アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
新型コロナウイルスの影響で施行は延期または中止、新規来館も多くの会場がオンライン接客を取り入れるなどここ数ヶ月でブライダル業界全体に大きな変化が起きました。当然、集客にも大きな影響が出ており、アロケーションの変更やデジタルマーケティング施策の企画など、これまでとは違った集客施策に取り組み始めています。今回の記事ではゼクシィ首都圏版の6月発売号(4/23発売)と7月発売号(5/23発売)の出稿量の変化を調べました。緊急事態宣言後にどこまで広告が戻るのかは未知数ですが、1つの参考にしてもらえるとありがたいです。
ゼクシィ出稿量の変化
調査概要
- 対象媒体:ゼクシィ首都圏版、6月発売号(2020/4/23発売)と7月発売号(2020/5/23発売):いずれも入稿締め切りは発売の1か月前ほど
- 対象範囲:ゼクシィ本誌、東京23区の会場(ブライダルフェア別冊のページ数は含まず)
- その他:徹底ページと本誌通常ページ数は同等として計算
- 一般的に6月発売号は1年で2番目の繁忙期の出稿であり出稿量が多くなりやすい、という前提となります。
出稿会場数の変化
掲載会場数は6月発売号が80会場、7月発売号が86会場で+6会場でした。意外ですね。
内訳を見ると、6月非掲載で7月掲載は23会場あり、そのうちホテルが19会場と多かったですね。また逆に6月掲載していたが7月非掲載の会場は17会場あり、出稿量が多かった会場だと「白金アートグレイス」「Things Aoyama Organic Garden」「浅草ビューホテル」などです。
ホテルは通年広告を出さず、繁忙期は避けてあえて閑散期に出すといういわゆる「逆張り」の出稿戦略を取っている会場も多いのでそこの影響が大きいかなと思います。
総出稿ページ数の変化
総出稿ページ数は6月発売号が339.5ページ、7月発売号が99会場で-240.5ページでした。想像以上に減っていて実際のゼクシィも「あれ?これ別冊の方かな?」と思うくらいに本誌も薄かったです。ちなみに上記は片方の号でしか出稿していない会場分も含んだページ数となっており、両号とも出稿した会場で見ると-225.5ページでした。
大きくページ数を減らした会場で見ると「リビエラ東京(徹底12P→2P)」、「セントグレース大聖堂(徹底12P→0.5P)」、「トランクホテル(10P→0.5P)」「アニヴェルセル表参道(10P→0.5P)」など、普段の7月発売号であれば6P~10Pほど出している会場でも大きく出稿を落としていることがわかります(別冊は見てないのでそっち出してるかもしれませんが…)。
仮に首都圏の出稿ページ単価を75万円とすると、1.8億円相当の広告費(リクルートからすると売上)が減ったことになり、12倍すると21.6億円相当となります。これしかも首都圏の本誌だけの数字であり、全国の別冊まで含めると相当な規模の出稿減となっていることが予想されます。
出稿ページ数の内訳の変化
出稿ページ数 | 6月発売号(会場数) | 7月発売号(会場数) |
12P | 2 | 0 |
10P | 4 | 0 |
8P | 16 | 1 |
6P | 14 | 3 |
4P | 5 | 4 |
2P | 13 | 8 |
1P | 9 | 12 |
0.5P | 17 | 58 |
出稿ページ数別の掲載会場数は上記の通りで、6月発売号と比べて0.5ページ掲載の会場が3倍以上と非常に多くなり、最大出稿量でも8Pが1会場だけという状況です。これまでそれなりに長くゼクシィ見てきていますがこんなに少ないのは始めて見ました。
企業別に特徴が出ていて、特に大きく一斉にページ数を減らしたのは「テイクアンドギヴ・ニーズ(ほとんどの会場で0.5P~1P)」「ベストブライダル(ほぼ0.5P)」「エスクリ(ほぼ0.5P~1P)」の3社でした。特にベストブライダルはこれまでゼクシィに絞って莫大な広告費を投下していた印象だったので、ここまで一気に広告を絞る判断をしたのは少し驚きではあります。
ゼクシィの出稿量変化から見る未来予測
この1か月間で起こること
ゼクシィは雑誌が有名ですが、今の時代雑誌を見て電話してくる人はほとんどいません。私の感覚ですが、雑誌:ネット=0.5:9.5くらいの割合じゃないですかね、予約経路。
それでも各結婚式場がゼクシィへの広告出稿を続けているのは「ゼクシィネットの掲載順位を上げるため」です。ゼクシィネットのエリア式場一覧ページの表示順位は「別冊を含めた雑誌ゼクシィの掲載ページ数が多い順」というロジックなので、極端な話お金さえ積めば上位に表示され続けることになります(一般的なSEOとは明確にアルゴリズムが異なる)。そのあたりの詳しい理屈は下記の記事に書いてあるので興味あればご覧ください。
では、こういった外的要因で各社の掲載料が大幅に減った場合に何が起こるでしょうか?
先ほども書いたようにゼクシィネット経由の来館を獲得するためには媒体内の相対的掲載順位(=出稿量の相対順位)が重要になるので、今月に限った話をすると「いつもの半分くらいの出稿量なのに掲載順位が変わっていない」という現象が起こります。さっきゼクシィネット見ましたがいつもでは考えられない順位ですね。
ゼクシィを利用しているユーザー数が例年と比べてどの程度減っているのかが未知数ですが、仮に減っていない場合は「広告費半減なのに集客力は維持」となるので急に集客効率が良い媒体となるはずです。
ゼクシィは月刊誌なので今の順位は8月発売号(6/23発売かな?)が出るまでゼクシィネット上の掲載順位も維持されますので、今日の緊急事態宣言解除をきっかけに来館が戻ると各式場は広告宣伝費効率という観点ではボーナスステージのような状態となるでしょう。
2か月後までに起こること
8月発売号の入稿はもう済んでいるところもあるでしょう。各社が市場の変化をどのように読んでいるかはわからないですが、キャッシュ残高を考えてもこのタイミングで以前のようなページ数に戻す判断をしているとはちょっと予想しにくいですね。なので今月出稿量とステイ、または微増、くらいになるんじゃないかと思います。
そうなると8/22まではゼクシィ投資70%減の状態でそこそこの集客数が確保できることになります(繰り返しですがマーケットのユーザー数が激減していないことが前提です)。そう、ここ。この「今日からそこまでの3か月間の結果」で各社がどう判断するか、これが個人的には超重要になると思っています。
2か月後以降で起こってほしいこと
以前の記事「リクルートの決算から見るゼクシィのこれまでとこれから」でも書きましたが、正直今のブライダル業界におけるゼクシィの存在は異質です。もちろん業界の発展に多大な貢献をしていることは疑う余地もないですが、もう最近は存在が強すぎてゼクシィにお金払うために結婚式やってんじゃないかってくらいに強いです。
これまでの状況ではゼクシィ依存の脱却を掲げてもどうしても目先の集客数への影響を懸念して実行できなかったと思いますが、今回の「出稿量、みんなで下げれば、怖くない」という状況で各式場がうまく手を取り今月くらいの掲載量を8月以降も維持できれば、業界全体の課題である広告宣伝費高すぎる問題の解決に進んでいけるんじゃないかなと淡く期待していたりします。
ゼクシィの出稿量変化についてのまとめ
興味本位で調べてみたものの、思った以上に減っていて驚きました。別冊のページ数や他の地域の雑誌の変化も調べればより精度の高い分析になるとは思いますが、少なくともコロナウイルスの脅威にさらされている地域の一定のトレンドはつかめるんじゃないかなと思います。いやほんとね、広告投資ってユーザーにとって1ミリも関係ない投資なので、何とかしたいんですよね。また元気あったら来月も調べて書いてみます。