アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
私が思いついた新規事業のアイディアを企画っぽくまとめてみよう、という趣旨の記事です。今回は、ブライダルフェアで提供している試食をデリバリーする新サービス「ウェディング試食Deli」を企画してみました(※この記事は実在するサービスではありません)。
目次
事業企画の概要・ビジネスモデル
ビジネスモデル図解
いつものように「ビジネスモデル2.0図鑑」を参考にして作成してみました。
ビジネスモデル2.0図鑑
サービス利用の流れ
- ユーザーがサービス会員登録
- サイトから試食を注文(支払いはこのタイミング)
- (結婚式場へ)注文の通知/(デリバリーサービスへ)配送依頼
- 結婚式場でフードの調理
- デリバリーサービスがフードの配達
- ユーザーが試食@自宅
- サイトへレビュー投稿(レビューを書かないと次回注文ができない仕組み)
- (結婚式場へ)運営管理費を支払い/(デリバリーサービスへ)配送費を支払い
基本的な流れはこのような感じで、UberEats(ウーバーイーツ)の登録レストランが全て結婚式場、提供料理が全て婚礼料理、というのに近いイメージです。
収益化の方法(お金の流れ)
売上は「ユーザー→ウェディング試食Deli」で、結婚式場にその何割かを支払い、配送費をデリバリーサービス運営会社に支払う。その差額が利益になります。これだけだとスケールさせるのは相当大変なので、将来的にユーザーデータやレビュー本数が蓄積してきたら、結婚式場への送客や結婚式場メディアとしてのマネタイズも視野に入れておきます。
このサービスが解決できる課題
ユーザーの課題
リクルートブライダル総研のリリースにもあるように結婚式場探しの時に料理を重視する人は増えています。
【披露宴・披露パーティ会場を決定する際の重視点上位3項目(披露宴・披露パーティ実施者/複数回答)】
・1位 料理 :18年調査 59.0% (12年調査 57.4%)
・2位 交通の便が良いこと :18年調査 54.3% (12年調査 57.5%)
・3位 披露宴・披露パーティ会場の雰囲気が良いこと:18年調査 51.5% (12年調査 57.7%)(出典)リクルートブライダル総研
今のスタンダードな結婚式場探しだと、結婚式場の料理を試食するためには、試食ができるブライダルフェアに予約をして直接見学に行くしか方法はありませんが、これだともれなく新規接客を受けなければならず(約3時間)、多くの会場の料理だけを比較することが難しいのが実際です。
また、ゼクシィやみんなのウェディングなどの結婚式場媒体・口コミサイトに会場の料理の情報はありますが、どちらかと言えば広告主寄りの情報ばかりが掲載されているのでそれだけで判断できるような参考になるものではなく、結局は自分で直接結婚式場に食べに行って確かめる、という方法しか取れないのです。普通にレストランを選ぶときも食べログやRettyで探す方も増えてきていると思いますし、直接食べた人のレビューが少ないというのも課題です。
こういった課題に対し、ウェディング試食Deliを利用すれば
- わざわざ結婚式場に行かなくても、料理の比較が自宅で簡単にできる
- 結婚式場の料理に特化したレビューの情報が集まっているので比較検討がしやすい
というメリットがあります。
結婚式場側の課題
ブライダルフェアで提供する試食は今はほとんどの会場で無料なので、そこまで数は多くないものの年間でトータルすればその原価はそれなりのインパクトになります。また、料理に自信があったとしても今のブライダル媒体メインの集客方法だと、それをダイレクトに集客に活かすことが難しいのは先ほども書いた通り。
こういった課題に対し、ウェディング試食Deliを利用すれば
- 試食にかかる食材コストを売上として回収することができる
- 料理重視軸のユーザーの集客経路を新たに開拓することができる
というメリットがあります。
ウェディング試食Deliの特徴・競合・差別化要素
ユーザーにとってのサービスの特徴をざっと挙げると以下の通りです。
- 自宅で試食ができる(結婚式場までわざわざ行かなくていい)
- ユーザーレビューが豊富なので式場に比較検討に使える
競合は、ブライダル系だと直接同じようなスキームのサービスはないですが、間接的にはゼクシィなどのブライダル媒体になると思います。一方、フードデリバリーサービスはたくさんありますが、競合関係というよりはパートナーとしての立ち位置になります。結婚式を検討していない人にまでターゲットを広げていこうとすると、レストランやファストフード店などが競合にあたるようになりますね。
事業のKPI・スケールさせるのに必要な施策
事業KPI
- 利益=売上-コスト(結婚式場に支払う費用+デリバリーサービスへ支払う手数料)
- 売上=注文数×単価
- 注文数=会員数×注文率
- 会員数=サイト来訪者数×登録率
- 注文率=提供結婚式場数、価格、提供する料理の質・ボリューム、サイトのUI/UX、など複数の要素で決まる
- コスト=結婚式場支払いコスト+デリバリーサービス支払いコスト
- 結婚式場支払いコスト=売上×手数料率
- デリバリーサービス支払いコスト=売上×手数料率
ざっとこのようなロジックで表すことができます。
成長させるために必要な施策
この事業を成長させるためには、それぞれのKPIを伸ばしていくための施策を実行していくことが必要です。
「会員数」を伸ばすための施策
サイト来訪者数を伸ばすための正しいサイト設計、レビュー数の増加(サイト内コンテンツの増加)が自然検索流入増加に結びつくようにするためのSEO施策、初速はウェブ広告の運用、使いやすいフォーム(EFO)、など。
「注文率」を伸ばすための施策
試食を提供する結婚式場数を伸ばすための法人開拓、レビューデータを基にした適切なフィードバック、注文完了まで使いやすいサイト設計(カート、フォームなど)。
「単価」を伸ばすための施策
この事業では、サービスの趣旨を実現するために結婚式場ごとの単価に差は設けない。
施策まとめ
- 提携結婚式場を増やすための法人開拓
- ユーザーがアクションを起こしやすいサイト設計・開発・運用
- ユーザーを獲得するためのデジタルマーケティング施策
上記3つの施策を並行して実行していくことが重要になります。
事業リスク・詳細検討が必要な項目
ウェディング試食Deli事業を立ち上げ、拡大していくにあたり想定されるリスクとそれに対する打ち手も考えておきます。
①結婚式場が開拓できない(提携会場が増えない)
このサービスを立ち上げるにあたり、同一エリアで少なくとも10~20くらいの結婚式場数は必須でしょう。1社しかない、とかだとお互いにメリットがないからです。となると、最初は結婚式場の数が多く、かつデリバリーサービスも浸透している大都市圏から開始していくことになります。または中規模都市でテスマとして実施してからでもいいかもしれません。そのあたりの方針は市場調査をしてから、となります。
また、営業をかけても「平日は仕込みがあるのでそんなに工数をかけられない」、「そもそもデリバリーで出来立てではない料理を出すことに抵抗がある」、「お皿や盛り付けなど見た目も含めて婚礼料理だからデリバリーなどもってのほかだ」という意見も出てきそうです。その場合は、集客面でのメリットや、サイト内のレビュー機能などで根気よく攻めていくことが必要になると思いますし、他の成功事例ができてから攻めていくなど細かな戦術運用が必要になります。さらに、工数がネックなのであれば2日前までの完全事前予約制にするなど、細かな制度のチューニングも必要になるでしょう。
②注文が伸びない
注文が伸びない要因は、
- サイトが使いにくい
- そもそも商品に魅力がない
- 価格が高い
のいずれかが要因になるはずです。対結婚式場の視点で注文が少ないことに対しては、一時的に広告宣伝費を積んでウェブ広告で稼ぐという手法も取れないことはないので、その意思決定がすぐできるように、どのような状態になったらいくらまで何の広告に投下するのかは決めておくことが大切です。
③新郎新婦以外からの注文ばかりで送客に繋がらない
マーケティングの手法が間違っている可能性が高いので、ターゲットとしているKWや広告運用の見直しは必須となるでしょう。
起こりそうなリスクまとめ
ユーザーが集められない、はかなりの確率が起こりそうです。ユーザーを集めた実績または確度の高い見込みがないと、結婚式場の開拓もかなり苦戦しそうなので、サイト開発の開始と同時に「結婚式場 試食」「結婚式 料理」などをターゲットにした記事系コンテンツの制作は早いタイミングから開始し、SNSアカウントの開設・運用も行っておいた方がいいでしょう。
事業計画
最後に、簡単ですが事業計画も作ってみました。
深く検討してはいないですが、この事業単体で黒字化し、かつ累損を解消するまでに至るには相当難易度高そうな気がします。ちなみに、販売管理費試算条件は以下の通りです。
- サイト制作費:500万円
- 営業人員:初年度1人、年次ごとに1人ずつ増員
- 広告費:初年度200万円/月、2年目以降100万円/月
- 結婚式場へ支払う手数料率:50%
- デリバリーサービスへの手数料率:30%
そう考えると、この事業単体でマネタイズするというよりは送客事業やメディア事業への展開を前提に、複数のマネタイズポイントを作ることが必須になりそうです。婚礼料理特化型メディアの1位のポジション取れればそれなりに展開は聞きそうなので、最初の3年は投資のつもりでゴリゴリ進めていくことが大切になりそうです。
「ウェディング試食Deli」の事業企画のまとめ
以上、新規事業企画をしてみました(5時間くらいで書いたので深い分析や市場調査などはググることすらやっていない部分も多いですが。。)ただ、知っていることを記事にするよりもいろいろ可能性とか考えながらかけたので、いつもより記事書いてて楽しかったです。またたまに思いついたら書いてみようと思います。