アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
成約率は式場業績に直結する最重要KPI。今でも成約率アップを目的としたセミナーや講演会なども数多く開催されていることからも関心度の高さがわかります。
その一方で、成約率に関する解決策が「個人スキルを伸ばす」ということに依存している場合も多く、エースプランナーが異動・退職したら業績が下がった、異動があるたびに業績がブレる、スタッフの結婚や出産の報告を(業績面で)素直に喜んであげられない、といった弊害も多くなってしまいます。
今回の記事では、誰が新規接客に出ても安定して同じくらいの成約率を出せるために会社や会場として何を整えるのか、その土台の作り方について解説します。
目次
成約率に関わる要素
この記事での成約とは、来館されたお客様がこの会場で結婚式を挙げよう、と意思決定することと同義であり、この意思決定をするには大きく分けると3つのポイントが希望する条件と合致することが必要だと考えます。
- 会場を気に入る
- 予算が合う
- 日程が空いている
もちろん他にも様々な要素はあるんですが、大きく分けるとこの3つだと言えるでしょう。
つまり、組織的に成約率を高めていくためには、この3つの条件が合う確率をどうやったら高められるかをまず考え、次にそれを安定運用するための仕組みを整える方法を考えることが必要です。
①会場を気に入ってもらうために必要な取り組み
事前に見ている情報と接客中に話す内容の整合性を取る
ゼクシィなどのブライダル媒体や式場HP、運用しているInstagramアカウントなど、自社で発信している情報は新規接客に出るプランナーは知っておくようにしましょう。最近ではInstagramの卒花アカウントの情報を頼りに見学する人も増えているので、余裕があるならハッシュタグで検索して知っておくとよいです。
- 新規プランナーが自社会場が出稿している広告を熟知していること
- 実物と極端に違う情報(写真やイメージ、プラン)を集客ツールとして使わないこと
こまとめると大事なのはこの2点で、ゼクシィではできると書いてあったが実際はできない、イメージ写真には掲載されていたのに実際の式場内にはそんな場所はない、などはすぐに不信感につながってしまうので注意です。
集客ツールや広告出稿に関する共有会・勉強会の機会を定期的に設けるなど工夫されるとよいと思います。
新規接客中のトークの内容を整える
新規プランナーの担当者別の差をなくすために一番有効なのは、会場案内のベースとなるトークスクリプトを作ることです。
会場を一番よく伝えられる話し方を定め、まずはその話し方を所属する新規プランナー全員がマスターできるようにしましょう。それが完璧にできるようになったら少しずつ個人ごとのアレンジを加えて自分流の接客スタイルを確立していく、という流れが最短距離だと思います。
基礎がない状態でプランナー個人のスキルに任せた接客をさせると悪い意味で我流となってしまうので、特にベテランプランナーだと経験やプライドなどもあるとは思いますが、まずは基礎スクリプトをしっかりと理解してもらうところか始めることを徹底しましょう。
また、そういったスクリプトを作っている会場は多いと思いますが、在籍期間が長くなってくるとどうしても更新や共有がおろそかになってしまいがちです。改装やリニューアルをしたときはもちろんですが、紹介できるアイテムが変わったとき、広告で使う写真が変わっただけで、微妙な言い回しや表現の方法は変わってしかるべきなので、できれば月に1度の更新・メンテナンス、少なくとも四半期ごとの見直しは入れていった方がいいでしょう。
接客トークの質を安定させる
誰が接客に出ても同じクオリティで会場のプレゼンができるように、トークの質を磨き続ける必要があります。具体的な施策はロープレメインになりますが、ただ漠然と繰り返すのではなく、以下のポイントをしっかりと抑えた運用が大事です。
- ロープレのテーマと目的を細分化、明確化する
- 実施するスケジュールを組む(全体で3か月、1週間ごとのテーマはこれ、など)
- ロープレの進捗を可視化し、プランナーごとの現在地がわかるようにする
このようなポイントを意識してロープレ運用を体系化し、未経験のプランナーや新卒が入ってきたらまず何を覚えていけばいいか、どのように努力をすればよいかが見えていると、働く側のメンバーも目的意識を持ちやすいので、成長が早くなりやすいと思います。
とりあえず接客出て成約率が低かったら詰める、どうやったら売れるか徹底的に考えろ!ではなかなか伸びないですし、メンバーも嫌になってしまいます。そうならないためにも、会社としてどのように育成していくのか、具体的に身に着けてほしいスキルは何か、そのスケジュールはどれくらいが目安なのか、という個人スキルの最大化のために会社ができることをしっかりと整えましょう。
②予算が合う確率を高めるために必要なこと
打合せ時の単価アップを考慮した新規見積りテンプレートを整える
いいか悪いかは置いておいて、業界慣習的には新規見積りで安く成約を受注し、打合せで単価アップをする、という考え方がスタンダードなので、打合せに単価アップできるような新規見積りの作り方を徹底的に考えて設計しておくことが必要です。
どこまでホワイト/グレーに見積りを提示するかは会社の方針によるので一概には言えませんが、
- 新規来館時に想定しているお客様の予算にあう新規見積りを作れるテンプレートをあらかじめ設計しておく
- その際に、どういう新規見積りだと打合せでどのアイテムで単価アップをするのかを把握しておく
この2点が大切です。
そのため、新規プランナーであっても打合せのフローや単価アップ方法などは知っておいた方がいいと思います。プランナーごとにお客様に提示している見積りがバラバラだと成約率も安定しないですし、打合せ後の最終単価も安定しませんので、ケース別(人数や希望するアイテム、こだわりのポイント、など)の初期見積りテンプレートを作っておきましょう。
見積り説明のトークスクリプトを作る
見積り説明の方法も人によって上から順番に読んでいくだけだったり、重要なところを伝えていない、などがあるとお客様の理解が得られにくく、成約率が安定しないだけでなく打合せ後の言った言わないのクレームにもなりやすくなります。
そのため、見積り説明についてはココだけを切り出したトークスクリプトを作ってもいいでしょう。
- 見積りを説明するときの順番を整える
- この見積りが適用される条件(シーズン、曜日、時間、日柄、など)は何か
- この見積りに含まれているアイテム、含まれていないアイテムとこだわりを表現するポイントはどこか
- 打合せに入ってからどのポイントがどれくらいアップする可能性があるか
上記のようなポイントを含めて、ベースとなるトークスクリプトを作成し、新規に出るプランナーが全員共通で話せるようになるまでロープレを繰り返しましょう。
もちろん、接客によってお客様が聞きたいポイントは様々なので絶対にスクリプト通りにしなければいけない、ということはないですが、基本ができてから応用へ、という考え方が重要です。
値引きの適用条件を設計する
お客様の予算に会う見積もりになるかどうかの最終的な調整弁の役割を果たすのがこの値引きになるわけですが、値引きつけられる金額のルールが決まっていないと、成約率も単価も安定しなくなります。
値引き額の考え方については以下の記事に詳細を書いてありますので、ぜひご覧ください。
「このお客様の条件の時にいくらまで値引きを使っていいか」を分かった上でヒアリングや内覧ができると、そのタイミングから見積り説明時の布石を打っておくこともできますし、接客中のシナリオの組み方もそこを意識しながら臨機応変に変えていくことができます。
これはどちらかと言えば応用編のスキルなので、土台のトークスクリプトをきちんと表現できるプランナーが対象になってきますが、このあたりの逆算で考える接客ができるようになると、より高い成約率を残すことができます。
③日程が合う確率を高めるために必要なこと
日程に関してお客様が希望するポイントやこだわり度合いは様々で、「3連休中日の大安が絶対!」というお客様もいれば、「仏滅じゃなければ特にこだわりはないです」という方もいます。一般的に、希望する時間帯のニーズは
- 曜日・時間帯:3連休の中日>土曜日の午後>日曜日の午前>土曜日の午前>日曜日の午後
- 日柄:大安>友引>先勝・先負>赤口>仏滅
- シーズン:春・秋>冬>夏(ただし地域による)
このようになるので、秋シーズンの3連休中日や土曜日の午後など人気の枠から先に受注していくとすぐに満枠になってしまい、そこから先の成約が非常に難しくなってしまいます。
そこで、日程が合う新規をするためには以下の2つのポイントが大事です。
集客数、成約率を見合った施行枠を設定する(シーズン・時間帯)
1バンケット当たり1日何枠の施行枠を設定するかを考えます。
例えば2バンケットの会場で1バンケット当たり1日2組施行の場合、平均月間休日が9日だとすると、2組×2バンケット×9日=36組の受注を理論上獲得することができます。
(例1)月間の平均来館数が30組、成約率40%の場合
平均月間成約数は12組で月間24枠余ってしまうことになりとてももったいないので、2枠設定にしているので挙式開始時間を早くまたは遅く設定して商品力アップを図りましょう。
1日フリー(何時挙式開始でもOK)のように変動的な時間枠に組みなおすことで集客上でも「1日1組完全借り切り!」など謳えるようになるので、集客力アップ効果も見込めます。
(例2)月間の平均来館数が100組、成約率40%の場合
同じ2バンケットでもこの場合は平均月間成約数は40組で施行枠が足りません。こういったケースでは逆にオペレーションを組みなおし、人気のある方のバンケットを1日3枠設定にして、受注可能な施行枠数を増やすといいでしょう。
施行枠はその会場の集客数と成約率のバランスから理論上の成約可能数を計算し、それに対して多すぎず少なすぎず、商品力が最大化する(時間帯フリーの方が商品力が高い)施行枠を設定することがポイントです。
成約条件別の施行枠提案方針を共有する
こちらはいわゆる「枠振り」と呼ばれるハイレベルな誘導テクニックになりますが、基本的な考え方としては「日程にこだわりがないお客様に人気枠を売らない」という方針になります。
仏滅でなければいいです、と言っているお客様に大安を売るのは正直もったいないですよね、中には大安が絶対条件のお客様もいるので、限られた大安の施行枠はそう言った希望条件とあう場合まで残しておくと、希望条件とあう日程がなかったから失注した、ということが減り成約率が高くなる可能性が増えます。
組織的に成約率を高めるためのポイントまとめ
今回の記事では、個人のスキルをどうやって伸ばすかのノウハウではなく、会社や会場として新規接客の土台をどうやってしっかり整えるのか、という視点で記事を書きました。
これらの内容をまずは整理し、安定的に運用していくことでプランナー個人のスキルに業績が依存する割合を少しでも減らすことができると思いますし、成約率が安定すれば業績や経営を安定させることができます。
また、組織的な取り組みと並行して個人スキルをあげていくことでより高い成果が期待できます。以下の記事もあわせてご覧ください。