更新日 2021年10月17日

楽婚の特徴とは?ビジネスモデルを図解してみた

156_楽婚のビジネスモデル図解

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

事業のビジネスモデルを理解することは、その事業やサービスがなぜつくられたのか、どんなことを強みとしているのかを体系的に理解でき、事業開発や個人の知識習得でとても勉強になります。ブライダル業界の中でも様々な特徴的なサービスがあり、その仕組みや違いを知ることで見えてくることも多いと思います。

今回は「格安結婚式を披露宴後清算できるウェディングプロデュースサービス」の楽婚のビジネスモデルを図解してみました。

 

楽婚とは?

Best-Anniversaryが運営する、格安結婚式を披露宴後清算できるウェディングプロデュースサービスです。一般的な結婚式にかかる費用は平均385.5万円(ゼクシィ結婚トレンド調査)とも言われていますが、楽婚では平均199.6万円と「ご祝儀×人数分だけ」の費用で挙げることができ、さらに前払いが一般的な業界で「披露宴後の後清算でOK(つまりご祝儀をそのまま渡して自己負担はほぼなし)」の支払い方法も可能なので、費用が理由で結婚式をあきらめていた人にも結婚式を挙げられるようになりました。

rakukon
Webサイト https://www.rakukon.com/
運営会社 Best-Anniversary

では、このサービスのビジネスモデルを図解してみます。

 

楽婚のビジネスモデル

楽婚のビジネスモデル図解v2.0
2011年のサービス開始以降、ウエディングドレスを着た女性が大勢で走り出す独特のCMを放映したり、グループ会社(Best Bridal)が運営会場も含めた一流の結婚式場で圧倒的な低価格ウェディングを挙げられることが人気を呼び、今でもスマ婚と並んで低価格系のウェディングプロデュースサービスの中では最大手と言える有名なサービスです。

結婚式場運営において、会場の維持費は結婚式を受注していようとしていなかろうと等しくかかりますし、人件費も変わりません。そのため、人気のない日取りや時間帯の施行枠が受注できず固定費だけかかるので非常にもったいない、という状態になります。

特に半年以内の直近の空き枠や仏滅、日曜日の午後の施行枠は人気がないので、どうやってその枠を埋めるのかが課題でした。一方、新郎新婦側の動きとして、結婚式の単価は年々上昇傾向にあり、かつ前払いが一般的だったので(ご祝儀を支払いに充てることができない)、予算が理由で結婚式を挙げないという「なし婚層」も増えてきていました。

そこで楽婚は、①各会場の空いている施行枠に特化して販売する、②支払いタイミングを披露宴後OKとし、ご祝儀で支払うことができる、という2つのスタイルで、

  • 結婚式場側の、空き枠を埋めて資産効率を高くしたいというニーズ
  • 新郎新婦側の、低価格で結婚式を挙げたいというニーズ

この2つのニーズを解決する、低価格でクオリティの高い結婚式を提供することを実現しました。

もともと、結婚式の価格は、一般的にシーズンや日柄、曜日、時間帯などの人気によって変わるので、業界慣習から考えても、楽婚のコンセプトは受け入れやすかったのかもしれません。

もしかすると、Best Bridalの運営する会場の施行枠稼働率を上げるための集客施策の1つとして始まったのかもしれませんが、今ではBest Bridalの会場だけではなく、全国500以上のホテルやゲストハウス、レストランなどかなりの多彩なラインナップとなっています。

同じような業態のスマ婚と比較すると、グループ企業内の会場に送客・プロデュースをするとフィーが掛からず(グループ間の取引記録はあると思いますが、グループ全体で見ると相殺になるはず)利益率が高くなるので、事業単体のPLで見ると実は会場を持っていることがメリットになっていたりします。

ということで、事業立上げ当時の背景はわかりませんが、ここまでの規模のサービスに成長してきていますし、今後どのような展開をしていくのか楽しみです。

 

今後の展開の予想

最後に、これから先に楽婚がどのようになっていくのかについて予想してみます。

これから先の結婚式ニーズは年々縮小していきますが(参考記事)、費用に関する考え方は二極化していくのではないかと思います。高単価でもいいからこだわりたい層ととにかく低価格に挙げたい層です。どちらかといえば低価格希望層の割合はこれから増えていくと予想されるので、大きく今からマーケットシュリンクのあおりを受けるということはないかなと思います。

楽婚はウェディングプロデュース事業なので、基本的にお客様から頂く代金から提携先の会場やアイテム業者へフィーを支払った差額が利益になりますが、一部グループ企業で施行となる場合は売上がそのままグループとしてもらえることになります。そのため、プロデュース事業としては

  • 売上=施行組数×組単価
  • 施行組数=集客数×成約率
  • 利益=売上-原価(会場や業者への支払い)

となるものの、グループ会場での施行の場合は、

  • 売上=施行組数×組単価
  • 施行組数=集客数×グループ企業紹介率×成約率

となります。いずれにせよ、事業としての売上を伸ばすためには施行組数を増やすか、組単価を上げることが必要、施行組数を伸ばすためには集客数か成約率を伸ばすことが必要となります。さらに、利益を伸ばすなら会場への支払いを以下に抑えるか、提携業者と有利な契約を結べるかがカギとなります。

組単価は低価格をウリにしているのでそこまで高くしていくことはないでしょう(サービスコンセプトと反しますし)。また、成約率はある程度成長してきた現在からさらに伸ばすのは難しいと思うので、現実的には「集客数をどこまで伸ばせるか」「原価率をどこまで押さえることができるのか(販促費かもしれませんが)」「グループ企業への送客率をどこまで高められるか」この3点がポイントになると思います。

ただし、非グループ会場との契約内容や倫理的な部分から特別に自社にだけ送客するというのは考えにくいので、実質的には集客が最重要KPIとなると思います。

楽婚の基本的な集客導線は

  • WEB上で集客→サイト来訪→来店予約/資料請求/LINE@登録→サロン来店→成約

となっているはずです。入り口である「WEB上で集客」の主な手法は

  • マス広告→指名検索を増やす
  • SEO→流入を増やす
  • ウェブ広告(リスティングやSNS広告)→CVを獲得する
  • SNS運用→ファンを増やす→流入を増やす
  • 記事広告など→認知を広げる

などが挙げられます。私の記憶が確かであれば、サービス開始からこれまでの間に一通り対策してきていると思いますので、今後はそれぞれの施策をより最適化していくフェーズかなと思います。また、並行してプロダクトそのものを強化していくためには提携会場や取引先のアイテム業者の数を増やすことも必要ですね。

サービス開始時と比べて〇〇婚とつくサービスがやたら増えているので、単に安い!だけではなく他の〇〇婚系サービスとは異なるブランディングもしていけると、またもうひと伸びするんじゃないかなと思います。

 

楽婚のビジネスモデルについてまとめ

格安系プロデュースサービスはかなり増えてきましたが、プロデュース一本でやっているサービスと比較するとグループ会社への送客で稼ぐことができる、というのはマネタイズの選択肢が増えるので利益率的にはいいですよね。直近数年は一時期の勢いは止まってきているようにも見えますが、今後新たにインパクトのある仕掛けをしてくるのか、楽しみです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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