アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
KPIとは企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標のことで、結婚式場ではほとんどの企業で何かしらのKPIは設定されています。ただ、予算策定から日々の業績管理、さらには評価制度や人事にまでかかわる非常に重要な要素であるにもかかわらず、それが最適化されている企業は多くはありません。そこで今回の記事では、これまで私が見てきた中で実際にあった「KPI設定の失敗パターン」について、その原因と対策を解説します。
目次
理想的なKPI設定とは
- KPIごとの関係性が整理されている(関係性を数式で表すことができる)
- 定義が明確にされている
- 数が多すぎず少なすぎない(最適な数は事業規模による)
- 最上位(KGI)が売上(もしくは利益)につながっている
まずこの4点は最重要と言えるでしょう。もし満たされていないのであればそのKPIは事業運営において正しく機能していないと疑ったほうが良いと思います。
次から具体的にこんな状態が多いよ、という例を紹介します。
パターン①:異常に細かい、KPIの数が多い
- 数が多すぎるので集計にかかる工数が非常に大きくなりやすい(特にエクセル集計などをしている場合)
- 数字を見ることが大変すぎるので、それを把握して仕事をした気になってしまいがち。改善のためのアクションまでたどりつきにくい
- 細分化されすぎていて、責任の所在がわからなくなりやすい。
事業を運営していく中であれも見なきゃこれも見なきゃと少しずつ増えていき、気づいたら膨大な数になっていた、というケースがほとんどだと思います。
結婚式場運営でよくあるのは、最初は成約率=成約数÷来館数で見ていたはずが、新婦のみの来館は成約率に明確に差があるから分けて見るべき、じゃあ通常の成約率と新婦のみ来館成約率を分けて見ましょう、その翌月に1時間で帰るお客様は成約率が悪くなるからそれも分けて見るべきだから、1時間接客成約率、さらにその翌月には「競合Aを見学済みのお客様は安い見積りを見ているから分けて見るべき」…、みたいなのを繰り返していって、気づいたら「●●成約率」なる指標が10個もあった…、といった感じです。
このケースは細かすぎること自体が悪というよりは、それにかかる工数と見ている数字が小さすぎて議論がかみ合わない時間がもったいない、というところが悪なので、細かいけどBIツールを適切に導入していて集計工数がかからない、とか、数値を見る関係者が全員正しく同じ定義を理解している、という条件であれば、特に問題はないと思います。
もっとシンプルに考えるなら、施策に結びつかないKPIはこの際全部捨てちゃってよし、くらいの感覚で大丈夫です。
パターン②:階層がおかしい
- 個別KPIの改善のほうが優先順位が高かったりするので、最上位目標が伸びないことがある
- それぞれのKPIの関係性が矛盾しているので施策が誤っていることがある(個別最適化されすぎた施策しか出てこない)
部署ごとの予算策定や業績管理をしている企業だとでこうなりがち。例えば営業、打合せ、コールセンター、マーケティング部門がそれぞれで作ると、それぞれの部門の最上位KPIは改善したが全体の売上は変わっていないなど、個別最適な施策に走りやすくなってしまいます。
結婚式場運営でよくあるケースを考えてみましょう。
新規営業は成約率、打合せは組単価、コールセンターは来館予約獲得率、マーケティング部はCPA、を最上位KPIと考えて予算策定したとします。
- 成約率=成約数÷来館数
- 組単価=値引き前組単価-値引額
- 来館予約率=来館予約数÷問合せ数
- CPA=広告予算÷問合せ数
となるので、それぞれの部門の最上位KPIが別の部門のKPIの分母になっていることがわかります。具体的には、マーケティング部門が頑張って問合せ数が増えると予約率は下がることになり、コールセンターは評価が下がることになる。そこを頑張ると今度は見込みの薄そうなお客様も呼んでくるので、今度は営業の成約率にも影響が出る。となると営業の成約率も…といった具合いに営業の上流フェーズの組織の頑張りが次のフェーズの組織の評価に影響を与えるわけです。
これを解消しようとするといびつな構造のKPIが出来上がったり、お互いの組織やチームでの認識が異なると言ったことが起きるわけです。
この解決策としては
- 方法①:目標や評価は絶対数でするように変更する、率で評価しない
- 方法②:評価項目の中に事業の最上位KPI(=KGI)を一定割合組み込む
などがあり、一般的には売上でしょうが、事業系のメンバーに営業、打合せ、コールセンター、マーケに一定割合で共通の目標を持たせるようにしてもいいでしょう。部門は違えど目指すところはそこだよ、という会社からのメッセージと共に発信することが重要です。
パターン③:人や部署によって微妙に定義が違う
- 同じ数字を見ているはずなのに、微妙に数値が違うので気持ちが悪い
- 定義を正確に理解していない人同士が会話するとかみ合わない
- 長年それを続けると過去の数字の積み上げの信ぴょう性がなくなる
部門ごとまたは個人ごとに数字のモニタリングをしている企業で起こりやすく、エクセルなどの独自のシートで個別に集計しているケースだとが起こる確率は高いと思います。各部門長が持ち寄った数字が合わないことで定義が違うことが発覚、とかよくありますね。
結婚式場運営では経営企画と事業所支配人の把握している数字が違って会話がかみ合わない、とかはある程度の規模の会社だとよくあります。
この解決策としては、数値の集計ツールと運用を1つの場所(部門)に集める、これに尽きるかなと思います。各拠点や担当者ごとに自分で集計して報告させるのではなく、システム部や企画部などでリテラシー高めの部門で集計作業等を一括して行いそこから配信、集計定義の変更などもすべてその部門起点で行うようにオペレーションフローを変更しましょう。集計している人数分だけ定義が存在するようになると言っても過言ではありません。
パターン④:設定数値の根拠が気合い
- 目標が現実離れしていて会社の雰囲気が悪くなる
- 社員のモチベーションが上がらない
トップダウンで予算や目標が決定される組織の場合によく起こります。気合の予算が一概に悪とは言えないのですが、市場の成長が見込めないブライダル業界(特に結婚式場経営企業)で年々●%成長目標は厳しいと思いますね。フォトウェディングの新規事業とかなら多少はあると思いますが。。
結婚式場の予算を立てるときのロジックが、「前年比110%成長で」とか「1バンケ当たり120組の施行目標で」とか「プランナーAさんが10成約、Bさんが5成約、Cさんが3成約だから、合計18成約で」といった人依存前提の予算など、マーケット環境やトレンドを考慮せず過去の成功体験をベースにした決め方をしている会社で起こりがちです。
結婚式場運営の業績管理におけるKPI設定の失敗パターンまとめ
KPIは業態や組織によって最適解が異なるので、これだけやっておけばOK!という正解があるわけではないですが、少なくとも今回紹介した4つに当てはまると業務効率を著しく落としている可能性が高いので、見直しの際にはぜひ検討されてみてはいかがでしょうか?
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