アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
最近の結婚式場ホームページでは「ベストレート」という表示をよく見かけます。これは「このホームページから予約をすると一番安くなりますよ」ということを表していて、ホテルの公式ホームページなどで予約サイトより宿泊費が安くなります、といったケースでよく見かけます。個人的に結婚式場の集客においてこのベストレート表記は意味がなくむしろマイナスであると思っているので、今回はこちらをテーマに書いてみます。
ベストレート表記とは?
▼表記例(1)
▼表記例(2)
▼表記例(3)
これらは表示の一例ですが、結婚式場のブライダルフェア予約、来館予約をするためのサイトは様々あれど、この公式ホームページから予約するのが一番お得になります、という内容を指します。
ホテル業界などではよく使われるもので、アパ直などが有名ですね。
ベストレート表記の目的
広告宣伝費の抑制です。
自社ホームページからは何組予約が入ってもお金はかかりませんので、媒体依存度を少しでも下げて自社集客比率を高めることで集客コストを抑制することが目的です。
こちらの図に入れている数字は適当ですが、HP比率が高まれば費用対効果の悪い媒体への出稿を停止することができます。そうすると全体の広告宣伝費を抑制できるので、集客の効率化を図ることができます。
と、ここまで書くと意味ありそうにも思えるのですが、結婚式場集客では全体で見るとほとんど意味ないと思うんですよね。
結婚式場集客でベストレート表記は意味がないと思う理由
理由①:結婚式場集客で成功報酬型の媒体が少ない
大手だとゼクシィやマイナビのカウンター経由が成約報酬型、ハナユメがウェブ・カウンター問わず来館報酬型(契約プランによって違うかも?)、ですが、それ以外のゼクシィネットやみんなのウェディング、ゼクシィの雑誌などは固定掲載費型の契約なので、その媒体経由で何組予約が入るかどうかと広告宣伝費は関係ありません。
つまり、ベストレート表記することによってゼクシィなびやハナユメに行ってしまっていたであろう人が結婚式場HPから予約をしてくれると広告宣伝費の抑制効果を発揮できるわけですが、ゼクシィなびやハナユメに行ってから(そこで紹介されて初めて)自会場を知ってもらうという流れであることがほとんどなので、この効果は期待できないと思います。
理由②:媒体出稿を減らすと会場認知度が著しく下がるリスクが高い
ベストレート表記を実行して仮に公式HP経由の来館予約獲得数が増えたとして、他の媒体からの予約数が落ちた場合、多くの集客担当者は費用対効果の悪くなった媒体への出稿の縮小を検討・実施すると思います。でもちょっと待ってください。ユーザーが公式HPにどのように来訪しているかチェックしていますか?
SEOでもマス広告でもそうですが、ブライダル媒体のプロモーション費は半端ではありません。そのためほとんどのユーザーは結婚式場を知る前にまず媒体を知ることになります。そしてその媒体の中で会場を比較し、気に入った会場をピックアップし、念のため公式HPも見ておこう、とサイトに来訪するのです。
もし媒体への出稿を停止または抑制すると媒体来訪ユーザーが自社会場を知ってくれる機会を大幅に減らすことになるので、そもそものHP来訪ユーザー数を大幅に減らしてしまうリスクが高いのです。
理由③:ユーザーに対して固定認知度のある会場がほとんどない
地方の地域密着を掲げる老舗や結婚式場以外のサービスも提供している店舗なら別かもしれませんが、まだ結婚式場探しを始めていないカップルにも広く認知を獲得できている結婚式場はほとんどありません。そうなると先ほどの理由②の媒体を起点とした認知獲得が失われるとそもそもサイトにユーザーがやってきてくれなくなります。
こちらの記事でも書いたように、式場探しを始めていきなり会場名を検索してくる人はまずいません。仮にいたら相当気になっているわけですからベストレートがなくても予約してくれるはずです。
理由④:来館効率改善よりもベストレートを明確にするために用意する新たな特典の逸失利益の方が大きい
ベストレートを実際に行う場合、当然ながらベストレートにするためのHP予約特典を用意する必要があります。会場によって差はあれど、今の媒体掲載されている特典の金額などを見ると少なくとも10万円以上は他媒体経由よりも差をつけることが多いでしょう。
もし10万円の値引きをした場合、この10万円はそのまま売上の減少につながります。結婚式の原価は変わりませんから10万円がそのまま営業利益減につながります。実施するかどうかを検討する際はこの営業利益減を上回るだけの来館効率改善が果たしてできますか?という試算になるはずです。
最終的にはやってみないとわからない、という結論にはなるものの、これまでの私の経験上これだけのリターンはこの施策では生まないんじゃないかな、もっと言うとその10万円分の利益損失を広告宣伝費として使ったほうが期待効果高いんじゃないかな?と思います。
ベストレート表記が効果的なケース
ここまで意味はほぼないと書いてきていますが、使い方によっては効果的なケースもあります。
ケース①:成功報酬型の媒体が集客経路の大部分を占める場合
ホテル予約でホームページにベストレート表記が多いのはこの理由です。宿泊予約はどの予約サイトでも予約確定時点で予約金額の何%かの手数料を取られるので、予約サイトでホテルを知ってもらう→公式HPに来訪してそのまま予約、の導線が作れるとダイレクトにコストカット(広告宣伝費抑制)につながるのです。ただ予約サイト側もポイントがたまるなどの利用する理由をつくっているので、この辺りはせめぎあいですけどね。
結婚式場集客で成功報酬型の媒体は。カウンターやハナユメ、ウェディングニュース、プラコレなどですが、これが集客経路のメインになっている会場ってあるんですかね…?という感じです。
ケース②:自社会場の指名検索など、媒体経由以外の認知度が高い場合
媒体に頼らなくても自ブランド知名度が高ければ、媒体からの認知度獲得が下がっても特に大きな問題はないので、このような会場は効果ありますね。ただ、そこまで認知度を獲得できているのであればそもそもベストレート必要なくない?とも思いますが…。
ケース③:自社でリスティングなどのWEB広告を運用している場合のLP
一番効果があるのはこれかな、と思います。リスティングやSNS広告などを運用している会場の場合、広告からのランディングページにベストレート表記を組み込むのはありだと思います。媒体情報に触れる前のユーザーへのコンタクトになるので、そこで最安であることを明記し伝えることで、広告効果の最大化を狙うという考えです、具体的なKPIとしてはCVRの向上期待ですね。これは意味あるんじゃないかなぁ、ベストレートの説明画像を作成して、表示した場合とそうでない場合のCVR比較のA/Bテストとかやれるとすぐわかりそうだなと思います。
↑ この赤枠のルート。
ベストレート表記についての考え方まとめ
結婚式場のマーケを見ていると、特にウェブマーケ系の施策は「他社がやっていて効果があるあしい」くらいの感覚で実施するかどうかの意思決定がなされているケースが多いように思います。実際は他社がやってても効果があるか何かわかんないし、他社で効果があっても自社では逆効果、というケースも全然起こりえることです。今回紹介したようなベストレートのような比較的軽い施策であってもリスクとリターンを一度は検討してみてはいかがでしょうか?