更新日 2023年12月20日

ブライダル業界の3つの非効率

1014_ブライダル業界はなぜ非効率なのか?その原因と対策について考える

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

ブライダル業界の非効率さについて書いてみます。

 

ブライダル業界はなぜ非効率なのか?

今のブライダル業界に対して非効率さを感じている人は多いと思います。

異業界から転職してきた人、または元ブライダルで今は他業界で働いている人は特にそうではないでしょうか。逆にブライダルにずっといる人にとってはこれが当たり前になってしまっているかもしれません。

一言に非効率さと言っても人によって考えていることは様々で、個人の考え方や事業領域によってこの言葉の定義、理解、捉え方は異なるんだなと感じています。

総論として然るべき効率化を進めていくことに異論はないと思うのですが、効率化を進めていくのであれば個人や個社単独で進めるよりも、外部企業や取引先らと一緒に進めていく方が精度も高くスピードも速くなるでしょう。

となると、「非効率さ」や「効率化」という言葉の解像度を高めることが必要なんじゃないかなと思うんですよね。正解を決めるというよりは自分はここのこういうところが非効率でこう改善したいと思う、というように自分なりの考えを持つという感じです。

で、僕が考えている業界の非効率は大きく分けるとこの3つ。

  • ①資産稼働が非効率
  • ②労働環境が非効率
  • ③商流が非効率

今回はそれぞれについて、何が課題でどのように改善し、最終的な付加価値提供につなげるためにはどんなことができるのかを考えてみます。

 

①資産稼働が非効率

結婚式場は土日祝しか基本的には稼働しません。年間休日は約120日なので、約1/3しか稼働(=売上を稼ぐ)していないことになります。また、施行枠稼働率が50%~60%程度くらいの会場が多いと思うので、実際の稼働は全日数の1/5くらいです。

一方、人件費や会場維持費、広告宣伝費などのコストは稼働日数に関わらず同じ額がかかるので、低稼働率・高コストな構造だと言えます。

101_①資産(結婚式場)稼働が非効率

これが資産稼働の非効率さです。莫大な固定費の割にそのリソースを使って稼ぐ機会が少ないので、当然に1組当たりの単価(粗利)を高くせざるを得ません。

この非効率さを解決するためには

  • 結婚式場のリソースを使って結婚式以外で稼ぐ
  • 結婚式以外の事業で経営が成り立っているところで結婚式をプロデュースする

この2つしかないと思います。

前者は平日の法人利用やプランナーの出向などが挙げられ、後者は式場以外での結婚式を提供するプロデュースサービスなどがそれに当たります。それ以外にも、プランナー等の人的リソースを全外注して固定費を変動費化する、などもあるのですが、現実的にはこの2つかなと。

101_①資産(結婚式場)稼働が非効率さの解決方法

結婚式場を使って結婚式以外で稼げるようになると、結婚式の単価を下げても利益が確保できるようになるので、顧客にとってもメリット大きいんですよね。

これが1つ目の資産稼働の観点の話です。

 

②労働環境が非効率

ここが一番イメージしやすいところかもしれません。紙が多い、アナログなコミュニケーション、古いシステム、などなど。

労働環境は一番わかりやすい一方、一番実行が難しい観点とも言えます。というのも、現代社会の最適化された労働環境てどういうもの?というのを、ブライダルしか知らない人はイメージできないんですよね。

体験したことがないとをまず想像することができない。なので、今が効率的ではないと思うものの、何をどうやったらいいの?が分からない。

101_②労働環境が非効率

僕の中のなんとなくのイメージはこんな感じですが、これも最新か?と言われると自信はありません。

また、最近よく聞くDXコンサルとかはこういった課題を解決しますよというサービスなわけですが、まぁ正直コンサル会社も玉石混合で、ちゃんとやってくれるところもあれば流行りに便乗しているだけのただのポンコツみたいな会社もあります。この見極めも難しい。

あともう1つ、依頼する側の思考も、現オペレーションにシステムを組み込むという発想の人がほとんどで、デジタルにオペレーションを合わせるという発想がないのも解決を難しくしている理由です。

こういった背景を踏まえ、ブライダル企業で実際に労働環境の効率化を進めていくためには、

  • デジタルに合わせた業務設計をすること
  • 外部の専門家をうまく活用して適切な投資をすること
  • 効率化のメリットを社内に浸透させること

こういた点が重要になるかな、と。

業務効率化によって労働生産性が上がれば同じ労働時間でも顧客に向き合う時間が増えますから、従事者のやりがいにとっても対顧客にとってもメリットは大きいはずです。

101_②労働環境が効率化するメリット

これが2つ目の労働環境の非効率の話です。

 

③商流が非効率

式場とアイテムベンダーの固定の契約、契約の多層化、などのことで、これは背景にこれまでの業界慣習や複雑な契約があるので、最も一筋縄ではいかない観点だと言えます。ちなみに対顧客の影響でいえば、持込みができませんとか、単価が高いなどですね。

商流が多層化すると、受発注ごとに利益を乗せるので最終単価が高くなる割に、1階層当たりの利益額は小さくなります。

101_③商流が非効率

結婚式は高いとかぼったくりだとか散々な言われ方をしている割に従事者の給与は低く、式場も儲かってません。つまり、誰も幸せになってなく構造的な限界を迎えているわけです。

この非効率さを解決するためには、

  • 式場⇔ベンダーが自由売買できるプラットフォームの構築すること
  • アイテムベンダーがエンドユーザーを直接集客できるようになること

この2つが必要だと思っていて、徐々にこの流れは加速していくんじゃないかと予想しています。

前者はそれっぽいサービスは見かけるんですが、まだ顧客に直接自分で選ばせるという方法は難しいと思っていて、海外の同様のサービスモデルをそのまま導入するのは日本では無理がありそうです。

一方、後者は既に多くの事業者が始めていて、法人/個人事業主問わず、ドレスから選ぶ、フォトグラファーから決める、などの事例は増えていきそうです。

まだ時間はかかりそうですが、商流は確実に変化していきそう、これが3つ目の商流の非効率の話です。

 

改善対象となる非効率さと付加価値につながる非効率さ

ここまで3つの観点で書いてきましたが、同じ「業界の非効率」でも文脈や目的が違えば全く違うので、まずは全体像を整理し、自分なりの課題意識を持って考えてみることが大事かなと思います。

あともう1つ重要な観点としては、何でもかんでも効率化すればいいの?という話。

  • 顧客への価値につながる非効率は残した方がいい
  • でもそうじゃないものは効率化したほうがいい

個人的にはこう思っており、この前提には議論の余地はないんじゃないかな、と。

ただ実際の業務では圧倒的に後者の方が多いものの、混在して認識している人もけっこう多そうで、これは何とか変えていきたいなぁと思ってます。

効率化と聞くと顧客への愛情が薄くなる!とか重労働なブライダル従事者がもっと自由な時間を得られる!みたいなイメージを持たれることもあるんですが、先ほども書いたように、全業務の中での顧客に向き合う時間が増え、提供できる価値が高まりかつ従事者の給与等の報酬が増えることが一番の目的なわけです。

101_3つの効率化の目的とゴール

例えば自分の頭の中での整理だとこんな感じ。

もちろん、何が付加価値につながっていて何が無駄かの判断は、突き詰めれば個人の価値観にもよるので一概には言えないのですが、

  • 現状からの変化に対して条件反射的に抵抗感がある
  • 対顧客に直接関係なさそうなことをすることに抵抗感がある

というだけで非効率さの改善に目を背けているのはとてももったいないなと思うので、このメルマガでもいいですし誰かのセミナーとかでもいいんですけど、何かのきっかけから考えてみてもらえると嬉しいです。

 

ブライダル業界はなぜ非効率さについて今回のまとめ

業界の非効率さというテーマでお送りしましたが、現場レベルではこんなざっくりとした大枠の話だけではなくもっとミクロな改善をコツコツと積み重ねていくことになります。

効率化を進めるためには、自社⇔取引先、経営⇔社員など、異なる企業・役職間の相互認識を合わせることが非常に重要なので、このブログが検討の土台として少しでも役に立てると嬉しいです。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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