アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
事業のビジネスモデルを理解することは、その事業やサービスがなぜつくられたのか、どんなことを強みとしているのかを体系的に理解でき、事業開発や個人の知識習得でとても勉強になります。ブライダル業界の中でも様々な特徴的なサービスがあり、その仕組みや違いを知ることで見えてくることも多いと思います。
今回は「複数の婚礼媒体の一括管理サービス」のタスカットのビジネスモデルを図解してみました。
TASCUT(タスカット)とは?
株式会社トライスパイドが運営する、複数の婚礼媒体のブライダルフェア・婚礼プラン・画像の一括管理を可能にし、大幅な業務削減と集客増に繋がるサイトコントローラーです。簡単に言うと、TASCUT(以下、タスカット)の管理画面からゼクシィやみんなのウェディング、ウエディングパークなどの複数の媒体を一括で更新することができるシステムです。
Webサイト | https://tascut.net/ |
運営会社 | 株式会社トライスパイド |
では、このサービスのビジネスモデルを図解してみます。
TASCUT(タスカット)のビジネスモデル
サービス開始は2015年、リリース以降導入会場は順調に増えてきているようで、現在は全国500会場が導入しています。今ではブライダルフェアは休館日以外の毎日開催が当たり前なので、画像やフェア・プランの設定業務の負荷はかなり大きくなってしまっていますが、その更新業務の効率を大幅に改善するツールとして注目を浴びています。
ブライダル媒体の更新は、画像のアップロード、フェアの設定、リアルタイム予約の更新、クチコミの返答などを多岐にわたりますが、それを媒体ごとの管理画面からログインし、一つずつ行わなければいけないのは非常に手間がかかる業務です。例え同じ内容のフェアだったとしても、ゼクシィに入力して、みんなのウェディングに入力して、ウエディングパークに入力して、ハナユメに入力して…、と出稿している媒体が多ければ多いほど大変になります。
一方、ブライダル媒体上のクリエイティブのクオリティが結婚式場集客に直結するのはこのブログでも多く述べている通りであり、大変だがそれをしないと集客ができない→結果的にプランナーとしての仕事が減ってしまう→ただ、媒体更新が大変でお客様のことを考える時間が取れない、という悪循環となってしまうことが、ここ数年の現場レベルの大きな課題であったと言えます。
タスカットでは、ゼクシィ、みんなのウェディング、ウエディングパーク、マイナビウエディング、ハナユメ、ぐるなびウェディング、LEI WEDDING、結婚スタイルマガジンの主要8媒体の更新を管理画面から一括で行うことができるので、これは相当業務効率の改善につながるはずです。プランナーとして大切なお客様と向き合う時間を作ることができるうえに、集客に必要なタスクも楽にこなすことができるのは大きなメリットでしょう。
また、初期導入費が5万円、月額使用料も5万円と、この記事執筆時点では比較的リーズナブルな価格設定がなされているので(媒体に支払う広告費と比べたらね、という意味で)、3媒体以上に出稿しているのであれば検討してみてもいいんじゃないかなと思います。
インターネット上に情報があふれる時代で、結婚式場の探し方もどんどん複雑になってきています。タスカットの対象となる媒体運用以外にも、SNSの運用やウェブ広告のディレクション、SEO対策など、集客に必要な施策はたくさんあります。デジタルマーケティングでも複数メディアへの出稿を一括管理できるサービスが多くあるように、手を動かさなければいけない業務が多くある場合はこのような業務効率化ツールの登場はありがたいものだなと思います。
今後の展開の予想
最後に、タスカットの売上モデルと今後についても少し解説してみます。
事業のマネタイズポイントは結婚式場からの月額使用料となるので
- 売上=導入式場数×月単価
となっているはずです。そのため、売上を伸ばすためには導入式場数を増やすか、月単価を上げることが必要になります。
まず導入式場数を増やすための施策ですが、ターゲットが「結婚式場運営企業(または結婚式場)」と非常に狭いので、カップル向けの集客施策とはだいぶ異なってきます。考えられるところだと、
- ブライダル産業新聞やウェディングジャーナルなど業界紙への広告出稿または寄稿
- ブライダル産業フェアなど業界イベントへの出展
- セミナーなどの開催
- 法人営業力
など、広報活動と営業力が伸ばすための主要KPIとなると思います。とにかくより多く認知される、興味を持ってもらうことがまず重要であり、そのうえで契約まで結びつける営業力も重要です。結婚式場の数が限られているのでとにかくアタックしていく!というのも1つの手ですが、式場は全国に点在していますし対象媒体も必ずしも全国展開しているわけではないので、基本的には首都圏や大都市圏など式場が多く媒体カバーエリアを中心に展開していくことになるでしょう。
次に月単価ですが、正直なところ今から大幅に上げるのは難しいと思います。基本的に業務効率改善=導入企業のコストカットが目的となるので、コストカットのためにコストをたくさん使うという意思決定がなされにくいのが主な理由です。となるとやはり導入会場数をどうやって増やすかにリソースを集中したほうがよさそうです。
ちなみに、今は全国に約3,000会場あるとされているので、もし全国制覇すると
- 3,000会場×5万円/月×12ヶ月=18億円
これがこのサービスの売上理論値の上限となりますね。現実的にはシェア100%は難しいですから、実は現在の500会場導入というのはかなり積上げてきている状態であり、ここから先のアップサイドは難易度高いかもしれません。
会社としてどこまでの規模を目指しているかはわかりませんが、市場規模のポテンシャルは大きくないですが現場レベルの課題に目を付けたニッチないいサービスだなと思いました。
ちなみにもし私が事業責任者だったら、式場が入力しているフェアやプランの情報をもとにデータ分析を行い、式場側にデータ販売をして月額料金のアップサイドを狙いに行くと思います。タスカットの基本機能でコストカットのメリットを提供、そこで得られたデータをもとに集客力アップのメリットを提供、この両面で展開していく感じですね。ただし、タスカットの裏側のDBでデータを的確に保持していることが前提となりますが。。
TASCUT(タスカット)のビジネスモデルについてまとめ
タスカットのビジネスモデルについて、簡単にまとめました。今後どのような事業成長を目指しているのかは私にはわかりませんが、次はどんなことを仕掛けてくるのか、業界全体にどんなインパクトをもたらしてくれるのか楽しみです。