アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
企業のIR情報を見て会社の状況や方針を理解できるのは、社会人としての重要なスキルの1つです。そこで、今回の記事では、エスクリの2020年3月期の決算説明資料をもとに、その内容について考察してみようと思います。(注)本記事の内容はあくまで個人的な見解であり、投資向けに書いているわけではありません。この記事の内容をご覧になられて投資判断をされても一切の責任を負えませんのでご了承ください。
今回の2020年度3月期決算の概要
元となるエスクリの2020年3月期の決算説明資料は下記URLで見ることができます。
決算概要
数字がたくさんあるのでざっと見るべきポイントをまとめると
- 売上高:前年比5%減
- 売上総利益:前年比8%減
- 営業利益:前年比4%減
- 当期純利益:前年比50%減
となっています。不動産事業はさておき、ブライダル事業のコロナウイルスによる延期の影響が出ています。特に3月の施行が延期になると3月末決算の企業ではもう時間がなく同にも対応することはできないのでこの減収減益の決算数値は仕方ないと言えます。
ただ細かく見ると3月の施行延期があったにも関わらず原価率は1%近く下がっていますし、販管費も前年比で下がっています。広告出稿の抑制はタイミング的に4月23日発売のゼクシィからで他媒体は年間契約などがほとんどだと考えると、全体的に経営の効率化を進められた1年だったのではないかと思います。
こちらのスライドにある「400件余りが時期以降に延期」、エスクリの平均単価370万円とすると、コロナウイルスの業績影響は
- 400組×370万円=14.8億円
程度だったと予想されます。前年比で売上19億円減で、このうち不動産関連が13億円なので、少なくともブライダル事業はこの影響がなければ約8億円ほどの増収だったと予想できます。まぁたらればの話なのでこう書いても仕方ないと言えばそうなのですが…。
ブライダル関連事業の状況
毎回思いますが、この表わかりやすくていいですよね。国内結婚式場運営企業の決算で見るポイントは次の3つです。
- 受注組数
- 受注残組数
- 組単価
受注組数
年度内の成約組数は前年比0.7%減です。既存店の受注状況の前年変化、新規開業またはMAなどでの新規追加会場の実績(2020年度だとラヴィマーナ)は分けて考えるのが基本ですが、今回の決算ではさらに3月の新規が飛んだ影響も出ているはずなので数字の見方がちょっと難しいですね…。
総じてみれば「良くはない」程度の状況ではないかと思います。2Qの新規受注実績も前年割れしていましたし。ちなみに、新規受注が落ち込むのは来館が少ないか成約率が低いかのいずれかが要因なので、今後回復するのかどうかはこのポイントに対する施策をいつまでにどんなことを実施するかを見ると何となく予想できます。
受注残組数
受注残組数は「受注済みかつ未施行の組数」なので新規受注が増えると増えますし、受注残組数×組単価予想が未来の売上になります。今回の発表では前年対比+8.1%となっていますが、受注実績が伸びたというよりは単に延期組が400組分流れてきたからでしょう。
組数ベースで見ると前年比+330組なので、先ほどの延期400組がなければ70組限定度だったと予想されます。さらに今回の決算では出ていませんでしたが、この400組が「何月への」延期かどうか次第で2021年度の業績にも大きく影響するはずです。もし秋以降(10月以降)への延期がメインだとしたら新規受注するだけの枠数が残っているかが微妙な感じになりそうです。
組単価
前年比で7万円落ちていて、これはTGやIKKなどと比較すると異なる傾向です。単価が下落するのは、
- 列席人数が減る
- 値引きが増える
- 商品が売れない
のいずれかが理由なので、この決算資料からは分からないですがいずれかの改善を進めないとこの傾向は続くんじゃないかなと思います。
建築不動産関連事業
前期比で見ると売上、利益ともに大幅に落ちていますが、利益も残っていますし計画通りとあるので特に問題はないと思います。
その他の取り組み
プレスリリースに出ている内容はこのブログでもたびたび取り上げていますので、リンク張っておくので詳細はそちらをご覧ください。
ラヴィマーナ神戸
神戸ア・ラ・モードパレ&ザ・リゾート 少人数向け会場「ラ・メゾン・デ・アンジュ」OPEN
株式会社サンリオとタイアップ ハローキティ&ディアダニエルのオリジナルドレスを開発
「医療ツーリズム事業」に参入
などなど、これ以外にも何点かありますが、詳しく知りたい方は最初のリンクからご覧ください。
エスクリの2020年3月度決算についてまとめ
ほんとに簡単にですが、決算説明資料をもとに考察を書いてみました。ブライダルの現場で働いていると企業のIR情報を見ることはほとんどないとは思いますが、他の会社でどんなことをやっているのか、起こっているか、ブライダルマーケット全体をどのように捉えて動いているのかなどがわかると意外と楽しいと思うので、この記事をきっかけにIR資料も見るきっかけになってくれればうれしいです。