼ不可能ではないかと思います。どの会場で、誰にプロデュースを依頼すると、どんな内容の結婚式が、最安値で(いくらで)できるのかがわからないんですね。

これらの課題について簡単にまとめると、時代ととも変わってきた選び方やプレーヤーが増えてきて同じ会場でも誰がプロデュースするかで価格も内容に変わってくるのに、網羅的にまとまっていてユーザーが探せるメディアがないこと、だと言えると思います(旅行の時の課題で言えば、予約サイトはたくさん増えたけど金額は違うし結局どこが安いかわからなかった、という課題でした)。

ここまで、ブライダル業界(というよりは結婚式場探し)の構造と課題についてまとめたので、次にこれを解決するため仕組み・サービスを作るとしたらどうなるか?について考えていきます。

 

ブライダル版トリバゴのサイト(サービス)概要のイメージ

全く同じようなモデルとして考えるとするならば、媒体(ゼクシィやハナユメなど)ごとの掲載金額比較になるのですが、実際問題ゼクシィから予約しようがハナユメから予約しようが結婚式の価格は変わらないので、根本的な課題はそれだと解決しないと思います。なお、ハナユメ割は確かにありますが、新規見積りの特典の見せ方の中で運用上吸収してしまっている会場が多いと思うので、ここでは差がなしと書いています。ちなみに、媒体別の掲載情報を網羅的にまとめているのはWeddingNewsの式場検索ですね。

ビジネスモデルはどうなる?

では何の情報を整理して掲載されているとユーザーに役立つのかというと、
「結婚式場×プロデュースチーム」
この掛け合わせ別の価格・プラン内容を一覧化していることだと私は思います。

297_ブライダル版トリバゴのビジネスモデルイメージ

こんなイメージですね。プロデュースのうち例えばAは会場専属のプランナーで、それ以外のB~EはCrazy Weddingやスマ婚、楽婚などのプロデュース会社、またはフリーランスプランナーになります。一般化するとこのようになるのですが、ちょっとイメージしにくいと思うので具体的なサイト画面イメージで説明します。

具体的なユーザー導線を考えてみる

まず、以下がトリバゴのサイト上の画面遷移です。

297_トリバゴの画面遷移
  1. エリアやチェックイン・チェックアウト、その他条件を設定
  2. 宿泊施設一覧ページからホテルを選んでクリック・タップ
  3. サイトとプラン内容、価格が載ったプラン一覧ページからプランを選択
  4. 該当するサイトへ遷移して予約(外部リンク)

このような手順となります。どのサイトのプランが一番安いのかわかりやすいですよね。
では次に、このイメージをそのまま結婚式場とプロデュース別の金額と内容に置き換えてみます。

297_ブライダル版トリバゴの画面遷移イメージ
  1. エリアや会場タイプ、その他条件を設定
  2. 結婚式場一覧ページから気になる結婚式場を選んでクリック・タップ
  3. プロデュースと内容、価格が載ったプロデュースプラン一覧ページからプランを選択
  4. 該当するサイトへ遷移して予約(外部リンク)またはサイト内で予約

こんな感じになります(私のイメージですが…)。ただ、まだちょっと抽象化しているのでより具体的な表記で書いてみると以下のようになると考えています。

※会場名やプロデュースチーム名、フリープランナーの一部は実在するものですが、あくまでイメージしやすいために入れているだけで実際にこのような内容でプロデュースをしているわけではありません。金額も適当です。

青山迎賓館

  • Produced by TAKE and GIVE NEEDS:500万円/会場専属のプランナーがプロデュース
  • Produced by CRAZY WEDDING:700万円/オリジナルウェディングのプロデュースチーム
  • Produced by スマ婚:250万円/一流結婚式場で格安ウェディングをプロデュース
  • Produced by 会費婚:160万円/会費制結婚式に特化したプロデュースチーム
  • Produced by 黒田聡子:450万円/見えないらしさをカタチにするフリープランナー
  • …(その他続く)
  • DIY Wedding:50万円/会場利用料のみ、自分で作るフルオリジナルのDIYウェディング

こんな感じのプロデュース一覧になると思います。どうですかね、イメージわきますかね??

このサイト(サービス)が実現したときの今の結婚式場探しとの大きな違い

一番の大きな違いは「結婚式場(ハコ)とプロデュースする人は完全に別のものである」という前提に基づいて設計されている点です。このサイト経由で問い合わせた後のフローは実は同じです。会場専属のプランナーを希望する場合は会場に見学に行けばいいですし、それ以外のプロデュースチームを希望する場合はそこに相談に行けばいいのです。

大手企業が運営するゲストハウスはほぼ自社会場のプランナー専属ですが(T&G、エスクリ、など)、ホテルやレストランで複数のプロデュース会社やフリープランナーと契約している会場はかなりの数あると思うので、そういう会場を集めてみると意外とサイトとしても成り立つんじゃないかなと思います。

もし実現したときに解決するユーザーの課題

今は気に入った会場があっても、プロデュースは会場専属のプランナーにほぼ一択で決まってしまいます。そうすると、実はスマ婚から申し込めばもっと安かった…とか、実はフリープランナーの方にお願いしていたらもっとオリジナルウェディングができた、ということが起こってしまいます。

もしこのサービスが実現すると、会場×プロデュースのかけ合わせが同時に検索可能であり、金額と内容を合わせて検討することができるので、このような「知らなかった…」や「もっと違う形でできたのに…」という後悔が起こる可能性を減らすことができます。

もしあったときに解決する結婚式場の課題

これ、ユーザー側だけではなく結婚式場側にもメリットがあると思います。

先ほども書いたように、会場専属だけではなく複数のプロデュースチームと契約している結婚式場は多いですが、ゲストも含めたユーザー視点では「●●会場で挙げた結婚式はこうだった」という感想や印象だけが残ることになります。口コミサイトに掲載されている口コミを見ていても、「あれ?これは別のプロデュースが担当した施行の口コミじゃないかな?」というのもたまに見られます。

例えば、一般的には400万円ほどの組単価の会場なのに、実際にかかった費用が150万円だった→これは別の低価格系プロデュースサービスが担当していた、といったケースです。この口コミを見た他のユーザーはプロデュースが違うということをそれだけでは理解できないので、

  • 150万円でできたって書いてあったのに私たちはなぜ400万円もするんだ!?不公平だ!

とか

  • 150万円でできるんですよね?それくらい値引きや特典つけてくださいよ

などの要求を受ける可能性があります。その点で、「どこの会場で挙げるか」と「誰がプロデュースするか」は別であるという認識が広まればこういったケースもなくなると考えられます。似たような業界や事例がないので、浸透までには時間がかかりると思いますが、今までの「会場が用意したテンプレ結婚式を選ぶ」から「自分らしく自由に選ぶ」へのトレンドが続いていくようなら、こういった変化にも追い付いていけるかなと思います。

 

ブライダル版トリバゴについての考察まとめ

思い付きで書き始めたものの、けっこう長い記事になってしまいました。。そして意外と需要あるんじゃないかとも思いました。ただ、作るとしたら会場への営業とプロデュース契約の把握など、サイト開発や集客などC側だけでなくB側の開拓や調整が超大変そうですけどね…。フリーランスプランナーまで入れるとかなりの数がいそうですし…。開発コストと営業コストが半端なさそうです。
ただ意外と、

  • 結婚式場の比較・紹介サイトはたくさんある(ゼクシィ、ハナユメ、他)
  • プロデュース・フリープランナーまとめサイトもまぁある(weco、プラコレ、他)
  • これらの両方の組み合わせを正しく検索できる情報サイトがない

というのが現状なので、ここの穴を狙って作ってみてもいいのではないかなと思います。今後もプロデュース特化のサービスは増えていきそうですしね。余力ができたら自分でも考えてみようかなと思います。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

CATEGORY同じカテゴリーの記事