アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
今ではどこの式場でも値引きをしていますが、成約率ありきであんまり行き過ぎるとファンほど損することになるよねー、っていう話です。
目次
結婚式場の見積りと値引きの仕組み
●見積りと値引き
結婚式の見積りには値引きがつくことが多いです。というかほぼ100%ではないでしょうか。○○様限定特典、ハナユメ割、当日ご成約特典、など見積り上の表記は様々ですが、内部的にはこの日程のこの時間帯での受注であればいくらまで値引きOKと、ある程度ルールが決まっていることがほとんどでしょう。
●値引き額が決まる要素
基本的な考え方として「人気の高い日取りほど高く、人気の低い日取りほど安くなる」が原則で、主に申し込みから開催までの期間、時期、日柄、人数、などで決まります。
- 期間:直近ほど安くなる
- 日柄:仏滅だと安くなる
- 時期:真冬や真夏、お盆や正月などは安くなる
- 人数:大人数ほど安くなる
こんな感じですかね。イメージとしては時期によって金額が変わる旅行のカレンダーみたいなものです。
●申込時と最終着地
結婚式の見積りからアップします。その理由はオプションアイテム追加とグレードアップなわけですが、値引きは申込時から増えることはありません。
このような仕組みで回っているのが今の結婚式の見積りと値引きなわけですが、これ過去10年くらいの間で値引きが当たり前になりすぎたのと金額もどんどん大きくなってきていると思うんですよね。
最大100万円OFF!、とかも今は珍しくありません。冷静になると100万円って結構だと思うんだけど…。そして100万円も値引くなら定価下げたらいいのに…。
ということで今回は、当たり前になりつつある過大値引きの仕組みだとファンほど損をするよねっていう話を書いてみます。
式場における値引き運用のリアル
新規接客時に提示する値引き額はある程度ルール化されているものの、最終的には現場の決裁権者が決めるケースがほどんどです。
そうすると、ルールから逸脱した運用も増えてきます。例えば、
- 今月あと1組でチームの目標達成だからあと20万円当日特典つけちゃお!
- この子は新卒デビュー新規で、あと予算さえ合えば成約になりそうだからもう10万円値引きも許可するか。
- ●月の受注がかなり遅れているから●月希望の人には通常より30万円値引いてでも成約取りに行こう。
などのケースです。現場経験者であれば心当たりある方も多いと思います。
ちなみに、そもそもこの考え方自体は間違った話ではありません。
結婚式場のビジネスモデルでは会場費や人件費などの固定費が大きいので、1組当たり利益が小さくなっても組数を増やした方が業績的なメリットがあるケースも少なくないからです。
「施行枠の稼働率が高い会場ほど、厳格な値引きルール運用をする。逆に稼働率が60%を割っている多バン式場であれば厳格な運用よりも柔軟性を持たせて組数最大化したほうが利益額は高くなる。」
基本的にはこの考え方を理解しておけばOKです。ここまでが式場側の目線で考える値引きの話。
「ファンほど損をする」ってどういうこと?
一方、顧客側で値引きを必要とする場合とそうでない場合の違いを考えてみましょう。
例えば次の2組の顧客が来館して成約を取りたい場合ににどちらの方が値引きが必要になるでしょうか。
- 顧客A:媒体、式場HP、Instagramを隅々まで見ていて、会場のことをよく知ったうえでここがいいと思って予約してきてくれた人。ヒアリング中も「今日決める気できました~!」と言ってくれている。
- 顧客B:X会場、Y会場、Z会場を見学済みで、いくつか会場を見てから決めようと思っている。すでに他会場の見積りをもらっており、うちの会場よりもかなり安い。
A、Bが希望する日時では、いずれも上限100万円までの値引きをつけていいよというルールだったとして、実際の新規接客時にそれぞれに提示する値引きはいくらになるでしょうか?
Aは会場のファンで、Bはついでに見に来ましたくらいの感じでしょう。
結論から書くと、
- Aには内覧で会場も刺さったので、そこまで値引きをたくさんつけなくても決めてくれそう
- Bは内覧も試食もイマイチだったので、他会場の見積りの下にもぐりこんで予算で持って行くしかなさそう
となりやすいです。
つまり、本当のファンであるAは値引きが少なく提示され(別に値引かなくても成約取れるから)、さほどファンでもないBは上限ぎりぎりの値引きが提示されることになります(値引きを付けて予算で勝たないと成約を取れないから)。
これが「ファンほど損をする仕組み」です。
提供しているのは同じような日取り、同じような内容の結婚式であるにもかかわらず、ファンでない人ほど安くなるんですよね。でもこれ、誰も間違ったことしていないんですよ。
結婚式場ビジネスで考えると、施行枠の稼働率を高めた方が利益は増える
→成約を取るために柔軟な値引きルール運用をする
→会場のファンであるほど値引きなしでも決めてくれるので高くなる(=値引きが少なくなる)
→ファンでないほどは成約を取るために予算勝負をしなければならず安くなる(=値引きが増える)
→結婚式のコンテンツ・クオリティは変わらないのに、ファンでない人ほど安くなる
こんな流れなので、
- 式場は業績最大化、安定化のために適切ともいえる値引きルール運用をしている
- 顧客は内容と価格に対して自分が納得して成約している
- 顧客Aは顧客Bが自分たちよりも安い見積りで成約していることを知らない
このように誰も間違っていないのにファンほど損する仕組みになっているんですよね。
でもよく考えると違和感ないですか?
この実態を解決するために何ができる?
ひとつ前のやつは顧客側の違いで考えた例でしたが、
- 営業目標達成まであと1組の状態で来館した人ほど安くなりやすい
- 新卒デビュープランナーの接客を受けた人ほど安くなりやすい
などのケースも同様です。
嫌な感じで書くなら「高く売れる人にはできるだけ高く売ろう、安くしないと売れない人には安くしてでも売ろう」が根本的な考え方であり、高く売れる人=ファン、安くしか売れない人=notファン、であることが多いのです。顧客目線でいえばゴネる人ほど安くなるのが実態。
こうなっている背景は
- 業界全体で施行枠が供給過剰
- 固定費の高いビジネスモデルなので稼働率が重要KPI
- 現場営業レイヤーの社員に値引き権限を持たせている
この3つが主な理由なのですが、安くしないと売れない会場が増えてきて、一部の人気会場を除き全体的に価格競争に乗らないと式場運営を支えられるだけの組数を受注できなくなってきている、と言えます。
この状態は企業が運営を続けるための営業戦略として間違っているとも思わないんですが、これって顧客に向き合った企業間競争ですか?というとそうではなく、情報の非対称性があるから成り立ってしまっているとも思うんですよね。
これがいい状態なのか改善した方がいい状態なのか明確な結論は出せていないですが、個人的には何とかしたいなと思っているので、どうにかいい仕組みを考えたいものです。
値引きが増えると熱量高いファンほど損する仕組みのまとめ
今回のテーマは内側の人間として価格に対して感じる課題でしたが、一般的に外部から思われやすいところだと
- とりあえず高い
- 契約後にモリモリ上がる
あたりが多いですよね。なんかいろいろ課題あるなぁ、と。
個人的な意見としては、金額が高いこと自体が特に課題だとは思っていませんが、顧客に対してフェアじゃないことは課題だと思っています。
これを現状の企業経営を大きく痛めることなく変革していくことが必要なわけなので、まだ引き続き考えていきたいテーマではあります。