アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
式場集客コンサルをしている中で感じる、最近のブライダルメディアに対する雑感を書いてみます。
目次
ブライダルメディア・媒体の現状
ゼクシィ一強という状態に異論はなさそうで、実際に式場の人から聞く話を主観込みで整理すると次のようなイメージです。
- ゼクシィ:集客力は最強だが、広告費が激高で費用対効果は悪い
- ハナユメ:集客力はあるが、来館フィーモデルで1組の顧客を多会場送客するので成約率が低く成約単価が悪い
- みんなのウェディング:口コミサイト、最近ほとんど聞かないのでよく知らない
- ウエディングパーク:クチコミサイト、ランキング上位以外の式場は集客力はほとんどない
- マイナビウエディング:集客力はほとんどない、でも送客後の成約率は高いのでよく決まる
- プラコレ:SNSのフォロワーは多いが、式場送客にもつながってないし、来館しても成約率は低い(らしい)
- ウェディングニュース:ほとんど聞かない。イベントの告知記事やInstagram広告運用代行が多い?
- ARCH DYAS:年内で終了予定(だが復活のニュースが先日出てました)
- トキハナ:集客力は知らないけど成約率は高いらしい。ただし持込自由の強制・即決禁止など式場側の縛りは多い
- 結婚スタイルマガジン:SEOは強い、送客につながってるかは知らない
たぶん僕が知らないだけで他にも地域特化型のメディアもたくさんあるでしょう。
このような現状に対して、メディア数が多いとみるか少ないとみるかは人によって異なりそうですが、昨今では自社集客の重要性も叫ばれるようになってきており、今後ブライダルメディアの位置づけや期待される役割も変わっていきそうです。
結婚式場紹介媒体・メディアの役割とは
1.もしもメディア・媒体がなかったら
もしメディア・媒体が1つもなかったら、顧客は式場を自力で探さなければいけません。
上の図で無数に出ている矢印が顧客の検索行動を表していますが、これを日本全国でやるとなるととんでもない行動量が必要になります。
このように、もしメディアがないと超絶非効率な式場探しになりますし、式場側もいかにして見つけてもらうかに相当な工数を割かなければいけなくなります。
2.もしもメディアが1つしかなかったら
そこにメディアが登場すると、顧客はそこを見にいけばすべての情報を見ることができますし、式場側もかなり負担が下がりますしで、両者ともに便利になります。
しかしメディアの影響力が大きくなりすぎると、広告掲載費を高額にしたり掲載に関するルールを変更したり、独裁国家のようにふるまうことも可能になります。いちお独占禁止法という法律もありますが、メディアの意向に従わざるを得ない状況に陥りやすいんじゃないかなと思います。
3.もしもメディアが複数あったら
メディアが複数になると、メディア間で利用者獲得競争と広告主獲得競争が起こります。
サイト等の使いやすさ、何かしらの利用者特典、掲載情報の特徴などは利用者獲得における重要な要素ですし、広告掲載費、送客モデル、掲載にかかる運用工数などは広告主獲得における重要な要素です。
ブライダルに限らずどの業界にもメディアは複数ありますが、よく見ていると業界によっていろいろだなと思います。
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このように、メディアの役割を一言でまとめると
・利用者に対して|ブライダル業界だとカップル
→膨大な情報をわかりやすく整理して伝えることで利用者の検索、検討、比較行動の利便性を高めること
・広告主に対して|ブライダル業界だと結婚式場
→自社プロダクトの顧客(=メディア利用者)への情報発信、認知・CVの獲得の効率を高めること
だと僕は考えています。
(余談)ーーー
X組の顧客が、Y個ある結婚式場から、Z個のメディアを使って探す場合の検索行動量は
- メディアなし:X×Y
- メディア1個:X+Y
- メディアZ個:Z×(X+Y)
理論上このようになります(XとYは実質的に固有値)。
最少はX+Y、最大はX×Yなので効率性でいえば2がよいとなりますが、公平性、客観性等の他観点でも見たときにZの最適値はいくつなんだろう?という問題かなぁと僕は理解しています。
ブライダル業界におけるメディア・媒体に求められる要素
他産業と比較した時の商材としての結婚式の特徴は
- 情報の非対称が大きい→結婚式に対する顧客の前提知識が少ない
- リピートしない→人生に一度
- 商品が高額→手持ち金で簡単に買えるものではない
このような点が挙げられます。
つまり、「人生で最初の購入なのにもかかわらず、いきなり情報丸腰で高額商品を比較検討をしなければならず、かつそこで得た知識を後の人生で使うことはない」わけです。
となると、何の前知識もない商材についてすべて自分で調べ上げるよりも、メディアの統一規格で掲載された情報を見て比較検討をした方が効率もいいし安心できると考えるのが自然でしょう。自分たちらしさを求める人もいますが、人生で1度なので失敗したくないという意識が強い方も多いですからね。
なので、ブライダルメディアには以下のようなことが求められます。
- 情報網羅性:多くの情報が掲載されていること
- 公平性:掲載されている情報に恣意的な優劣がないこと
- 検索性:使いやすい、調べやすいサイト、雑誌であること
- 比較容易性:情報が統一規格で掲載され、同じ条件で比較できること
また、これらの要素は1つ1つのメディアに求められることですが、メディアが複数になった場合は上記に加えて「メディアとしての特徴」も必要になります。
- 金券プレゼントなどの利用者特典
- LINEで相談できるなどのオペレーションの特徴
- 口コミなど掲載情報の特徴
とかですね。
特にブライダル業界では、認知媒体よりアクション媒体(最終的にフェア予約等のアクションを起こした媒体のこと)であることの方が広告主側からの評価が高いので、アクションをしてもらうための様々な工夫を凝らしているのです。
ブライダルメディア・媒体には今後は何が求められる?
ここまで書いたように、メディアの役割は「広告主の情報を利用者に公平かつ効率的に伝えることで双方の利便性を高めること」であり、一社独占状態ではなく特徴を持った複数メディアが適切にすみ分けできていて相互監視・競争状態が維持されること、これが理想に近いのではないかと思います。
で、メディアのアップデートを促すという観点でもメディア間で適切な競争が起こるのはよいことだと思うのですが、メディア競争に勝つために顧客と式場に負荷をかけ過ぎるのは本末転倒だと言えます。
具体的には、
- サイトの特徴を出すために掲載可能情報を増やしまくった結果、式場側の運用、更新、入稿にかかる負担が爆増
- アクション媒体となるべく予約特典でもらえるギフトカードが高額化、そのまま式場への広告費に実質的に上乗せ
- リスティングで式場指名検索を買いまくり、本来の指名予約を横取りしていくメディアのWEBマーケ
- ある媒体の掲載をやめてくれればうちの掲載費の値引きしますよと持ち掛けるメディア営業担当者
など。
これらはメディアによるメディア間の競争を勝つためだけの打ち手に見えるんですよね。もちろん、表向きは利用者とか広告主のためだとか言いますよ。けど最近はこういった利用者&広告主を見ていない競争が行き過ぎているように感じます。
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(余談2)
例えると、近年の婚活業界やマッチングアプリ業界が盛り上がれば盛り上がるほど、結果的に結婚する人が減っていくのと似ているかなって気がします。
ほんと伸びてるじゃないですか。この業界。でも、本来の目的であるはずの「最適なパートナーを見つける/結婚する」はみなさんご存じの通り減っているんですよね。
業界内の競争に勝つこと・業界自体が伸びること≠業界としての真の目的を達成すること、なんだなって思いますね。
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本来は利用者と広告主にとってのメリットを提供することが存在価値であるため、メディアのためのメディアが増えるのってあんまり意味ないなと思うわけです。
なので今後は、既存メディアが変わっていくのか新興メディアが登場するのかはわからないですが
- 会場側にとって、工数負担がなく、広告宣伝費が安く、商品本来の価値を利用者に伝えられる
- 利用者側にとって、リアルな情報で、時代に合ったUIで、適切な経済的メリットがある
こんなメディアが求められるようになるんじゃないかなと思います。
ブライダル業界のメディア・媒体の現状と今後についてまとめ
美容領域のEC特化D2Cブランドが、ドラッグストアや量販店などのリアルチャネル、Amazonや楽天などのECモールを無視できないのと同じように、ブライダル業界でもどれだけ自社集客を頑張ったとしてもメディア経由の集客は無視できないでしょう。
理由は、情報の非対称性が大きいのと、固定費が大きいビジネスモデルなので最低限の集客規模は担保しないと利益を出せないからです。
となると、この業界からメディアがなくなることは考えにくく、であるならば利用者と広告主の両方を向いた競争によって勢力図が決まってほしいなと思います。