アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
以前に比べればだいぶ緩和されてきている印象はあるものの、まだまだ根深い結婚式場の持込規制の問題について考えてみます。
目次
結婚式場の持ち込み規制の問題
結婚式場への持ち込み問題とは、結婚式場と提携している企業のアイテム以外の商品を持ち込むことができない、または持込み料が生じることを指します。
顧客が持込みを希望するのは以下のような理由があります
①明確に持ちこみたい商品がある場合
このドレスが着たい、このフォトグラファーさんやヘアメイクさんにお願いしたいという場合。警察官の方が披露宴で官服(警察礼服)を着る場合などもこれに当たる。
②提携アイテムを見たけどときめかなかった場合
打合せ時に式場提携アイテムを見たけど気に入るアイテムがなく、自分で探したアイテムを持ち込みたい場合。ドレスなどは多い。
③予算オーバーしている場合
打合せを経て見積りが想定予算以上になったため、自作もしくは安価なアイテムで代替することで予算内に抑えたい場合。
④特に希望なないが最初から縛られている状態が嫌な場合
これは契約前ですが、特定の希望があるわけではないけど制限がかかっていることが嫌だという場合。
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持込み規制自体は以前からあるものでこれに対し顧客からの要望やご意見もあったのですが、特に最近は
- 顧客ニーズが細分化・多様化してきたこと
- 情報収集方法が増えたことで顧客側の情報量が増えたこと、持込み規制で苦労や悲しい思いをした人の発信を目にする機会が増えたこと
これらの理由から、今までと比べてよりこの問題は顕在化してきたと言えます。
顧客/式場/クリエイター、それぞれの視点によって見え方が異なるので客観的に捉えるのが難しいですが、今回はこの問題をテーマに書いていきます。
結婚式場の持込み規制はなぜあるのか?
顧客にとって不利益であると捉えられることが多いにもかかわらず、式場側が持込みを規制している理由は大きく分けると3つだと考えています。
- ①式場の利益を確保するため
- ②式場の世界観を統一するため
- ③オペレーションの煩雑化を防ぐため
①式場の利益を守るため
式場の価格設定では各アイテムごとの仕入れ値に利益を乗せて販売しているので、持ち込みになると提携商品が販売されなくなるのでその分の利益が減ります。
持込みがあろうとなかろうと施行枠が1枠埋まることには変わりはなく1組当たりの利益額がただ減るだけなので、持込みはせずに自社との提携商品から選んでほしいわけです。
②式場の世界観を統一するため
提携ショップやアイテム業者選定時は式場の世界観との相性も考慮して決定しています。なので、顧客が好きなものであっても、全体の世界観の中に1アイテムだけ異なる雰囲気のものが混ざると違和感のある状態になってしまうこともあります。
感覚的な話なので言語化するのが難しいですが、例えば、
- いくら好きだからってフレンチフルコースの中に突然酢豚が出てきたらおかしいよね?
- いくらファンだからと言ってもオーケストラの中に1人だけロックバンドのベースの人が入ったら違和感あるよね?
みたいなイメージ。だからこうならないように規制している。
③オペレーションの煩雑化を防ぐため
結婚式はチームで動いて作るものであり、普段から一緒に仕事をしている提携先のスタッフは事前準備も当日のスケジュールも、式場の導線等も理解しています。
一方、その日が初めてのクリエイターの場合はそのあたりの事前共有や理解が不十分だと、最高の状態に仕上げられないどころか場合によってはトラブルになる可能性も高くなります。
サッカーで例えるなら、コンサドーレ札幌にメッシが1日だけ加入してもいきなり最高のパフォーマンスを発揮するのは難しく、いかに個人のスキルが高かったとしてもチームプレーだとうまく機能しないところもあるよね、というイメージ。
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これらの理由から会社によって程度の差はあるものの、基本的に持込みは規制されるものであり、式場スタッフはいかに持込みを防ぐかという視点でこの問題を捉えられてきたと言えます。
持込規制の問題は解決するには何が必要?
ただ時代も変わり、持込みを不可にして利益を得ようとする暴利な業界め!という一部認識の誤った声も大きくなってきた昨今、今のままでいいよね、ということにはならなそうです。
なので、どうすればこの問題を解決し、顧客/式場/クリエイターにとって良い状態を作ることができるのかを考えてみます。
まず問題が解決された状態を定義することが必要なので、下記の状態が実現できると持込みに関する課題は解決されるものとします。
- 顧客にとって持込みは規制されていない状態
- それでいてかつ、式場は利益を逸さず、世界観も崩れずオペレーションも保たれること
このためには、先の3つの理由をどうやったら解決できるか?という視点から思考を巡らせることが必要だと思います。
①持ち込まれても式場利益が保たれるためには?
式場の見積り構造を変えればいいんですよね。具体的には提携先商品の下代と上代(仕入れ値と販売価格)の差をゼロにして利益を乗せない見積り構造にし、その分の利益を式場固有の商品に上乗せする。
こんな感じ。ドレスや装花、写真などの提携商品は原価で販売、その分の想定利益を会場使用料や料理・飲料に上乗せする。
これであればアイテムごとの粗利の内訳が変わるだけなので、同じ内容の結婚式ならこれまでと見積り総額は変わりません(式場の直接の粗利となる会場使用料が異常に高くなると思いますけど…)。
そうすると持ち込まれたとしても式場が利益を逸することもないし、顧客から見ても見積りの総額が高くなることもない、提携先にとっても販売価格は変わらない。いいよね、と。
まぁ一番難しいのは提携先企業と式場との契約内容の更新時にもめそうなことと、相対的に会場使用料の単価が高いのなんで?って顧客に聞かれたときの回答になる思いますが、持込みフリーかつ日程もバンケットも選び放題です、なぜなら~と説明できれば理解してくれる人は一定はいそうです。
式場⇔提携企業の契約形態や内容に詳しいわけではないので落とし穴はあるかもしれませんが、式場側の利益が担保できるかどうかって顧客にとっては一番どうでもいい要素なので、合理的に解決できるといいなと。
あと補足するなら、とはいえ持ち込みの場合は逸失利益補填以外でもコストはかかるので、見積りの項目名称を「持込手数料(実費)」とかにしたら顧客の印象も変わると思います。今だと式場の利益確保のための悪徳見積項目みたいなイメージが強すぎるので。
②世界観が崩れないためには?
雑に書くとプランナーが勉強することが必要だと思います。
- 様々なウェディングアイテムについて少なくとも顧客と同レベルの知識を持つこと
- それぞれのアイテムが式場の世界観とどんな相性となるのかを思考すること
- 顧客の希望を否定することなく説明できるようになること
こんな感じ。
どうやって持込みを防ぐか?を起点に説明ストーリーを組み立てるのではなく、客観的におすすめできるかどうかをきちんと判断して伝えるために知識・思考・説明のスキルを今まで以上に身につけることが重要になると思います。
ここはかなり抽象的な概念なので難しいところですが、昨今の顧客の知識はかなり豊富だしめっちゃいろいろ見ているので、ただ提携商品の売り方を磨くだけでなく視野を広げて様々な希望に対して提案できるようになることが求められるようになっていくと思います。
③オペレーションが保たれるためには?
これは主に持ち込まれる側の知識・経験とマインドの話だと僕は思っていて、
- 様々なタイプの会場やウェディングスタイルの知識を持つこと
- 式場側の担当者と事前の情報共有をしっかり行うこと
- 式場と対等なスタンスで同じチームとして顧客に向き合えること
この3つが大切だと思います。
以前、フリーランスのクリエイターさんにも話聞いたことあるんですが、式場に入るときは持ち込まれる側として既存の取引先との関係性や当日についてとにかく気を使って入っているとみなさん言っていて、やはり活躍されている方は対顧客だけでなくそこまで考えることが大事なんだなと思った記憶があります。
これまでの業界慣習が新しい時代の課題になる
業界内において、これまで持込みはどう防ぐか?という課題だったのが、今は持込み希望が発生することを前提として顧客とどう向き合うかという課題に変化してきています。
つまり、課題範囲の拡張している。
このような長い間業界慣習と言われてきたものに対し、これからはその前提が崩れ、もう一歩先に取り組まなければいけないことが増えていくでしょう。
今回テーマにした持込みに限らず、他にも
- なぜ見積りは上がるのか?
- なぜ即決なのか?
- なぜキャンセル料や延期料はこんなに高いのか?
など、当たり前だけど顧客からすると違和感のある常識は多いものです。
こういった事象やこれからの課題に対し、
- 当たり前のことに対して疑問を持つこと
- ビジネス構造的な背景や商流などの関連事象について勉強すること
- 得た知識をもとに自分の頭で考えること
- 考えたことを自分の言葉で発信すること
1人でも多くの人がこれをすることが大事だと思うんですよね。別に正解があるわけでもないですし、間違ったことを発信しても構わない。一度発信した後で考えが変わったっていいじゃないですか。
このブログ記事もそんなきっかけになれるといいなと思っています。
結婚式場の持込規制に関する問題点についてまとめ
- 現状の何が課題なのか
- なぜそれが課題なのか
- 解決した状態は何か
- 現状と解決した状態の差分をどう埋めるか
課題について考える場合はこの順番で考えていくと頭の中が整理されやすいのでオススメです。
今回は業界全体という大きめのくくりで書きましたが、ブライダル事業者であればもっとミクロなところの課題が目の前にたくさん転がっている状態であることがほとんどだと思うので、少しでもこういった話が役に立つと嬉しいですね。