アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
ブライダル業界の「オンライン化」をテーマにこれまで何本か記事書いていますが、今後ブライダル企業でもテレワークを導入する企業が増えてくると思います。他業界ではすでにテレワーク前提で会社を設計している企業も増えており、特に都心に本社を構える企業がオフィスを解約したという事例も増えています。では、ブライダル業界も同様にこの流れが進むのでしょうか?そこで、今回の記事ではブライダル業界のテレワーク導入のポイントをまとめてみます。
ブライダル業界のオンライン化の全体像
ウェディング×オンラインの領域は大きく分けると下記の4つに分類できます。
- 接客をオンラインでする
- 働き方がオンラインになる(テレワーク)
- 結婚式をオンラインでライブ配信する
- 結婚式をオンラインでする
- 今回の記事ではこの中の「働き方がオンラインになる(テレワーク)」について詳しく書いていきます。
テレワークの概要
概要
テレワークとは、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方のことで、これまでのように決まった時間に決まった場所に出勤して働くというスタイルに対し、自宅で働く、サテライトオフィスやコワーキングスペースなど公共型ワークスペースで働くなど自由な場所時間で働くことを言います。
自粛要請が出て出勤を停止した企業などが社員に自宅での勤務を命じて一気に広がっている働き方です。
テレワーク導入の一般的なメリット
- 通勤時間を短縮できる
- 遠い距離のところの人と一緒に仕事ができる(社員の住む場所を選ばない)
- 子育てや介護をしながら働くことができる
- 業務に集中しやすい
これらはあくまで一例ですが、時間の使い方の柔軟性が高いことが一番のメリットだと思います。
テレワーク導入の一般的なデメリット
- 就労環境を整えるためのインフラが必要(PC、wifi、他)
- 情報漏洩リスクがある
- オペレーションの変化が必要
- 自分で時間管理できることが前提になる
これまでのやってた業務をそのまま家でやろうとするとできないことがたくさんあるので、テレワーク用の考え方や業務設計を構築しなおすことが必要になります。そのための変化やコストがデメリットと言えます。
結婚式場のテレワーク実現に向けたポイント
結婚式場運営企業がテレワークを導入する場合、
- インフラ整備
- オペレーションの再構築
- 評価制度の見直し
この3点がポイントになります。
インフラ整備
- 自宅作業用のノートPCの準備
- 業務用携帯電話の契約・支給
- ネットワーク環境の整備
- 情報セキュリティ対応
- オペレーションに使うクラウドツールの契約
まず前提となるインフラを整えることが必要です。
1は、これまでの業務をサロンに置いていあるデスクトップPCで行っていた企業は自宅作業用にノートPCを支給しないと社員が業務出来ません。購入コスト(またはリースコスト)と実物管理をどのように行うかなどが課題になります。全社員対象とするのか、一部社員(リモートでもできる業務の人)を対象とするのかをまず決め、コストとスケジュールを見積り、手配を進めるという流れになります。
次に2の業務用携帯電話の契約ですが、これは必要ならば、でよい気がします。絶対に電話でなければいけないというオペレーションシーンは結婚式場業務においてはほとんどないですから(後述しますがWEB会議ツールで事足りることが多い)、一般宴会担当の法人営業職などは用意したほうが良いかもね、というくらいです。
3のネットワーク環境の整備が意外と大きなハードルになりそうです。具体的には、普段はスマホしか使わないので家にネットワーク環境がない人が多くwifiを用意しなければいけない、社内イントラやシステム等にログインするためにVPN設定が必要な場合が多い、この2点。wifiを会社で用意する場合は人数にもよりますがそれなりのコストにもつながりますが、社員に負担させるわけにもいかず…で悩むところ。またVPNは今は非常に込んでいるようなので(ソフトバンクで増えるらしいですが…)、設定するにも時間がかかるのが難しいところ。
次に4のセキュリティ対応は、上記ネットワーク回線とセットですが、誰がどの回線からいつ個人情報を格納した社内システムにアクセスしたのかをログデータ含めてきちんと管理することが必要になります。ノートPCを支給するならセキュリティソフトの設定は必要ですし、wifiを支給しても社内システムへのアクセスは監理できる状態としておくことが必要になります。
最後に5。オペレーション変化に伴い、私としては「slackやチャットワーク、Teamsなどのビジネスコミュニケーションツール」と「Zoom、Skype、ベルフェイスなどの対顧客用WEB接客ツール」この2つは必須級のツールになると思います。これも人数分アカウントを用意するとなるとアカウント管理とコストが課題になります。
オペレーションの再構築
オペレーションの変更点を大きくカテゴリ訳すると次の3点。
- お客様との接客方法
- 社内スタッフ間のコミュニケーション方法
- パートナーなど社外スタッフとの連絡方法
このオペレーションが変わることと社員がテレワークになることが並行して起こることになります。
まず1のお客様との接客がオンライン化するとどのように変わるかは、次の記事でも少し触れているので参考にご覧ください。
このような接客が必要になった場合、プランナーやスタイリストは在宅でお客様とオンラインツールで接続し接客することが業務になります。先ほどのインフラが整っていることを前提に、接客履歴のログデータを保存しておくサーバーまたはシステムと、それを管理するオペレーションフローの構築が必要になるでしょう。誰が、誰と、いつ、何で、どのような会話をしたのかを管理しないとお客様対応がどんどんブラックボックス化していきます。
次に2の社内スタッフ間のコミュニケーションですが、同じ空間にいなくなるので雑談やちょっとした会話での情報共有ができなくなります。そのため、業務報告などを都度行わないと何がどこまで進んでいるのかの箔が難しくなります(ただし、この点は社員にどこまで任せるかによって会社ごとのカラーは出るところだと思います)。一般的に考えられるフローは定期的なメール報告ですが、個人的にはチャットツールの方がライトなコミュニケーションとしては相性いいかなと思います。またZoomなどでのオンライン会議も定例化したほうがいいかなぁとは思いますね。
3点目の社外パートナーとの情報共有も同様にこれまでとは異なる方法を決めなければいけません。具体的にはお客様との接客履歴の共有方法と受発注オペレーションのテレワーク対応です。接客履歴については、理想的には共通の顧客管理システムにアカウント権限を分けてログインできるような設計にし、情報管理をすべてシステム内で一元管理できるとよいでしょう(先ほどの接客動画のデータ格納も含む)。実は受発注の方が実は難しいと思っていて、今FAXでやっている会社も多いのでメールのPDF送信で可とする、などの変更を前提で組みなおしたほうが良いケースが多いと思います。
評価制度の見直し
テレワークが前提となると、これまでとは異なりどの社員がどのように働いているかが見えなくなるので、評価基準の再設計も必要になるケースが多いでしょう。
プランナーの新規成約目標、組単価目標など数値で可視化できる営業要素はこれまでと同じでよいと思いますが、目標として設定するKPIの基準数値はオンライン接客に移行することで大きく変更したほうが良いでしょう。これまでのような来館対面接客前提の成約率は一律40%目標、単価は400万円目標、みたいな話ではなくなるはずです。
もう1つ、定性目標をどのように設定するかがかなり難しくなります。頑張っているから、みたいな基準は評価者が判断できないのでほぼ意味をなさなくなります。ここは企業によって考え方が異なりますし私自身も明確にこうだという考えをまだ持てていないのですが、スキル評価や間接的なKPI評価(ブログ更新本数、説明会登壇回数、など)などかなぁとは思います。
ブライダル業界のテレワークのポイントまとめ
今回は主に結婚式場のテレワーク導入におけるポイントをまとめました。テレワーク導入企業は増えるとは思いますが、すべてがテレワークに切り替わるとは正直思いません(施行そのものはそもそもテレワークでは難しいですしね)。ただ、落ち着いた後に以前のオペレーション通りに戻るとも思わないので各企業に最適な働き方を考えるのに少しでも参考になればうれしいです。